多文体俳句集です。

俳句の「使用文体の拡張」
について実作とともに探っています。

文語体俳句、口語体俳句、会話体俳句
の各作品をあつめました。

今回は各文体ごとに、冬季の
都市詠、自然詠、人事詠にわけて詠みました

楽しんでご覧いただければ幸いです。

*作品はすべて未発表新作です



『三冬』
多文体俳句集

第一部
〜口語体俳句〜

街よ灯を流しきよめてふゆのかわ

舞う雪よ街のじかんをあやつって

駅あれば駅にしずまるふゆの富士

いっさいの日ざしが土手に小春空

こがらしをゆびさして立つ銅像か

瀬戸にかかる大橋のそらふゆの航

降る雪よ街美のすがた詩のすがた

灯のバスのほのとあらわれ冬夕焼

オーブンにガスコンロに火降誕祭

ホットワイン一夜を雨は雨のまま

輪をえがき明けてゆく北ふゆの星

じてんしゃのわだちが二重凍る朝

紅茶にもレモンの水輪ふゆのあめ

さして日のベンチが無人銀杏落葉

路面電車城のまちごとふゆのくれ

地方都市夜はいっぺんのふゆの月

灯きえゆく空よふえゆくふゆの星

路地灯はほのめく銀河雪しんしん

テーマ∶都市詠

口語体・現代仮名遣い・現代的切れ字
(基本)



第二部
〜文語体俳句〜

咲きふぶく季のおもかげや帰り花

とりどりに羽ばたきにけり小春空

いくたびもくだける波に時雨かな

木々のかげ揺らすかぜあり神無月

十一月田にあぜばかりのこりけり

風のすがた水のすがたや散る紅葉

つくばひのみづのくもりぬはつ氷

白鳥の立てたるくびのながさかな

日と月のおほいなる間や浮き寝鳥

一山のそらひらけたる落ち葉かな

上りつつもつれあふ喜やふゆの蝶

燃ゆる日のまづしづみけり冬夕焼

跳ぶ栗鼠にときながるるや冬木立

白鳥も富士も吹かるるばかりなり

羽うちたる鶴のはもんやみづの上

鳴きて死はしづかなりけり冬の虫

冬銀河地とひとつなるしじまかな

テーマ∶自然詠

文語体・歴史的仮名遣い・古典的切れ字
(基本)



第三部
〜会話体俳句〜

子たちには泣かされますね小春空

立冬句会おしえ授かりかえります

いちねんに一句二句ほどかえり花

よい日でしたね手にのこる龍の玉

手に持たせほんならまたな蒸饅頭

まちは暮れたよ堀りばたの夕白鳥

はつゆきに手とどきますか車椅子

いつか詠む雪まだ雪のままでいい

ことこととわたしに戻るかぶら汁

わすれないためですか木も帰り花

売れのこる新聞クリスマスですね

尊敬とは遠嶺焼きいもほっこほこ

悲もなみもきてはかえすよ浜千鳥

日向ぼこ何となくあらがえません

ふゆの梅春をつくっていきますね

テーマ∶人事詠

会話体・現代仮名遣い
(基本)


