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1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

今は違うかも知れませんが、30年位昔の話として聞いて下さい。

 

紙のメーカーさんってね、ほとんどのメーカーが、印刷現場の事など、まぁ、

全く、考えてはいません。「こんな刷り辛い紙、どうすりゃイイんだッ!」と、

印刷現場から声が上がっても、そんな事、知らん顔です。基本的にはね、

デザイナーさんとかにウケて、沢山売れる紙がベストってワケです。

 

その昔(今もかな?)、製紙メーカーって言うのは、日本の経済界をリードして

行くようなスゴイ業界だったので、印刷現場ごときの意見など聞く耳を

持っているはずも無かったんですわ。ですからね、印刷に困って製紙メーカー

に問合わせても、まぁこりゃ、完全にピント外れな回答だらけだったんですよ。

 

そんな頃に、王子製紙と三菱油化が手を結んで出来上がったのが、ユポです。

油化の「YU 」と、王子の「O 」が、ペーパー「P」で手を結んで、「YUPO 」なのだ

そうです。最初は「王子油化」と言う名前だったんですけどね、いつの頃からか、

「ユポ・コーポレーション」って言う名前に変わりましたね。

 

今でこそ、「耐水紙」の代名詞の様に成り、選挙ポスターはユポが当り前なんて

時代に成ってますが、初めて登場した頃は、そりゃまぁ、ヒドイ扱いを印刷現場

から受けていたんですよ。「こんなもん刷れるかッ!インキが全く乗らんぞッ!」

「静電気で紙が全く出ないぞッ!」「何とか刷ったけど全く乾かんじゃないか!」

 

印刷現場から、そんな悪評が立ってしまうと、こりゃ使ってもらえなく成ってしまい

ます。当時の普通の製紙メーカーなら印刷現場からの悪評など完全に無視して、

デザイナーやエンドユーザーへのアピールに専念し、「この紙が刷れなきゃ仕事

が無く成るぞぉ~」みたいな感じだったんですが・・・。

 

当時の王子油化さん達は、凄かったです。静電気が!って言うと、除電バーを

持って印刷現場に走り、インキが乗らん!と聞けば、印刷指導に行き、乾きが!

と言われれば、ドライヤーの紹介や、使い方を解説したり。スゴク早い段階で、

「ユポ印刷マニュアル」なんて言う、印刷現場向けの冊子を出していました。

 

最初の頃のユポ印刷マニュアルに関しては、私も深く関わっていまして、ああだ

こうだと、様々な意見を取り入れてもらいました。・・・ユポさんの商品開発ってね、

多くの場合、我々、印刷現場目線での開発なんですよ。

 

最初の頃の「イッパン・ユポ」ってヤツ。これが印刷機のブランを、すぐに真っ白に

してしまうからアカンと言うので、その点を改善したのが「ニュー・ユポ」(FGS)です。

でもこれらは、ユポ専用インキで刷らなければ成らないので、そりゃまた面倒だから

紙用インキで刷れる様に何とかしてくれ。と、印刷現場からの声で開発されたのが、

まずは「OYコート」ってヤツだったんですが、これ値段が高くてねぇ~。

 

そこから改良を重ね、値段は普通のユポと同じで、紙用インキで刷れる物を開発し

「スーパー・ユポ」ってのが誕生します。これの誕生は本当に凄くてねぇ、私もかなり

刷りました。ユポって、石油から作ったフィルムですから、普通の紙と違って表面の

平滑性が、凄まじくイイんですよ。ですからね、300線を越える様な高精細の印刷

には抜群の適性が有って、どんな紙よりも解像度の優れた印刷が可能なんですよ。

 

でもこのスーパーユポ、こいつは片面刷り専用だったんですよ。それと、UV印刷に

対する適正が無くて…。両面とも紙用インキで刷れる事。UVでも印刷可能である事。

この2点を改良したのが、「ウルトラ・ユポ」ってヤツなんです。ですから、例えばね、

LED-UV等、高感度UVで、ユポを刷る場合は、ウルトラ・ユポを選択するのがベスト

であるって事に成りますね。

 

ざっと、イッパン・ユポから、ウルトラ・ユポの誕生まで解説しましたが、私自身も、

ここまでの開発には少しづつ関わっていました。まぁ外野から文句を言ってたって

程度なんですけどね(笑)。・・・でもね、印刷現場目線で、開発を進めて頂けたって

言うのは、本当にありがたい話だと思っています。だからこそ今現在の、ユポの

揺るぎない地位が有るのだと言っても、決して過言ではないでしょう。

 

開発が進んだユポですが、やはりコイツは耐水紙です。正確には紙ではなくって、

全く水を吸い込まない、フィルムなんですよ。だから、いつも湿し水が多目の人に

とっては、厄介で刷り難い物だと思います。でもね逆に考えれば、ユポを上手に

刷れる様に成れば、水の使い方がウマく成ったって言う証拠なんですわ。そう言う

意味で、ユポを敬遠せず、「ユポを刷って、湿し水の使い方をウマくなろうッ!」って

くらいに考えて、どんどん挑戦してやって下さいな。

昔、小学生くらいの頃に、「伝言ゲーム」って言う遊びをしませんでした?

