2011年1月18日国立がん研究センターと株式会社CICSはホウ素中性子捕捉療法
共同開発を行うというニュースが流れました。
http://lohasmedical.jp/news/2011/01/19042437.php
ここ数年で最大のニュースと受け止めています。詳細は追って記載しますが、
取り急ぎ報道の全文を記載しておきます。

・国立がん研究センターが確実に変わりつつあることが実感できました。
・おそらくCICS側は技術的にはなんら新しいことはやっていませんが巨大資本が
 医療技術開発に参入し、それを国立がん研究センターが応じたという点が斬新です。
・今回の開発目標はBNCTの実力の恐らく20%程度に留まると思いますが、
 なにしろ「動き始めた」という事実は画期的です。
・今後、中医協の議論は全て注意する必要があると思います。
・BNCTの承認が重粒子の承認にも+の影響をもたらすとは思いますが、
 CICSを上回る技術レベルを国内研究者で実現すれば重粒子は必要なくなる
 かも知れません。

とにかく大きなニュースであることは間違いないと思います。
study2007

ーーーーーーーー記事全文ーーーーーーーーーーーーー

■がん治療の救世主となるか、「ホウ素中性子捕捉療法」■

国立がん研究センター(嘉山孝正理事長)は1月18日、株式会社CICS(本社:東京都江東区、今堀良夫社長)との間で、「ホウ素中性子捕捉療法による新たな先端的がん治療法の確立を目的とした共同研究契約」の調印式を行った。同センターの管理棟1階会議室には50人を超える報道関係者らが集まった。

 冒頭の挨拶で、嘉山理事長は「新生・国立がん研究センターとして国民の健康ために新しい機器・医薬品の開発をするのは使命。従来の標準的医療ではなく先進医療をやる。世界初、日本初をがんの領域で行う」と述べた。

 同センターが取り組むのは、がん細胞のみに限定して放射線を当てる「ホウ素中性子捕捉療法」。放射線の一種である「中性子」を発生させるために原子炉が必要であることなどがネックで進まなかったが、同センター内に設置する小型の「加速器」を使うことで、同治療法の弱点を克服できるという。
 
 早ければ2012年度内に臨床試験に着手し、薬事法上の承認を目指す。悪性脳腫瘍に限らず、膵臓がんや肺がんなど「ホウ素が集積する悪性腫瘍」であれば広く対象に加え、「どなたでもPET(検査)で我々が(適応を)確認すればトライアルする」(嘉山理事長)としている。

 「ホウ素中性子捕捉療法」について、同センター中央病院の伊丹純・放射線治療科長は「病院設置型、加速器、BNCT、この3つが合わさるとまさに世界初」と説明、「(ホウ素中性子捕捉療法は)アメリカではもう捨てている技術だが、日本では大きな業績を上げている。それを統計学的に、まさに世界水準の先端的ながん治療法を確立して、我が国初の技術として世界の市場に打って出ていく」と抱負を語った。

 嘉山理事長は「今までの国立がん研究センターの歴史的なものも蓄積した上で今日の発表、(契約)締結ができた」と評価。産学官連携の重要性に触れながら、「今までの縦の研究を横に貫いた研究の成果が出てきたとご理解願いたい」と締めくくった。


■ 「標準的医療ではなく先進医療をやる」 ─ 嘉山理事長
 

[加藤雅志・国立がん研究センター企画戦略室副室長]
 皆様、大変お待たせしました。定刻となりましたので、ただ今から、国立がん研究センターと株式会社CICS間の世界初となる加速器を用いた「ホウ素中性子捕捉療法」(BNCT)の共同研究契約に関する調印式を始めさせていただきます。

 それでは、まずはじめに出席者の紹介をさせていただきます。

 独立行政法人国立がん研究センター理事長、嘉山孝正でございます。
 理事長特任補佐の堺田正樹でございます。
 企画戦略室室長、成田善孝でございます。
 中央病院・放射線治療科、伊丹純でございます。

 株式会社CICS・代表取締役社長、今堀良夫でございます。
 代表取締役副社長、伏見有貴でございます。
 取締役、藤井亮でございます。

 そして私、本日の司会を担当いたします、国立がん研究センター企画戦略室副室長および広報室長の加藤雅志でございます。よろしくお願いいたします。

 それではまずはじめに、今回のBNCT(Boron Neutron Capture Therapy、ホウ素中性子捕捉療法)に関する共同研究について、国立がん研究センター理事長・嘉山孝正よりご挨拶を申し上げます。よろしくお願いいたします。

[嘉山孝正・国立がん研究センター理事長]
 それでは、申し訳ありませんが座ってお話しさせていただきます。資料を見ていただきたいのですが、ここに今日の情報公開の1つの目的が書いてございます。

 そもそも、この共同研究の基になりますのは、(厚生労働科学研究費補助金)「医療機器開発推進研究事業」というものでした。

 それ以前はですね、これは平成20年から始まったのですが......。私が着任したのは平成22年なので、それ以前からされていたのですが、その内容を全く変えました。

 というのは、この「医療機器開発推進研究事業」以前に、全部で6年間、(厚生労働科学研究費補助金)「身体機能解析・補助・代替機器開発研究事業」を......。

 簡単に言うと、「医療の新しいハードを研究して形にしなさい」という研究費が当時、国立がん研究センターに与えられていたのですが、私が(平成22年4月に)まいりまして調べたところ、ほとんど業績が上がっていない。

 ということで、平成20年から始まっていたものも見直しをかけて、急きょ厚労省の許可を得まして、「高度医療技術の効率化および標準化に関する研究」というものに変えました。その中身が、本日ご発表するものでございます。

 したがいまして、(昨年4月に)独立行政法人となった「新生・国立がん研究センター」として、国民の健康ために新しい機器・医薬品の開発をするのは使命です。従来の標準的医療ではなく先進医療をやるんだということを、私が(昨年4月)1日に皆様にお約束をしました。

 その第一歩を今日踏み出すことになったので、ご報告するわけでございます。(ホウ素中性子捕捉療法について)詳しくは、伊丹君からお話しさせていただきますが......。


■ 「世界初、日本初をがんの領域で行う」 ─ 嘉山理事長
 

[嘉山孝正・国立がん研究センター理事長]
 なぜ、これが最初になったかと言うと、歴史的なものがございます。私自身は脳神経外科の専門医でございますが、実はもう1つの武器として放射線を従来からずっとやっております。

 人間のがんが低酸素であることを世界で最初に証明したのは私でございます。その関係で放射線の関係も強く、(株式会社CICS代表取締役社長の)今堀先生を学会等々で従来から知っていたわけです。

 皆さんご存知のように、日本は全てのがんのわずか30%しか放射線治療を受けていない。ただ、間違ってはいけないのですが日本のがんの成績は世界一です。

 世界一ですが、弱点があるとすれば、日本は放射線の受診率が3割、アメリカが6割という差がある。それから、抗がん剤の専門医が少ない。この2つが弱点だったわけですが、そのうちの1つを大きく変革することができて、国民のための医療を推進することができると考えております。

 今回、機械はですね、(共同研究契約を)調印します今堀社長から寄附していただくということです。値段はまあ、あってないようなものですが......。
 「もし売るとすれば200億円前後だろう」とも言われているような機械を国立がん研究センターに寄附していただいて、国民の健康のために寄与するということになります。世界初で、日本から発進する最初の医療機器の開拓をこれからするということでございます。

 従って、「独立行政法人は国民のために寄与しなさい」という中期計画を(長妻昭・前厚労相)から与えられたわけですが、その1つが大きく推進できると私自身は思っています。

 本日は、様々なジャーナリストの皆さんにいろんな質問をしていただいて、それにお応えできるかどうかをまた確認したいと思っております。以上でございます。

 今日の意義としては、「世界初、日本初ということをがんの領域で行う」ということでございます。

[加藤雅志・企画戦略室副室長]
 それでは、世界初となる病院設置型加速器による「ホウ素中性子捕捉療法」(BNCT)の確立について、国立がん研究センター中央病院・放射線治療科の伊丹純よりご説明を申し上げます。よろしくお願いいたします。