終わり



◇ 前回までの作品集 ◇

『三春』
多文体俳句集

多文体俳句集

多文体俳句集

多文体俳句集


◯詠んでみた感想

今回も各文体作品ごとに、
都市詠、自然詠、人事詠にわけて詠みました


◇口語体俳句 「都市詠」

現代の「書き言葉表現の俳句」は、叙景句、写実句をはじめ、都市詠も問題なく詠めます。

一方で、現代の「話し言葉表現の俳句」は、叙景句や写実句が詠みづらく、

古典的な「文語体の俳句」は、言葉の古さから現代詠全般に対応しづらいです。


◇文語体俳句 「自然詠」

古典的な「文語体の俳句」は言葉に厳格さや重厚さがあり、自然詠にも奥深さなどが出ます。

一方で、現代の「書き言葉表現の俳句」は、言葉の厳格さや重厚さの面でそれに及ばず、

現代の「話し言葉表現の俳句」は、叙景句や写実句に対応しづらいです。


◇会話体俳句 「人事詠」

現代の「話し言葉表現の俳句」は、直接的、抒情的で、人事詠により向いていそうです。

一方で、現代の「書き言葉表現の俳句」は、直接的で強い抒情性の面でそれに及ばず、

古典的な「文語体の俳句」は、言葉の古さから現代的な会話表現に対応しづらいです。


◇今回のテーマ等

・各文体俳句の特徴・特性・強みを探る
・都市詠、自然詠、人事詠
・切れ字、切れ、季語の活用
・格調、機知、余情、間、深みなど



◯作者の個人的な考え、見解

◇その目的

多文体での俳句づくりの目的は、単なるパフォーマンスや他との競争ではなく、

自分自身の俳句やそれぞれの文体表現の可能性をさぐり、深化させていくことだと捉えています

俳句をより学び、より楽しむことを大切にしています


◯多文体俳句の主な目的

1、俳句で使われる文体の整理

各文体と各仮名遣いがごちゃまぜに使用されている俳句の現状について整理を行う提案


2、俳句同士の対立の緩和

伝統的な俳句と現代的な俳句の対立等をその両方に取り組むことで緩和すること


3、各文体の俳句の共存

文語体俳句、口語体俳句、会話体俳句等を同等の俳句として扱い、取り組んでいくこと


4、各文体の俳句を互いに高めあうこと

各文体の俳句の特徴や強み、技法などを理解し、互いに高めあうこと


5、俳句の歴史と現在、未来をつなぐこと

伝統的な俳句と現代的な俳句に同時に取り組むことで俳句の歴史と現在、未来をつなぐこと

等々


現在の試みとして、

文語体俳句、口語体俳句、会話体俳句

の3つ方向性を
順次探究しています

◇文語体俳句
「古典語・歴史的仮名遣い・古典的切れ字」を基本にした俳句

◇口語体俳句
「現代語・現代仮名遣い」「現代的切れ字」を基本にした俳句

◇会話体俳句
「現代の話し言葉」やそのフレーズ、会話、対話、独話、セリフ、つぶやき等を活かした句

など、個人的に大まかに分けて取り組んでいます


各文体、仮名遣い、
切れ字について短くまとめます

◯文語体が基本の俳句

◇文語体
古典語法に基づく伝統的で格調高い文体

◇歴史的仮名遣い
古典的な仮名遣いのこと
・言ふ、けふ、ゐた、てふてふなど

◇古典的切れ字18字
や、かな、けり、よ、か、ぞ、に、へ、せ、
ず、れ、け、ぬ、つ、し、じ、らむ、もがな等


◯口語体が基本の俳句

◇口語体
現代語法に基づく日常的で自然な文体

◇現代仮名遣い
現代的な仮名遣いのこと
・言う、きょう、いた、ちょうちょなど

◇現代的切れ字 の候補
よ、か、ぞ、と、に、へ、せ、で、まで、
ず、れ、け、た、が、て、は、な、こそ等


◯会話体が基本の俳句

◇会話体
話し言葉をそのままに再現した文体

◇現代仮名遣い
現代的な仮名遣いのこと
・言う、きょう、いた、ちょうちょなど

◇主な語尾の候補(要検証)
です、ます、でした、〜だ、
だった、〜ません、〜の、〜ね、〜さ等

*仮名遣いについてなど一部例外もあるようです



◯文語・口語の大まかな図

下記は、俳句における
文語・口語の大まかな図です

◇文語俳句ー文語体ー古典語ー古い時代の文体

◇口語俳句ー口語体ー現代語ー書き言葉
                                            ∟ーー話し言葉

◇仮名づかい   歴史的仮名遣い    現代仮名遣い

より詳しく細かいことについては、書籍・ネット等で調べてみてください


下記は
現代的な切れ字の候補についての記事です

「現代切れ字 十八字(候補)」
よ・か・ぞ・と・に・へ・せ・で・まで
ず・れ・け・た・が・て・は・な・こそ

これらは「現代の言葉」で俳句を詠む際に切れ字のような役割を果たす語はないのか、

「間」を生み出すために必要な「句を区切るための語」が現代の語にはないのかを探ったものです


俳詩として、俳句の基本を母体に
より深い「詩性」「思想性」等も探っています


下記について、毎日の投稿などで
月日をかけて探っていければと思っています

「表現の新と万象の真」「驚きと感動の詩」

「一新一真」「都市詠の探求」「一句新世界」 

「ものごとの花」「沈黙の美」「内的宇宙」

「三物一句」「風情の継承」「平明深遠の詩」


現代語・現代仮名遣い・現代的切れ字
を基本にして俳句を詠んでいます

① 現代俳句
俳句の「現代化」「現代文学化」
について実作を通して模索しています

② 多文体俳句
俳句の「使用文体の拡張」
について実作とともに探究しています

③ 俳詩 (旧一行詩的俳句)
俳詩として、俳句の基本を母体に
「詩性」「現代性」なども探っています

④ AI共作俳句
生成AIを「制作助手」とした
俳句集づくりについて探究しています


個人的な
俳句の探求を楽しんでいます


*個人的な考えや見解をまとめた記事です

*解説について至らない点、充分に書き尽くせていない部分もあると思いますがご容赦ください

*俳句については個人・団体によって様々な考え方や見解があります


◇関連記事◇