「A君とC君が、海へ遊びに行ったら、クラゲに刺されてしまって大変だった」

って言うのを、ヒソヒソ話で順番に一人づつ、10人位に伝言して行くとね、

最後には「A君が海でクラゲ食べて死んじゃった」とかに変わってしまうって

言うヤツですよね。10人が正確に伝言して行くってのは難しい話ですね。

 

でもね、印刷現場の人達ってね、この伝言ゲーム、メッチャ、ヘタクソな人が、

ケッコウ多いように思います。10人どころか、営業マン一人からの伝言すら、

まともに解釈出来ていないとか、工場長からの指示を他のメンバーに正確に

伝える事も出来ないとかね。

 

例えばね工場長から、「社長からの指示で、15時に事務所へ全員集まる事」

って言う指示を受けて、次の人に伝える際、ここに余計な感情が入ってしまう

場合が有ります。「なんや知らんけど15時に事務所へ集合やて。社長はんが

エライ怒ってはるそうやでぇ」 ⇒ 「社長が怒ってるから15時に事務所やて」

その内に、15時に事務所集合って言う、肝心な情報が無く成ってしまって、

「工場長と社長がケンカして怒ってるらしいわ~」 くらいに成ったりとか(笑)。

 

我々、印刷現場の人間ってのは、基本的に「機械」を相手にしている仕事で、

人間を相手にするのがメインではないので、コミュニケーション下手に成って

しまいやすい事は否めないと思います。必要な情報だけを端的に伝達すれば

良いだけの事なのに、余分な感情だとか、相手への遠慮とか、自分自身の

思い、なんてのが入り混じって、情報に尾ひれ手ひれが付いてしまう。

 

一番アカンのはね、こうした状態を、いつまでも放置してしまう事なんですよ。

「その内、何とか成るだろう~」・・・いいえ、成りません。放置しておけばおく程、

状態は悪く成って行きます。「んじゃ、一人づつ教育して行くのか?」・・・それ、

多分、無理です。個別に教育したって、同じ様な成長は望めないんですよ。

 

印刷現場で、伝言ゲームは成立しません。「んじゃ、書面で伝達するか?」

もちろん、それもイイんですが、それではコミュニケーション下手のままです。

「どうする?」・・・工場長からの伝達事項が有れば、その場で即!全員集合!

「いや、今、印刷機が回ってるから」・・・停止させればイイだけの話ですよね。

停止ボタンの押し方を知らない機長なんて、まず居ないでしょう。(笑)

 

ハイッ!3分以内に全員集合ッ!と号令を掛け、全員が居る前で、伝言を

伝える。「社長から話が有るので、15時に全員、事務所へ集合する事。」

そんな事を言えば、ざわめきますわね。・・・どんな話だ?会社が危ない?

俺たちの給料が減るのか?「意見が言いたい者は、手を挙げろッ!手を

挙げて言えない様な事なら黙れッ!」

 

最初はね、手が挙がりません。でもね、こんな事を何度も繰り返していると、

少しづつ手が挙がる様に成ります。全員の前で、正式に自分の意見を言う

って練習ですよね。まるで小学校の学級会か、中学のホームルームの様な

光景ですが、コミュニケーション不足の人達には、ここから始めるべきです。

 

現場内のコミュニケーションが良好に成って来ると、いろんな事が変わって

来ます。「へぇ~、この特色を刷る時、そんなやり方してるんだ。今度オレも、

それでやってみるわ~」とか、「ウチはもう終わるから、今日、整備やるなら、

オレも手伝えるよ」とか、そう言ったコミュニケーションの一言一言が、より

良い現場を作って行くんですわ。

 

印刷現場は、時間との闘いです。不確かな伝言ゲームなど、やってるヒマは

有りません。不確かな物に頼るくらいなら、一気に生産を止めてでも、一発で

正確な伝達と、正直な意見交換を行い、何一つ迷う事無く、生産に没頭する

ことが可能な環境を作り上げる。情報の共有化ってね、それくらいに大切な

ものだと思うし、それ以上に、コミュニケーションってものは、大切ですよね。

今時の印刷機には、濃度計が付いていて、それで、色調管理をするのが

当り前の様に成ってますよね。一昔前まで、濃度計なんてのは超高値で、

なかなか買ってもらえなかったんですが、今はイイ時代に成りました~。

 

でもね、この濃度計ってヤツ、様々な落とし穴が有ります。まずは、個体差。

新品の時から個体差が有ると言う意味では無くて、何のメンテもせず、ただ

使っているだけだと、レンズ部分が汚れたり劣化したり、キャリブレーション

(校正)が狂ったりして、正常な数値が出なく成ってしまう事が有ります。

 

もし、印刷機が2台有って、そのどちらにも濃度計が付いてたら、1台の方で

計測して、その同じ印刷物を、もう1台の方でも計測してみて下さい。正常で

あるならば、同じ数値が出て当然なんですが、これが、なかなか・・・。

 

