とうとうその日がやって来てしまいました。
今日こそは三次を早朝の5時半過ぎに出る一番列車に乗ろうと早めに駅へと来てみたところ、なんじゃこれは!
普段は回送みたいな扱いでここから乗る乗客はほぼゼロに等しいはずなのに、これは完全にうかつでした。
しかしこの後はもう10時過ぎまで列車はないので乗らないわけにはいかず、これはもう覚悟を決めるしかありません。
発車時はそれこそ東京のラッシュ顔負けの混雑に。全く身動きは取れず、これはもう苦痛以外の何ものでもありません。大半の人は終点まで乗り通すはずなので、途中で空くことは考えられず、つまり4時間近くもの間こんな状態に耐えなければならないわけでして。そして帰りも恐らくもう満杯の状態で乗り込むことになるはずで、つまり最低でも計8時間はギュウ詰めの中で立ちっ放しという恐ろしい試練が待ち受けるわけでして、これではとてもしんみりと別れを告げるなどという心境にはなれません。マイッタ!
しばらくは我慢して何とか耐えたものの、先のことを思うとそれも限界を越え、もう予定を変更し、口羽で乗り捨てることに。ここで反対方向へ戻る列車とすれ違うのでそれに乗り移り、もう一度三次に戻って仕切り直しをすることに決めました。
乗り移った列車は、途中の浜原始発という一般には利用し辛いことから余裕で座れる状況。さっきの列車とはまさに天と地ほどの差が。これならしんみりとした別れが存分に味わえそうで、決断は正解でした。
その口羽では、早朝にも関わらず多くの人が見送りに。いよいよ本当にお別れなのですね。
さすがにこんなにものんびりと江の川の流れが堪能できるのも、これが最後でしょう。
秘境駅で知られる長谷にも、今日は多くの人が見送りに来ていました。
マッタリとした時間は瞬く間に過ぎ、三次へと戻って来ました。以後はもう修羅場と化するはず。覚悟を決めねば。
窓口には三江線の切符を求める人多数。昨日までとは明らかに雰囲気が違います。周りの空気も何だかピリピリしているような。
次の列車まではまだかなり時間がありますが、今日はもう早めに待機。既にだいぶ列は長くなっていますが、これまでの経験からまだ余裕で座れるはず。
列車入線。ホームに緊張が走ります。
そしてたちまちにして満員に。でも今度は座れたので断然楽です。なお、後で聞いたところによると、早々と乗車制限をしたらしく、かなり多くの人が駅前に多数待機していた代行バスに回されたとのこと。その点ではこうして乗れただけでも幸運だったのかもしれません。
途中のさまざまな駅において見送り人が多数。やはり今日は昨日までとは違うようです。
いつもと変わらぬ江の川の流れ。でもこの車窓が拝めるのもいよいよ今日が最後。
今日はまた一段と混雑しているようですね。
浜原でも盛大な見送りが。
大休止となる石見川本に到着。今日の混雑はハンパないです。物凄い人だ。
駅の外も大変な賑わいに。まるで町中の人が繰り出したかのよう。でもこの賑わいも今日限り。

時間になったので再び列車に乗って江津を目指します。外は至る所で「さよなら」を告げる看板が目立ちます。
小さな駅でもあちこちで見送る人の姿が。
江津に到着。既に折り返しの列車には、乗車を待つべく人の長い列ができていましたが、何とかまだ乗れそうなので、素早く列の最後尾に並びます。こうなるともう、座れるかどうか、というよりも、乗れるかどうかの問題です。
まだまだ続くお見送り。石見川本にて。
粕淵でも盛大なお見送り。
この先の口羽で交換する江津行の最終列車を捕まえるべく、最後にもう一度宇都井で降りてみました。何やらスゴイことになっているようです。
ホームから見下ろすこのスリリングな眺めもこれで見納め。それにしても、随分と賑わっているような。
地上へと下りてみると、かつてないほどの賑わいがそこに。この後最後の列車となる夜の浜原行の発車の際には花火が上がるそうです。
ホームでは多くの人が別れを惜しみ。
今度も列車は超満員。でも乗れただけましです。
浜原では交換のため20分少々の停車。最後の別れを告げる太鼓が力強く響き渡ります。
石見川本でも交換のため30分少々の停車。物凄い人出となっています。まるで町中の人が全て訪れたかのような賑わいです。やはりみなさん鉄道には様々な思い出があるのでしょう。
駅の外もたくさんの人で埋め尽くされています。明日からはもう二度とここに列車がやって来ないことがにわかには信じられない思いです。
ここですれ違うはずの対向列車が、途中イノシシと衝突したとのことでなかなか到着せず。いっそこのまま止まったままでいてほしい、などと思ってしまいましたが、間もなく到着とのことで、いよいよここともお別れの時が来たようです。ここから先は完全な最終列車となり、発車に伴い駅はその役割を終えます。
列車はかなり遅れていましたが、途中の駅では最後まで多くの人が最後の列車を見送っていました。
ついに最終列車は終点の江津に到着。この瞬間、三江線は88年の歴史に幕を閉じました。さようなら三江線。長い間お疲れ様でした。
まだ余韻が残る中、車両が車庫へと引き上げます。この車両自体はまだこれからも活躍するはずですが、もう二度と三江線を走ることはありません。明日からはこの駅も寂しくなりそうです。