文語体俳句、口語体俳句、会話体俳句
の各作品で構成した俳句集です
今回は各文体の
春夏秋冬の自選作品を集めました
575の型・季語・切れ字の基礎、
個人的な俳句の目標も意識しました
よろしければ楽しんでみてください
*作品はすべて既発表句です
『四季自選』
多文体俳句集
第一部
〜口語体俳句〜
来る春よ蛇口を落ちるみずのおと
かもめとぶ沖にまで春およんだか
船旅よみなとみなとのはるかもめ
春立つかひがしに筑波にしに富士
小ながれがもつれあってよ春の川
無になってながめる花よ花のなか
生きるとは後ろすがたか利休の忌
おおさかを出ておおさかは春夕焼
平和さよ雨あがるたびしゃぼん玉
イヤホンにぽんと触れれば春の歌
いっぽんのゆびとたわむれ風鈴よ
来る河のながれは絶えず鮎がとぶ
そのはてに都市いくつもよ夏の河
縄文遺跡いちまんねんの蝉しぐれ
これ以上踏みいらず山ほととぎす
教会のひっそりとして薔薇のなか
かぶと虫角振りながら生まれるか
瀬戸内のうみまっしろに西日さす
平およぎ海をひらいてゆくことよ
どの田にもひとりふたりよ大夕焼
虫鳴いて生死の果てのかぜのおと
生きわかれ死にわかれてよ盆の月
月を見て三日こころのしずかさよ
あかるくてこの世あの世の大花火
ひとり行く花野いつしか夢のなか
あきの雲旅はなににもこだわらず
ほんもののひびきか奈良の秋の鐘
いねを干す戦前戦後きょうあした
フライパン火にかけどおし豊の秋
明けるまで銀河の島よなみのおと
熱燗よことばなくてもあたたまり
さいげつをながめ見てこそ大枯野
飛びたってむすうのかげよ浜千鳥
この星をあたたかくするしら息か
ちんもくが初雪になるふるさとよ
五重の塔五重をつたうふゆのあめ
凍てながら白いしぶきを那智の滝
さいげつをみおくることが落葉焚
犬がきえ犬小屋がきえふゆすみれ
あるく鳩羽ばたきがちよ明日の春
第二部
〜文語体俳句〜
春障子こころもろともひらきけり
いちりんの梅匂ひたつ日なたかな
初蝶のとまるともなく舞ひにけり
人といふちひさき春のゆく野かな
しやぼん玉吹き終へて空新たなり
花のうへに塔をうかべて東寺かな
のどかさや撞かねば鳴らぬ鐘一つ
皆で名をかんがへてゐる子猫かな
手にのこるひとひらもなし花吹雪
春の塵いちばん風呂にながしけり
けさひとり光となりてヨット洗ふ
むぎわら帽子珊瑚の島を愛しけり
いちにちをしづかに騒ぐ若葉かな
紫陽花は水とはぢけんばかりなり
ひらくたび富士あらはるる扇かな
散りふぶくごとく風鈴鳴りにけり
手にとりし人にもつとも薔薇匂ふ
やはらかにしらさぎ歩む植田かな
岩いちまい乾く間もなし清水汲む
星々のすずしく燃えてゐたりけり
どの嶺もとほのいて秋はじまりぬ
こころへと落ちてくるなり桐一葉
阿波踊ひと夜ふた夜とつづきけり
まんてんの星うつくしや団扇置く
もう逢へぬ夜の長さとおもひけり
そのうへにけさの月ある京都かな
菊摘むや崖にくだけるなみのおと
みづうみに光とびかふとんぼかな
赤子生れあつといふ間に蜻蛉追ふ
すずむしのはるけきこゑや籠の中
踏み抜きてひとりおどろくはつ氷
大いなる海のちひさきくぢらかな
水仙やあるともしれぬかぜのいろ
ひくひくとはないそがしき兎かな
十二月まばたきの間に来たりけり
ゆく人のふつと消え入る吹雪かな
大寒と言ふだけのことありにけり
くべくべてすべて忘るる焚火かな
寒夕焼われのにほひをわれ知らず
梅いちりんまだ見ぬ春の匂ひかな
第三部
〜会話体俳句〜
花見して平和をしんじきっていた
ちる桜真向かうほかにありません
しめ縄か十歩はなれておおざくら
五重の塔鳩もすずめものどかです
来る傘はあなたでしたか春しぐれ
そらをゆく春雲として立っていた
朝はみなだまっていますしじみ汁
また来いよそらいちめんを帰る雁
春満月そうつぶやいてしまうほど
アイスティー氷も琥珀いろでした
ひこうき雲夏の行方を見るような
葉落ちますぱちんぱちんと松手入
野菊摘むうつむき癖のあるひとだ
沿いあるく波打ちぎわは秋でした
転居することも旅ですくさのわた
はずみますかぜのたかさを秋神輿
いつか又出かけましょうか遠花火
季節またかわりゆきます赤とんぼ
戦争もにぎりこぶしも身にしみた
ゆうひへとゆれやみません吾亦紅
けものらも水を飲みますもみじ川
だまるほどおおきい月を旅に見た
天の川いまだ詩でしかありません
ものがたりまんてんにです流れ星
林檎噛む冬がちかいということだ