どちらかが狂ってる(または両方とも狂ってる)って事ですよね。とりあえずは、

新台の時に付属している、校正用のグッズ等で、キャリブレーションを確認

して修正してみて下さい。まぁそれでも2台がバッチリ合うってのは、なかなか

難しいのですが、せめて近似値に成るようにはしたいですよね。

 

でも、そんな事よりも、もっと大きな問題は、今、自分が印刷しているベタが、

本当にキレイなベタに成っているのか?って言う点なんですわ。濃度計って

言うのは、パッチのベタ部分を計測して、ベタ濃度を表すのが基本です。

 

この基本に成るベタ部分が、本当にキレイなベタで印刷されていれば問題は

無いんですが、例えば白抜けがチラホラ出てしまってベタなのに紙白の部分

が小さくポツポツと覗いてしまっている様な状態。これはね、アカンですよね。

 

濃度計(反射濃度計)ってヤツは、ベタ部分に光を当てて、その光がナンボ

反射して来るのか、その反射された光の量で、濃度の数値を表しています。

例えば、100って言う強さの光をベタに当てて、90吸収され、10だけ反射

された場合、これが、濃度1.0 なんですわ。99吸収されて、1だけ反射され

た場合が、濃度2.0 って言う計算に成ります。99.9吸収されて0.1だけ反射

された時が、濃度3.0 ってな具合なんですよ。

 

例えば、濃度1.50 で刷りたいとしましょう。この時、キレイなベタであればね、

問題は無いんですが、ベタの中に小さな白抜けがポツポツ有ったとしましょう。

「なんやこれ、白抜けが有るやん。この印刷ヘタクソやなぁ~。しゃ~ないから、

数値の表示も、オマケしといたろか~」等と、濃度計は考えてくれませんわね。

 

小さな白抜けも、ベタの一部として読み取ってしまいますから、本当は1.50の

濃度が出ているのに、白抜けの分だけマイナスされて、1.40 等と言う表示に

成ってしまいます。それを見たヘタクソオペレータ君は「ありゃ濃度が足らんわ、

しゃ~ないなぁ、もう少しインキ盛っとこか~」 とか言って、インキを盛る事と

成ってしまうワケなんですよ。・・・こりゃアカンですわね。

 

本当は1.50 の正常濃度が出ているのに、湿し水が多過ぎる等の原因により、

ベタ内に白抜けが出てしまって、1.40 と言う表示に成ってしまっている、こりゃ

淡いと判断しインキを盛って濃くする。必要以上にインキを盛ってしまっている

から、網点が太り(ドットゲイン)、色調が出なく成ってしまうってワケです。

 

濃度計を使って、色調を整えようとしているのに、ベタがダメだと、色調が整う

どころか、目標の色調から大きく外れて行ってしまう場合も有るってワケです。

ですからね、濃度計を使う場合は、必ず、ベタ部分をルーペ(25倍位)で見て、

白抜け等が無い、キレイなベタである事を確認してから、使うようにして下さい。

 

「ええッ!25倍のルーペって、網点を見る為の物じゃないの?」・・・私は常に

25倍のルーペを携帯していますが、それで印刷物を見る際には、必ずベタを

真っ先に見るようにしています。ベタがベタではなく、FMスクリーンの95%の

様なベタに成ってしまっている物が沢山有ります。是非、皆さんもね、自分の

印刷物のベタを、ルーペで覗いてやって下さいませ。

その事柄が、常識なのか、はたまた非常識ななのか。それを判断するって

言うのは、実は非常に難しい事だったりします。自分のモノサシで測れば、

自分にとっては、完全に「常識」って事柄でも、他の人のモノサシで測ると、

何とも大変な「非常識」だったりする事も、多々有ります。

 

私より、6歳年下の男性、今年56歳に成るのかな?彼は未だにスマホを

持っていません。でも携帯は頻繁に使っていますから、いわゆるガラケー

ってヤツの愛用者です。彼は「アプリ」と言う物の存在を、一切知りません。

詳しい事は、あとでメールしておくわ~。LINE しとくから、読んどいて~。

 

「ゴメン、メールとかLINEとか、よ~分からんから、また後で電話して~」

なんて感じです。ガラケーの中でも、お年寄り向け?の簡単な物しか使っ

た事が無いのですから、彼にとってはアプリを知らない事が常識なんです。

 

ええッ!今時の50歳代で、メールもLINEも出来ない人が居るの?そりゃ

また、非常識な人だねぇ~。ってな具合に、他から見れば、彼の方がね、

圧倒的な、非常識人って事に成ってしまいますわね。まぁ彼の場合だと、

アプリを入れても、文字を打つ事は出来んでしょうけどね。(笑)

 

こうした、いわゆる「格差」ってヤツが、もっともっと激しいのが、印刷現場

なんですわ。ある印刷現場では、5千枚通しの物なら、午前中に3台は

仕上げるってのが、普通な所もあれば、午前中に1台が精一杯でしょう!

それが常識ッ!と、胸を張る現場も有ったりしてしまうんですよ。

 

おいおいおい、午前中に5千枚通し1台だけって、それで利益が出せるの

かよう~。見れば、チンタラやってるとしか思えんような動きだけど、それが

「常識」なんて、よく言ってられるなぁ~。改善する意思は無いの?

