印刷技術 濃度計の落とし穴 | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

今時の印刷機には、濃度計が付いていて、それで、色調管理をするのが

当り前の様に成ってますよね。一昔前まで、濃度計なんてのは超高値で、

なかなか買ってもらえなかったんですが、今はイイ時代に成りました~。

 

でもね、この濃度計ってヤツ、様々な落とし穴が有ります。まずは、個体差。

新品の時から個体差が有ると言う意味では無くて、何のメンテもせず、ただ

使っているだけだと、レンズ部分が汚れたり劣化したり、キャリブレーション

(校正)が狂ったりして、正常な数値が出なく成ってしまう事が有ります。

 

もし、印刷機が2台有って、そのどちらにも濃度計が付いてたら、1台の方で

計測して、その同じ印刷物を、もう1台の方でも計測してみて下さい。正常で

あるならば、同じ数値が出て当然なんですが、これが、なかなか・・・。

 

どちらかが狂ってる(または両方とも狂ってる)って事ですよね。とりあえずは、

新台の時に付属している、校正用のグッズ等で、キャリブレーションを確認

して修正してみて下さい。まぁそれでも2台がバッチリ合うってのは、なかなか

難しいのですが、せめて近似値に成るようにはしたいですよね。

 

でも、そんな事よりも、もっと大きな問題は、今、自分が印刷しているベタが、

本当にキレイなベタに成っているのか?って言う点なんですわ。濃度計って

言うのは、パッチのベタ部分を計測して、ベタ濃度を表すのが基本です。

 

この基本に成るベタ部分が、本当にキレイなベタで印刷されていれば問題は

無いんですが、例えば白抜けがチラホラ出てしまってベタなのに紙白の部分

が小さくポツポツと覗いてしまっている様な状態。これはね、アカンですよね。

 

濃度計(反射濃度計)ってヤツは、ベタ部分に光を当てて、その光がナンボ

反射して来るのか、その反射された光の量で、濃度の数値を表しています。

例えば、100って言う強さの光をベタに当てて、90吸収され、10だけ反射

された場合、これが、濃度1.0 なんですわ。99吸収されて、1だけ反射され

た場合が、濃度2.0 って言う計算に成ります。99.9吸収されて0.1だけ反射

された時が、濃度3.0 ってな具合なんですよ。

 

例えば、濃度1.50 で刷りたいとしましょう。この時、キレイなベタであればね、

問題は無いんですが、ベタの中に小さな白抜けがポツポツ有ったとしましょう。

「なんやこれ、白抜けが有るやん。この印刷ヘタクソやなぁ~。しゃ~ないから、

数値の表示も、オマケしといたろか~」等と、濃度計は考えてくれませんわね。

 

小さな白抜けも、ベタの一部として読み取ってしまいますから、本当は1.50の

濃度が出ているのに、白抜けの分だけマイナスされて、1.40 等と言う表示に

成ってしまいます。それを見たヘタクソオペレータ君は「ありゃ濃度が足らんわ、

しゃ~ないなぁ、もう少しインキ盛っとこか~」 とか言って、インキを盛る事と

成ってしまうワケなんですよ。・・・こりゃアカンですわね。

 

本当は1.50 の正常濃度が出ているのに、湿し水が多過ぎる等の原因により、

ベタ内に白抜けが出てしまって、1.40 と言う表示に成ってしまっている、こりゃ

淡いと判断しインキを盛って濃くする。必要以上にインキを盛ってしまっている

から、網点が太り(ドットゲイン)、色調が出なく成ってしまうってワケです。

 

濃度計を使って、色調を整えようとしているのに、ベタがダメだと、色調が整う

どころか、目標の色調から大きく外れて行ってしまう場合も有るってワケです。

ですからね、濃度計を使う場合は、必ず、ベタ部分をルーペ(25倍位)で見て、

白抜け等が無い、キレイなベタである事を確認してから、使うようにして下さい。

 

「ええッ!25倍のルーペって、網点を見る為の物じゃないの?」・・・私は常に

25倍のルーペを携帯していますが、それで印刷物を見る際には、必ずベタを

真っ先に見るようにしています。ベタがベタではなく、FMスクリーンの95%の

様なベタに成ってしまっている物が沢山有ります。是非、皆さんもね、自分の

印刷物のベタを、ルーペで覗いてやって下さいませ。