俳句にご興味のあるアメブロのみなさまに俳句の様々なことについてご紹介していく記事です
多文体での
俳句づくりとその楽しみ
◇はじめに
現在、俳句で使われる言葉には以下のようなものがあるようです。
◇古典的な言葉 ━━ 古典語、文語体
◇現代的な言葉 ━━ 現代語、口語体
◇現代の話し言葉 ━ 普段話す言葉、会話体
俳句を創作する際には、これらのいずれかの文体を基本使用することが多いようです。
ここからは
多文体での俳句づくりについて、
文語体俳句、口語体俳句、会話体俳句
の各俳句の特徴とその例、つくる楽しさについてわかる範囲で簡単に記します。
◇文語体の俳句について
俳句において、伝統的なつくり方や言葉使いに魅力を感じる方は多いと思います。
伝統的な俳句で使われる「文語体」は、格調高く詩的な響きを持つ言葉として魅力的です。
文語体の俳句は、
「文語体、歴史的仮名遣い、古典的切れ字」
を基本にしてつくられることが多いようです。
◇作品例
流星やひと夜ふた夜とうつくしき
ふとそらにみちびかるるや望の月
池の面をゆらさず鶴のあゆみけり
里神楽すずのおとのみあたらしき
このいへに春とほからじ門松立つ
だんだんとあかき地平や初日の出
この文体の良さの1つは「いにしえの俳人たち」と共通する言葉で俳句がつくれることです。
松尾芭蕉、与謝蕪村、小林一茶、正岡子規、高浜虚子などの歴史上の俳人たちと同じ古典的な表現での創作を楽しめます。
また彼らの作品や俳句思想などを作品づくりの場を通して学べるのも大きな魅力の1つです。
『古典的な言葉』
古典語、文語体 ▷▷文語体俳句
◎長所
・俳句で長く使われてきた伝統的な言葉
・伝統的な言葉の美しさ、格調がある
・や、かな、けりなどの切れ字を有する
・多くの俳人の方が使用
◯短所
・古い時代の言葉で現代感覚には欠ける
・理解しづらい古典的な語、言い回しが多い
・言葉を学びなおす必要があり、上級者が優位
◇特徴
・むかしの日本の書き言葉
・歴史的仮名遣いを使うのが一般的
◇古典的切れ字 18字
や・かな・けり・よ・か・ぞ・に・へ・せ・
ず・れ・け・ぬ・つ・し・じ・らむ・もがな
◇口語体の俳句について
俳句において、現代的なつくり方や言葉使いに魅力を感じる方は少なくないと思います。
現代的な俳句で使われる「口語体」は、現代の言葉として自在に使いこなせるのが魅力です。
口語体の俳句は、
「口語体、現代仮名遣い」「現代的切れ字」
を基本にしてつくられることが多いようです。
◇作品例
つぎつぎよ玉がほぐれてうめの花
大空をひっくりかえしつばめ飛ぶ
写生紙をはみ出してこそ富士は夏
新幹線富士過ぎてゆくすずしさよ
コンビニのとなりコンビニ夏の月
ゆきだるまつくるにほんの風景よ
この文体の良さの1つは「いまを生きる俳人」として現代の言葉を使った俳句づくりができることです。
近代俳人の方々が主に切りひらいてきた現代的な表現での創作を楽しめます。
伝統的、前衛的など様々な作品づくりに挑戦ができ、表現の自由度が高いのも大きな魅力の1つです。
『現代的な言葉』
現代語、口語体 ▷▷口語体俳句
◎長所
・現代人がふだん使っている現代的な言葉
・俳句表現の新しい可能性を広げる
・よ、か、ぞなどの多数の切れ字候補
・一部の俳人の方が使用
◯短所
・俳句で使う言葉として成熟が必要
・稚拙さ、俗っぽさが出やすい
・前例となる作品、参考文献が少ない
◇特徴
・現代の日本の主に書き言葉
・現代仮名遣いを使うのが一般的
◇現代的切れ字 の候補
よ・か・ぞ・と・に・へ・せ・で・まで
ず・れ・け・た・が・て・は・な・こそ、等
◇会話体の俳句について
俳句において、より斬新なつくり方や言葉使いに魅力を感じる方もまたおられると思います。
話し言葉俳句で使われる「会話体」は、話しかけるかのような自然な使い方ができるのが魅力です。
会話体の俳句は、
「会話体、現代仮名遣い」
を基本にしてつくられることが多いようです。
