こんにちは、<アラフェネ>です。
今回は、<トラ>の記事になります。
アジアやインドを中心に生息する大型のネコ科の動物です。
鋭利な牙や爪、独特な縞模様と、たくましい体格などの威圧的な見た目から、恐怖や強者などの象徴として、
たたえられており、日本の歴史上の書物や屏風、建物の壁画などで見たことがある方も多いと思います。
7月29日は<国際トラの日>が間近に迫っていますので、今回はトラの生息地や生態、形態、生息状況などを
見ていきたいと思います。
少し長くなりますがお付き合いいただけると幸いです。
分類
まずは分類です。
一般的に<トラ>というのは、<哺乳綱食肉目ネコ科ヒョウ属>に分類される
大型の肉食哺乳類です。
上の図は、ネコ科の分類表で、主に<けものフレンズ>に登場する動物を載せています。
このネコ科のヒョウ属に分類される動物は、<ライオン、ヒョウ、ジャガー、ユキヒョウ>など、動物園で一般的にみられる、いわゆる大型のネコ科動物のグループで、多くの方がよく認知している種です。
トラという動物ですが、亜種個体がいくつか確認されており、生息地や大きさが異なります。
主な亜種は<スマトラトラ、アムールトラ、ベンガルトラ>また、ベンガルトラの突然変異により毛皮が白くなる<白変種>の<ホワイトタイガー>、現在はみることはできませんが、白色とオレンジに被毛が入り混じった<突然変異>による<ゴールデンタビータイガー>などが確認されています。
ライオン
ヒョウ
ジャガー
ホワイトタイガー
〇ライオン・ヒョウ・ユキヒョウ
VU:危急種(絶滅危惧Ⅱ類)
〇トラ
EN:絶滅危惧(絶滅危惧IB類)
〇ホラアナライオン・サーベルタイガー・ティラコスミルス、
EX:絶滅
このヒョウ属ですが、多くが絶滅の危険性が示唆されている種が多く、
ライオン・ヒョウ・ユキヒョウなどは危急種、トラなどは更に
絶滅危惧としての位置づけとなっています。
すでに絶滅してしまいましたが、以前はホラアナライオン、上あごに大型の鋭歯を持った<剣歯虎(けんしこ)>と呼ばれる、ティラコスミルス、サーベルタイガー(セイバートゥース)も同じ分類といわれています(EX:野生絶滅)
生息地
続いて、生息地です。
図:種ごとの生息地
現在、確認されている各亜種の生息地は以下の通りです。
〇アムールトラ(シベリアトラ)
中国東北部~ロシアのアムール川流域周辺
〇ベンガルトラ
インド亜大陸
〇インドシナトラ
インドシナ半島
〇スマトラトラ
スマトラ島(インドネシア)の熱帯雨林
基本的には、ロシア、中国、インドネシア、マレーシア、インドなど、東アジア~東南アジアを中心に生息しており、
トラは様々な環境への適応が可能で、スマトラ島などの湿度が高い熱帯雨林などや、ロシアや中国などの寒冷下の亜寒帯、
などで暮らすことができます。
その為、同じトラでもそれぞれの環境に適応した亜種が見つかっていることが知られています。
記事の後半で後述しますが、トラの生息地は以前は10万頭近く生息していましたが、1900年代以降、大幅に数を減らし、わずか3千頭のみとなりました。
全ての種が将来的に絶滅の可能性が高いとされており、
以前はバリ島のバリトラ、ジャワ島のジャワトラ、カスピトラ、中国のアモイトラなどが生息していましたが、
すでに絶滅したとされています。
形態
続いて形態です。
トラの全長はネコ科の中ではライオンに次ぐ、最大種で、前述したように、トラにはいくつかの亜種が存在し、生息地や環境によって種の大きさがやや異なります。
黄褐色の毛皮に特徴的な縦じま模様、いわゆる<トラ柄>は、生息環境の風景に溶け込ませ、捕食される動物からの視界をさえぎる効果を持っています。
大型の割には身体能力が高く、ある程度の高さであれば樹に登ったり、強靭な牙と爪で確実に相手を仕留めることが可能となっています。
〇全長
まず、全長を種別ごとにみると、体長はトラが198~370㎝、ライオンが240~330㎝、ジャガーが150∼180㎝と、
同じヒョウ属に属する動物の中でも、トラは非常に大型でトラはメスよりもオスのほうが大型になる傾向があります。
さらに亜種ごとの全長を比較すると、ロシアのアムールトラが約315㎝、インドのベンガルトラが約290㎝、東南アジアのスマトラトラが約200㎝と約100㎝もの大きな対格差がわかると思います。
アムールトラ > ベンガルトラ > スマトラトラ
哺乳類(恒温動物)では、南側の生息地では体格が小さくなり、北側の寒冷な生息地ほど体が大きくなることで、体重当たりの体の表面積が小さくなり、体から熱が逃げにくくなるという性質があります。
これをドイツの生物学者<クリスティアン・ベルクマン>の発見者の名前にちなみ<ベルクマンの法則>と呼ばれ、
これは、同じ食肉目のクマ科の<ツキノワグマ>や<エゾヒグマ>、<ホッキョクグマ>などにも相当します。