 

それが常識だッ!と信じ込んでしまっているから、あえてその常識を覆して

午前中に2台仕上げよう!なんて言う考えが、起きるはずも無いですよね。

間違った常識ってヤツは、人の成長を妨げてしまう恐ろしい物なんですよ。

 

例えば、印刷機に付ける人員に関しても、その常識は様々です。菊半才判

いわゆる「ベビー」って言う4色機を、2名で使うのが常識だと言う現場さん、

今でも多く有ります。ベビー1台の生産高で、2名分の人件費を捻出するって

言うのは、かなり難しいと思うんですけどねぇ。

 

ベビーを二人で使っている機長さんに話を聞くと、「ええッ!一人でやったら、

紙積みの時間だけ、生産が落ちるだろう!二人でやって効率を上げる方が

いいに決まってる!」と言い訳しますが、その作業状態を見てると、紙積みを

補助の人がやってる時間、機長さんはチンタラしてるだけにしか見えないん

ですよね。こりゃ、自分が楽したいだけの言い訳やな。って思いますわ。

 

それとは真逆に、菊全の4色機を一人で使うのが常識だ!と言う現場さんも

多々有ります。菊全で一人だと、紙積みとか大変でしょう?と機長さんに訊く

とね、「いや~、ウチは昔から一人でやってるから、これが常識なんでねぇ~」

などと、あっさり言ってのけてしまいます。

 

「常識」って言うものに対する考え方の差、取り組み方の差で、その現場さんの

モチベーション、やる気、なんてものに雲泥の差が出来てしまいます。おそらく、

マイナス方向に設定された常識は、自分達だけで改善する事は不可能でしょう。

どんな改善案を出したって、「いや、これまでの常識だから」と一蹴されて終わり。

 

事実上、今の印刷業界は、非常に厳しい状態です。甘い事を言っていると、

減収だとか、リストラだとか言う波に飲み込まれてしまいかねないんですよ。

こんな時だからこそ、自社内の「常識」ってヤツを見直してみる。本当にそれ

って、他社でも通用する様な常識なのか?メチャクチャな「非常識」である

可能性はないのか?・・・自社内で、自主的に、そんな事が見直せるように

成ったら、本当に強い現場が出来上がると思いませんか?

湿し水の、冷却管理タンク。ウチの製品なら、TOP-ONE とかですね。

このタンク内で、エッチ液の添加量を制御しているのは「定量添加方式」です。

例えば、湿し水が 5ℓ 減ったら、水道水を 5ℓ 追加して、その時の添加量が、

2%ならば、5ℓ の2%で、100cc のエッチ液が自動的に添加されると言う

方式ですわね。(正確に言うと、エッチ液100cc+水道水で、5ℓですよね)

これに対して、pH管理方式ってのが有ります。

 

2%の定量で添加するのではなく、pH値を読み込んで、例えば、pH5.0で

設定してあったら、常に 5.0 に成る様にエッチ液を添加して行くと言う方式

なんですが、今のエッチ液は、この方式で制御する事が出来ません。

 

ずっと昔なら、pH管理で制御可能なエッチ液が、普通だった時代も有るの

ですが、今時のエッチ液は、それに対応していないんですよ。昔のエッチ液

と比べた場合、今のエッチ液は非常に高性能です。pH管理方式を捨て去る

事によって、その高性能さを維持し、更なる性能を求められる様に成ったと

言っても決して過言ではないんですわ~。

 

湿し水は、本来、弱酸性が良いと言われていた時代が有ります。これはね、

版の性能が悪く、その版を守る為の設定だったんですよ。だからpH5位が

良いとされていました。でもね、そんなのは、ずっと昔の、過去の話です。

今時の版も非常に高性能なので、pH 7.5 までなら大丈夫です。

 

ですからね、今時、湿し水のpHをウンヌンするなんてのは完全に無意味な

事だと思って下さい。・・・古い先輩から教わって、pHが6以上に成るのが

嫌だ!と、pHが上がるとエッチ液の量を増やすオペレータが、未だに結構、

居るのですが、そう言う人に限って、ハッキリ言って、ヘタクソです。

 

何も理解していないのに、昭和の昔の錆び付いた様な理屈を持ち出して、

pHが上がるのはアカンとか言ってる。まぁチャンチャラおかしいですわ~。

んじゃ、pHが7に成ってしまったら、その時の湿し水は、どう成ってると

言いたいんですか?って訊くと「真水に成っている」と、真顔で答えます。

 

笑わせんじゃねぇぞ、こらッ!定量添加でエッチ液が入ってるのに、なんで

真水に成ってしまうんだよ。だいたいなぁ、何で、こんなにpH値が上がると

思ってんだ?君がヘタクソで、インキを出し過ぎて、水も出し過ぎてしまって

いるから、インキが溶けて湿し水に、どんどん混入しpHを上げてしまって

いるって分からないかッ!・・・なんて事は、言いたくても言いませんが(笑)。

 

