印刷技術 後継者問題 | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

多くの産業で、後継者問題に悩んでいます。特に景気が悪い業種には、

若い人達が来てくれません。稀に来てくれたかと思えば、2~3ヵ月後には、

辞めてしまう。その業界に魅力が無い。現場が、3K、5Kなのでイヤだ。

 

理由は様々かと思うのですが、2~3ヵ月で辞めてしまう部分に関しては、

若い人達を迎え入れる、我々の側に問題が、多い様に思うんですよ。

印刷会社の大多数は、中小零細の企業です。中小零細に、余剰人員は、

こりゃ居ないですよねぇ。皆んな、日々の仕事に追われています。

 

そんな所へ、印刷現場の用語を、何一つ知らない、新卒者が入って来る。

「ウエス取ってくれる」・・・ウエスって何ですか? 「この版の原稿もらって

来てくれるか~」・・・版?原稿?どこの誰からもらって来るんですか?

「まぁ、いいや、今日は一日、そこで見学しててくれ」

 

正直なところ、邪魔です。そんな何も分からんヤツの相手をしてるヒマは

ないんですよ。だから、次の日も見学ですわ。・・・そりゃね、辞めちゃいますよ。

何も教えてくれない。朝から晩まで、見学と言う名前で立たされているだけの

明かな邪魔者。そんな中で、自分と言う存在は必要なのか?誰かに自分の

存在価値を認めてもらえるのか?不安は山ほど有っても、希望は全く無い。

 

私の知り合いは、自分が工場長時代に、3ヵ月間の新人研修を行ったのだ

そうです。紙とは何か。印刷の原理は。印刷機の稼動時の注意点。インキの

扱い方。版の扱い方。のみならず、会社とは何か?社会人とは何か?など、

それらを、みっちり教え込んで新卒者を現場に送り出して行ったんだそうです。

そうしたらね、その新人さん達、誰一人、辞める事無くて、今は、その子達が

主力に成って、現場を回しているのだそうです。

 

新卒の社会人1年生の子達は他の誰よりも、やる気に満ちていると言われて

います。その、やる気を摘んでしまうのが、我々、先輩達なんですよ。もうすぐ

新入生の季節がやって来ます。皆さんの会社に、新卒の人が入って来るか

どうかは分かりませんが、もし入って来るのであれば、今の内から新人研修

ってヤツを、真剣に計画してやって下さい。

 

人は「人材」と言いますが、育て方一つで、「人財」と言う、素晴らしい財産に

成ってくれる事も有れば、逆に「人罪」と言うモノに成ってしまう事も有ります。

 

最初の教育が、とても大切だと思うんですよ。「印刷業界は若い人の定着率

が悪い」と嘆く前に、どうすれば定着してくれるかを考える。印刷技術とか、

印刷関連技術ってのは、理解が出来て、自分一人で出来るように成れば、

とても、おもしろく、意欲を持って取り組める仕事だと、私は思っています。