白鳥が輪のまんなかをおよぎます
雪の列車目の奥どこまでも行った
うつむけばそらが消失するふゆだ
いちりんのそれぞれ詩です返り花
寒林檎この世たしかに手にあった
みずうみの影暮れません雪の富士
踏み入ってゆめのなかです眠る山
凍滝をさかのぼる目はそらを得た
このせかい溶けて落ちます冬夕焼
生きざまをあいまいにして冬霧だ
一家族よこならびですはつもうで
かおりますおなじ日なたの寒紅梅
不幸さえしみじみします日向ぼこ
春待ってまだ種でしかありません
終わり
◇ 前回までの作品集 ◇
『三春』
多文体俳句集
『春の題詠』
多文体俳句集
『花の雲』
多文体俳句集
◯つくり分けについて
今回は各文体の
春夏秋冬の自選作品を集めました
◇今回のテーマ等
・各文体の作品の特徴、強み、可能性の比較
・自然詠と人事詠
・俳句、一行詩の両側面を探る
・切れ字、切れ、季語の活用
・格調、機知、余情、間、深みなど
・過去の句集、作品集からの自選
◯作者の個人的な考え、見解
◇その目的
多文体での俳句づくりの目的は、単なるパフォーマンスや他との競争ではなく、
自分自身の俳句やそれぞれの文体表現の可能性をさぐり、深化させていくことだと捉えています
俳句をより学び、より楽しむことを大切にしています
◯多文体俳句の主な目的
1、俳句で使われる文体の整理
各文体と各仮名遣いがごちゃまぜに使用されている俳句の現状について整理を行う提案
2、俳句同士の対立の緩和
伝統的な俳句と現代的な俳句の対立等をその両方に取り組むことで緩和すること
3、各文体の俳句の共存
文語体俳句、口語体俳句、会話体俳句等を同等の俳句として扱い、取り組んでいくこと
4、各文体の俳句を互いに高めあうこと
各文体の俳句の特徴や強み、技法などを理解し、互いに高めあうこと
5、俳句の歴史と現在、未来をつなぐこと
伝統的な俳句と現代的な俳句に同時に取り組むことで俳句の歴史と現在、未来をつなぐこと
等々
現在の試みとして、
文語体俳句、口語体俳句、会話体俳句
の3つ方向性を
順次探究しています
◇文語体俳句
「古典語・歴史的仮名遣い・古典的切れ字」を基本にした俳句
◇口語体俳句
「現代語・現代仮名遣い」「現代的切れ字」を基本にした俳句
◇会話体俳句
「現代の話し言葉」やそのリズム、フレーズ、対話、独話、セリフ等を活かした句
など、個人的に大まかに分けて取り組んでいます
切れ字について短くまとめます
◯文語体が基本の俳句
◇文語体
古典語法に基づく伝統的で格調高い文体
◇歴史的仮名遣い
古典的な仮名遣いのこと
・言ふ、けふ、ゐた、てふてふなど
◇古典的切れ字18字
や、かな、けり、よ、か、ぞ、に、へ、せ、
ず、れ、け、ぬ、つ、し、じ、らむ、もがな等
◯口語体が基本の俳句
◇口語体
現代語法に基づく日常的で自然な文体
◇現代仮名遣い
現代的な仮名遣いのこと
・言う、きょう、いた、ちょうちょなど
◇現代的切れ字 の候補
よ、か、ぞ、と、に、へ、せ、で、まで、
ず、れ、け、た、が、て、は、な、こそ等
◯会話体が基本の俳句
◇会話体
話し言葉をそのままに再現した文体
◇現代仮名遣い
現代的な仮名遣いのこと
・言う、きょう、いた、ちょうちょなど
◇主な語尾の候補(要検証)
です、ます、でした、〜だ、
だった、〜ません、〜の、〜ね、〜さ等
*仮名遣いについてなど一部例外もあるようです
文語・口語の大まかな図です
◇文語=文語体=古典語=古い時代の文体
◇口語=口語体=現代語=書き言葉
∟==話し言葉
◇仮名づかい 歴史的仮名遣い 現代仮名遣い
◯俳句の分類の仕方についての疑問
文語俳句と口語俳句
の分類について感じた疑問を記しました
下記は
現代的な切れ字の候補についての記事です
「現代切れ字 十八字(推奨)」
よ・か・ぞ・と・に・へ・せ・で・まで
ず・れ・け・た・が・て・は・な・こそ
下記について、毎日の投稿などで
月日をかけて探っていければと思っています
「表現の新と万象の真」「驚きと感動の詩」
「一新一真」「都市詠の探求」「一句新世界」
「ものごとの花」「沈黙の美」「内的宇宙」
「三物一句」「風情の継承」「平明深遠の詩」
*作品は主にXに投稿したものです
*解説について至らない点、充分に書き尽くせていない部分もあると思いますがご容赦ください
*俳句については個人・団体によって様々な考え方や見解があります
◇関連記事◇