よって、このような法則の元、最も北側に生息地を持つ<アムールトラ(シベリアトラ)>が最大種となるわけです。
〇縞模様
トラの特徴を位置づける縞模様は、生息地のよって長さや縞の数が異なり、獲物を捕食する際には風景に紛れ、
獲物を捕食する際に、真価を発揮すると言われています。
トラの黒い縞模様とオレンジ色は一見、風景とは全くかけ離れた目立つ色に見えるのですが、
これは私たちヒトなどの一部の動物には赤色などを識別する能力のもっているためです。
多くの哺乳類(恒温動物)はこの赤色を識別する能力を持っていない為、トラなどの赤色を含んだオレンジ色は非常に認識が難しく、捕食対象であるシカなどの草食動物からは、風景に溶け込んでいるように見えていると言われています。
縞模様の幅や本数ですが、亜種によってややことなることがわかっており、密林を狩場とする<スマトラトラ>
のほうが縞の数が多く、色も濃くみられます。
〇あごや爪
トラの歯の数は、一般的な<イエネコ>と同じ30本で(マヌルネコなど一部は28本)、
特に犬歯が大型になる傾向があります。
強大な犬歯と咬合力で、獲物の肉を切り裂き、骨を砕き捕食するのに特化したものと言えます。
また、咬合力(あごの力)は非常に強力で、人が60kg~70kgに対しトラは約400~450kgもあります。
その強力なあごで、獲物の首を掴み窒息死させることができ、骨や肉までも容易にかみ砕き、切り裂くことが容易です。
少し、動物の歯の内容です。
動物の歯の数は、食性によって歯の数の影響を受けやすく、それぞれの食物に対応して進化をしています。
歯はそれぞれ、犬歯は肉などを切り裂くのに役立ち、切歯は細かく噛みちぎり、臼歯はすりつぶして咀嚼することに特化しています。
ネコ科を含む、食肉目(ネコ目)のグループは、他の動物と比べて、肉食傾向が強く、犬歯や裂肉歯(切歯:肉を切り裂くための歯)が非常に大きく発達し、一部の臼歯は草食動物と比べ、退化しているのが特徴です。
すなわち、ネコ科の多くの種は切り裂いてあまり噛まず飲み込むような摂食方法をとっているということです。
爪も鋭く鋭利で、掴んだ獲物を確実に拘束します。
また、パンチ力もすさまじく、動物の骨を容易にへし折ることも可能です。
〇足
トラの肉球は非常に厚く、大きい体格とは裏腹に、音を立てずに背後から忍び寄ることができます。
ネコ科らしく、後ろ足の筋肉が強靭でジャンプ力も高く、木に登ることが出来き、約4m以上の木に登ることができます。
また、水上や茂みの中を速いスピードで駆け抜けることができ、その速度は時速約70km/hと、自動車の法定速度(60km/h)とほぼ同じくらいの速さに相当します。
トラはネコ科では珍しく、水などを苦手とせず、泳ぎも得意な点も大きな特徴です。
以上のように、トラは単独で狩りを行う上で非常に有利な形態的特徴を多く持ち合わせていると、
イメージできるかと思います。
生態
次は生態です。
トラは生息環境に合わせ、寒冷な地域や熱帯で熱さが厳しい環境にも適応して生活をしています。
縄張り意識が強く、マーキングや爪とぎで縄張りを主張します。
非常に獰猛さ故、大食漢で、体格の何倍ものの獲物を相手にしたり、時には同じ
肉食動物も襲うことが知られています。
〇好む環境
トラは先ほどの生息地から見てわかる通り、ロシアの針葉樹林が生い茂る寒冷な地域、インドや東南アジアなどの
熱帯雨林、落葉樹林など様々な環境に生息しています。
図:トラのマーキング
基本的にはネコ科らしく、繁殖期以外は単独で行動し、薄明薄暮(夜明けと夕暮れ)時に活発に行動します。
縄張り意識が強く、木に大きな爪痕を残したり、尿などの<マーキング>によって、縄張りを主張します。
そのなわばりの強さは、入ってきた他のトラも容赦なく攻撃するほどです。
飼っているネコが突然、壁や床に尿をかける<スプレー>行うことがありますが、縄張りを主張する野生本来の習性の
なごりが強く残っているからで、未去勢のオスやストレスなどの要因で行うことが多いです。
〇食性
図:サンバーを狩る様子
食性は、完全肉食性で、相手が動物であればどのような相手に対しても捕食対象にするため、食肉目の中でも
狩る獲物の種類は、ずば抜けて広く、自分の体重の何十倍もの相手を狙うことがあります。
主な獲物として、ニホンジカ、アクシスジカ、サンバーなどのシカ科、アジアスイギュウ、バンテン、ガウル、ブラックバック
などの羚羊を含めたウシ科、インドサイやゾウ(幼獣)、ヤマアラシ、キジ、などのげっ歯目やキジ目などを捕食します。
その獰猛さ故、それだけにとどまらず、カメなどの爬虫類、カエルなどの両生類、魚類なども食し、同じ食肉目のスナドリネコ、アジアゴールデンキャットなどのネコ科、オオカミやドール(アカオオカミ)などのイヌ科なども捕食対象とすることがあります。
非常に大食漢で、一日に6~9kgの肉をたべることもあり、自分の体重の4倍以上の獲物を狙うことも珍しくありません。
