はじめに

今回の投稿は、日本における英語の立ち位置についてです。以下の論文を読んだので、その内容を簡単に紹介しつつ、自分の考えを述べていきたいと思います。

 

Ku, E. K., Furukawa, G., & Hiramoto, M. (2021). "EFL+ α”: Attitudes towards English use in Japan around necessity, value, and ability. International Journal of TESOL Studies3(3), 153-168

 

日本人にとって英語とはなんなのでしょうか?英語学習・教育に関わったことがある人(つまり、全日本人?)は、それぞれ考えがあるのではないでしょうか。

そういったことを研究したものが、今回紹介する論文です!

では早速見ていきましょう!

 

 

  日本における英語とは?

この論文の結論から述べると、

 

「日本における英語は「複雑」な状態であり、そのため様々な態度が英語に対して向けられている」

 

ということになります。少し詳しく見ていきましょう!

 

英語は複雑なもの

「複雑」とはどういうことかというと、日本において英語は当然「外国語」ではあるものの、「カタカナ語」として取り入れられています。その数はますます増える一方ですし、日本語特有の使い方(ある意味では「誤用」)も見られます。そのため英語は、ある意味日本語の一部になっているともいえます。

 

また、「英語」と一口にいっても、特に教育現場においては「英語」と「英会話」は別物のようにして考えられている節があります。前者はいわゆる「学力」と結びつき、後者は「コミュニケーション能力」と結びつきます。本来そのどちらもが必要(さらにいうと、ことばであるならば後者がより重要?)ですが、前者の学力とみなされる英語は特に価値の高いものとされる傾向にあります。

 

こういった状態なので、この論文では日本における英語のことを"EFL+α"と呼んでいます。「EFL」は「外国語としての英語」で、「+α」は「それ以上の意味や価値」という意味です。

これはいかに日本における英語の扱われ方が「特殊」なのかを示していると思います。

 

英語に対する様々な態度

この研究の面白いところは、英語に対する態度を調査する資料に、いろいろなものを取り入れていることです。たとえば、文部科学省の文書はもちろんのこと、そのほかにYahoo!知恵袋、教育学者の意見、求人サイト、ブログやvlogなどを分析しています

 

そこで議論されていることは、たとえば英語が「必要」であるという立場や(例えば学問において)、反対に過剰に必要とされているという立場(たとえば大学受験において)など、様々な態度が見られました。

 

このような議論は、研究など読まなくても日常の中で経験していることだと思います。「chat GPTもあるし、英語なんていらなくなる」「英語ができると年収が〇〇○万円UP」「理系も文系も、大学入試では英語ができないと話にならない」など、耳にタコができるくらい聞く議論です。

 

ただそのようなことを「フォーマル」に分析したことには研究的意義があると思いますし、紹介されていたものの中でも就活サイトの内容が衝撃的でした。

 

それは、帰国子女や留学生に対し、「英語バカはだめだ」というメッセージを発しているそうです。英語ができると就職には有利に働くはずなのに、就活サイトがこのようにいうのは驚きですよね。

このサイトは帰国子女や留学生が日本文化に違和感を感じてしまうことに警鐘を鳴らしているようです。文化と英語力が密接に結びついていることを暗示していますね。

 

他にも気になる内容がありましたが、長くなってしまうのでこの辺にしておきます。

興味のある方はぜひ読んでみてください!

 

  おわりに

最後になりますが、この論文のなかにはidentityという言葉も出てきていました。

いろいろな立場があるようですが、僕も日本における英語使用(カタカナ語や誤用と思われるJapanese Englishも含めて)は、日本語のidentityであるという立場です。

 

日本人は英語が苦手、日本語しか話せないといったネガティブな捉えられ方をよく見ますが、日本語の中にも英語は入ってきています。

 

ことばは情緒の交換をベースに情報を交換するものなので(吉村, 2017)、意図を持って言葉を選んでいるのなら、カタカナ語であっても拙い英語であっても、それはidentityとして誇っていいものなのだと思っています。

世界的に見ても日本における英語の存在はユニークで、Japanese Englishは"EFL+α"でありますが、それもまた日本人の誇るべきidentityです。

 

これからも自信を持って英語を学び、教えていきたいですね!

 

 

 

参考文献

吉村誠 (2017). 『お笑い芸人の言語学: テレビから読み解く「ことば」の空間』ナカニシヤ出版.

Ku, E. K., Furukawa, G., & Hiramoto, M. (2021). "EFL+ α”: Attitudes towards English use in Japan around necessity, value, and ability. International Journal of TESOL Studies3(3), 153-168