■ 「病院設置型、加速器、BNCTで世界初」 ─ 伊丹科長
 

[伊丹純・国立がん研究センター中央病院放射線治療科科長]
 「世界初となる病院設置型加速器によるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」の確立について、お話しさせていただきます。先ほど(嘉山)理事長先生からお話がありましたように、「ホウ素中性子捕捉療法」自体は歴史が古うございます。

 ただ、それは原子炉でしかできなかった。中性子の起源が原子炉でしかできなかったわけです。それを加速器によって、しかも安全・小型化で、病院に設置しようということです。

 「病院設置型」「加速器」「BNCT」、この3つが合わさるとまさに世界初で、国立がん研究センター以外にはございません。ということで、その中身を説明したいと思います。

 まず、「ホウ素中性子捕捉療法」、BNCTと言うわけですけれども、これは2つの原理に基づいています。まず、人間のある種のがんというのは......。

 よく、ゴキブリ退治に(効果有りとされる)「ホウ酸団子」なんてありますが、ホウ素の化合物を点滴すると、ある種のがんは非常によくホウ素を集積するという性質があります。

 もう1つとして、ホウ素というのは熱中性子、中性子、熱外中性子という非常に低いエネルギーの中性子とよく反応して、核反応を起こす。
 細胞の中に取り込まれたホウ素化合物が中性子と反応して核反応を起こしてα線を出して......。重粒子ですよね。それによって細胞を殺していくわけです。

 ▼ 放射線の種類については、こちらを参照。

 ですから、ホウ素の化合物がある種のがんにしか取り込まれませんから、そこに熱中性子、熱外中性子を当てれば、そのがんだけに核反応が起こって、がんが死んでいくという原理です。

[嘉山孝正・国立がん研究センター理事長]
 BNCTが何の略かを......。

[伊丹純・中央病院放射線治療科科長]
 Boron Neutron Capture Therapyです。「ホウ素中性子捕捉療法」はBoron Neutron Capture TherapyでBNCTです。


■ 「ホウ素を集積したがん細胞だけ死滅」 ─ 伊丹科長
 

[伊丹純・国立がん研究センター中央病院放射線治療科科長]
 (スライドの)ポンチ絵をご覧ください。中性子が出てきて、ホウ素がない所だと通り抜けちゃうんですね。それに対して、ホウ素が非常に集積されているがん細胞だけ核反応が起こって死んでいくということです。

 通常、がんというのは塊で見えますけれども、その周りは正常な細胞とがん細胞が入り混ざっていることがほとんどです。普通の放射線治療ではそれを区別することはできませんから、正常な細胞も全部死んじゃうわけです。そうするとそれが放射線の副作用につながります。

 それに対して、この「ホウ素中性子捕捉療法」では、ホウ素を集積したがん細胞だけを死滅させるので、究極的な選択ができるわけです。ですから、がんに対する選択的な治療法であることが大きな特長です。

 そこで、「どの腫瘍がホウ素を取り込むの?」ということが非常に重要になってきます。

 「ホウ素中性子捕捉療法」は非常に長い歴史があります。では、どうして今までやらなかったのかと言うと、まず原子炉という欠点があったこと。それとともに、「どの腫瘍がホウ素を集積するか」ということが分からなかったわけです。

 ところが、ここにいらっしゃる(CICS社長の)今堀先生が最初に発表なさったデータですけれども......。

 ▼ 今堀社長の経歴はこちら。「ホウ素中性子捕捉療法」の歴史については、こちらを参照。

 ホウ素の化合物に「F-18」......。「FBPA-PET」の短半減期の放射性核種をくっつけて、これを患者さんに投与すると、ホウ素化合物が脳腫瘍に入っているのが分かる。そうすると、こういう人はまさに「ホウ素中性子捕捉療法」でうまく治療できる。

 これ(スライド)は京大の原子炉実験所で行ったデータですが......。脳腫瘍でこのような効果があるということは普通の放射線治療ではまず無理で、まさに劇的な効果だと思います。

 劇的効果の背景は、ホウ素が集積することを定量的に測れたからです。ということで、「ホウ素中性子捕捉療法」にPETは不可欠な検査であります。


■ 「病院設置型加速器の最先端として確立したい」 ─ 伊丹科長
 

[伊丹純・国立がん研究センター中央病院放射線治療科科長]
 まとめますと、今までは「ホウ素中性子捕捉療法」の中性子源として、どうしても原子炉が必要だった。しかし、原子炉を病院の隣に建てるわけにはいきません。非常に危険ですし......。

 いや、実は中国がそういうことをやったという話があるんですけれども......。(笑い) そういうことはできませんので、我々は加速器を用いる。加速器は電気を切れば放射線が出ません。

 それに対して、原子炉はいつまでも出ています。そんなことでは普及できないので、加速器を用いた低エネルギー中性子源を開発して、それによって核物質が必要なときだけ放射線を出す。

 これにより超小型で、病院に設置が可能で普及することができる。「ホウ素中性子捕捉療法」の起爆点となれればと思っています。(中略)

 原子炉というのはもともと辺鄙(へんぴ)な所にあります。そこまで重症の患者さんを運ばなければいけません。ところが、病院に設置できればそのような患者さんに「ホウ素中性子捕捉療法」をすることができる。

 症例を重ねて「前向き(臨床)試験」をして、統計学的検証に耐えうるような成績が得られればと思っています。それが薬事申請の基礎になります。

 さらに、病院設置型加速器の最先端として確立したいと思っています。まさに、日本初の技術です。


■ 「我が国初の技術として世界の市場に」 ─ 伊丹科長
 

[伊丹純・国立がん研究センター中央病院放射線治療科科長]
 1930年代、(英国の物理学者)チャドウィックが中性子を発見して、(米国の物理学者)ロッチャーという人が「中性子捕捉療法ができるんじゃないか」ということを言いました。

 ただ、その後の連綿とした臨床的な技術は日本で開発されてきました。帝京大学の畠中(坦)教授とか、京大の三嶋(豊)先生......、(当時)神戸大学の......。

 そういう人たちが開発されてきたわけですが、アメリカではもう捨てている技術です。ところが、日本ではやってきて大きな業績を上げている。それを統計学的に、まさに世界水準で確立していこうというのがこの研究であります。(中略)

 国立がん研究センターは臨床試験が得意です。医師主導治験の豊富な経験があります。また、「ホウ素中性子捕捉療法」の適応と思われるようながんの患者さんが多数来診されます。

 今まで、1930年来、なぜBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)が......と言うと、結局、症例数が少なくて原子炉でやっていたからです。それを打破するのは、この国立がん研究センターしかないと思います。

 それによって、世界水準の先端的ながん治療法を確立して、我が国初の技術として世界の市場に打って出ていかなければと思っています。(中略)


■ 「対象はホウ素が集積する悪性腫瘍」 ─ 伊丹科長
 

[伊丹純・国立がん研究センター中央病院放射線治療科科長]
 (BNCTの施設が)できるまで、まだ2年弱ぐらいあります。それまでどうするか。ホウ素を集積するかを確認するためにPET検査が必要です。

 全く新しい薬の1つですから、(内部の)倫理委員会の承認を取らなければいけませんし、製品としての安定性を確立しなければいけません。

 そういうことを(施設ができるまでの間に)やります。(中略)倫理委員会の承認後、「ホウ素中性子捕捉療法」を開始したいと思います。平成24年度末になると思っています。

 ▼ 施設工事の進行状況によるとのこと。「工事が早く進めば1年ぐらい前倒しになることもあり得る」(嘉山理事長)

 対象となるがん症例は、「ホウ素が集積する悪性腫瘍」です。中性子の身体への入り方を考えて、(体表から)6.5センチぐらいの深さまでを考えていますが、将来的にはもう少し深い所までできるかもしれません。

