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※岩波文庫「古事記」を参考に書いています。
前回は「【古事記】第二十回 稲羽の素兎 」でした。
●八十神の迫害
□原文
於是八上比賣、答八十神言、吾者不聞汝等之言。將嫁大穴牟遲神。故爾八十神怒、欲殺大穴牟遲神、共議而、至伯岐國之手間山本云、赤猪在此山。故、和禮【此二字以音】共追下者、汝待取。若不待取者、必將殺汝云而、以火燒似猪大石而轉落。爾追下取時、即於其石所燒著而死。爾其御祖命、哭患而、參上于天、請神産巣日之命時、乃遣■[冠討+虫]貝比賣與蛤貝比賣、令作活。爾■[冠討+虫]貝比賣岐佐宜【此三字以音】集而、蛤貝比賣待承而、塗母乳汁者、成麗壯夫【訓壯夫云袁等古】而出遊行。
◆訓み下し文
是(ここ)に八上比売(やがみひめ)、八十神に答へて言ひけらく、「吾は汝等(いましたち)の言は(こと)聞かじ。大穴牟遅(おほなむぢの)神に婚(あ)はむ。」といひき。故爾に八十神怒りて、大穴牟遅神を殺さむと共に議(はか)りて、伯伎(ははきの)国の手間(てま)の山本に至りて云ひけらく、「赤き猪此の山に在り。故(かれ)、和礼(われ)共に追ひ下(おろ)しなば、汝(なれ)待ち取れ。若(も)し待ち取らずば、必ず汝を殺さむ。」と云ひて、火を以ちて猪に似たる大石を焼きて、転(まろ)ばし落しき。爾に追ひ下(おろ)すを取る時、即ち其の石に焼き著(つ)かえて死にき。爾に其の御祖(みおや)の命、哭き患(うれ)ひて、天(あめ)に参上(まゐのぼ)りて、神産巣日之(かみむすびの)命に請(まを)しし時、乃ちさき(討の下に虫という字)貝比売(がいひめ)と蛤貝比売(うむぎひめ)とを遣はして、作り活かさしめたまひき。爾にさき貝比売、岐佐宜(きさげ)集めて、蛤貝比売、待ち承けて、母(おも)の乳汁(ちしる)を塗りしかば、麗しき壮夫(をとこ)に成りて、出で遊行(あそ)びき。
・御祖―御母
・(討の下に虫という字)貝比売―赤貝の擬人化。
・蛤貝比売―ハマグリの擬人化。
■現代語訳
八上比売は八十神に答えて「私は貴方達の言葉は聞きません。大穴牟遅神に嫁ぎます。」と仰せになりました。
この言葉に八十神怒り、大穴牟遅神を殺そうと共に相談して、伯伎国の手間の山の麓で、「赤い猪がこの山にいる。我々が共に追い落とすので、お前はここで待ち捕らえよ。もしここで待ち捕らえる事ができなければ、必ずお前を殺す。」といって、火で猪に似た大石を焼き、転がして落しました。そしてその追って落としてきたものを取ろうとすると、その石に焼かれて死んでしまった。
それを御祖の命、刺国若比売は泣き憂いて、天に登って、神産巣日之命に申し上げると、さき貝比売と蛤貝比売とを遣わして、治療して復活させた。そしてさき貝比売は貝殻を削って粉を集め、それを蛤貝比売が受け取って、蛤の汁でといて体に塗ると、火傷がなおり立派な男となってすっかり元気になりました。
【古事記】第一回 別天つ神五柱
【古事記】第二回 神世七代
【古事記】第三回 修理固成
【古事記】第四回 二神の結婚
【古事記】第五回 大八島の生成
【古事記】第六回 神々の生成
【古事記】第七回 火神被殺
【古事記】第八回 黄泉の国1
【古事記】第九回 黄泉の国2
【古事記】第十回 禊祓と神々の化生
【古事記】第十一回 三貴子の分治
【古事記】第十二回 須佐之男命の涕泣
【古事記】第十三回 須佐之男命の昇天
【古事記】第十四回 天の安の河の誓約
【古事記】第十五回 須佐之男命の勝さび
【古事記】第十六回 天の岩屋戸
【古事記】第十七回 五穀の起源
【古事記】第十八回 スサノオの大蛇退治1
【古事記】第十九回 スサノオの大蛇退治2
【古事記】第二十回 稲羽の素兎