本当はね、ウチのTOP-ONE等からも、pHの表示なんて取り去ってしまい

たいと思っているんですよ。でもね、世の中には、いろんな人が居ますしね、

いろんなトラブルが起こります。例えば、湿し水の中に、大量な洗い油などを

間違って混入させてしまった。そんな時には必ずpH値に異常が出ますから、

そうした異常を察知する為にも、pH表示は必要かと思っています。

 

しかし、pH管理方式の装置は、絶対に無くすべきでしょうね。こんな物は

100%不必要ですわ。でもね、特殊な印刷方式の場合、(金属印刷等)の

場合は、未だにpH 管理のエッチ液を使っている事も有ります。そうした、

特殊な場合等を考慮すると、pH管理方式を残しておいた方がコストアップ

を防ぐ事が可能なので、未だに付いているってワケなのですよ。

 

とにかく、今現在は、必ず「定量添加方式で使う事」。そして「pH値は7.5

までなら、上昇しても一切気にしなくて良い」。と言う、この2点をシッカリ

理解しておいて下さい。

昨日は、インキを多く出し過ぎて、失敗を重ねてしまう、元気君の話でした。

最初に出すインキの量が多過ぎるから、汚れが出てしまう。汚れを消す為に

湿し水を多くする。⇒ 淡く成る ⇒ インキ盛る ⇒ 汚れる ⇒ 水上げる って

言う、負のスパイラルから抜け出せず、不良品を量産してしまっていました。

 

その逆に、最初っから、湿し水が多過ぎる人って居るのかな?って、ずっと、

探してたんですが、これも、その典型的と言える人に出会った事が有ります。

・・・印刷工場さんで印刷指導をしていた時の話しです。ケッコウ、難易度の

高い印刷物を刷っておられて、この日は特色刷りの連続だったんですよ。

 

一つ目の印刷が終わって、次の物は、また違う特色なのでローラーを洗浄

して、インキを入れ替え、版を替えて、なんて言う作業を済ませ、いよいよ

試し刷り開始と成るんですが、その時にオペレータさんが湿し水の目盛りを、

20目盛りづつ、全てのユニットでアップさせたんですわ~。

 

何で20目盛りも上げたの?「えッ?何でそんな事、聞くんです?これって

当り前にやる、基本的なやり方じゃないんですか?」・・・あ、そうなんだ~、

君にとっては、他のオペレータもやってる、基本的なやり方って言う認識に

成ってしまっているってワケなんだねぇ~。(こりゃまた大変やなぁ・・・)

 

彼が「基本的」って言う、やり方を黙って見ていると、試し刷りの2回目まで、

水目盛り20アップのまま進み、3回目の前に20ダウンさせて、前に刷って

いた印刷物の数値にまで、湿し水の量を下げると言う、やり方でした。

 

このやり方を、「当たり前にやる、基本的なやり方」と豪語しているところを

みると、こりゃ彼自身が開発したやり方ではなく、きっと誰かに教わったん

だろうと思い訊いてみました。「ああ、そうです。上司から教わりました。」

なるほどね、それで、その上司さんは、こんな事をやる理由は、何だと?

 

「新しい版を汚してしまうと地汚れが出て面倒だから、版替えをした最初は、

湿し水を多目にしろと。」・・・シルバーマスターの刷り方かよぉ(笑)。なんで

そんなバカげた、間違ったやり方を教えてしまうのかなぁ。きっとその上司

とやらも、インキを最初っから多く出し過ぎてしまう人なんだろうなぁ。

 

とりあえず、その上司さんから教わったやり方は、明らかに間違っている!

世の中の他のオペレータは、誰もそんな事を、当たり前にはやってないし、

基本から外れたメチャクチャなやり方なんだよ。「ええッ!誰もやってない?

オレだけですか?」 そう、私が知る限り、日本中で、君だけだよ。

 

だってさ、チョッと考えてごらん。前の仕事までは、その水目盛りで正常に

印刷出来てたワケでしょう。って事は、現在の印刷機のコンディションなら、

そのままの水目盛りで印刷可能って考えるのが普通だよねぇ。それをさぁ、

20目盛りも上げてスタートさせるって方が、明らかに異常じゃん。

 

20目盛りも多目に出してしまった湿し水は、どこに行くと思う?それはねぇ、

全てインキの中に入り込んでしまうんだよ。つまりね、せっかく新しいインキを

ローラー上に撒いたのに、最初っから多目の水で、新しいインキをダメにして

しまってるって事なんだよ。それじゃ、まともな印刷には成らんよねぇ。

 

「でも、オレ、このやり方で3年以上もやってるし、普通に刷れてますよ~。」

君にとって、君の印刷物の品質は「普通」なのかも知れんけどさ、私の目で

見ると、これには100点満点中、30点程度の、落第点しかあげられない。

今の君の技術力からすれば、その20目盛りアップだけを、やめれば、すぐ

70点以上の品質にまで上げられると思うよ。

 

