大分前、旧ルールのときに、「遅い」は漢字表記、「おくれる」は平仮名表記で間違いやすいという記事を書いたことがあります。
そのうちの「おくれる」が、このたびの改訂で漢字表記になり、さらに使い分けが必要となりました。
私は本当にこういうのが駄目で、「漢字表記になった」という事実を覚えるのみで手いっぱいになってしまい「後れる」との使い分けが必要であることがすっぽり頭から抜けてしまいます。
しかもこれが用字用例辞典では「後れる」のほうは「限定使用」という注意と「人に後れをとる」「立ち後れる」「後れ毛」「気後れ」「手後れ」という用例だけ書いてありまして、出現頻度が少ない上にどういう使い分けなのかさっぱり分からないわけであります。
そこで、まずいつものようにデジタル大辞泉より引用してみますと、
1 他のものよりあとになる。取り残される。「前の走者に―・れまいとして必死に走る」「流行に―・れる」「勉強が人より―・れる」
2 進み方が標準・基準より遅くなる。「今年は開花が―・れている」「時計が―・れている」⇔進む。
3 決められた時刻・期限よりあとになる。また、それに間に合わない。「出発時間が―・れる」「門限に―・れる」
4 (後れる)親しい人に先立たれる。自分だけが生き残る。「妻に―・れる」
5 (後れる)気おくれがする。臆する。
(以下略)
ということで、4と5の意味は日本語としては「後れる」と記載するものであるようですが、用字用例辞典に記載してある用例と比べてもいま一つ書き分けのルールがつかめません。
というわけで先日購入した「言葉に関する問答集」を見てみたんですが、用字用例辞典で「後れる」と表記すべきとされているものは、「言葉に関する問答集」で「後れる」とされているもののうちの一部であるようで、若干書き分けの仕方が異なりました。
ただ、この「言葉に関する問答集」には、「後」の字は「他のものより後になる」「他のものの後から行く」という意味を持っていることから、「他の人より後から進む」ことである「人に後れを取る」は「後れ」で表記し、「何かしようとするときに心がひるむ」ことである「気後れ」は、「本来進むべき位置よりも後になる」と考えるためこれも「後」で表記し、「後れ毛」は「後から生えた毛」と考えるため「後」で表記し、「後ればせ」は「後になって駆けつける」というのが本来の意味である」ために「後」で表記するという旨の記載がありまして、これを読んで初めて私の中でこの一見ばらばらに見える「後れる」の用例が一つにつながった気がします。
とはいえ、「何ゆえにそんな小難しいことをするのか」というのが私個人の正直な感想でありますから、これが私の脳内ですんなり変換できるようになる日ははるか先のことでしょう。おおむね一括変換で何とかなるにしても、書き分けを覚えるためにも、出てくるたび丁寧に用字用例辞典を確認するという地道な努力しかないだろうと考えています。