【古事記】第八回 黄泉の国1 | 真の国益を実現するブログ

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※岩波文庫「古事記」を参考に書いています。


前回は「【古事記】第七回 火神被殺」でした。

●黄泉の国1

黄泉の国は1記事にするにはちょっと長かったので、二分割します。


是欲相見其妹伊邪那美命、追往黄泉國。爾自殿縢戸出向之時、伊邪那岐命語詔之、愛我那迩妹命、吾與汝所作之國、未作竟。故、可還。爾伊邪那美命答白、 悔哉、不速來。吾者爲黄泉戸喫。然愛我那勢命、【那勢二字以音。下效此】入來坐之事恐。故、欲還、旦具與黄泉神相論。莫視我。如此白而、還入其殿内之間。甚久難待。故、刺左之御美豆良、【三字以音下效此】湯津津間櫛之男柱一箇取闕而、燭一火入見之時、宇士多加禮斗呂呂岐弖、【此十字以音】於頭者大雷居、於胸者火雷居、於腹者黒雷居、於陰者拆雷居、於左手者若雷居、於右手者土雷居、於左足者鳴雷居、於右足者伏雷居、并八雷神成居。

◆訓み下し文


是(ここ)に其の妹(いも)伊邪那美命を相見むと欲(おも)ひて、黄泉国(よみのくに)に追ひ往きき。爾(ここ)に殿の縢戸(さしど)より出で向かへし時、伊邪那岐命、語らひ詔(の)りたまひけらく、「愛(うつく)しき我(あ)が那邇妹(なにも)の命(みこと)、吾(あれ)と汝(いまし)と作れる国、未だ作り竟(を)へず。故(かれ)、還るべし。」とのりたまひき。爾に伊邪那美命答へ白(まを)しけらく、「悔しきかも、速く来ずて。吾(あ)は黄泉戸喫為(よもつへぐいし)つ。然れども愛しき我が那勢(なせ)の命、入り来坐(きま)せる事恐(かしこ)し。故、還らむと欲ふを、且(しばら)く黄泉神(よもつがみ)と相論(あげつら)はむ。我をな視(み)たまひそ。」とまをしき。如此(かく)白して其の殿の内に還り入りし間、甚(いと)久しくて待ち難(かね)たまひき。故、左の御美豆良(みみづら)に刺せる湯津津間櫛(ゆつつまぐし)の男柱一箇(ひとつ)取り闕(か)きて、一つ火燭(びとも)して入り見たまひし時、宇士多加礼許呂呂岐弖(うじたかれころろきて)、頭(かしら)には大雷居り、胸には火(ほの)雷居り、腹には黒雷居り、陰(ほと)には拆(さき)雷居り、左の手には若(わか)雷居り、右の手には土雷居り、左の足には鳴(なり)雷居り、右の足には伏(ふし)雷居り、并(あは)せて八はしらの雷神(いかづちがみ)成り居りき。



・黄泉国―地下にある死者のすむ国で、穢れた所とされている。

・殿の縢戸―家の閉ざし戸口。

・作れる国―物語の筋から言えば「生める」とあるべき所。

・黄泉戸喫為―黄泉国の竃で煮炊きしたものを食べること。これを食べると黄泉国のものになりきれると信じられていた。

・愛しき我が那勢―いとしいわが夫。那勢は汝夫で男を親しんで言う語。

・御美豆良―髪を左右に分けて耳のところでわがね結う髪型。角髪(みずら)。

・湯津津間櫛―歯の多い爪型の櫛。

・男柱(をばしら)―櫛の両端にある太い歯。「を」は「ひめ」「ひな」などに対して「大」の意。

・一つ火燭―これは一つ火を灯すことでこれは忌むべき事柄であった。日本書紀、一書(あるふみ)には、「今、世人、夜一片之火忌む」とあります。黄泉の国でイザナキが一つ火をともし、変わり果てたイザナミの姿をご覧になったことが原因で、縁起の悪いこととして忌み嫌われるようになった。

・宇士―うじ虫。

・多加禮斗呂呂岐―「たかれ」は「たかる」下二段の連用。「とろろき」は「盪く」の連用。どろどろにとけ。うじがたかって、どろどろにとけ。

◇その他

黄泉の国には多くの説があるようです。古事記では黄泉の国がどのような国なのか全く触れていません。黄泉の国は現実とは異なった世界のように描かれているにもかかわらず、「黄泉比良坂は、出雲の国の伊賦夜坂という」とも書かれていて、現実の地名を持ってその場所が語られています。島根県東出雲町には現在も揖屋神社があり、黄泉比良坂の伝説の地となっています。

一つは埋葬地説、もう一つは死後の世界説の二つの説が有力だそうです。

黄泉比良坂


■現代語訳


 伊邪那岐命は死んだ伊邪那美命にどうしても会いたくなり、黄泉国へ追っていった。黄泉国の殿舎の塞がれた戸から出迎えた伊邪那美命に向かって、伊邪那岐命は「愛しい我が妻よ、私と君と一緒に作った国はまだ作り終わってはいない。だから一緒に帰ろう。」といった。これに伊邪那美命は答えて「悔しいことです。なぜもっと速く来てくれなかったのです。私は黄泉国の竃で煮たものを食べてしまいました。もう現世には戻れません。でも愛しい我が夫がせっかくここまで来てくれました。私が帰れるように黄泉神と相談してみましょう。その間決して私を見ないで下さい」といった。伊邪那美命はそういってから殿舎の中に帰っていった、長い間待っていたが待ちきれなくなり、結った髪の左に刺していた湯津津間櫛の両端にある太い歯を一つ取って、一つ火を灯して中に入り見た時、伊邪那美命は蛆にたかられ、咽がかれてむせぶような音をたてていた。頭には大雷、胸には火雷、腹には黒雷、陰には拆雷、左の手には若雷、右の手には土雷、左の足には鳴雷、右の足には伏雷、あわせて八はしらの雷神が化生していた。


古事記アーカイブ
【古事記】第一回 別天つ神五柱
【古事記】第二回 神世七代
【古事記】第三回 修理固成
【古事記】第四回 二神の結婚
【古事記】第五回 大八島の生成
【古事記】第六回 神々の生成
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