印刷技術 一番アカンこと | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

どんな事でも、そうだと思うんですが、「これは絶対にやっちゃアカン事」ってのが

有ったりしますよね。例えば車の運転ならば、酒を飲んで運転するのは、絶対に

やっちゃアカン事だし、政府のお達しで時短営業をしている酒場に、国会議員が

夜遅くに複数人で飲みに行くなんてのも、絶対にやっちゃアカン事ですわね。

 

公の電波(テレビ)で、公然と女性蔑視の様な発言をする。しかもそれが日本を

代表する人物で、そのお詫び会見で逆ギレするなんてのは、やっちゃアカン事

の領域を通り過ぎ、呆れてものが言えん。って感じです。古き昭和の時代から

抜け出す事の出来ない年寄りは、公の場から消えるべきだと私は思っています。

その年寄りの実力が、まだ必要であるならば裏方に徹してもらうべきでしょう。

 

我々のオフセット印刷の技術の中にも、これらに匹敵するほど、絶対にやっちゃ

アカン事ってのがイッパイ有ります。凄く簡単な話、例えば二枚差ししてしまった

印刷物を製品に入れてしまうなんて、こりゃ絶対にやっちゃアカン事ですよね。

版傷の入った物、汚れが出た物、こんなのが製品に入るのもアカン事です。

そうした事を防ぐ為、各現場ごとに様々なチェック項目が作られていますよね。

 

でもね、私が思うに、これらと匹敵するか、もしくはこれら以上に、絶対にやっちゃ

アカン事ってのが有ります。それが「多過ぎるインキと、多過ぎる湿し水の状態を

作り出してしまうこと」 なんですよ。・・・インキを多く出し過ぎてしまった。これは、

汚れてくれ~!と言ってるのと同じだから、当然の様に汚れが発生する。汚れが

出れば湿し水を多くして対応する。

 

「なんで?そんなの当たり前だよ。汚れたら水を多くする。淡ければインキを盛る。

そんなの当たり前の話なのに、なんでそれが絶対にやっちゃアカン事なの?」

・・・全国のオペレータの、約半数くらいが真顔で、こう言います。

 

古き昭和時代の、しかもモルトン水棒での刷り方。そんな技法から抜け出す事が

出来ない人達。これね、半分は仕方の無い話だと思うんです。印刷技術は誰から

教わったのか?って考えた場合、多くは自社の先輩からなんですわ。その先輩も、

そのまた上の先輩から教わっている。印刷機のシステムは連続給水へと進化して

いるのに、それを扱う技法は諸先輩から教わったモルトン水棒での技法が延々と

受け継がれてしまっているんですわ。

 

これね、私に言わせれば、非常に滑稽な状態なんですよ。・・・男尊女卑ってまでは

行かないまでも、男女間で大きな給料格差、就業格差が有った昭和時代。そんな

昭和時代の常識から抜け出せていないから、公の場で、あんな発言を平気でして

しまう83歳の爺さん。しかも逆ギレ会見。これ、見てて非常に滑稽ですわ~。

 

あの爺さんは辞めるべきだ!なんて声も上がってますが、私に言わせれば昭和の

モルトン水棒の刷り方から進化出来ないオペレータも、さっさと身を引け!と言い

たく成ってしまうんですよ。「汚れたら水を多くする。淡ければインキを盛る」そんな

モルトン時代の刷り方から抜け出せないのなら、連続給水を正しく使う事は無理。

自分の頭を切り替える事が出来ないのであれば、黙って去れ!何よりも、そんな

古い頭の先輩から印刷技術を指導される後輩君達が可哀そうだ。

 

絶対に、多過ぎるインキと、多過ぎる水の状態を作るな!この状態を作れば今の

連続給水システムは簡単に破綻し、様々なトラブルを生む事と成る。とにかくまず、

インキを出す量を少なくせよ。「まだ淡いけど、少し汚れている」と言う状態を作れ。

それが、頭を切り替える為の、最初の原点だ。その原点から、少しづつ、インキも

水も多くして行って、最少量のインキと、最少量の湿し水をバランスさせて色調を

整えて行け。それが連続給水を使いこなす為の最低限の手法だと心得よ。

 

技術者が、古い技法から抜け出せなく成ってしまったら、こりゃ終わりなんですよ。

機械も資材も、紙等の材料も、どんどん変わって行きます。技術者ってのはね、

それらの変化に対し、愚痴を言ってる暇なんて無いんですわ。「これ絶対に前の

ヤツの方が良かったよなぁ。こんな改良するから、クレーム品を作っちまったよ」

 

変化に対し、柔軟に対応し続けること。それが技術者に求められる、最も重要な

要素の一つなんですよ。変化が受け入れられない者。柔軟性が無く過去に固執

してしまって成長が出来ない者。それらを技術者とは呼ばないどころか、邪魔者、

粗大ゴミ化して、掃いて消し去ってしまいたい存在なんですよ。どうか今一度、

自分自身の「技術」に対する姿勢を、初歩から見つめ直してみて欲しい。それが

出来れば、こんな厳しい時代でも印刷現場のパワーで、印刷会社を盛り上げる

事が出来るのだと、そう思っています。