【お薦めシングルレビュー 51】ちょっとしたタイトルの仕掛けが楽しいポップス調演歌はいかが…? | 歌謡曲(J-POP)のススメ

歌謡曲(J-POP)のススメ

音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 何だかあっという間に2月もおしまい!といった感じですが、皆さんいかがお過ごしでしょうかクローバー。相変わらず私は公私ともにばたばたした毎日アセアセを送っておりまして、腰を据えてブログ記事を書く時間がなかなかとれませんねえーん。だけど、2012年から続けてきたこのブログ、記事を一本も書かなかった月というのはこれまでないワケでして、2月も最終日の今日になって、あわてて材料を見繕って“即席料理”をお出ししようという算段であります口笛

 

 そう言えば、2月の半ばでしたかねー、“あの”船村徹センセがご逝去されたというニュースには驚かされましたガーン。もっとも、年齢的には84歳ということで「天寿を全うされた」と言って差し支えないんでしょうけど、日本作曲家協会の会長をはじめ我が国の戦後歌謡界を代表する作曲家のお一人の訃報ってことで、歌謡曲ファンとしては何とも淋しい限りでしたね…ショボーン。船村センセのペンによるヒット曲は私がわざわざここに挙げるまでもなく皆さんご存知でしょうから、ここでは私のへっぽこブログにふさわしいマニアック情報をぼそっとつぶやくだけにしておきましょうニヤリ

 

内藤洋子が可愛らしく歌った『白馬のルンナ』(1967年7月発売)とか、まるで地獄からのおぞましい雄叫びを連想させる珍曲『スナッキーで踊ろう』(海道はじめ、1968年2月発売)とかも、かの船村センセの作曲ですよ~(*^o^*)

 

 あー、すっきりした照れ。「スナッキー…」の方は、お口あんぐり状態の読者もいそうなので、念のためYouTubeも添えておきましょうてへぺろ(あっ、でもYouTube聴いちゃったらますますお口あんぐりになっちゃうかも…アセアセ

 

 

 …さて、それでは本題いきましょうか。今回ご紹介するのは、あえてカテゴリー分けするとしたら“演歌”だけれども、私に言わせるとちょっとその枠から良い意味で“はみ出した”作品という表現になりますかねぇ。ノリが良くってサビもキャッチーで、オリコン100位に入らなかった理由が未だに良く理解できないほどの名曲なのですが、「それじゃあ知名度ないのか?」と問われれば、いやいやそうでもなさそうという、実に不思議な立ち位置にあるこの作品で~す(下矢印)。

 
 

「酔っぱらっちゃった」(内海美幸)

作詞:千家和也、作曲:浜圭介、編曲:高田弘

[1982.10.21発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]

[歌手メジャー度★★; 作品メジャー度★★★; オススメ度★★★★]

 

 
 

 いかがですか。パソの向こうから、「あ、何かそのタイトル聞いたことある」とか、「カラオケでよく歌うよー」とかいう声が聞こえてくるのは私の妄想でしょうか…? この曲、軽快なリズムに手拍子が乗っかってくるイントロからしてもうノリノリで、男女混成チームで行くカラオケのレバートリーなんかにもってこいの、非常に完成度の高い佳曲ルンルンだと思うんですけどねぇ。

 

 

 曲構成は、A-B-C(サビ)-A-B-C(サビ)-B-C(サビ)と、割とオーソドックス。サビのラストに置かれた決めゼリフ ♪ 罪つくり 罪つくり~ がとっても印象的でバチッと決まってますOK。そして私が嬉しいのはやっぱり、比較的単調なAメロとサビとをつなぐBメロが、陰から陽へとキャッチーなコード転換(私の大好物爆  笑)を遂げることで、作品全体に変化と厚みを与えてくれている点ですよね~。 んもう私なんかこのBメロだけでご飯3杯いけちゃいますもん(←なんのこっちゃ)。

 

 さらにさらに、歌詞の方も曲に劣らず秀逸なのですよ。こんな感じになってます(下矢印)。

 

