【古事記】第四回 二神の結婚 | 真の国益を実現するブログ

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※岩波文庫「古事記」を参考に書いています。


前回は「【古事記】第三回 修理固成」でした。

●二神の結婚


□原文

於其嶋天降坐而、見立天之御柱、見立八尋殿。於是問其妹伊耶那美命曰、汝身者如何成。答白吾身者、成成不成合處一處在。爾伊耶那岐命詔、我身者、成成而成餘處一處在。故以此吾身成餘處、刺塞汝身不成合處而、以爲生成國土。生奈何。【訓生云宇牟。下效此。】伊耶那美命、答曰然善。爾伊耶那岐命詔、然者吾與汝行廻逢是天之御柱而、爲美斗能麻具波比。【此七字以音。】如此之期、乃詔、汝者自右廻逢、我者自左廻逢。約竟廻時、伊耶那美命、先言阿那邇夜志愛袁登古袁、【此十字以音。下效此。】後伊耶那岐命、言阿那邇夜志愛袁登賣袁、各言竟之後、告其妹曰、女人先言不良。雖然久美度邇【此四字以音。】興而生子、水蛭子。此子者入葦船流去。次生淡嶋。是亦不入子之例。



◆訓み下し文

その島に天降りまして、天の御柱を見立て、八尋殿を見立てたまひき。ここにその妹伊邪那美命に問ひたまはく、「汝が身は如何に成れる」とひたまへぱ、「吾が身は、成り成りて成り合はざる處一處あり。」と答へたまひき。ここに伊邪那岐命詔りたまはく、「我が身は、成り成りて成り餘れる處一處あり。故、この吾が身の成り餘れる處をもちて、汝が身の成り合はざる處にさし塞(ふさ)ぎて、國土(くに)を生み成さむと以爲(おも)ふ。生むこと奈何。」とのりたまへぱ、伊邪那美命、「然善(しかよ)けむ。」と答へたまひき。ここに伊邪那岐命詔りたまひしく、「然らぱ吾(あれ)と汝(いまし)とこの天の御柱を行き廻り逢ひて、みとのまぐはひ爲む。」とのりたまひき。かく期りて、すなはち「汝は右より廻り逢へ、我は左より廻り逢はむ。」と詔りたまひき。約(ちぎ)り竟(を)へて廻る時、伊邪那美命、先に「あなにやし、えをとこを。」と言ひ、後に伊邪那岐命、「あなにやし、えをとめを。」と言ひ、各言ひ竟へし後、その妹に告げたまひしく、「女人先(をみなさき)に言へるは良からず。」と告げたまひき。然れどもくみどに興(おこ)して生める子は、水蛭子(ひるこ)。この子は葦船に入れて流し去てき。次に淡島を生みき。こも亦、子の例(たぐひ)には入れざりき。



・天の御柱―立派な柱を見定めて立て。この柱は結婚の儀礼と関係があるようである。

・八尋殿―広い大きな家。新婚のための婚舎。

・成り合はざる處―日本書紀には「雌元之處」とある。

・成り餘れる處―日本書紀には「雄元之處」とある。

・みと―「御所」

・まぐはひ―「目合い」から転じたもの。は目を合わせることから、交接を意味しています。

・くみど―寝所

・水蛭子―ひるのような骨のない子か。(竹田氏の本では「手足のない」)

筆者個人的には始めに「國土(くに)を生み成さむと以爲(おも)ふ」と言っているのだから「水蛭子」も島か国かと思いますけどね。岩波には「子」としているけど。片方は淡「島」なんだし。

・淡島―所在不明

◇その他

淡島は所在不明ですが、関係ないかもしれませんがここのブログで扱った「友ヶ島」の和歌山側の対岸に「加太」というところがあります。(加太砲台でふれたはず)そこには「人形供養」で有名な「淡島神社」があります。筆者の実家の近所なんで小さいころは淡島神社に数回行きました。

淡路島とする説もあるそうですが、後に淡路島が出てくるんですよね。するとどちらかが間違っているということになります。岩波も竹田氏のも後に出てくる方を淡路島としています。だったら淡島ってなんなんでしょうね。

<参考>
淡島神wikiですが。4つの説が書かれています。

なぜ女から声をかけたのがよくなかったのか
古来日本では結婚は男から申し込むものであった。「国を生もうと思う」と声かけしたのは男神でしたが、柱を回った後では女神が先に声をかけてしまった。言葉には霊力が宿っている(言霊)ので、重要な場面で間違うと悪い結果が生じる。この逸話はプロポーズは男からするものという教訓が含まれているかもしれません。(竹田氏の解釈)

女の方から求愛の言葉をかけたのが良くなかったことになっていますね。それで蛭子が生まれてしまったとされています。これは男性が能動で女性が受動だということで、男が陽、女が陰の陰陽二元論と男性優位の思想を表わしています。(古典講読講座『古事記』2の筆者の解釈


「プロポーズは男から」でググったら、下のがトップにでてきました。男性優位とかそういうのじゃなくて、単純に竹田氏のような解釈かなと思います。(個人的な感想です。皆さま考えてください。)

『「プロポーズは男性から」のほうがよい理由とは!? - LAURIER (ローリエ)(1/4) http://www.excite.co.jp/News/laurier/mariage/E1334196795764.html』





■現代語訳



 二柱の神はその島にお降りになって、天之御柱をお立てになり、続けて広い御殿をお作りになった。
 
 そこで伊邪那岐命は伊邪那美命に「おまえの身体はどのようになっているのか」とおたずねになると伊邪那美命は「私の身体はすでにできていますが足らないところが一ところあります」とお答えになった。そこで伊邪那岐命は「私の身体もすでにできていますが余ったところが一ところある。そこでこの私の身体の余ったところをあなたの身体の足らないところにさし塞いで国土を生みたいと思うがどうだろうか」と仰せになった。伊邪那岐命は「それがいいでしょう」とお答えになった。

 そこで伊耶那岐命は「それなら、私とあなたはこの天の御柱を回って出会い、男女の交わりをしよう」と仰せになった。このように約束されて、そこで「あなたは右から回りなさい。私は左から回って会いましょう」と仰せになり、約束の通りに廻ると伊耶那美命が先に「あなたはなんてすばらしい男なのでしょう」といい、つぎに伊耶那岐命が「あなたはなんてすばらしい女なのでしょう」と仰せになった。
 
 それぞれ言い終わった後、伊邪那岐命は妻に「女が先に言うのは良くないことだ」と仰せになった。しかし男女の交わりをして子を生んだが水蛭子であったので、この子は葦の船に乗せて流した。つぎに淡島を生んだがこの子も子の数には入れなかった。




古事記アーカイブ
【古事記】第一回 別天つ神五柱
【古事記】第二回 神世七代
【古事記】第三回 修理固成

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