【独偏ベストテン 44-1】 ジューシィ・フルーツのシングル作品 (6~10位) | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 私のように、かな~りマイナーな歌謡曲まで聴く“オヤヂ世代”の最大の悩みと言えば、やはり何と言っても、“若い頃にレコード盤で買ったシングルやアルバムがなかなかCD化してもらえないということに尽きます(ソニーの“オーダーメイドファクトリー”や“MEG-CD”のお蔭で、状況は確実に改善されてきてはいるのですが、マニアックな歌謡ファンの要求は“底なし沼”なのです…)。

 そんな状況下にあって、今年の7月、私にとっては実にハッピーな出来事がありました。というのも、ジューシィ・フルーツ(以降は“ジューシィ”と書きますね)の全音源がついにCD化されたのです
。わ~、パチパチパチ。ジューシィの場合、もともとシングル作品にアルバム未収録曲が多かった上に、売れなかった頃のアルバムの初CD化さえ2012年にやっとこさ実現…といった状況で、全音源のCD化なんて全然期待してなかったですから…デビューから解散までずっとフォローし続けたコアなファンの私としては、喜びも一入(ひとしお)といった感じですね。

 
写真左:デビュー間もない頃(1980年)のジューシィ・フルーツ(左から高木、奥野、柴矢、沖山)
写真右:解散直前(1984年頃)のジューシィ・フルーツ(左から沖山、高木、奥野、柴矢)


 というわけで今回は、ジューシィのシングル作品を俎上にのせて久々の独断と偏見によるベストテン、行ってみたいと思います。彼らが“ジューシィ”名義で残したシングルは、2001年リリースのアレンジ違いのセルフカバーと新メンバーによるマキシシングルを含めて全部で16枚。このうち両A面扱いが1枚(「なみだ涙のカフェテラス/恋はベンチシート」)あるので作品としては17作ということになりますが、これまでのやり方と同様に、セルフカバーは一作として扱い、両A面作品は仮にセレクトするにしても一方のみにとどめることしましたので、その点どうぞご理解のほどを


 以前どこかの記事に書いたように、ジューシィはもともと近田春夫センセのバックバンド“BEEF”を前身とするバンドでした。近田センセが呼びかけたメンバーは、女性5人組のバンド“ガールズ”の奥野敦子(イリア)、アバンギャルドなバンド“東京スタイル”の沖山優司高木利夫、バックミュージシャンだった柴矢俊彦、のちに早見優などのアレンジャーとして名を馳せることになる元“四人囃子”の茂木由多加、後にビブラストーンに参加する野毛ゆきおの6人。

 BEEFを独立したバンド“ジューシィ・フルーツ”としてデビューさせるに当たって近田センセが考えたのは、当時の歌謡シーンの主流だったテクノ、ロック、アイドル(歌謡曲)の“ええとこどり”ができないかということだったんですねぇ
。まぁ、近田センセったら、自分自身のプロテュースは大して上手くないのに、これはなんてgood ideaなんでしょ。音楽的バックグラウンドに関してはどのメンバーも問題ないので、あとはメンバーをルックスのいい4人に絞って(←茂木センセと野毛氏の立場は…)、テクノ・ポップ風味をまぶした遊び心にあふれるデビュー曲「ジェニーはご機嫌ななめ」を近田センセ自ら書き上げてプロデュースハデハデなビジュアルのメンバーがキュートに演じるという画期的なコンセプトが、あっという間に当時の中高生の心を掴んで見事に大ヒットとなったことは、現在40歳代後半以降の方ならご存知のことと思います。


 ところが、「ジェニー…」、「なみだ涙のカフェテラス」をヒットさせた後は、あれよあれよという間に人気が失速し
、デビュー1年半後にはシングルがオリコンチャート100位にも入らない状況に…。シングル作品ではセールス面を意識した試行錯誤をあれこれ繰り返すも、サザンの共作カバー「そんなヒロシに騙されて」(1983年)を小ヒットさせるのが精一杯でした。そのうち、各メンバーのソロ活動指向が強まったこともあって、1984年暮れにはジューシィとしての4年半の活動にピリオドが打たれることになります。この手のバンドの常として、解散理由は“メンバーの不仲”というパターンが非常に多いのですが(売れないと“責任のなすり合い”、売れた場合でも“権利関連の主張で衝突”…まったく困ったもんだ)、彼ら4人はいまだに年に1度くらいのペースで集まって飲みに行ったりしているとのこと。…いやぁ、いかにも温厚な彼ららしいエピソードで、私まで思わず嬉しくなってしまいます


 彼らは演奏テクニックがハイレベル
なだけあって、扱う作品もかなり実験的だったり、メロディやアレンジが凝ったものが多いんです。だいたいどの作品でも、間奏に必ず「おおっ」と思わせる難易度高めの聴かせどころを持ってくるところが憎いんだよなぁ。変化に富むメロディアスな作品が大好物の私が、ジューシィの紡ぎ出すサウンドのとりこになった最大の理由がこの辺にあったことは間違いないです。それだけに、ジューシィのことを単なる“軟弱アイドルバンド”と誤解してる人が多い()昨今の状況を、密かに苦々しく感じていたりもするんですよね…


