多文体俳句集『花の雲』

文語体俳句、口語体俳句、会話体俳句
の各作品で構成した俳句集です

今回は桜をテーマに作品をつくり分けました

575の型・季語・切れ字の基礎、
個人的な俳句の目標も意識しました

よろしければ楽しんでみてください

*作品はすべて既発表句です



『花の雲』
多文体俳句集

第一部
〜口語体俳句〜

見わたせば空見つめれば初ざくら


一輪よつぼみもいそぐはつざくら


花見して今をいそがずあらそわず


ふぶくおとひろがるそらよ花の宴


ことごとくてのひらを逸れ舞う桜


つらなって令和絵巻きか花いかだ


引く波もはなびらいろよ瀬戸の島


手のひらにふぶききて今さくら餅


狛犬はかお上げがちよ舞うさくら


咲き暮れて花のみやこよ鐘のおと



第二部
〜文語体俳句〜

つぎつぎと空をひらくや初ざくら


どの人もわきまへてゐる花見かな


咲き満ちて花はだれをも否定せず


桜よりくらくぼんぼりともりけり


くるくると宙ころがりし落花かな


にはたづみ渦を巻きけり花いかだ


えだえだを咲きつつむなり八重桜


はなのくも極楽寺へとあるきけり


竹ばうきざりざり掃くや庭ざくら


奈良もみやこ京もみやこやおそ桜



第三部
〜会話体俳句〜

花の雲浮きかかりますだいぶつ殿


散りふぶきます涅槃へとはなの寺


花びらの顔まで舞って落ちゆくよ


咲きふぶくどれも花だよ瀬戸の島


さざめいて花おぼろですよしの山


ゆく舟の水尾をとざすよ花いかだ


やみませんさくら吹雪がかがみ池


舞ってそらひろがりだすよ桜が丘


浮かびますぼんぼりの灯に花の城


散ってなお花ざかりです写真立て


終わり



◇ 前回までの作品集 ◇

『三春』
多文体俳句集

『春の題詠』
多文体俳句集


◯つくり分けについて

今回は桜をテーマに
作品をつくり分けました

◇今回のテーマ等

・「桜の美と真」というテーマ
・自然詠と人事詠
・俳句、一行詩の両側面を探る
・切れ字、切れ、季語の活用
・格調、機知、余情、間、深みなど
・桜にまつわる季語の使用



◯作者の個人的な考え、見解

◇その目的

多文体での俳句づくりの目的は単なるパフォーマンスや他との競争ではなく、

自分自身の俳句やそれぞれの文体表現の可能性をさぐり、深化させていくことだと捉えています

俳句をより学び、より楽しむことを大切にしています



◯多文体俳句の主な目的

1、俳句で使われる文体の整理

各文体と各仮名遣いがごちゃまぜに使用されている俳句の現状について整理を行う提案


2、俳句同士の対立の緩和

伝統的な俳句と現代的な俳句の対立等をその両方に取り組むことで緩和すること


3、各文体の俳句の共存

文語体俳句、口語体俳句、会話体俳句等を同等の俳句として扱い、取り組んでいくこと


4、各文体の俳句を互いに高めあうこと

各文体の俳句の特徴や強み、技法などを理解し、互いに高めあうこと


5、俳句の歴史と現在、未来をつなぐこと

伝統的な俳句と現代的な俳句に同時に取り組むことで俳句の歴史と現在、未来をつなぐこと

等々


現在の試みとして、

文語体俳句、口語体俳句、会話体俳句

の3つ方向性を
順次探究しています

◇文語体俳句
「古典語・歴史的仮名遣い・古典的切れ字」を基本にした俳句

◇口語体俳句
「現代語・現代仮名遣い」「現代的切れ字」を基本にした俳句

◇会話体俳句
「現代の話し言葉」やそのリズム、フレーズ、対話、独話、セリフ等を活かした句

など、個人的に大まかに分けて取り組んでいます

切れ字について短くまとめます

◯文語体が基本の俳句

◇文語体
古典語法に基づく伝統的で格調高い文体

◇歴史的仮名遣い
古典的な仮名遣いのこと
・言ふ、けふ、ゐた、てふてふなど

◇古典的切れ字18字
や、かな、けり、よ、か、ぞ、に、へ、せ、
ず、れ、け、ぬ、つ、し、じ、らむ、もがな等


◯口語体が基本の俳句

◇口語体
現代語法に基づく日常的で自然な文体

◇現代仮名遣い
現代的な仮名遣いのこと
・言う、きょう、いた、ちょうちょなど

◇現代的切れ字 の候補
よ、か、ぞ、と、に、へ、せ、で、まで、
ず、れ、け、た、が、て、は、な、こそ等


◯会話体が基本の俳句

◇会話体
話し言葉をそのままに再現した文体

◇現代仮名遣い
現代的な仮名遣いのこと
・言う、きょう、いた、ちょうちょなど

◇主な語尾の候補(要検証)
です、ます、でした、〜だ、
だった、〜ません、〜の、〜ね、〜さ等

*仮名遣いについてなど一部例外もあるようです


下記は、俳句における
文語・口語の大まかな図です

◇文語=文語体=古典語=古い時代の文体

◇口語=口語体=現代語=書き言葉
                                    ∟==話し言葉

◇仮名づかい    歴史的仮名遣い    現代仮名遣い


下記は
現代的な切れ字の候補についての記事です

「現代切れ字 十八字(推奨)」
よ・か・ぞ・と・に・へ・せ・で・まで
ず・れ・け・た・が・て・は・な・こそ


下記について、毎日の投稿などで
月日をかけて探っていければと思っています

「表現の新と万象の真」「驚きと感動の詩」

「一新一真」「都市詠の探求」「一句新世界」 

「ものごとの花」「沈黙の美」「内的宇宙」

「三物一句」「風情の継承」「平明深遠の詩」


*解説について至らない点、充分に書き尽くせていない部分もあると思いますがご容赦ください

*俳句については個人・団体によって様々な考え方や見解があります



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