”アドラー心理学と教育(ほめること叱ること)”【書籍紹介】②子どもの教育
Q:叱ることは必要なこと?Q:褒めることは良いこと?Q:だったらこうしてみたら?過去のアーカイブス”アドラー心理学と教育”【書籍紹介】子どもの教育今回は「ほめるべきか、叱るべきか」ということをテーマに考えていきます。端的に言うとアドラーは「ほめてはならない、叱ってもならない」ということを提唱しています。それが現れている『子どもの教育』の文章をピックアップしました。まず叱ってはならないということについて、アドラーは叱ることで勇気がくじかれるといっています。勇気がくじかれるとは、「どうせ僕には能力が無いから○○できない(劣等コンプレックスという)」というように、自分が成長するための努力をしないことを能力や環境などを原因にしてしまう状況のことです。叱ることで、自分は何をやっても無駄だということを助長してしまいます。以下参考の文章です。 アドラーは罰による教育を否定する。アドラーは野心を十分示さない子どもたちの眠っている野心をかきたてるために、厳しく扱うことの弊害を説いている。勇気が子どもたちに残っていなければこのような方法では子どもは勇気をくじかれるだけである。また、そのような子どもたちに教師はしばしば悪い点数をつけるが、そうすることは、親にも罰せられるという結果になり、ますます事態を悪化させてしまうことになる。罰すると子どもは学校には自分の居場所がないという気持ちを強くすることになる。また、子どもに恥をかかせたり、面目を失わせたりすることで、行動を改善するよう影響を及ぼすことができるとは決して信じてはならない、といっている。 そうではなく、アドラーは次のようにいう。「ほとんど聖なる義務といってもいい教師の最も重要な仕事は、どの子どもも学校で勇気をくじかれることがないように、そして、既に勇気をくじかれて学校に入る子どもが,学校と教師を通じて、再び自信をとりもどすよう配慮することである。」 アドラーは、「楽観主義を子どもに吹き込む」といういい方をすることもあるが、しかし、「親は、世界は薔薇色のものである、といったり、〔逆に〕世界を悲観的な言葉で描写することを避けるべきである」ともいっている。即ち、現実を否定的に見ることも、現実に目をふさぐことによって現実をいわば美化するようなことを意図しているわけではないのである(岸見さんの解説から)また、ほめることについても否定しています。こっちは参考の文章をまず読んでください。 子どもをあまりにほめるのは、賢明ではありません。あまりに多くのことが自分に期待されていると思うようになるからです。期待にそうことが容易でないとわかると、子どもは震え出したり恐れ始めます。その結果、自分の弱点が発見されないようにするようになってしまいます。(中略) いつもほめ、知能指数が高い,ということで承認を与えるようなことはしてはなりません。このことをいつも指摘されてきたので、この子どもは、いつもうまくやれないかもしれない、と恐れるようになったのです。知能指数は、後の人生ではあまり重要ではない、ということを私たちはよく知っています。すぐれた実験心理学者であれば皆、知能指数は、検査によって明らかにされた現在の状況を示せるだけで、人生は一回の検査でわかるにはあまりに複雑なものであることを知っています。知能指数が高いからといって、子どもが実際に人生のあらゆる課題を解くことができるということを証明するわけではありません。過度にほめること(甘やかしと同義?)は、期待される自分と自分自身を比較して自己評価がとても下げることになってしまうとも言っています。さらにほめること、叱ることを総括して以下のように述べています。 個人心理学者(アドラー心理学のこと)は、子どもを育てる時に、厳格な方法も甘やかしの教育も用いるべきでない、と考えています。必要なことは、理解すること、誤りを避けること、子どもが問題に直面してそれを解くように、そして、共同体感覚を持つように、いつも勇気づけることです。子どもにがみがみいう親は子どもたちを害することになります。子どもの勇気を完全にくじくことになるからです。他方,甘かしの教育は、依存的な態度と、一人に執着する傾向を助長します。親は、世界は薔薇色のものである、といったり、〔逆に〕世界を悲観的な言葉で描写することを避けるべきです。親の課題は、自分で自分のことができるようになるように、子どもにできるだけすぐれた人生の準備をすることです。困難に直面することを教えられなかった子どもたちは、あらゆる困難を避けようとするでしょう。そのことが、子どもの活動範囲を狭いものにしてしまうことになります。子どもの世話を誰がするかを知ることも重要です。母親がいつも子どもと一緒にいる必要はありません。しかし、誰に子どもの世話を委ねているかを知ることは重要です。子どもを教える最善の方法は、経験から学ばせることです(もちろん、道理にかなった範囲で)。これは、子どもの行動が、他の人が彼〔女〕に置いた制限ではなく、事実の論理によって導かれるようにするためです。ほめたり叱ったりしないで、子ども自身が自分自身で経験し、困難を苦とせずに活動をする手助けを行う(勇気づけ)ことが大切であるといっています。これは、是非とも子どもと接するときに意識していきたいことですね。今回は教育に特化した以下の本を元に紹介しています。子どもの教育 A・アドラー著 岸見一郎訳 (1998) 子どもの教育―アドラー・セレクション 2,160円 Amazon 読んだのは下の方ですが、新装版として上の本があります。 子どもの教育 (Adlerian Books) Amazon アドラー心理学の本といえば、「嫌われる勇気」や「幸せになる勇気」が有名です。 嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え 1,571円 Amazon 幸せになる勇気――自己啓発の源流「アドラー」の教えII 1,620円 Amazon