 前治療に対して抵抗性の再発腫瘍とか、嘉山先生ご専門の脳腫瘍、頭頸部腫瘍、悪性黒色種、(血管肉腫など)......。とにかく、(ホウ素が)集積するものなら何でもいいと思っています。ただ、臨床試験ですから規程を作らなければいけませんので、それはこれからの作業です。

 ▼ 上記に該当しない症例について、嘉山理事長は質疑応答でこう述べた。
 「最初は『First In Man』ですから、取り込みのある症例はトライアルする。今後、どなたでも取り込みさえPETで我々が確認すればトライアルする」


■ 「国立がん研究センター以外ではできない」 ─ 伊丹科長
 

[伊丹純・国立がん研究センター中央病院放射線治療科科長]
 薬事承認を得て、その後、第Ⅱ相試験で前向きに、多数の症例で「ホウ素中性子捕捉療法」の効果を証明したいと思っています。

 まさに、我が国で連綿と育まれてきた、取り組まれてきた「ホウ素中性子捕捉療法」の最終成果、集大成は我が国で行うべきだろうと思います。

 今まで30年来の停滞は、原子炉でしかできなかったこと。もう1つ、PETがきなかったこと。それは、今堀先生の開発によってできるようになりましたし、まさに当たりそうな人を選んで治療できるので非常に効率が良いと考えることができます。

 国立がん研究センター以外に、加速器で「ホウ素中性子捕捉療法」の医学的意義を確立できる施設は日本にも世界にも存在しないと思います。まさに、国立がん研究センター以外ではできないと思っています。

 「メイド・イン・ジャパン」の医療技術で世界に打って出たいと思っております。ご静聴、ありがとうございました。(中略)

 ▼ 株式会社CICSの今堀良夫社長が「ホウ素中性子捕捉療法」などについて説明した後、同センターとCICS社との共同研究契約の調印式が行われた。


■ 「バラバラを横つなぎにした第一歩の研究成果」 ─ 嘉山理事長
 

[加藤雅志・国立がん研究センター企画戦略室副室長]
 (共同研究契約の調印、質疑応答を終えて)最後に、嘉山理事長より一言お願いいたします。

[嘉山孝正・国立がん研究センター理事長]
 昨年の4月に独立行政法人になって、従来のようにお国からお金をもらって......というのではなく、国民の前にきちんと形にする。医師、研究者、あるいは看護師にとっても事務官にとっても、今日は第一歩ができたのではないかなと思っています。

 今まで内部のいろんなガバナンスをつくってまいりましたが、今までの国立がん研究センターの歴史的なものも蓄積した上で、今日の発表、(契約)締結ができたのではないかと思っています。

 今堀社長とは長年の付き合いがありまして、国立がん研究センターを選んでいただきました。(加速器)全部が日本の技術ではありませんが、今はマルチファクトリアルの時代です。

 例えば、「ipod」にしても日本の技術が入ったり、韓国の技術、アメリカの技術が入ったりしています。全部が日本製ではないですが、完成した形としてはこの会社が全部取りまとめています。

 従って、放射線機械で、「ipod」を日本製品にしちゃったように考えていただいて結構です。(CICS社が)国立がん研究センターと組んで......。それから、(経済産業省所管の独立行政法人)「NEDO」(新エネルギー・産業技術総合開発機構)も使っています。

 そういう意味で、今までの縦の研究を横に貫いた研究の成果が出てきたとご理解願いたい。我々は、そういうことをこれからどんどん......。

 行政で言えば、今までバラバラだったものを横つなぎにした第一歩の研究成果だという風にご理解願えればと思っています。本日はどうもありがとうございました。(以下略)

ーーーーーーーーーーーー以上ーーーーーーーーー
PRRTを検討する為のソマトスタチン受容体検査について理解したことを記載します。
私の理解不足の為記事は不完全ですが重要性を鑑み、公開しながら記述してゆきます。

ヨーロッパでは10年も前から「普通」に実施され大きなメリットを実現している治療法が
国内では殆ど認知されていません。(膵)内分泌腫瘍患者さんは検討に値すると考えます。

尚、本記事を訂正した際にコメントが消えてしまいました。情報を下さった方々には
申し訳ありませんでした。基本的に情報源は非公開としますしネットや学会などで
「公知になっている内容」の範囲内で記載してゆくことに致します。

(2011年1月18日現在)


<ソマトスタチン受容体検査実施施設について>
・東京医科歯科大 肝胆膵・総合外科でソマトスタチン受容体シンチ
 (SRS; Somatostatin Receptor Scintigraphy)が受けられます。
 http://www.tmd.ac.jp/grad/msrg/staff/index.html


・京都大学では神経内分泌腫瘍およびPETでFDG集積が低い腫瘍に対する
 ガリウム68標識オクトレオタイドによる腫瘍の画像診断としての
 ソマトスタチン受容体シンチグラフィの臨床試験を開始したようです。
 (2011年1月1日時点では募集前の状態?)


・東北、九州、鹿児島大学でも可能性があるようですが詳細については未確認です。


<検査内容とPRRTについて>
・バーゼルと同様PRRTを実施しているドイツのBad BerkaクリニックR. Baum医師
 http://www.rhoen-klinikum-ag.com/rka/cms/zbb_2/deu/download/Differential_Therapy_for_Neuroendocrine_Tumors.pdf

 の報告によるとソマトスタチン受容体には5種類のタンパク質アイソフォーム
 (機能は一緒だが、分子量やらせん構造が少しずつ違う)がありイットリウム
 を誘導する薬剤との親和性(ひっつきやすさ(笑))に差があるそうです。

 SSR2が最もよくSSR3やSSR5が相対的にイマイチとのこと。しかしSSR2でなければダメか?
 というとそうでも無く、反応がある患者は40ヶ月という単位で進行が抑制できる。
 とのこと。まだ正式な解析はなく印象の段階ですが検査を依頼する場合はアイソフォーム
 のタイプも判別できると有用な様です。

・具体的な検査方法は大きく3つの方式があると思われます。

 1つは従来のPETと同じ方式で111In-DTPAOCとか68Ga-DOTATOCというソマトスタチン受容体
 に集積しやすい化合物に放射性物質を結合させ、静脈注射します。30~60分安静後に
 PET/CTを撮影します。PRRTの治療ではイットリウムなどの「攻撃用」放射性物質を用いますが、
 診断ではインジウムなどの「検査用」物質を用います。

 患者的には普通のPET/CTと同じで気楽ですがSSR1~5のどれかは明確には判らないかも
 しれません。(集積がよければSSR2かな~?とか思うかも知れませんが、、)

 次の検査方法は「逆転写PCR(RT-PCR)」という遺伝子検査が使われることがある
 様です。イレッサなどでEGFRをPCR法で検査するのは一般的ですが普通のPCRではDNAの
 同定しか出来ないため、RNAを逆転写してcDNAをつくり5種類のソマトスタチン受容体
 もしくはそれぞれのソマトスタチンを作り出すであろうランゲルハンス島の内分泌細胞
 の「種類」を推定する様です。つまりソマトスタチンそのものを探すのではなく、
 それを作り出すであろう細胞の遺伝子を探索する方式。

 こちらの場合患者的には「内視鏡的に細胞を採取」する検査になる為、より負担が大きい
 ような気がします。もちろんSSRの種類を同定するのは研究的には有益ですが
 「取りあえずPRRTが効けば良い」といった不純な動機の場合はここまでしなくても
 PET/CTによるソマトスタチンスキャンで充分な気がします。

 もうひとつは免疫染色による病理診断的なSSR2もしくはSSR5の同定ですが、
 細胞を採取する必要があることと定量性、薬剤との親和性を直接確認できない事など
 考えますとやはりPETによるスキャンの方がPRRTには適している様な気がします。
 今でもできるか判りませんが、国際医療福祉大学三田病院では無料で免疫染色を
 受託してくれるという記事もありました。




<検査費用について>
・ソマトスタチン受容体の検査は国内では未承認な為、全額自己負担。
 あるいは臨床試験に組み入れて貰えれば患者負担はタダ?