タイの保護区では、ガウルやバンテンの捕食割合が約5割以上とも言われています。
ガウルやバンテンは東南アジアで飼育されているウシ科の動物なんですが、
体重がウシの中でも体重が大きく、ガウルでは700kg、バンテンでは650kgなので
これほどの大型の動物でこれだけの大きな獲物を単独で捕食するのは非常に珍しいです。
〇繁殖
トラの繁殖は亜種や地域によって異なる部分があります。
ここではインドの<ベンガルトラ>の繁殖を書いていきたいと思います。
繁殖期は、生息地によって異なり、インドでの繁殖例では、
平均的にはには2月~5月、約2日間で
100回以上の交尾を行います。
妊娠期間は3か月程度で、1~6頭の赤ちゃんを産むことがあります。
ある程度大きくなると、親から狩りの仕方をなどを教えてもらうことがあり、
青年期で独立が近くなると、メスは縄張りを引き継ぎ、オスはそこから出て巣立ちを行います。
繁殖期の移動距離は、亜種によって異なりますが、インドでは26km程度、
ロシアでは約100km移動することもあるそうです。
この繁殖期のオスは非常に気性が荒く、トラの赤ちゃんさえも狙うことがあるそうです。
トラの寿命は平均20年と、一般的なネコ科の寿命(15年)ほどなので
やや長いです。
飼育下では25年以上生きる個体も確認されています。
生息状況
つづいて、生息状況です。
トラは1900年代には、亜種を含め世界中に10万頭近く生息していましたが、
現在は数を大幅に減らし、わずか3千頭しか生息していないとされています。
亜種全てにおいて、現在、ネコ科の中でも絶滅する可能性が非常に高い、
<絶滅危惧種>に指定されており、<ワシントン条約付属書Ⅰ(絶滅の恐れのある野生動植物種の国際取引に関する条約)>に登録されています。
バリトラ、ジャワトラ、カスピトラなどはすでに絶滅したと考えると、
私たち人間が積極的に保護し、違法取引や密猟などを法的に阻止していかないと、絶滅の一途を辿るという事を意味しています。
〇要因
主な要因として、人口増加による都市、農地開発、森林伐採、植林などによる林業
での生息地の破壊です。
また、トラの牙や毛皮目的に行われる狩猟やスポーツハンティング、漢方薬
の材料採取など、要因の大半が人為的な影響だとされています。
トラの亜種別のIUCN<国際保護連合>による生息状況は以下の通りです。
〇EN:絶滅危惧IB類
〇アムールトラ(シベリアトラ)
360~460頭
〇ベンガルトラ
2000頭
〇インドシナトラ
〇CR:絶滅危惧IA類
〇アモイトラ
〇スマトラトラ
〇EX:絶滅
〇バリトラ
〇ジャワトラ
〇カスピトラ
※2001年
〇現在の保護体制
現在は、世界中の動物園や施設を中心に、保護繁殖を行う域外保全、
保護区を指定し、パトロールやカメラなどを設置し監視を行う、域内保全
などを行っています。
また、WWF<世界自然保護基金>、特定非営利法人<トラ・ゾウ保護基金>などが
積極的に介入し、支援金などを募り、保護活動費に充てるなどを行っています。
WWF<世界自然保護基金>では、会員を募集しており、
保護活動を行うための支援金を募っています。
毎月1000/5000円のプランで募金ができるようになっており、興味がある方は下のURLから
HPへ飛んでみてください。
↓
トラの被害
本記事をここまで読んでいただいた方はもうすでに、トラはいかに危険な動物であるかどうか察しがついていると思います。
トラはヒトの何十倍の体格と力、鋭利な牙と爪を持ち合わせており、ヒトの生命、身体、財産
などを脅かす可能性が非常に高い猛獣の一種です。
世界では、現在まで37万以上の人がトラにより死亡しています。
特にアジア各国の地域などは人口密度が多く、ヒトの活動範囲がトラの活動範囲と重なる場合が多い為、
遭遇する可能性が非常に高いとされているのが要因とされています。
日本の法律では、2021年以降、ライオンやジャガー(パンテラ属)などと同じ区分として、<特定動物>として指定されており、愛玩目的での飼育は全面的に禁止されています。
<特定動物>とは簡単に言うと、<人の命を奪う、致命傷を与える可能性が非常に高い動物>のことです。
また、動物園とそれに準ずる施設での飼育の際は、その設置している市の市長、
叉はその県の都道府県知事の許可が必要で、展示場やケージに許可したことを示す標識を見やすい位置に提示することが
必須です。
当然ですが、飼育する為には、飼育管理方法、保管方法、移動方法、建築基準(逸走ができない展示場の構造)などの安全性がマニュアル化されており、第三者(来園者など)が絶対に直接触れることができないようにしなければなりません。
トラの記事は以上となります。
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