「切れ」を活かす場合もあるようです。
◇作品例
天の川いまだ詩でしかありません
不幸さえしみじみします日向ぼこ
うつむけばそらが消失するふゆだ
あかるいねすこし傾くオリオンが
ふゆぎんがこころに一語広がった
いつか又でかけましょうか遠花火
この文体の良さの1つは、日常会話に近い対話的な雰囲気の俳句づくりができることです。
現代俳人の方々が主に切りひらいた話し言葉の表現での創作を楽しめます。
親しみやすくくだけた言葉づかいで、鋭く深い洞察を示す、そのギャップが大きな魅力の1つです。
『現代の話し言葉』
話し言葉、会話体 ▷▷話し言葉俳句
◎長所
・現代人が話すときに使っている話し言葉
・俳句表現の可能性をさらに広げる
・幅広い読者層にアプローチが可能
・一部の俳人の方が使用
◯短所
・「俳句」をつくることが逆に難しくなる
・稚拙さ、俗っぽさが大変出やすい
・前例となる作品、参考文献が少ない
◇特徴
・現代の日本の話し言葉
・現代仮名遣いを使うのが一般的
◇主な語尾の候補(要検証)
です、ます、でした、〜だ、
だった、〜ません、〜の、〜ね、〜さ、等
◇まとめ
多文体での俳句づくりに取り組むことで、「文語体俳句だけ」「口語体俳句だけ」といった一つの文体での作品づくりに自らを押しこめてしまう必要はなくなりそうです。
自分自身の「俳句」をそれぞれの文体で創作し、作品集としてまとめ分けること、
またそこから自分が得意とする文体を探っていくことは、すでに難しいことではなくなりつつあります。
ただ注意点として一句の中で文体、仮名遣いの混乱が生じやすいことにご留意ください。
◇伝統俳句と現代俳句について
最後に、
いま現在、俳句の世界になぜ「伝統俳句」と「現代俳句」という2つの存在があるのでしょうか。
その理由の1つは現在の俳句においても
「伝統的な守りの取り組み」
「革新的な攻めの取り組み」
の両方が必要だからではないかと思います。
この2つが相互にバランスを取り合うことで、ときに行き過ぎた革新が抑制され、ときに古い伝統の殻を打ち破って俳句が前進します。
その「革新的な攻めの取り組み」を行う現代俳句の側が、
もう長い年月、俳句で使う言葉を革新するという歴史的課題に直面しつづけていると個人的には感じています。
古典的な言葉だけでなく、現代的な言葉を用いた俳句のつくり方を確立するという課題です。
短歌の世界では、若い歌人の方々の爆発的な力によってここ20年ほどで急速に口語化が進んだようです。
ただその激しい変革の過程で口語体短歌が一時的に見失ってしまった伝統的な考え方、技法なども少なくないようです。
俳句の世界がこれとおなじ経緯をたどる必要は必ずしもないのではないかと個人的には思います。
俳句を学び楽しむ過程で伝統的な俳句、現代的な俳句の双方に親しむといった冷静な取り組みや選択肢もまたありそうです。
20年後、50年後、100年後、いずれこの大きな課題が一定の解決を迎えるときは必然的に来るのではないかと感じます。
そのときにむけて、俳句をつくる者の一人としてより伝統的なつくり方、より現代的なつくり方の双方に取り組み、挑戦しつづけていられればと思っています。
いつも
ご覧いただき
ありがとうございます
◇各文体の参考作品集◇
文語体俳句集
口語体俳句集
下記は、俳句における
文語・口語の大まかな図です
◇文語俳句ー文語体ー古典語ー古い時代の文体
◇口語俳句ー口語体ー現代語ー書き言葉
∟ーー話し言葉
◇仮名づかい 歴史的仮名遣い 現代仮名遣い
より詳しく細かいことは、書籍・ネット等でしらべてみてください
*個人的な経験を基に考えや見解をまとめた記事です
*至らない点、十分に書きつくせていない部分もあると思いますがご容赦ください
*俳句については個人、団体によって様々な考え方や見解があります
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