 PET/CTによる方式では薬剤を海外から輸入したり、別途調剤する様なので、
 15~20万円くらいでしょうか?(知ってる方教えて下さい)

 またRT-PCRも5遺伝子・1検体とすると遺伝子解析だけで20万円近い費用になると
 思います。内視鏡診断の技術料も含めると30万円くらい??
 (こちらも知ってる方がいたら御願いします)


他詳細は判り次第、逐次アップ致します。
study2007


ーーーーーーーー<以下は私が超いいかげんに書いた記事>ーーーーーーー
スイス・バーゼル大などで行われているPRRT療法[Peptide Receptor Radionuclide Therapy]
(膵内分泌腫瘍に集積しやすい「Peptide DOTATOC」という物質とベータ(β)線放出核種の
「Yttrium-90(Y-90)」を使った、癌細胞1粒を個々に狙った「ミクロな」放射線治療)


を検討する際に国内でオクトレオスキャン(ソマトスタチン受容体が発現してるかの検査)
が受けられそうな施設がないか?情報を収集中です。

最近では膵内分泌腫瘍以外も適応がありそうな情報が得られ、難治癌や希少癌の患者、
特にカルチノイド系の方には(治療は海外になると思いますが、、、)思いがけず
命拾いする重要な治療法になる可能性があると私は思っています。


今のところ私が知ってるのは平成12年~14年にかけて実験的に研究が進められた
15施設(現在は殆どの施設で実施してない為、割愛します)と2009年度の
日本内分泌学会が厚労省に出した未承認薬要望書にあった3施設ぐらいしか
手掛かりがありません。

情報をお持ちの方、もしくは受けられた方は是非よろしく御願い致します。

<2009年 未承認薬要望書から>
・NHO京都医療センター(島津章氏)
・群馬大学(遠藤啓吾氏)
・東北大学(井桶慶一氏)
・タイコヘルスケアジャパン株式会社
 (現在コヴィディエングループジャパンに統合、
  まずここに電話すると実施施設を教えてくれそうなもんですが、、)

などです。皆様よろしく御願い致します。
study2007
新規抗癌剤や癌ワクチンの治験参加を考える際の条件や方法について私見を羅列します。

いつもの様に、一患者に過ぎない私の単なる想像ですので何の根拠も合理性もありません。
私自身がやれた事もありますし、逆に診断時に自分の理解が全く足りず後悔している事も多々
あります。もし癌治療を最初からやり直す事ができれば、もう少し巧くやれたかもしれません。


<治験参加を検討するときの最低条件>
1.細胞診をする際、私なら検体を多めに採取してもらって以下の遺伝子変異等を検査します。
 EGFR, VEGFR, HER2, c-Met, c-kit, ALK, K-ras, mTOR, PARP, Hedgehog等
 既に予後の推定において癌腫や病期に加え遺伝子変異の有無による分類が必須だと考えます。

2.既存の抗癌剤で治癒が難しい(C群)もしくは延命効果も不充分(D群)
 な癌腫の場合、初回抗癌剤治療以前に国内治験の検索をしてみます。
 (「初回治療限定」、、という参加条件のものもありますので、、。)

3.とはいえ、例えば非小細胞肺癌で一番大きいのが3cm以上あれば初回治療では
 「白金+αの抗癌剤」を2~4コースはやって効果と副作用を見極めます。
 5cm以上あればEGFR変異があってもイレッサは2回目以降に後回しにするかも知れません。
 (EGFR変異が無ければ2回目治療はドセタキセルかもしれません。)

 ある程度初回治療がうまくいったら、縮小の度合いや転移の数の減り具合をみて、
 放射線か治験参加を考えます。その際、腫瘍の成長速度やあるいは縮小速度から
 「何ヶ月無治療で耐えられるか?」を必ず把握しておくべきと考えます。

4.私なら最後の抗癌剤投与から最低2ヶ月は体力回復の為に何もしません。
 さらに経口の分子標的剤の場合、血中濃度が必要なレベルに達し効果が見え始めるのは
 どんなに自覚症状が敏感でも1~2週間はかかると思います。さらに正式な効果判定には
 1~2ヶ月を要するはずです。

 つまり抗癌剤の最終投与日から起算し最低でも3~4ヶ月、全くの空振りでも大丈夫という
 確信が持てなければ治験に参加しませんし、逆に抗癌剤で目指すのはそのレベルとも言えます。
 最大径が1cm以下では評価不能で不適格になりますので理想は1~2cmだと思います。


<治験参加の打診のしかた>
1.誰も責任が取れませんので、病院側から治験を勧めることはまずないと思います。
 治療が一番うまく行ってる時を見計らって、具体的な治験番号を患者側で調べて、
 「是非これに参加したい、、」と申し出る以外は実質的に無視されると思います。

2.いろいろ検索サイトはある様ですが、私は時々以下のサイトを眺める様にはしています。
 「非小細胞肺癌」とか「ALK」とか、あるいは「固形癌」「小児癌」などとキーワードを
 入れるとずらずら出てきます。

がんの臨床試験一覧(がん情報センター)

医薬品情報データベース:臨床試験情報検索

日本医師会 治験促進センター(国内の医師主導治験)

米国国立がん研究所(NCI)(日本語版 海外治験など)


癌腫にもよりますが、あえて「近藤誠vs立花隆レベル」の超大雑把な言い方をすれば、
・10cm前後の病巣は多分、手術か重粒子が必要、、
・ 5cm以下なら抗癌剤+放射線でなんとか、、
・ 1cm以下なら分子標的剤か抗癌剤単独でもなんとか、、
・ 1mm程度なら免疫療法でももしかしたら、、、
制御(局所に根治)が可能かもしれないと私は期待しています。

どの患部に?いつ?どの治療を?ぶつけるかが問題だと捉えていますし、
分子標的剤は当たるとメリットが大きいので治療全体のデザインの中で治験カードは
意外と重要になるかも知れません。(勿論、実施側は被験患者のメリットなど二の次ですが、、)

世間的には「多発転移があれば抗癌剤、それ以外選択肢はない。イヤなら治療終了」という
超大雑把な考え方がある様ですが命に直結する事ですのでもう少し考えても良いかと思います。
大河ドラマ「江」の第1話を一応チラ見しました。想像通り下らなく面白くありません。
当然、第二話以降は見ませんが1年間ずっと下らない話が続くことは見なくとも判ります。

いっそ時代劇にするのをやめ、「ひこにゃん」でも出して最終回は「ひこにゃん先輩」が
指揮するオーケストラで江がピアノでも弾き、パリで結婚する話にでもすれば良いと思います。
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ


先月の近藤氏「抗癌剤は効かない」と今月の「対談」も「江」と同じ程度に
下らないことは間違いないと思います。チラ見しただけで判ります。

もしも本当に近藤氏や立花氏が「抗癌剤が効かない」と思い、世界中の病院で行われている
癌治療が「巨悪」だと考えているならば文藝春秋などではなく最低限LancetかJCOぐらいに
その意見なり根拠なりを投稿すべきと思います。そしたら私も一応は読んでみます。
先日のUFT論文も一応JCOに載ってるので読みました

「江」の脚本家が「時代劇」を舞台に設定したように近藤氏と立花氏は「医療」を題材
にしているつもりの様ですが、どちらも不適切ですし、場違いだと思います。

文藝春秋と近藤氏と立花氏は自分たちがウケ狙いで創作し流布している「ひこにゃん」が
どれ程多くの癌患者に健康被害をもたらしているか、その足りない頭の全力を使って
考え反省すべきと考えます。


がん患者の殆どはある日突然、全くのド素人が「がん」と診断されます。
しかも多くは高齢で医学的な情報や知識を得る前に治療を決断せねばなりません。
無責任で根拠のないマスコミ報道が治療に悪影響をもたらす場合も少なくありません。