「でも、20アップしないと汚れます。」・・・だから、最初にインキを出し過ぎて

しまってるんだよ。もっと少な目にインキを出しておけば、20アップなんて、

しなくても汚れる事は無いよ。まだ淡いけど、汚れが、ほんの少し出てるって

言う状態を作ってみてごらん。「それだと、版がダメに成ってしまいます。」

おいおい、そりゃ君の上司が若い頃の、性能が悪い時代の版だろう~。

 

今時の高性能な版で、そんな事は起きないよ。と言うよりもね、君の上司が

ダメにしてしまっていたのは、版ではなくて、インキの方なんだよ。多過ぎる

水が、インキを乳化させてしまって、インキ本来の性能を損ね、地汚れ等を

誘発させてしまっていたんだ。インキも水も、多過ぎるのは最悪だよ。

 

彼は私の話に納得し、次の仕事を20目盛りアップ無しで、やってくれました。

「あッ!これイイですねぇ!この方が断然、刷りやすいッ!」・・・それが一発で

分かるってのは、君に本当の実力が有るって言う証拠だね。品質も全く違う

って分かるかな?「インキの乗りが、ぜんぜん違いますわ~ッ!」

 

凄いねッ、君も今日から、「違いの分かる男」の仲間入りだねッ!ダバダ~♪

数年前、指導させて頂いていた印刷工場さんが有りました。

そこに、めっちゃデカい(背が高い)新人さんがおりまして。異業種から初めて、

印刷業界に入り、まだ入社後数ヶ月と言う時でした。デカい身体で工場内を

元気に走り回り、いつも明るくて、とても爽やかな「元気君」だったんですよ。

 

数年後、再びその工場さんを訪れると・・・。居ました、居ました、私の大好きな

デカい身体の元気君。いや~、久し振りだねぇ、相変わらず元気でやってる?

「・・・。」 なぜなのか、元気君がメッチャ沈んでしまっています。どうかしたの?

 

「オレ、印刷の仕事が合わないようなので、会社を辞めようかと思ってます。」

ん?あんなに楽しそうに仕事してたのに、何がどう変わってしまったのかな?

「実は先月から、機長に成らせてもらったんです。そしたらミスだらけで、何を

やってもウマく行かなくて。先輩や会社の人達に迷惑掛けてばかりで・・・。」

 

人一倍、気遣いをする元気君にとって、仲間や先輩に迷惑を掛けるって言う

のは、こりゃ何よりも辛い事だと思います。周りが、いい人ばかりで、本当に

良い職場に入れました!って喜んでた彼にとって、自分のミスで、検品だとか、

刷り直しだとかで迷惑を掛けるって言うのは、本当に辛いでしょうねぇ。

 

「どうやってもウマく刷る事が出来ないんですよ。裏移りしてしまったり、汚れが

出てどうしようも無く成ってしまったり。先輩達がいろいろ教えてくれるんですが

オレに能力がないから、何をやっても失敗だらけで・・・」 おいおい、今、君の

目の前に居るのは、成田大先生様だぞッ!大先生が見てあげよう。(^^)v

 

彼が担当してるのは、菊全の2色機です。文字物も刷れば、包装紙や、ポップ

とかも刷るって感じなんですが、チョッと珍しい印刷機で、連続給水なんだけど、

インキ壺は、分割のリモートではなく、壺ネジ方式ってヤツなんですよ。正直ね、

今時、壺ネジって、こりゃ、初心者には、ケッコウ、ハードルが高いですよね。

 

彼の仕事ぶりを、黙って最初っから見ていました。壺ネジ方式ですから、まず

版の絵柄を見ながら、壺ネジを触ってインキの出し量を決める。と言う作業を

しなければ成りません。私は古い人間なので、当然の様に壺ネジ経験者です。

彼の壺ネジ調整を見て、あっ、こりゃダメだな。と、不調の根源を発見しました。

 

ウマく行かない根源は、その時点で発見出来ていたんですが、私の目の前で

失敗作を作ってもらった方が、指導しやすいので、まだしばらく黙って見てます。

一応の色調が整ったので「これで刷り出そうと思うんですが、どうでしょうか?」

 

そっか、んじゃ刷り出してみようか。でも、その前に、これから刷る紙ってさぁ、

予備紙とか、在庫の紙とか、ケッコウ有る紙かなぁ?「えッ?それを聞くって

ことは、このまま刷り出したら失敗するって事ですか?」あら、イイ勘してる!

そうだね、100%失敗するよ。どんどん濃く成って汚れる。んで、それを抑える

ために、水を多くするから、乾燥不良が起こって裏移りするよ。(^^)v

 

「いやいや、(^^)v じゃなくて、オレ、もうすでに失敗の原因を作ってしまってる

って事なんですか? 確かに、おっしゃる通り、いつも刷り出しから濃く成って

汚れてしまいますが、ここまでの作業で見抜けてしまうんですか?」

おいおい、だからさぁ、オレは成田大先生様だぞォ~(笑)。

 

インキを出し過ぎなんだよ。壺ネジってヤツはね、どんだけ開けるか?って

考えるより、どんだけ絞れるか?って考えて調整するんだよ。絞り気味にして

インキ壺元ローラーの回転量を上げて、濃さを調整するってのが基本だよ。

「そこがダメだって、見てるだけで分かっちゃうんですか?」おいおい、だから

オレは成田大先生様だ!つ~の。

 

