吉田修一の「森は知っている」を読んだ! | とんとん・にっき

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吉田修一の「森は知っている」(幻冬舎:2015年4月25日第1刷発行)を読みました。 前回、「怒り」を読んだときに、以下のように書きました。


僕は吉田修一の作品は、おおよそその時の代表作は読んでいました。「悪人」では、吉田は大化けしたと評したこともあります。たしか「悪人」は新聞小説でした。吉田は題材に巷で起こった「事件」を取り上げて書くようになっていました。「怒り」も読売新聞連載の新聞小説でした。がしかし、この作品はいただけません。


今回、「森は知っている」を読んで、同じような感想を抱きました。どのように「いただけない」のか、早い話が、読んでも登場Y人物にシンパシーが得られなかった、読んでいても、読み終わってからも、主人公の生い立ちや属する組織について、とても納得できるものではない、そして楽しめない、と思えたからです。


産業スパイ鷹野一彦を主人公に、命がけの情報戦が繰り広げられた「太陽は動かない」の続編にして前日譚。南の島の緑が作り出す濃厚な光と闇が少年を育む、切ない青春小説、とされています。前編では 「ハラハラドキドキが連続する、泥臭くも華麗なコンゲームの快作」とあります。ちなみに「コンゲーム」とは、「策略により騙したり騙されたり、ゲームのように二転三転するストーリーのミステリーのジャンル」とあります。吉田修一の新たな分野なのか、とても成功したようには思えません。

南の島の集落で、知子ばあさんと暮らす高校生の鷹野一彦。東京からの転校生・詩織の噂話に興じるような、一見のどかな田舎の高校生活だが、その裏では、ある組織の諜報活動訓練を受けている。ある日、同じ訓練生で親友の柳勇次が、一通の手紙を残して姿を消した。逃亡、裏切り、それとも? その行方を案じながらも、鷹野は訓練の最終テストとして初任務につくが――。過酷な運命に翻弄されながらも、真っさらな白い地図を胸に抱き、大空へと飛翔した17歳の冒険が、いま始まる!

「ここよりももっと良い場所、あるよな?」
「あるよ、いっぱい。私たちが知らないだけで」

17歳には、まだ何も分からない。


自分以外の人間は誰も信じるな――
子供の頃からそう言われ続けて育てられた。
しかし、その言葉には、まだ逃げ道がある。
たった一人、自分だけは信じていいのだ。

吉田修一 :

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。97年「最後の息子」で文學界新人賞を受賞し、デビュー。2002年「パレード」で山本周五郎賞、「パーク・ライフ」で芥川賞、07年「悪人」で毎日出版文化賞、大佛次郎賞、10年「横道世之介」で柴田錬三郎賞を受賞。その他の著作に「太陽は動かない」「怒り」など多数。


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