医療、特に命に直接関わる癌などの病気に関する報道や出版はこういう「対談」や
「意見」といった証拠レベルの低い(無い)内容は規制すべきと思います。
言論・出版の自由は「ウソをついても良い自由」とは異なると考えます。


、、、「江」も「袋の小豆」を送らないなら送らないで構わないのですが、
まるで「初めてのお使い」で仕込みで置いてる近所の番犬をクリアしました、、
程度の安い演出でした。予想してたとはいえ、ガッカリです、、、、泣

ま、こちらは「表現の自由」があるんでどんなに低レベルでも結構なんですが。パンチ!
2011年1月7日東京地裁と大阪地裁でイレッサ訴訟に関する和解勧告が出されました。
それをうけてか医薬品副作用被害救済制度に「抗癌剤」を含める動きが報道されました。
イレッサ訴訟は随分前に一度調べたのですがこれを機にメモを書いておくことにします。

ちなみに抗癌剤「治療」についての救済法案は実質的に運用不可能だと思います。
例えばイレッサでも投与量は同じでも血液動態は相当に差があります。[1]
最終末期では薬のダメージの度合いはさらにバラツキがあるはずです。
どこまでの投与が適切でどこからが補償に値するか判断のしようがないと思います。

抗癌剤投与現場の萎縮による治療中断や、酷い場合は補償目当ての無謀な投与の
要因にすらなりうると懸念します。こういう薄っぺらい議論しかできないうちは
まともな司法判断も医療制度改革も完全に不可能だと失望させられます。

study2007
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(意外と官僚的ですが)仮に私が裁判員ならば以下の様な判断をすると思います。

【私見】
・地裁がアストラゼネカ社と国の責任を認定したのは法的根拠がない。

・主観的な不満や医療者の不注意による責任を製薬メーカーや国に転嫁するのは不合理。[2]

・医療事故に対し法に基づかない処罰が横行するのは国内における臨床試験、医薬品販売
 等の活動を妨げ、ひいては国民の健康に不利益をもたらす恐れがある。

・ただし2002年7月から同10月の緊急安全性情報までに服用し間質性肺炎を発症した患者には
 アストラゼネカ社から「臨床開発協力金」等の名目で見舞金を支払え。

・国は医療における安全性を担保するため腫瘍内科医等の専門医制度の整備をはかれ。


【理由】
・少なくとも2002年5月時点でZD1839(イレッサ)は抗腫瘍効果が認められた。[3]

・重篤な副作用(間質性肺炎等)についても販売時添付文書と同意書に記載があった。[4]
 (リンク先では最新版が表示されますが、2002年7月当時の初版でも記載があります。
  新規抗癌剤投与時にこの注意書きを見落としたとすれば医師免許は返上すべきです。
  またこの同意書が無効だったと認定されれば今後一切の医療行為は不可能になります)

・作用機序やEGFRに対する感受性の有無等の理解は販売後明らかになった部分もあるが、
 他の抗癌剤に比べ、それら理解が格段に不足していたとは言えない。[5]

・イレッサは作用因子のある患者には大きな治療効果をあげるとともに、従来の抗癌剤
 に比べると副作用も軽微と認められる。また本剤は医師により処方される医薬品である。
 同社の宣伝・広告も誇大とまでは言えないし薬剤の使用判断に本来影響しうるものではない。

・申請から承認までの期間短縮も患者・医療者の希望に沿ったものであり、そのこと自体
 をもって国の落度とすることはできない。[6]

・本件で死亡例が頻発したのは専ら経口抗癌剤に対する医師の理解の不足、すなわち従来型
 のUFT等の医療現場における蔓延から生じた油断が素地にあったものと推測される。[7]

・ただし死亡患者の多くは通常の「手術不能または再発非小細胞肺癌」に対する抗癌剤治療と
 同定度のフォローさえ受けられれば死に至らなかったとも推測され、緊急安全性情報以前に
 投与を受けた患者は特にその不利益が大きく同情されるべき点がある。

・医師として最低限の知識と注意力のない者が癌治療等にも従事しうる現行の医師免許制度は
 明らかな欠陥があり、国民の安全、医療水準の維持、新薬の開発・承認において、根本的な
 障壁となっている。国は本件において直接の賠償責任はないが、これを改善する義務がある。


【参考文献】
[1]イレッサ耐性と再奏効の可能性について(4.補足、参考文献、謝辞)

[2]「イレッサ薬害被害者の会」ホームページ.

[3]Journal of Clinical Oncology, Vol 20, Issue 9 (May), 2002: 2240-2250
ZD1839, a Selective Oral Epidermal Growth Factor Receptor–Tyrosine Kinase Inhibitor, Is Well Tolerated and Active in Patients With Solid, Malignant Tumors: Results of a Phase I Trial


[4]med.astrazeneca.co.jp/product/IF/IRE_IF.pdf

[5]Journal of Clinical Oncology, Vol 20, Issue 18 (September), 2002: 3815-3825
Selective Oral Epidermal Growth Factor Receptor Tyrosine Kinase Inhibitor ZD1839 Is Generally Well-Tolerated and Has Activity in Non–Small-Cell Lung Cancer and Other Solid Tumors: Results of a Phase I Trial


[6]薬事・食品衛生審議会薬事分科会(平成14年6月12日開催分)議事録

[7]国内臨床試験(2)「N・SAS-BC01試験」事件から得られる教訓
2011年1月8日14時からNHK教育で国内臨床試験に関するシンポジウムの番組がありました。
偶然見始めただけなので途中からでしたし、見逃した部分もあるのですが、
ちょうどブログでも臨床試験のシリーズですので、とりあえずメモします。
不正確な部分もあるかもしれません、、、。

study2007
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TVシンポジウム「よい新薬を使えるように~どうする?日本の治験~」

海外で使えるくすりが日本で使えないといった問題が起きている。背景にある、人での
臨床試験(=治験)が日本で進んでいない現状を見つめ、どうすればよいのかを考える。
【パネリスト】
 大阪医療センター病院長…楠岡英雄,
 国立がん研究センター中央病院副院長…藤原康弘,
 全国骨髄バンク推進連絡協議会会長…大谷貴子,
【司会】池上彰,
【リポーター】岩田まこ都 
 ~東京・千代田放送会館で2010年11月11日収録~

・国内の臨床試験登録数?は1995年頃から2005年頃までの10年間は凹んだ。
 現在は持ち直し傾向。理由は製薬メーカーの専門化など、、。
 (私の理解ではゲノム解析でやれる創薬をやりつくして停滞したのかと思ってましたが、、)

・外国で承認された薬剤が使えるようになる期間は
 欧米が1.2年から1.4年なのに、日本は4.7年。

・世界販売ベスト100位までの薬剤のうち日本では21種が使えない。諸外国は数種程度。

・がんセンターの藤原氏がオキサリプラチンの例を出し、
 「日本の申請承認にかかる時間は長くない」との説明。
 (私の理解では数年遅れの申請が世界初承認より迅速なのはあたりまえ、
  しかもオキサリプラチンは患者の佐藤さんの尽力があり例外的に早かった例)

 また、藤原氏は「国内では人体実験という悪印象があって被験者が集まらない」などと
 的外れな説明。(がんセンターの乳腺科って大丈夫なのかちょっと不安になる。笑)

肺癌へのALK阻害剤の例ではソウル大へ通院する患者の例。日帰りで行ってるらしい!!