インキ壺の元ローラーに、呼出しを着けると、元ローラーと呼び出し間でさ、

インキが引きちぎられた模様が、元ローラーに残るでしょう。その模様を見て

壺ネジの調整をするよね。それは分かってると思うんだけど、壺ネジを開け

過ぎた状態だと、その模様が厚過ぎてインキの出方が正確に判別出来ない

んだよ。だから、端から端まで平均的に出そうと思っても、本当に平均に成っ

てるか、判断がメッチャし難いよねぇ。

 

今の状態から、壺ネジを締め込んで、今の半分くらいの出方にしてごらん。

ほら、こんな薄いインキ被膜だと、端から端まで、平均にしようとした時に、

出方を判断するのが楽でしょう。基本はね、壺ネジを絞る事。絶対にインキ

を出し過ぎない事。それを実行するだけで、全てウマく行くよ。(^^)v

 

それから数か月後、またその工場さんにお邪魔する機会が有ったんですが、

あの元気君が、明るい声で挨拶してくれました。工場長さんの話では、私が

指導してから絶好調なのだそうで、明るさが戻りました。との事。

 

元気君、印刷、楽しい?「メッチャ楽しいッス!」 そう、そりゃ良かった!

・・・印刷技術ってね、思うように出来れば、こんな楽しい技術はないッ!

ってくらい楽しい技術だと思います。だってね、何も無い、真っ白な用紙に、

自分の技量で色を着けて行くんですから、こりゃ遣り甲斐が有りますよ!

他のサイトで仕事の話をしてて、気付いた~。

日曜の夜ってイヤだと思う人が多いんだねぇ。
「また、明日から仕事か~」ってな感じ。
特に、厄介な仕事が有る日の前日は、憂鬱。

オレ、変態なのかなぁ?

オレ達の時代、休みは日曜しかなくて、
祝日とかと重なって連休に成ると、もう
印刷機が触りたくてウズウズしてた~。
だから月曜の朝は一番嬉しい時だったし、
正月休みに、ナイショで工場に行って
印刷機を磨いたりしてた。

厄介な仕事や、難しい仕事が有ると、もう
嬉しくて嬉しくて。どうやって攻略しよう
かと想像し出すと、夜も眠れないくらいに
楽しかった~。

それがオレにとって普通だから、みんなも
きっと、そうなんだろうなぁと思ってた~。
オレは異常なくらいに、印刷機が好きだし、
周辺機器や、溶剤や資材なんかも大好き。
それより何より印刷する事が好きなんやね。

こんな変態だから、講師が出来るのかも
知れんけど、こんな変態に指導される
普通の人ってきっと大変なんだろうねぇ(笑)。

でもね、やっぱり、印刷は楽しいよ。(^_^)v

中学生の頃、私は、数学の先生に成りたかったんですよ~。数学が好きだった。

って理由も有るんですが、その当時に、私に数学を教えてくれた先生が、メッチャ

個性的な先生ばかりで、自分が数学教師に成ったら、絶対、この人達より上手に

数学の授業をやってみせるッ!なんて言う、思いが有りました(笑)。

 

んでもね、六人兄弟の末っ子である私に、大学へ行かせてもらえる程の余裕は

無くて、あっさり断念しちゃいました。そして就職した印刷業界。私が若い頃は、

印刷の技術セミナーが、年に数回有りましてね。あと、工業指導所?さん主催の

中期セミナーなんてのも有り、私は、そのほとんどに出席させて頂いていました。

 

しかしです。このセミナーの講師さん達が、これまた個性的な方達が多くてねぇ。

「この先生、今、自分で言ってる事、絶対に理解出来てないよなぁ」って思える

場面が、しばしば有ったり、最後まで、ホワイトボードと、にらめっこ状態で、生徒

である我々の方に、一度も視線を向けない先生が居たりってな感じでした。

 

そう成ると、またまた、私の「先生に成りたい!」願望が、ムクムクと起き上がる

ってワケですよね~。オレだったら、この講師よりも、もっと良いセミナーをやって

みせるぞッ!ってな感じですよ(笑)。(まぁ私もメッチャ個性的な講師ですが・・)

 

皆さんも、きっとそうだと思うんですが、自分が知ってる事、苦労して覚えた事

ってのを、人に教えるのって、ケッコウ楽しいって思いません?そりゃ仕事に

限らず、趣味の世界なんかだと、本当にそうだと思います。 「いや、この時の

炭次郎のセリフにはねぇ、こんな奥深い裏が隠されててさぁ~! でね・・・」

なんて、いつまでも、話が尽きませんよね。

 

昔の友人に、「新幹線オタク」が居まして。コイツに捕まると、最低1時間はね、

新幹線の話を聞かされる事に成るんですが、これがケッコウ楽しくて、ついつい

聞き入ってしまうんです。自分では興味が無い事でも、あれだけ詳しく、内容も

濃い話をされてしまうと、もう本当に引き込まれてしまうんですよねぇ~。

 

