吉田修一の「怒り」(上・下)を読んだ! | とんとん・にっき

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吉田修一の「怒り」(上・下)を読みました。


今朝の新聞広告に、「怒り」(上・下)涙なしでは読めない、2014年の最高傑作!とあります。それに加えて「映画化決定!2016年全国東宝系で公開予定 監督・脚本李相日」とあります。李相日監督と言えば、「フラガール」で 第30回日本アカデミー賞最優秀作品賞、芸術選奨新人賞、「悪人」で 第34回日本アカデミー賞優秀監督賞、第34回山路ふみ子映画賞など、数々の賞を受けています。吉田修一の原作で映画化した「悪人」が思い浮かびます。あれはよかった。傑作です。深津絵里のさびしそうな、悲しそうな演技は最高でした。深津は「悪人」で第34回モントリオール世界映画祭最優秀女優賞、第34回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞しています。


今朝の新聞広告をきっかけに、この記事を書いています。吉田修一の「怒り」(上・下)はもう2か月も前に読み終わった本です。なかなかブログに書くきっかけがつかめず、時が経ってしまいました。僕は吉田修一の作品は、おおよそその時の代表作は読んでいました。「悪人」では、吉田は大化けしたと評したこともあります。たしか「悪人」は新聞小説でした。吉田は題材に巷で起こった「事件」を取り上げて書くようになっていました。「怒り」も読売新聞連載の新聞小説でした。がしかし、この作品はいただけません。と言ったら吉田作品のファンの方からおしかりを受けるかもしれません。



今までの吉田の作品と違って、いわゆる「手練れ」の作品です。それだけ吉田が新聞小説に慣れてきた、ということかもしれません。「怒り」は、ある夫婦が惨殺された事件から1年後の夏が舞台です。殺害現場には犯人が書いた血文字「怒」が残されていました。犯人の山神一也は整形手術をして逃亡を続けています。房総の漁港で暮らす洋平・愛子親子の前に田代が現れます。大手企業に勤めるゲイの優馬はサウナで直人と出会い、一緒に暮らすようになります。母と沖縄の離島へ引っ越した女子高生・泉は田中と知り合います。


愛子の歌舞伎町での生活もそうだが、泉が沖縄へ行って米兵にレイプされかけた事件、それを山神が目撃していたという話は、あまりにも都合よすぎます。男3人は、一人一人は疑われるような前歴でもあり、胡散臭い男として描かれているので、誰が犯人の山神であってもおかしくありません。わざと読者の目をくらます人物配置は、僕は納得できません。わざとらしさが際立ち過ぎるきらいがあります。


吉田修一の公式サイトには、以下のようにあります。


最新刊「怒り」

[上]2011年8月。八王子郊外で尾木幸則・里佳子夫妻が惨殺された。血まみれの廊下には、犯人・山神一也が書いた血文字「怒」が残されていた--。事件から1年後の夏、物語は始まる。整形をし、逃亡を続ける山神はどこにいるのか? 房総半島で漁師をする槙洋平・愛子親子の前には田代と名乗る男が、東京で広告代理店に勤めるゲイの藤田優馬の前にはサウナで出会った直人が、母とともに沖縄の離島へ引っ越した小宮山泉の前には田中という男が現れる。それぞれに前歴不詳の3人の男。

[下]山神を追う刑事の北見壮介、彼の捜査でわかってきた山神の不思議な生い立ちや80年前に山神の生地で起こった凄惨な事件なども織り込まれ、衝撃のラストまでページをめくる手が止まらない。「悪人」から7年、吉田修一の新たなる代表作。


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