・ALK発見者の野間教授は日本でなく米国、韓国、オーストラリアで治験が行われている
 ことに大きなショックを受けたらしい。問題は臨床試験体制とシステムとコスト。

・で、あんまりなので「ALK肺がん研究会」という医師間のネットワークをつくり、
 国内のALK陽性患者の診断や海外で治験がうけられる様にサポートした、、とのこと。
 (2010年からは国内でも受けられるハズなので希望する方は主治医に相談しましょう)

・韓国はぶっちゃけ国内で承認審査はせず、米国で承認されたらそのまま使える。

・韓国は国家戦略で創薬・臨床試験体制をサポートしている。臨床試験は3000床もある
 超大規模病院で多数の医師により集中的に行われ、集約化と高度化を実現している。
 臨床試験のコストは日本の5分の1程度。

・日本は集約化はムリなので多数の病院のネットワーク化で対応しようとしている。
 (もうバカ過ぎてお話になりません、、、、。)

・日本は新薬を「世界で初めて人間にテスト」する施設を5つ程作る予定。

・治験コーディネーターの役割が重要。看護師や薬剤師などのコメディカルにやらせてる。
 慈恵医科大の松木看護師は100人程度の治験参加者を管理。インフォームドコンセントは
 フェイズ毎に必要で結構大変そう。

・被験者が治験に参加してくれる率は大体10%前後。
 試験であるため患者の希望は反映されない。それでも数%程度はI相試験で効果がある
 と考えられている。

・日本の様に皆保険がある国では誰でも治療が受けられるので治験参加の動機付けが弱い。
 米国は3500万人も居る無保険者が便利なモルモットになっている。

・結局はその国や社会における「人間の値段」が治験のコストにも反映する。
 (ただ韓国などは治験参加者の事故を救済する補償システムあり。リスクを分散している)

番組の最後は
「治験参加は社会における自己犠牲であり、尊い。みんなで参加・サポートしましょう」
といったまとめで終わった感じ。要するに国民の治験参加を呼びかける番組?

本当はドイツや韓国のマネすらできない真の理由を考え医療体制のゼロからの再構築が
必須だと私は考えます。

研究者は本当に意義のある臨床試験を計画できているか?
医療者は正直な募集と解析と説明ができているか?
・臨床試験にせよ癌治療にせよ「集約化・専門化・高度化」は避けて通れない。
 国はそういった21世紀の現実に対応可能な医療体制を目指しているか?
・結局、治験参加は「患者本人の見識と知識」で決める事項です。
 患者(国民)にそれだけの認識と覚悟があるか?

ということだろうと思います。
日経メディカルオンラインの2010年12月27日付記事
「特別リポート:N・SAS試験
 がん化学療法を変えた臨床試験の記録」
 http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/cr/201012/517574.html

で無理やり正当化されている「N・SAS-BC01試験」は国内の抗癌剤治療、医療行政、癌報道
の悲惨さの具体例だと思われる。また乳がん患者団体「イデアフォー」との噛み合わない
論争は臨床試験と患者・患者会の関係を再検討する「歴史的遺産」とも言える。

歴史的と言っても戦前の満州やアウシュビッツではなく、僅か15年前の日本での出来事です。

ーーーーーーーーーーーー「N・SAS-BC01試験」事件の経緯ーーーーーーーーーーーー
きっかけはソリブジンという別の薬害事件です。

・1993年9月3日:帯状疱疹の薬(抗ヘルペスウィルス剤)ソリブジンが発売される。
        発売後1ヶ月足らずで5-FUとの相互作用で重篤な副作用が発生
・同 10月2日:「7人に重篤な副作用、3人が死亡」と報道発表。同3日出荷停止。
・同 10月8日:厚生省から緊急安全性情報の配布
・同 11月1日:自主回収開始(承認取り消しはされなかった)
        結果23例で副作用発現、うち14例で死亡

 日本商事(現アルフレッサ)、エーザイの両販売元である役員や社員が副作用発生から
 発表までのタイムラグを利用して自社株を売り抜けたインサイダー取引で問われる。
 (余談ですが、この事件のせいか?「帯状疱疹になると化学療法できない、、」的な迷信が
  広まったらしく、世の中にはまだある様ですね、、、笑)

という薬害事件が起こり1994年9月号の「ネイチャー」で国内の臨床試験のあり方を指摘される。
その結果1984年以降莫大な売り上げと効果が疑問視されていたUFTの再検証を行うことになった。


ーーーーーーーーーーーー「N・SAS-BC01試験」の問題点ーーーーーーーーーーーーー
1996年10月より厚生省の研究事業として抗癌剤市販後研究班
(阿部薫 現国立がんセンター名誉総長が首班)
乳がんとりまとめ渡辺亨委員長(現 渡辺医院浜松オンコロジーセンター)
らが計画・解析し2009年3月にJournal of Clinical Oncologyに掲載されました。

Oral Uracil and Tegafur Compared With Classic Cyclophosphamide, Methotrexate, Fluorouracil As Postoperative Chemotherapy in Patients With Node-Negative, High-Risk Breast Cancer: National Surgical Adjuvant Study for Breast Cancer 01 Trial

内容は、
「ほぼ日本でのみ、それも明確な根拠も無く長年使われ続けてきたUFTですが、2年くらい
 飲み続ければリンパ節転移の無い早期乳がん術後の再発防止に多少は役立つかも」という推測。

・厚生省が発案し、
・国立がんセンターが中心となり、
・全国47の拠点病院の倫理委員会に諮り、実施され、
・日本乳癌学会会長の芳賀駿介 日本医科大教授に絶賛され、
大鵬薬品工業や全国のUFTを使いたがる医師の営業的延命に大きく貢献した、
この論文の問題点を「死にかけの一癌患者に過ぎない」私の理解の範囲で記載してみます。


1.論文を読む以前の問題
・1995年度、1996年度の2年間は厚労省の研究事業であったが1997年4月以降の登録、解析は
 販売元の大鵬薬品工業が市販後臨床試験として担当。733人の登録患者のうち600人以上が
 大鵬薬品側の管理になってからの登録。

 →新規薬剤の臨床試験を製薬メーカーが主導するのはあり得ることだが、本件の様な
  薬剤の「耐震偽装疑惑」の検証に開発・販売元が関与するのは客観性の面で不適切。

・1996年当時の理解でも術後補助療法の第III相試験をUFT単剤で実施するには根拠が脆弱。
 (そもそもまともなエビデンスが無いのが問題視されたのだから当然と言えば当然、、笑)
 試験開始時以前の、本論文の参考文献で乳がんに関するもの2つを示すと、、

 参考文献3
 Cancer Chemother Pharmacol. 1988;22(4):333-8.
 Report on nationwide pooled data and cohort investigation in UFT phase II study.
 Ota K, Taguchi T, Kimura K.
 Aichi Cancer Center, Nagoya, Japan.

 1980年代の国内104施設の438患者についてUFTの奏効率を集計した後ろ向きコホート研究。
 膵癌、乳癌の「反応率」が25%、32%など驚異的。例えば現在、膵癌に唯一効くかもしれない?
 とされるジェムザールでも25%で「なんとか症状が改善される?」というレベル。
 乳癌におけるパクリタキセルでも奏効率25~33%程度であることを鑑みると、たとえば
 「縄文時代の遺跡を調べたらiPodナノが発見されました、、」というレベルのはなし。

 参考文献8
 Jpn. J. Clin. Oncol. (1994) 24 (4): 212-217.
 A Double Blind Comparative Study of Tegafur (FT) and UFT (a Combination of Tegafur and Uracil)
 in Advanced Breast Cancer
 Hideya Tashiro, Yasuo Nomura and Akihiko Ohsaki
 Department of Breast Surgery, National Kyushu Cancer Center Fukuoka

 1986年から1989年までの60人の患者をテガフールとUFT群に分けて奏効率を比較。
 進行乳癌においてUFT単剤の奏効率が39%という「古墳からiPhone4が出ました」的な論文。

 →行うとすれば被験者の安全を担保しうる「信頼性のあるレジメン」vs「そのレジメン+UFT」
  などの「上乗せ効果」を検証する試験にすべき。

 →また渡辺氏が説明するように「科学的な国内臨床試験の道筋をつける」のが本研究事業の
  目的だとしても危険性の低い「上乗せ型の第III相試験」もしくは第II相試験の「信頼性の
  高い追試」のいずれかを行うことで臨床試験のモデルを充分に構築・検証することはできる。

