(東京都youtubeより)
日本の最南端、沖ノ鳥島で新たな危機が発生している。
ここ数日、マスコミはそれほど騒いでいないが、日本の国土に関わる重要な問題、成り行きによっては、イヤな事態に発展しかねない。
重要な問題なので、ぜひとも最後まで読んでほしい。
■ 台湾漁船を拿捕
4月25日、台湾の漁船が、沖ノ鳥島の排他的経済水域(EEZ)内で違法操業、海上保安庁に拿捕される、という事件が起きた。
「排他的経済水域(EEZ)って、何なの…?」
内容はまさに、この画像の通り。
この沖ノ鳥島ひとつで、日本は、陸地面積より広い排他的経済水域(EEZ)を確保、漁場の開発や海底資源の探索を続けてきた。
その排他的経済水域(EEZ)内で台湾漁船は拿捕され、船員は罰金5万4千ドル(約600万円)を支払って、すでに解放されている。
■ 台湾政府の転換
(FNN 4月30日)
これに対して台湾政府当局は、25日に抗議を表明、27日には、「沖ノ鳥島は岩であり、日本は排他的経済水域(EEZ)を主張できない。」という声明を発表した。
「ええっ、台湾が~?」
台湾は親日国…、というイメージがあるかもしれない。しかし台湾は以前から沖ノ鳥島を認めていないし、尖閣諸島の領有権も主張していて、海をめぐる日台間の問題は深刻だ。
そして29日、馬英九総統はハーグにある常設仲裁裁判所へ提訴も検討する構えを示し、さらに台湾当局が、沖の鳥島近海に巡視船(海上警備)を派遣する事を明らかにするなど、強硬姿勢に転換した。
(ANNnewsCH 5月1日)
5月1日、台湾の巡視船2隻が高雄港を出港、今日5日にも沖ノ鳥島近海に到着すると見られていて、現在、10艘ほどが操業している台湾漁船の警備にあたる。
つまり今日、台湾の巡視船が日本の排他的経済水域(EEZ)内に進入する、という事態になるかもしれないのだ。
さらに台湾の国防部が、巡視船を支援するため海軍艦艇(フリゲート艦?)を派遣した…、という情報もあり、事態は緊迫の度を増している。
(FNN 5月3日)
5月2日、岸田文雄は訪問中のタイから声明を発表する。
■ 沖ノ鳥島? 沖の鳥岩?
「島か? 岩か?」、まずは国際海洋条約をみてみよう。
第121条 島の制度
1. 島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、満潮時においても水面上にあるものをいう。
2. 3に定める場合を除くほか、島の領海、接続水域、排他的経済水域及び大陸棚は、他の領土に適用されるこの条約の規定に従って決定される。
3. 人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。
満潮時に沈まない島でも、人が住めなったり、経済活動ができない場合は「岩」と認定され、排他的経済水域(EEZ)と大陸棚は認められない、というワケだ。
で、沖ノ鳥島は、こんな感じ。
ところが、満潮時に沈まないのは、ここだけ。
で、波に浸食されないように工事した結果…。
「埋め立て」すると人工島になるので、領土とみなされない。なので、これは周囲を囲った工事、中には島の原型が保存されている。
… うう~ん、どうなの、これ?
当然、人は住めないけれど、経済活動ができるように、日本は今まで、様々な対策を講じてきた。それがうまくいったのか…
(ANNnewsCH 2012年4月28日)
2012年4月27日、国連の大陸棚限界委員会が、図の赤い部分を日本の大陸棚に認定したと、日本政府が発表した。
中央の大きい部分は、「沖ノ鳥島起点の大陸棚」。
「岩には排他的経済水域(EEZ)と大陸棚は認められない」
これが国際海洋条約、なので「大陸棚が認められたから、沖ノ鳥島は『島』として国連に認められた」というのが、日本政府の主張だ。
しかし、国連の大陸棚限界委員会は、その名の通り、大陸棚を決める委員会なので、「沖ノ鳥島は『島』だ」と認定する権限はない。
いまひとつスッキリしない話なのだ。
■ これは南シナ海のブーメラン?
話を戻そう。
今回、強硬姿勢に出た台湾の馬英九政権。このバックには当然、中国の存在がある。昨年のこのニュースがポイント。
「自分の言動よく考えろ」 中国外相、沖ノ鳥島持ち出し日本に反論 南シナ海埋め立て問題(産経新聞 2015年8月7日)
昨年の8月に開かれたASEAN(東南アジア諸国連合)閣僚会議で、アメリカと日本は、中国の南シナ海埋立について、危機感を表明、その時、中国の王毅外相がこんな反論をする。
岸田文雄外相も出席した会議で王氏は、日本が沖ノ鳥島で「鉄筋コンクリートを使って人工島をつくり、排他的経済水域(EEZ)を主張している」と指摘。その上で「他人のことを言う前に、自分の言動をよく考えるべきだ」と批判した。(産経新聞 2015年8月7日)
中国と韓国は、以前から沖ノ鳥島について、日本の対応を批判してきた。ただし、尖閣諸島のような領有権問題ではないので、批判するだけ、つまり「口先だけ」で終わっていた。
ところが、日本はどうしたか…?
昨年、安保法制が決まると、自衛隊は南シナ海で行われていた米-フィリピンの軍事演習を視察、南シナ海問題への関与を深めていく。今年の3月には軍事演習参加を表明、4月には海上自衛隊の大型艦船をフィリピンに派遣するなど、中国への対抗姿勢を鮮明にしてきた。
その矢先に起きた、沖ノ鳥島の拿捕事件。
これはヤブヘビどころか、完全なブーメラン、安保法制以降、安倍晋三の南シナ海対応は、確実にアジア地域に緊張関係を生み出している。
■ 仕組まれた日程
(岸田-王毅 日中外相会談 4月30日)
この事件の日程を確認しよう。
4月25日 台湾漁船拿捕
4月27日 「沖ノ鳥島は岩だ!」発言
4月29日 台湾が巡視船派遣を表明
☆ 岸田文雄が中国訪問
5月1日 台湾巡視船が高雄港を出港
☆ 岸田文雄の中国訪問終了
☆ 安倍晋三が欧州歴訪に出発
5月2日 ☆ 岸田文雄が台湾に遺憾を表明(タイで)
☆ 中谷元が自衛隊練習機をフィリピンに貸与発表
(News-i 5月2日)
5月5日 台湾巡視船が沖ノ鳥島海域入りか
こうして日程順に見ていくと、エスカレートしている感じがしないか?
テレビで大きく報道された日中外相会談、その直前に沖ノ鳥島事件が起きている。会談では何が話し合われていたのか、イヤな感じがする。
台湾巡視船が沖ノ鳥島海域に進入する5月5日、安倍晋三も岸田文雄も外遊中で日本にはいない。GWに海外で遊びほうける日本の閣僚、すべての日程は計算されているのだろう。
こうした流れは一切報道されていない。
5月20日で退陣する馬英九政権の、最後の大暴れだと、エセ解説者がテレビでフレまわっている。熊本大地震とGW、沖ノ鳥島への国民の関心は、まったくないだろう。
憲法改正の前に、安倍信三は「戦争カード」を切ってくる。
どんな形かわからないが、おそらく自作自演だろう。
そこに、どうしても必要なのは、自衛隊員の殉職だ。
「憲法9条が、自衛隊員の命を奪った」
そういうプロットが、安倍晋三の憲法改正には必要なのだ。
その舞台ができ始めている。
<おわり>