◼まずは初めましての方へ
『大富豪父の教え 第11話』。
0話目. 『大富豪 父の教え』
1話目. 『荒川祐二の物語』
2話目. 『大丈夫。必ず出来るから』
3話目. 『父から受け継いだ財産』
4話目. 『人生の得意技を見つける』
5話目. 『母の言葉が起こした奇跡』
6話目. 『頑張る前に、頑張り方を知る』
7話目. 『人生に無駄はない』
8話目. 『群れない強さを持つ』
9話目. 『新宿駅東口のゴミ拾い』
あ「え~いよいよと言うか、
『嫁画伯』の登場です」
まずはあのヘンテコな嫁と、
どこで出会ってきたかを、
教えてもらおか」
あ「はい…その前に…。
また嫁画伯が、
『新作が出来ました』と…」
ス「?」
あ「(笑)」
今の神さま言葉の原型となる、
『あなたを見てインスピレーションで言葉を書きます』という、
新しく始めた仕事によって、
自由に人生を歩むことが出来るようになった、
22歳の荒川祐二。
しかしこの時、
もう一つの問題を抱え始めていた。
それは長年連れ添っていた、
嫁画伯との関係が、
この時少し、
変化し始めていたということだった。
そもそも嫁画伯との出会いは、
僕が大学に入学した18歳の時。
同じサークルで出会った。
50人近く新入生がいる中、
僕は周りの新入生を見渡した。
その中で一人、
なぜか嫁画伯だけが、
目についた。
その瞬間僕は、
なぜか急にこう思った。
『この子と結婚したら、
どんな人生になるんだろう?』と。
今まで会ったこともないのに、
である。
他にも何十人も女の子がいる中で、
ふとそう思った。
今考えると、
そういった意味で言えば、
『運命の赤い糸』、
というのはある。
もちろんその後すぐに、
付き合ったりをしたわけではないが、
入学して半年の間に、
みんなで遊びに行ったり、
その中で親交を深めていく過程で、
当時18歳の僕らは、
付き合うことになった。
『俺と付き合ってほしい』、
と言った僕に対しての、
嫁画伯の答えはこうだった。
嫁画伯「あんまり好きじゃないけど、いい?」
…。
……。
………。
…………。
…アメリカに7年住んでいた、
経験もあってか、
この時から、
嫁画伯は嫁画伯である。
その過程の中で、
嫁画伯はどんな時でも、
僕に寄り添ってくれ、
※霧島神宮
『NO』ということは無く、
どんなことでも応援してくれた。
僕がサークルをやめる時は、
一緒にやめてくれたり、
その後に始めたゴミ拾いにも、
時に一緒に来てくれたり。
そんな嫁画伯がいてくれたから、
僕自身も自分自身の人生に、
ブレーキを掛けることなく、
挑戦を続けてくることが出来た。
その結果としての、
『今』がある、と。
心からそう思っている。
しかし大学を卒業して以来、
その関係にも、
微妙に変化が起き始めていた。
僕は働いているとは言っても、
自分の自由な人生の中で、
自由に毎日を生きていた。
一方の嫁画伯は、
大手航空会社のCAとして就職したのだが、
その表には見えない、
激務の中で、
心身を疲弊させてしまっていた。
その中で、
少しずつ生じてきた、
心のすれ違い。
この時点でもう僕らは、
4年以上付き合っていたとはいえ、
嫁画伯は僕と『別れる』ことを決意し、
実際に友達にも、
相談していたという。
しかし古事記でもそうだが、
いつの時代でも
男は呑気なものである。
その時の僕は、
嫁画伯がそんなことを
考えているとは露知らず、
一人呑気に書の仕事道具一式を、
スーツケースに詰め込んで、
日本中を旅していた。
嫁画伯の親御さんから、
僕に連絡が来た。
『娘が体調を崩して入院した』と。
急いで出先から、
東京に戻った僕だったが、
道中は穏やかではなかった。
診断は、
『腎盂炎(じんうえん)』。
腎臓に細菌が感染して起こる、
炎症であり、
1週間ほどの入院を要する、
病気だった。
大事には至らず、
安堵はしたものの、
その後僕は、
嫁画伯が退院してすぐに、
どうしても行かなければならない、
地方での仕事があり、
そこに向かっている最中、
飛行機の窓から空を見つめて、
考えていた。
俺は死ぬかもせーへんねんな」と。
今僕らは、
こうして当たり前に毎日を生きているけど、
僕も嫁画伯も、
人がいつ死ぬかなんて、
誰にもわからない。
…いつの頃からだろうか。
僕は嫁画伯とは、
『いつかは結婚するだろうな』とは、
思っていた。
しかしその、
決断が出来ていなかった。
『いつか、仕事が安定してから…』、
『いつか、自分自身で納得がいってから…』、
『いつか』、『いつか』…。
そんなことをずっと、
思っていた。
ちょうどその時、
また父から過去に、
言われたことのある言葉を思い返した。
父「俺の人生で、
『いつか、いつか』って言って、
実際にやった奴は見たことがない。
『いつか』なんて時期は、
待ってやってくるものじゃなくて、
自分で引き寄せるものや」
あ「…『いつか、いつかと言って、
実際やったやつを見たことがない』…か…」
そう思った瞬間に、
続けて思った。
あ「『いつか、いつか』って、
いつやねん」
そう思えたその瞬間に、
僕は『決断』を、
することが出来た。
そして出張から戻ったその足で、
嫁画伯のもとへと向かい、
僕は結婚を申し込んだ。
嫁画伯だったが、
返事はOK。
そして僕らは、
結婚した。
僕らが23歳の時のことだった。
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