 さてっと。例によってすっかり前置きが長くなってしまいましたが、そろそろ順位の発表に入りましょう
。ジューシィは個人的に思い入れが深いアーティストということもあって、対象となる14作のシングル作品から上位10作をセレクトしてみました。今回の記事では、10位から6位までの順位を一気に発表しますよ それではどうぞ~




第10位 哀(あい)シャローム 【オススメ度★★】
作詞:三浦徳子、作曲:筒美京平、編曲:Juicy Fruits、戸田誠司
[1982.5.21発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]


 ベストテンの一角に食い込んだのは、「ジェニーは…」の大ヒットからほぼ2年後にリリースされた8作目シングル「哀シャローム」でした。この頃にはもう、ジューシィをテレビで見かけることもほとんどなくなってましたね。なまじ売れたときのイメージが派手だと、その反動で“祭りのあと”の淋しさがいっそう強く感じられてしまうのが世の常とはいえ…


 売り出す側も何とかして活路を見出そうとするわけで、このシングルは唯一、「ジューシィ・フルーツ+1」という名義でリリースされています。当時私が愛読していた月刊雑誌「高二時代」に、「ジューシィに、強力な助っ人(中学生の女の子)が加入しました~
という記事が載りました。これ、きっと商業的な“テコ入れ”の一環だったと思うのですが、「哀シャローム」がヒットしなかったせいか、次のシングルからは何もなかったように4人体制に戻ってしまったんですよね新展開を期待していた私は、思いっきり肩すかしを喰らって拍子抜けしことをよく覚えてますプロモーションとしては実に中途半端で、なんだかなぁ…という感じの代物でしたっけ。もっとも、だいぶ後になってから、その中学生が日テレの藪本雅子アナだったことを知ったときには、「いいネタ仕入れちゃったなぁ」ってことで、思わずニヤけてしまいましたケド…


 さて、曲の方は、リアルタイムでは正直「イマイチピンと来ないなぁ」と感じた私ですが、これはいわゆる“スルメソング”に属するタイプの作品と言えましょう。何度も聴くうちに古めのメロディとサウンドが徐々に耳に馴染んできて、また聴きたくなってくるから不思議です。筒美(京平)マジックの面目躍如といったところ…でしょうか




第9位 これがそうなのね仔猫ちゃん 【オススメ度★★★】
作詞:近田春夫、作曲:近田春夫、編曲:Juicy Fruits
[1981.5.1発売; オリコン最高位29位; 売り上げ枚数6.1万枚]

 第9位にランクインしたのは、サッポロの清涼飲料水「グイミー」のCMソングでもあった4作目のシングル「これがそうなのね仔猫ちゃん」でした~。彼らの初期のアルバムを聴いたことのある方にはお馴染みの、中高生男子にとってはかな~り刺激的でエッチな歌詞が嬉しいシリーズ(←と、たったいま私が勝手に命名)”の一曲であります

 例えば下に挙げた歌詞を、「やっぱりアレの意味だよなぁ
」な~んて、頭の中で妙な想像(←妄想)を膨らませながら聴いた中高生男子が、全国に52万3721人くらいはいたんじゃないでしょうか…(←だったらもうちょっと曲がヒットしても良さそうなもんじゃないか)。この手の際どい歌詞を嫌がらずに可愛く歌ってくれる女の子なんて、意外といないもんですよ。美人でありながらシャレがちゃんと分かってらっしゃるイリア、んもう最高でしたね~


 ♪ 青空に星がピカピカ 背中駆け抜けるショック
   これがそうなのね ありがとう
   もっともっと Give me, Love me, Catch me

   まだ震えが 止まらない (愛してる)
   醒めた顔で 見つめないで やな人ね
   秘密ね だからね 仔猫みたいに あなたにじゃれるの (いいでしょ?)

   いま初めて 愛してる (僕もです)
   とけたあとで わかり合うの 恥ずかしいわ
   気持ちね いいのね 仔猫みたいに まつわりつくの 
   魔法ね きっとね 愛の仔猫に あたし 今日からは (Pussy Cat)



第8位 そんなヒロシに騙されて 【オススメ度★★★】

作詞:桑田佳祐、作曲:桑田佳祐、編曲:Juicy Fruits
[1983.8.21発売; オリコン最高位44位; 売り上げ枚数4.3万枚]

 第8位は、高田みづえと競作となった11作目のシングル「そんなヒロシに騙されて」でした~。テクノ仕立てのサウンドで人気を博したジューシィでしたが、1981年にベースの沖山クン名義でリリースされたスピンアウト作品「東京キケン野郎」のテケテケサウンドぶりを見ても分かる通り、もともと彼らの志向としては“テクノ”よりも“ベンチャーズ歌謡”の方が近かったようです。しかも、サザンとジューシィは同じ事務所ということもあって、ジューシィがサイケなベンチャーズ風味歌謡「そんな…」をカバーすることになった裏方事情は容易に想像できるのですが、競作の相手がいかんせん悪かった…。