(Aメロ)♪ 飲めるわよ 酒ぐらい たかが色つき 水じゃない

       聞いてるわ サヨナラを まわりくどいわ 言い方が

(Bメロ)  酔っぱらっちゃった ふりしているわ

       泣き上戸だと まわりに見えるよに

(Cメロ)  ここまで女に惚れられる 男は滅多にいないから

       あなたひとこと言わせてよ 罪つくり 罪つくり

 

(A)  ♪ 送るわよ 表まで いいの私に 送らせて

       知らないわ 後のこと 誘われるまま 飲むつもり

(B)    酔っぱらっちゃった ふりしているわ

       ただ行きずりに 口説かれたい気分

(C)    これほど女をダメにする 男が果たしているかしら

       あなたひとこと言わせてよ 罪つくり 罪つくり

 

(B)    酔っぱらっちゃった ふりしているわ

       もうボロボロよ 心は空っぽよ

(C)    こんなに女を参らせる 男にこの先逢えるやら

       あなたひとこと言わせてよ 罪つくり 罪つくり

 

 まず特筆すべきは、タイトルに隠されたちょっとした仕掛けですね。そう、この曲、「酔っぱらっちゃった」というタイトルなのに、この女性ってば“ふり”してるだけでちっとも酔っちゃいないんですよねーニヤリ。言うまでもなく、このタイトルは確信犯的に付けられたものでしょうね。 また、♪ 送るわよ 表まで いいの私に 送らせて~ という歌詞だけで、聴き手の頭の中に二人のやり取りの場面をパッと想起させてくれるところなども、実に見事なプロ作詞家のワザと言えるでしょう。

 

 自分にはちょっと無理めな異性と付き合ってはみたものの、やっぱり振られてしまった…。もちろん失恋したのは悲しいけれど、相手を恨みがましく思う感情よりも、自分より遙かに魅力的な相手を「あっぱれ」と思う、ちょっと諦感交じりの複雑な気分……… うーーーーーむ、人生を豊かに彩ってくれるこんな恋愛、誰にでも一度くらいは経験ありますよねぇ…(遠い目)。

 

 ♪ 知らないわ あとのこと 誘われるまま 飲むつもり~ とか、♪ ただ行きずりに 口説かれたい気分~ あたりは、(恋は終わってしまったのになお)相手の男の気を引こうとする女の気持ちが見え隠れしていて、何とも切なくていじらしい感じがしますえーん。つい、酔っぱらった“ふり”をしてしまうのは、フラれた決まり悪さを隠すためもあるでしょうが、男へのさりげない気遣いとも考えられますね。…とまぁ、歌詞だけで聴き手がこれほどいろんな想いにひたってしまう歌謡曲もあまりないのではないでしょうか。

 

 

 内海美幸が“内海みゆき”という芸名でデビューしたのは、「酔っぱらっちゃった」のリリースを遡ること5年半前の1977年3月のことでしたクラッカー。デビューシングルが演歌ではなく、梅垣達志センセ作曲のフォーク歌謡「想い出踏切」だったことをご存知の方は、さすがに少ないのでは…?(ちなみに2作目シングルは、“青い三角定規”の岩久茂作曲の「秋ごよみ」でした)

 

 1979年にレコード会社をポニーキャニオンからCBSソニーに移籍して8年ほどは、浜圭介センセ、伊藤雪彦センセの手による演歌調作品のリリースが続きますが、1987年からは、宇崎竜童、野田晴稔、上田知華…とポップス系作家の作品へ、さらに90年代に入るとあの“ランバダ”などのブラジル音楽に挑戦と、私もちょっと予想できない展開を見せてくれました。

 

 もともと彼女はヤマハのポプコンで審査員特別賞を受賞していることからも分かるように安定した歌唱力の持ち主でしたが、商業的ヒットに恵まれなかったのは不運でしたね…。まあそれでも、彼女の「酔っぱらっちゃった」は、カラオケ人気曲としてこれからも末永く愛されていくに違いありません。

 
 

 

 そんなこんなで、今回はこんなところでおしまい。それではまたお逢いしましょう~ニコニコ