『荒川祐二の物語』。
あ「え~昨日から始まりました、
新シリーズ『荒川祐二の物語』、
いかがですか?
解説のスサノオさん」
まぁ、あの、なんというか、
あれですね。あれですわ」
あ「あれですか。
ちなみに、
昨日の3月生まれの話なんかもそうですが、
やはりこういう、
それぞれが生まれ持った状況というのも、
よく言われるみたいに、
自分で選んでくるというものなのでしょうか?」
ス「ん~まぁ、そのいわゆる一つの、
それもあれですね。
ありますわ」
あ「(あるんかい)。
ちなみにそういったことを僕らは、
どのように理解しておけば?」
ス「ん~まぁ、あれですね。
よく言われるように、
やはりそれぞれが、
産まれる前に決めてくる、
この人生を始める上での、
『使命』というものがあってですね。
それを果たすために、
必要な環境を選んで産まれてくる、
というのは確かにありますね、うん。
まぁ要は、あれですわ」
あ「なるほど、あれなんですね」
ス「あれですわ」
あ「(あれってなんやねん…)
解説のスサノオさん、ありがとうございます。
それでは続き、
今日の『荒川祐二の物語』へ、
参りましょう」
甘やかされながらも、スクスクと育っていった、
あらかわゆうじ。
いつも靴を左右、逆に履く。
おもらしはする。
先生に言われたことは2秒で忘れるなどなど、
正直そのダメ男っぷりは、
他者を凌駕していた。
しかし、
そんなあらかわゆうじくんも
幼稚園を卒園し、
小学校に入学する時がやってきた。
そこで、
事件が起きた。
入学前のある日、
たまたま何かの本に載っていたのであろう、
この漢字。
ス「いいかぁ!?お前たちぃっ!?
『人』という字はだな…」
…改めて、
この漢字を、
僕は小学校入学前に、
知ってしまったのだ。
…「なんてことだ…。
これはすごいことをしってしまった」…。
6歳のあらかわゆうじくんは、
そう思った。
「もしかしたら、どうきゅうせいのみんなよりも、
ぼくはさきにいってしまったのかもしれない」
そうも思った。
そして嬉しそうに、
母親にこの漢字が『ひと』と読むということを、
報告すると、
母親はこう言った。
ゆうじはそんな漢字も読めるなんて、
本当にすごいねー!!かしこい!かしこい!」
そう言って母は、
僕の頭を優しくなでた。
幼少期のあ「エッヘン!」
…そうして、
『母親お墨付き』で得た自信とともに、
満を持して、
あらかわゆうじくんは、
小学校へと入学を果たした。
事件は起こった…。
入学式を終えてから、
母親参列のもと、
僕らは真新しい制服に身を包まれて、
教室で机を並べた。
そこで当時の、
担任の先生が言った。
先生「はーい!
それでは今からみんなで声を合わせて、
漢字の読み取りをしましょう~!」
その瞬間、
幼き僕は思った。
『来た…』と。
そう…なぜならぼくは、
みんながしらないことを、
しってしまっているのだから…。
そう思い、
ニヤリと笑って、
後ろに参列する母親の顔を見た。
そして、
配られた読み取り用のプリントを見て、
あらかわゆうじくんの、目ん玉は飛びだした。
…。
……。
………。
…………。
幼少期のあ「あ、あれ…?」
よめましぇん…。
…し、しかし!!
このぼく、ぼく、ぼくがよめないんだ!!
きっとみんなも、
よめるはずがないんだ!!
そうして始まった、
クラス全員で、
声を合わせての読み取り。
あ「……」
みんな「『いーち』!」
あ「……」
みんな「『にー』!」
あ「……」
みんな「『さーん』!!」
…そして…。
あ「ひ、ひ…」
みんな「『ひと』―!!」
…そうして先生の声が、
鳴り響く。
先生「荒川くん、ちゃんと読みなさい!」
…は、はなしがちがうぜ…、
おかあちゃん…。
振り返った母はしかし、
なぜかそれでも、
にこやかに微笑んでいた…。
こうして波乱万丈の、
幕開けとなった、
あらかわゆうじの小学校生活だったが、
学校教育とは別に、
こういった母の教育方針は終始一貫、
変わることはなかった。
それは、
『僕のことを絶対に否定しなかった』、
ということ。
靴紐の話のように、
当時の僕は、
誰の目から見ても、
『出来ない子』だった。
しかし、
そんな僕であったにも関わらず、
母はいつも、
口癖のようにこう言っていた。
『大丈夫。祐二は必ず出来るから』と。
その母の言葉が後に、
『ダメ男』だった、
僕の人生を激変させていくきっかけとなり、
その後も、
この『荒川祐二』という、
人生を生きる上で
ぶれることのない、
心の『核』となっていく。
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