こんなの全部間違い! | タンタンとパパの子犬の社会化ブログ

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皆さんは子犬を迎えた時、こんなことを言われなかったでしょうか?
 
「犬は最初が肝心だからなめられないように厳しく躾けないと!」
 
「犬を膝の上に乗せると自分の方が上だって思うわよ」
 
「肩より上に抱き上げちゃいけません!」
 
「ドアから外に出るときは常に人間が先に!」
 
「食事は人間が食べ終わってから! 分け与えるように」
 
「犬は群れのボスになりたがるから、自分が一番下だって分からせないと
 何も言うことを聞かなくなるわよ!」
 


 

 

これらは「支配性理論」(ドミナンス・セオリ-)と言われる、
狼の群れをモデルにした本能を裏付に推論された、
動物行動学に基づいた躾け理論だと言われています…
 
狼の子孫である犬には自分がより上位の存在に成り上がろうとする権勢本能があるのだと。
 
 
 
そして、子犬が飼い主の手を甘噛みする…
 
足に絡みついてズボンを噛む…
 
飛びつく!膝の上に乗ろうとする…
 
お散歩中に人間の前を歩こうとする…

逆に踏ん張って歩こうとしない…
 
このような行動は支配的な犬の性質の現れであると。
 
この支配性が特に高い個体を『権勢症候群』の犬と呼び、
徹底的な服従訓練で自分が人間より下の存在であるということを
思い知らせなければいけないと言うのです。
 
そのためには、飼い主の言うとおりにしなかったら、
リードショックや体罰を加え、常に自分が飼い主より弱い存在であることを
叩き込むしかないのだ!と…
 
いわゆる『上下関係』とか『主従関係』というやつです...
 

 

そのためにリーダーウォークという、
少しでも飼い主より前に出たらリードショックを与える訓練法や、
アルファロールという仰向けにひっくり返す訓練、
ホールドスティールという羽交い締め、
マズルコントロールという口先を掴んであちこち向かせる方法などが、
まことしやかに正しい訓練だと言われてきました…

もちろんそんな理不尽なやり方でも順応するタイプの犬だったらすんなり終わる話です。

長いものには巻かれる扱いやすい犬も少なくありません。

暴力や恐怖で教育しようとする幼稚園の方針に適応して「良い子」を演じる幼児のように…



しかし、プライドの高い犬、頑固な犬、逆に繊細な犬、警戒心の強い犬など
この手の強制服従訓練を受け入れない個体も少なくありません。
 
どんなにチョークチェーン首輪を引っ張られようとムチで打たれようと、蹴られようと指示に応じない個体、
恐怖にすくんでキャインキャインと鳴くだけで指示通りに動けない個体などは家庭犬の中では少なくありません。

そういう思い通りにならない個体に、
旧体質の訓練士やトレーナーたちはダメ犬とか問題犬などという
ラベルを貼って飼い主さんを脅します。
 
「この犬は100頭に1頭の問題犬です。
自分が人間より弱い存在であると思い知らせなければ、
吠える咬むなどの問題行動がひどくなり、
最終的には殺処分しかなくなりますよ!」
などと言って預託訓練(数ヶ月預けて矯正する訓練)を薦めてきます…

 
 
しかし、この元となる理論は幾つかの根本的な部分で間違っていました…
 
まず、この理論が生まれた「犬は狼の子孫だから狼と同じ本能を持っている」
という前提条件で検証されたという狼の研究ですが、
その対象になった狼の群れというのは自然環境での狼の群れではなく、
たった1群の動物園の狼の群れだったのです…
 
動物園では限られた資源(スペース・食べ物・パートナー)しかない中で、
捕獲されてきた知らない個体同士が一つの群れに放り込まれるので状況が全然違います。
 
力の強い者が弱い者たちを支配するヒエラルキーが生まれても不思議ではありません。
 
 
でもその後の自然環境での研究によって、
狼の群れは家族単位の小集団でありリーダーはお父さんだということがわかりました。
お父さんは強さのアピールで群れ(家族)を支配はしません…
 
 
そして狼は決して自分より力が強いというだけでその個体に服従しないことも分かってきました…
 
要は狼も犬も集団行動で生活してきた動物であって、
全ての個体が群れの中で常にボスの座を狙うなどという大それたことを考えてはいなかったのです!

むしろ集団行動の中に安心感を見出す、平和的で協調性のある生き物だと言えるでしょう…
 
 
 
さらに言うならば、
膝の上に乗せるな!、
同じベッドで寝るな!、
自分より先にドアを通すな!
などという上下関係のしつけ方針は人間的な価値観から生み出された評価基準に過ぎず、
狼の世界でも犬の世界でもまるでトンチンカンな解釈でしょう…
 
 
そういったことを突き詰めていけば、
親元から離されたばかりで人間との信頼関係の築けていない子犬に
頸椎を痛めるショックを与えたり、
無理やり無防備な姿勢を強いたり、
口先を強く握ってぐるぐる回すことなど、
かえって警戒心や不信感を抱かせる原因になるだけです!
 
 

2008年、アメリカ獣医動物行動学会(The American Veterinary Society of Animal Behavior)は支配性理論に基づいたドッグトレーニングが時代遅れで、むしろ飼い主と飼い犬の関係を対立的にしてしまうという声明を発しています!

 
 
犬は決して人間との共生の中で、
自分が人間のリーダー(ボス)になろうなんて考えていません…
 
人間からみた問題行動を全て、
「犬が私たち人間のボスになろうとしている…」
などという間違った理屈で説明しようとしてはいけないんです。
 
さもないと飼い主さんはだんだんと自分の犬が嫌いになってきます…
 
犬への口調は常に命令調で感情的になります。
 
言うことを聞くまで怒鳴り続け、終いには叩いたり蹴ったりします。
 
怒りのあまり、ネグレクトと言われる飼育放棄(飼い殺し)に至るケースもあります。

犬のトレーニングがいつの間にか飼い主の精神的な支配性や憎悪を増長してしまうのです…
 
 
 
犬は常に恐怖とフラストレーションに晒され、
飼い主さんに唸ったり吠えたり噛みついたりするようになるかもしれません。
 
そして最終的には何をやっても叱られるんだという無力感に陥ってしまうでしょう…
 
無気力になった犬…
 
それを大人しい犬になったと誤解してしまってはいけません。
 
そうなってしまった犬は、病気の犬です。
 
学習性無力感という状態に陥った、希望を失った犬です…
 

 


犬に対する間違った認識から、愛情が怒りに変わってしまう。

犬との楽しい生活を夢見ていたはずなのに、気づいたらいつも怒鳴ってばかり…

そんな飼い主さんは少なくないはずです。

だからこそ、もっとしっかり犬のことを勉強して欲しいと思うのです。

犬の行動の意味を...
 
犬語(ボディランゲージ)を...
 
犬がどのように学習するかを...
 
それがわかってくれば犬との暮らしは遥かに豊かになります!
 
そして学んでいけばいくほど犬と暮らす上で
どれほど大切なことだったかを思い知るでしょう...
 

 

 

 

 

 

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