・そもそもUFTは効果や信頼性が低く、その疑問を検証する為にスタートした事業です。
 少なくともUFTより遥かに効果が高く、かつ信頼性の高いデータに裏付けられた
 パクリタキセルが1999年2月に国内で乳癌に承認された時点で、本試験は中止される
 べきだったと考えます。この時点で高リスク患者はAC+パクリタキセルなどの
 より確かなメンテナンスを受けるチャンスがあった訳ですから本試験は参加者の
 利益を明らかに損ねてると言えます。 

 →被験者の安全性を考慮したり、あるいは被験者が集まらずIII相試験が中止になるのは
  何も恥ずかしいことでは無い。むしろその勇気は讃えられるべきことと考える。が、
  本試験では後発薬がでても、また予定された被験者が確保できなくてもゴリ押しされた。

  被験者の命を軽視しているとの批判は免れないし、他の公共事業と同様に国が始めた
  事業は決して止められないことの悪い例だと思える。結果として臨床試験として
  最悪のケースになったと言わざるをえない。

・そもそもCMAという当時としても古いレジメンと比較すること自体疑問。
  

2.論文の中身で指摘すべき点

筆者らはUFTがCMF療法(シクロフォスファミド+メトトレキセート+フルオロウラシル)と
同等の効果であることが確認されたので結果オーライでした、、。と主張するかもしれません。
が、本論文にはその内容にも以下の様な疑問点があると思います。

・被験者のプロファイルを見るとUFT群352人、CMA群355人に対し、、
 UFT群では比較的高リスクな浸潤性乳管癌が14人も少なく
 UFT群では比較的高リスクな核異型度グレードIIIも14人も少なく
 UFT群では比較的低リスクな2cm以下のT1が19人も多く
 UFT群では比較的低リスクな乳房温存術後の放射線例が3人多い。

 →そもそも5年無病再発や全生存率が85%~90%の水準の事象で、
  3%とか(10人程度)が多いか少ないか?を議論する試験にしては偏りが大きく感じます。

  各リスクファクターのウェイトを規格化したのなら係数を示すべきですし、
  このように殆どの因子で「良い感じ」にUFTが有利に仕込まれてるプロファイルを
  医療関係者の皆さんは素直に「無作為抽出」と考えるのでしょうか?

・各群に80人以上含まれる「温存術後の放射線治療」群の照射プロトコルについて
 記載がありません。

 →治療装置や照射範囲(マージン)、総線量、分割回数はどのように評価し
  振り分けたのでしょうか?もしも私に「無作為に」抽出させてもらえれば、
  恐らくUFTが5%勝つ結果も5%負ける結果も、あるいは引き分け、も
  自在に調整できる自信があります。(笑)

・n数が足りなかったとはいえサブセット解析のバラツキは不自然に見えます。

 →UFT群は3cm以下の群でハザード比0.9(CMFより10%も良い)
  UFT群は乳房温存術の群でハザード比0.71(CMFより29%も良い)
  UFT群は核異型度IIの群でハザード比0.57(CMFより43%も良い)

  と、最初に指摘した不自然にアンバランスな群でどれもUFTが大きく有利な結果
  となってます。そもそもなぜ「2cm以下」の群や「放射線治療例」の群に関する
  サブセット解析は明記しないのでしょうか?ハザード比で0.5を切るような「良すぎる」
  結果になってしまい逆に出せなかったのでしょうか?(笑)

サークル活動やアルバイトばかりで殆ど研究室にこず、卒業間近になって慌てて
書いた学生の修士論文などでこういった恣意的な傾向を示すデータを見かけることが
経験上しばしばあります。

JCOに載ったことを本当に誇りに思うのであれば被験者の個人情報にマスクをかけて
是非、全生データをネットで公開して欲しいと思います。(私が再解析してみます)


ーーーーーーーーーーーー「N・SAS-BC01試験」の教訓ーーーーーーーーーーーーー

本試験は第III相臨床試験としてのデザイン・実施ともに合理性と客観性に欠け、
かつエンドポイントにおけるP値(偶然の誤差が入る確率)が0.5もあり、
95%信頼区間が1.4を越えるなど統計的パワーも足りません。

さらに試験群の振り分けやサブセット解析に恣意的と思われても仕方が無い程の
不自然さと不明瞭さもあります。

最近は随分落ちたとはいえ2009年度の大鵬薬品のUFT売上高は約180億円です。
セットで処方されるユーゼルの年間売り上げは約140億円です。

臨床試験の実際の位置づけやリスクも知らされず、直接的な命の危険にさらされ
参加した被験者の計り知れない損失と、年間300億円を越える医療費のムダ、
そして今後もUFTが非科学的に使用され続けることによる癌患者の危険を
修士の学生がちょろまかしたような論文1本で正当化されているのが国内の
臨床試験と癌治療の現実だと思います。

結局、今後の国内臨床試験が充実したものになる為に私が求めたいものは、、

1.国は年間1000~2000億円の研究費を税金と保険料から捻出する。
  創薬と医療で世界最高水準の技術レベルを目指し成長分野に育てる。

2.研究者には世界の誰に突っ込まれても耐えられる周到な調査と計画立案。
  研究における公正さ、及び積極性と慎重さの両立。
  (その代わりインパクトファクターの高い論文や効果の高い新薬を開発した
   研究者には評価に応じて10億円でも20億円でも天井知らずの報酬を用意する)

3.患者(国民)には、なるべく早期からの臨床試験参加の検討。
  利益もないのに「念のため」などとUFTなどのムダな処方を望まない。
  (非合理的な患者のムダ使いは結局は患者の治療の障害となっている。
   勿論「24時間コールセンター」なども求めるべきではないと思います。笑)

などです。今日はもう遅いのでここまでにしておきますが、私はUFTの認可自体は許可
しても良いと思っています。(打率は低いですが利益をもたらすこともあると思います)

問題は抗癌剤を処方する医師の資格と計画・報告等の医療制度の不備だと考えて
います。その件はまた別の記事にまとめます。
「どんな化合物が効きそうか?」という問題に私は(誰も?)答えを持っていない
ので提示することはしません。EGFR系やVEGFR系、HER2系は有名ですので、その他の
標的やいくつかの候補を挙げるに止め、
ここからしばらくは、
「国内で臨床試験が進まない理由」について情報を整理してみようと思います。


I相やII相の臨床試験で被験者がメリット得ることは1割もない、と言われています。
治験は被験者の為ではなく、薬剤開発と将来の患者さんの為の試験ですから、それは
やむを得ません。

ですが、治験は被験者のデメリットが最小化されるように合理的、科学的にデザインされ、
見込まれる利益が被験者の被る負担・被害を上回る場合にのみ許されるべきと考えます。

一方で、分子標的剤が現れてからは効果が期待される因子があれば、大きな利益をもたらす
事もあります。患者も医師も臨床試験を考えるときは科学的な判断に基づく、慎重さと
積極さの両立が求められていると感じます。

現状、国内における臨床試験の捉え方は、

研究者側
・予算がなさ過ぎて何もできない。考える以前の問題。もしくは、
・何かあるとまずいのでとにかく外国の後追いだけやってる。

患者側
・とにかく新薬は効きそうだ。なんでも良いから参加したい。もしくは、
・とにかく何にも判らない。主治医の機嫌を損ねるのも怖い。黙ってよう。

といった感じではないでしょうか。全く科学的でもなければ合理的でもない理由により
ただ「停滞している」状態だろうと感じています。

癌ブログのくせにヘルシンキ宣言を提示しないのも不謹慎ですので、
はじめに全文を掲載しておきます。

第二次大戦中ナチスの医師により行われた人体実験を裁くニュルンベルグ裁判で
提案された原案を世界医師会で採択・改訂しつづけている臨床試験の倫理原則です。
(目に付いた項目には赤字を付しました。)

study2007

ーーーーーーーーーーーーーーーー以下ヘルシンキ宣言全文ーーーーーーーーーーーーーー

■ヘルシンキ宣言(和文 ※日本医師会訳 笑)