「下手の横好き」 「好きこそ物の上手なれ」 なんて言葉が有ります。対局の

意味の言葉なんですが、この両方共の人達の話、私は、どっちの話を聞くのも

好きなんですよ。ああ、これだから、この人は「下手の横好き」って言われるん

だなぁ~、でも、内容的にはメチャクチャおもしろいんだけどなぁとか、さすがは

「物の上手」と言われるだけの事は有るッ!なんてね。

 

話してる内容のレベルが高いとか、ケッコウ幼稚だとか、そんな事は、どうでも

イイんですよ。その人の熱量って言うか、情熱が伝わって来れば、それだけで、

こりゃもう充分に、おもしろいし、聞くに値する内容にまで、昇華するんですわ。

 

その逆なのが、どこかに書いて有った事の、まるで棒読みの様な話。こう言う

のってね、文章に成っても分かりますよね。コイツ、この内容、自分の中でも

消化不良を起こしてる~。そんな状態で文章を書いたって、何も人に伝わる

わけが無いのになぁ。と、途中で読むのをやめたく成るような文章。

 

文章なんて、ヘタでも何でもいいんですよ。情熱やパワーや、温もりなんかが、

その文章に溢れてれば、必ず、思いが伝わりますよね (^^)v。その逆にね、

どれほど必死に調べた事か知らんけど、棒読みの文章からは何も伝わらない。

読んで行くのが苦痛なだけの文章です。

 

人に伝えたい!教えたい!こんな思いを残して行きたい!こんな失敗談を

是非とも聞いてくれ!君が次に失敗しないように活かしてくれ!君が印刷を

好きに成ってくれるために、こんな話を聞いてくれ!

 

そんな情熱に溢れた文章や話が私は大好きです。そして、そう言う方達って

すでにもう、「教師」「先生」なんですよね。そう言う方達の熱い思いが伝わる

ことによって、どれほど多くの印刷仲間が救われることか。

 

様々な制約が有って、発信したくても発信出来ない方達も沢山、おられます。

印刷系のブログ等は決して多くは有りませんが、発信を許されている我々は、

一人でも多くの、印刷仲間のためを思い、ブログを続けて行きたい!

 そう思っております。

多くの産業で、後継者問題に悩んでいます。特に景気が悪い業種には、

若い人達が来てくれません。稀に来てくれたかと思えば、2~3ヵ月後には、

辞めてしまう。その業界に魅力が無い。現場が、3K、5Kなのでイヤだ。

 

理由は様々かと思うのですが、2~3ヵ月で辞めてしまう部分に関しては、

若い人達を迎え入れる、我々の側に問題が、多い様に思うんですよ。

印刷会社の大多数は、中小零細の企業です。中小零細に、余剰人員は、

こりゃ居ないですよねぇ。皆んな、日々の仕事に追われています。

 

そんな所へ、印刷現場の用語を、何一つ知らない、新卒者が入って来る。

「ウエス取ってくれる」・・・ウエスって何ですか? 「この版の原稿もらって

来てくれるか~」・・・版?原稿?どこの誰からもらって来るんですか?

「まぁ、いいや、今日は一日、そこで見学しててくれ」

 

正直なところ、邪魔です。そんな何も分からんヤツの相手をしてるヒマは

ないんですよ。だから、次の日も見学ですわ。・・・そりゃね、辞めちゃいますよ。

何も教えてくれない。朝から晩まで、見学と言う名前で立たされているだけの

明かな邪魔者。そんな中で、自分と言う存在は必要なのか?誰かに自分の

存在価値を認めてもらえるのか?不安は山ほど有っても、希望は全く無い。

 

私の知り合いは、自分が工場長時代に、3ヵ月間の新人研修を行ったのだ

そうです。紙とは何か。印刷の原理は。印刷機の稼動時の注意点。インキの

扱い方。版の扱い方。のみならず、会社とは何か?社会人とは何か?など、

それらを、みっちり教え込んで新卒者を現場に送り出して行ったんだそうです。

そうしたらね、その新人さん達、誰一人、辞める事無くて、今は、その子達が

主力に成って、現場を回しているのだそうです。

 

新卒の社会人1年生の子達は他の誰よりも、やる気に満ちていると言われて

います。その、やる気を摘んでしまうのが、我々、先輩達なんですよ。もうすぐ

新入生の季節がやって来ます。皆さんの会社に、新卒の人が入って来るか

どうかは分かりませんが、もし入って来るのであれば、今の内から新人研修

ってヤツを、真剣に計画してやって下さい。

 

人は「人材」と言いますが、育て方一つで、「人財」と言う、素晴らしい財産に

成ってくれる事も有れば、逆に「人罪」と言うモノに成ってしまう事も有ります。

 

最初の教育が、とても大切だと思うんですよ。「印刷業界は若い人の定着率

が悪い」と嘆く前に、どうすれば定着してくれるかを考える。印刷技術とか、

印刷関連技術ってのは、理解が出来て、自分一人で出来るように成れば、

とても、おもしろく、意欲を持って取り組める仕事だと、私は思っています。