俳句にご興味のあるアメブロのみなさまに俳句の様々なことについてご紹介していく記事です


俳句で使う言葉
〜その選択肢の広がり〜

はじめに
俳句をつくる方々にとって言葉はもっとも重要な表現の手段であり、生命です。

どの言葉を選ぶかで作品に大きな違いが生じます。

現在、俳句で使う言葉の選択肢は増え、作品に新しい可能性をもたらしています。

それらについてわかる範囲で短くまとめました。


1、俳句で使われる言葉

現在、俳句で使われる言葉には大まかに

「古典的な言葉」「現代的な言葉」「現代の話し言葉」

があるようです。

また仮名遣いには

「歴史的仮名遣い」「現代仮名遣い」

があります。

古典的な言葉とは、古典語、文語体です。
現代的な言葉とは、現代語、口語体です。
現代の話し言葉とは、ふだん話す言葉です。

また、

歴史的仮名遣いとは古典的な仮名遣いです。
・言ふ、けふ、ゐた、てふてふなど

現代仮名遣いとは現代的な仮名遣いです。
・言う、きょう、いた、ちょうちょなど

さらに「外国語」などを使った俳句づくりも行われているようです。


これらの言葉を使った参考句を挙げます

①古典的な言葉の俳句

滝落ちて群青世界とどろけり
水原秋櫻子

雉の眸のかうかうとして売られけり
加藤楸邨


②現代的な言葉の俳句

雲は秋運命という雲も混じるよ
金子兜太

霧に白鳥白鳥に霧というべきか
金子兜太


③現代の話し言葉の俳句

サイネリア咲くかしら咲くかしら水をやる
正木ゆう子

サラリーマン寒いね東スポ大切に
清水哲男 


こうした作品はそれぞれにつくられ発表されつづけているようです。

書籍やネット記事などでも読むことができます。
そちらもご覧になってみてください。



2、長所、短所 箇条書き

ここからは、前述の3つの言葉とそれを使った俳句について、長所と短所を「箇条書き」で短く記します。

俳人としての視点、一般読者としての視点などをまじえた解説を付けました。

ご興味がありましたらご覧になってみてください。


◇俳句で使われる言葉◇

① 『古典的な言葉』
古典語、文語体 ▷▷文語体俳句

参考句:池の面をゆらさず鶴のあゆみけり

◎長所
・俳句で長く使われてきた伝統的な言葉
・伝統的な言葉の美しさ、格調がある
・や、かな、けりなどの切れ字を有する
・多くの俳人の方が使用

◯短所
・古い時代の言葉で現代感覚に欠ける
・理解しづらい古典的な語、言い回しが多い
・言葉を学びなおす必要があり、上級者が優位

◇特徴
・むかしの日本の書き言葉
・歴史的仮名遣いを使うのが一般的

俳句で使われる言葉といえばまず古典的な言葉が思いうかぶのではないかと思います。

多くの俳人の方が現在も使用している言葉です。

ただ現在の一般の方々は、ふだんの生活の中で古典語も歴史的仮名遣いもほぼ使用していません。

そうした方々が、作品や句集などの読者になることを理解しておく必要はありそうです。


②『現代的な言葉』
現代語、口語体 ▷▷口語体俳句

参考句:ゆきだるまつくるにほんの風景よ

◎長所
・現代人がふだん使っている現代的な言葉
・俳句表現の新しい可能性を広げる
・よ、か、ぞなどの多数の切れ字候補
・一部の俳人の方が使用

◯短所
・俳句で使う言葉として成熟が必要
・稚拙さ、俗っぽさが出やすい
・前例となる作品、参考文献が少ない

◇特徴
・現代の日本の主に書き言葉
・現代仮名遣いを使うのが一般的

より現在的に俳句をつくることができるのが現代的な言葉ではないかと思います。

一部の方々が新しい俳句とその表現を求めて使用しているようです。

作品づくりの際に言葉の問題でつまずくことが少ないのも特徴の一つです。

ただ俳句をつくるための基礎基本や、一行詩、一行の散文との形式的な違いについて、より理解を深めておくことが大切かもしれません。


③ 『現代の話し言葉』
話し言葉、会話体 ▷▷話し言葉俳句

参考句:不幸さえしみじみします日向ぼこ

◎長所
・現代人が話すときに使っている話し言葉
・俳句表現の可能性をさらに広げる
・幅広い読者層にアプローチが可能
・一部の俳人の方が使用

◯短所
・「俳句」をつくることが逆に難しくなる
・稚拙さ、俗っぽさが大変出やすい
・前例となる作品、参考文献が少ない

◇特徴
・現代の日本の話し言葉
・現代仮名遣いを使うのが一般的

平明で親しみやすい作品をつくることができるのが「現代の話し言葉」ではないかと思います。

一部の方がより新しい作品とその表現を求めて使用しているようです。

ただ俳句、川柳、一行詩の特徴を兼ねそなえやすい傾向があるようです。

先人をはじめとして作品は少なからずつくられていて、今後広く取り組まれていく可能性はありそうです。


最後に、これら三つの言葉はどれも俳句の表現の幅を大きく広げる可能性を秘めているように思います。

どの言葉にも俳句をつくるうえで優れた点、そうでない点があり、完璧というわけにはいかないようです。

俳句に取りくむ方々が、めざす俳句、そのスタイルなどによって選びわけることができるようにも感じました。



いつも
ご覧いただき
ありがとうございます


*個人的な見解をまじえて短くまとめてみました

*至らない点、充分に書き尽くせていない部分もあるかと思いますがご容赦ください

*俳句については個人・団体によって様々な考え方や見解があります


◇引用 作品収録句集

水原秋櫻子著
句集「帰心」
琅玕洞 1954年

加藤楸邨著
句集「夜哭」
松尾書房 1948年

金子兜太著
句集「百年」
朔出版 2019年

金子兜太著
句集「旅次抄録」
構造社 1977年

正木ゆう子著
句集「水晶体」
私家版 1986年

清水哲男著
句集『打つや太鼓』
書肆山田 2003年



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