 いや、ジューシィのGS仕立てのバージョンだって決して悪くないと私は思っているのですが、“キャラのハマリ具合”といい“それっぽい雰囲気抜群の歌唱”といい、高田みづえのバージョンがあまりに完璧すぎた
ということでしょう。言うまでもなく桑田兄イの作品も最高なんだけれど、彼の世界はイリアの持ち味とはちょっと違うんじゃないかなぁ…という気がどうしても拭えないのです




第7位 ママがサンタにキッスした 【オススメ度★★★】

作詞:奥野敦子、Tommy Connor、作曲:Tommy Connor、編曲:Juicy Fruits
[1981.11.25発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]

 第7位にランクインしたのは、7作目のシングル「ママがサンタにキッスした」でした~
 歌謡曲に関する私の基本的スタンスの一つとして、“安易なカバーではなくてオリジナル作品で勝負してもらいたい”というのがあるのですが、この「ママが…」に関しては、彼らの得意なフィールドが生きる作品にうまく目を付けたよなぁと思わず感心してしまいます

 題材はお馴染みのクリスマスソングでも、ハードなサウンドと綺麗なコーラスでワンポイントの下味をつけて、仕上げに間奏にコミカルなネタを挟めば、ジューシィ風味のオリジナルワールドのできあがり
 間奏の部分に挿入された親子のやりとり(原曲にはもちろんありません)が何とも微笑ましくてgoodなんですよね~


【シーン1】
子「ねぇ、ママ。どうして夕べサンタさんにキスをしていたんですか?」
母「それはね、サンタさんがプレゼントを持ってきてくれたでしょ。そのお礼にしたの。」

【シーン2】
子「ママ。昨日、サンタさんにキスしてるところ見ちゃった。」
母「あらぁ。じゃあきっとママ、寝ぼけてたからね。パパと間違えちゃったのよ。」

【シーン3】
子「ねぇ母さん。どうして昨日、サンタのおじさんとキスしてたんだい?教えて。」
母「あなたはね、そんなこと心配しなくていいの。それはパパとママと二人のお話なのよ。」



第6位 Boys be アンビシャス 【オススメ度★★★】
作詞:奥野敦子、作曲:筒美京平、編曲:Juicy Fruits
[1983.12.21発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]


 第6位に入ったのは、12作目のシングル「Boys beアンビシャス」でした~ 実はこの曲には兄弟みたいな作品が存在するんです。筒美京平センセの同じ曲に三浦徳子センセの詞を乗せた「アップルキッス」(「哀シャローム」のB面)というのがそれ。「アップル…」が、男女間のちょっとしたゲーム(“王様ゲーム”みたいなもんですね)を描いたコミカルな佳曲なのに比べて、この「Boys be アンビシャス」は、ちょっと昔風の女のコから男のコにエールを送る“応援ソング”といった感じかな。両方の詞のイメージからすると、三浦センセとイリアが書いたってのは反対なんじゃないのってな気がしなくもないですケド…

 「Boys be…」の歌詞を一部抜き出してみると、こんな感じ(
)になってます。男って基本的に“単純バカ”だから、こんな風に言ってくれるいじらしい女のコのためには、ますます張り切っちゃえる生き物なんですよね(…んそんなん私だけかなぁ…)。


  ♪ 気持ちはポパイか スーパーマンなのね
    あふれる勇気も 分かるけど
    でもね いいのよ 無理して
    私のために ケンカしないでちょうだい
    明日はヒーロー 大スターかしら
    はたまた素敵な 王子さま
    でもね いいのよ 私は
    シンデレラになんて なれなくたって

  ♪ たとえ宇宙の 彼方までも
    君のためなら 飛んでゆくさ
    でもね いいのよ 私は
    あなたの優しさが 好きなんだもの


 曲の方は、シングルA面としては「哀シャローム」に続く筒美京平センセの2作目ということになります
。曲構成はA-B-A-B-C(サビ)-A-B-C-Cとシンプルですが、サビメロでイリアが披露する早口のファルセットをはじめ、各メロが少しずつ凝っていて聴き応えがあるのが嬉しいところ。同じく筒美センセの「素敵なあなた」(横本メイ)を思わせる南国風のイントロも、ほのぼのした感じでgoodですし。


 せっかくなので、YouTubeは「Boys be アンビシャス」と「アップルキッス」の両方をアップしておきますので、聴き比べてみて下さいね
。そうそう、「アップルキッス」では男女のやりとりにちゃんとオチが付いている点アレンジに戸田誠司が加わってテクノ度数が上がっている点も、しっかりとお聴き逃しのないように






 それでは、今回の発表はこんなところでおしまいとします
。次回は、「【独偏ベストテン 44-2】 ジューシィ・フルーツのシングル作品 (1~5位)」と銘打って、上位5作品を発表したいと思いますので、どうぞお楽しみに~