WORLD MEDICAL ASSOCIATION

ヘルシンキ宣言
人間を対象とする医学研究の倫理的原則

1964年 6月 第18回WMA総会(ヘルシンキ、フィンランド)で採択
1975年10月 第29回WMA総会(東京、日本)で修正
1983年10月 第35回WMA総会(ベニス、イタリア)で修正
1989年 9月 第41回WMA総会(九龍、香港)で修正
1996年10月 第48回WMA総会(サマーセットウェスト、南アフリカ)で修正
2000年10月 第52回WMA総会(エジンバラ、スコットランド)で修正
2002年10月 WMAワシントン総会(アメリカ合衆国)で修正(第29項目明確化のため注釈追加)
2004年10月 WMA東京総会(日本)で修正(第30項目明確化のため注釈追加)
2008年10月 WMAソウル総会(韓国)で修正


A.序文
1. 世界医師会(WMA)は、個人を特定できるヒト由来の試料およびデータの研究を含む、人間を対象とする医学研究の倫理的原則として、ヘルシンキ宣言を発展させてきた。

本宣言は、総合的に解釈されることを意図したものであり、各項目は他のすべての関連項目を考慮に入れず適応されるべきではない。
2. 本宣言は、主として医師に対して表明されたものであるが、WMAは人間を対象とする医学研究に関与する医師以外の人々に対しても、これらの原則の採用を推奨する。
3. 医学研究の対象となる人々を含め、患者の健康を向上させ、守ることは、医師の責務である。医師の知識と良心は、この責務達成のために捧げられる。
4. WMAジュネーブ宣言は、「私の患者の健康を私の第一の関心事とする」ことを医師に義務づけ、また医の国際倫理綱領は、「医師は医療の提供に際して、患者の最善の利益のために行動すべきである」と宣言している。
5. 医学の進歩は、最終的に人間を対象とする研究を要するものである。医学研究に十分参加できていない人々には、研究参加への適切なアクセスの機会が提供されるべきである。
6. 人間を対象とする医学研究においては、個々の研究被験者の福祉が他のすべての利益よりも優先されなければならない。
7. 人間を対象とする医学研究の第一の目的は、疾病の原因、発症、および影響を理解し、予防、診断ならびに治療行為(手法、手順、処置)を改善することである。現在最善の治療行為であっても、安全性、有効性、効率、利用しやすさ、および質に関する研究を通じて、継続的に評価されなければならない。

8. 医学の実践および医学研究においては、ほとんどの治療行為にリスクと負担が伴う。
9. 医学研究は、すべての人間に対する尊敬を深め、その健康と権利を擁護するための倫理基準に従わなければならない。研究対象の中には、特に脆弱で特別な保護を必要とする集団もある。これには、同意の諾否を自ら行うことができない人々や強制や不適切な影響にさらされやすい人々が含まれる。
10. 医師は、適用される国際的規範および基準はもとより、人間を対象とする研究に関する自国の倫理、法律および規制上の規範ならびに基準を考慮するべきである。いかなる自国あるいは国際的な倫理、法律、または規制上の要請も、この宣言が示す研究被験者に対する保護を弱めたり、撤廃するべきではない。

B.すべての医学研究のための諸原則
11. 研究被験者の生命、健康、尊厳、完全無欠性、自己決定権、プライバシーおよび個人情報の秘密を守ることは、医学研究に参加する医師の責務である。
12. 人間を対象とする医学研究は、科学的文献の十分な知識、関連性のある他の情報源および十分な実験、ならびに適切な場合には動物実験に基づき、一般的に受け入れられた科学的原則に従わなければならない。研究に使用される動物の福祉は尊重されなければならない。
13. 環境に悪影響を及ぼすおそれのある医学研究を実施する際には、適切な注意が必要である。
14. 人間を対象とする各研究の計画と作業内容は、研究計画書の中に明示されていなければならない。研究計画書は、関連する倫理的配慮に関する言明を含み、また本宣言の原則にどのように対応しているかを示すべきである。計画書は、資金提供、スポンサー、研究組織との関わり、その他起こり得る利益相反、被験者に対する報奨ならびに研究に参加した結果として損害を受けた被験者の治療および/または補償の条項に関する情報を含むべきである。この計画書には、その研究の中で有益であると同定された治療行為に対する研究被験者の研究後のアクセス、または他の適切な治療あるいは利益に対するアクセスに関する取り決めが記載されるべきである。
15. 研究計画書は、検討、意見、指導および承認を得るため、研究開始前に研究倫理委員会に提出されなければならない。この委員会は、研究者、スポンサーおよびその他のあらゆる不適切な影響から独立したものでなければならない。当該委員会は、適用される国際的規範および基準はもとより、研究が実施される国々の法律と規制を考慮しなければならないが、それらによってこの宣言が示す研究被験者に対する保護を弱めたり、撤廃することは許されない。この委員会は、進行中の研究を監視する権利を有するべきである。研究者は委員会に対して、監視情報、とくに重篤な有害事象に関する情報を提供しなければならない。委員会の審議と承認を得ずに計画書を変更することはできない。
16. 人間を対象とする医学研究を行うのは、適正な科学的訓練と資格を有する個人でなければならない。患者あるいは健康なボランティアに関する研究は、能力があり適切な資格を有する医師もしくは他の医療専門職による監督を要する。被験者の保護責任は常に医師あるいは他の医療専門職にあり、被験者が同意を与えた場合でも、決してその被験者にはない。
17. 不利な立場または脆弱な人々あるいは地域社会を対象とする医学研究は、研究がその集団または地域の健康上の必要性と優先事項に応えるものであり、かつその集団または地域が研究結果から利益を得る可能性がある場合に限り正当化される。
18. 人間を対象とするすべての医学研究では、研究に関わる個人と地域に対する予想しうるリスクと負担を、彼らおよびその調査条件によって影響を受ける他の人々または地域に対する予見可能な利益と比較する慎重な評価が、事前に行われなければならない。
19. すべての臨床試験は、最初の被験者を募集する前に、一般的にアクセス可能なデータベースに登録されなければならない。
20. 医師は、内在するリスクが十分に評価され、かつそのリスクを適切に管理できることを確信できない限り、人間を対象とする研究に関与することはできない。医師は潜在的な利益よりもリスクが高いと判断される場合、または有効かつ利益のある結果の決定的証拠が得られた場合は、直ちに研究を中止しなければならない。
21. 人間を対象とする医学研究は、その目的の重要性が研究に内在する被験者のリスクと負担に勝る場合にのみ行うことができる。

22. 判断能力のある個人による、医学研究への被験者としての参加は、自発的なものでなければならない。家族または地域社会のリーダーに打診することが適切な場合もあるが、判断能力のある個人を、本人の自由な承諾なしに、研究へ登録してはならない。
23. 研究被験者のプライバシーおよび個人情報の秘密を守るため、ならびに被験者の肉体的、精神的および社会的完全無欠性に対する研究の影響を最小限にとどめるために、あらゆる予防策を講じなければならない。
24. 判断能力のある人間を対象とする医学研究において、それぞれの被験者候補は、目的、方法、資金源、起こりうる利益相反、研究者の関連組織との関わり、研究によって期待される利益と起こりうるリスク、ならびに研究に伴いうる不快な状態、その他研究に関するすべての側面について、十分に説明されなければならない。被験者候補は、いつでも不利益を受けることなしに、研究参加を拒否するか、または参加の同意を撤回する権利のあることを知らされなければならない。被験者候補ごとにどのような情報を必要としているかとその情報の伝達方法についても特別な配慮が必要である。被験者候補がその情報を理解したことを確認したうえで、医師または他の適切な有資格者は、被験者候補の自由意思によるインフォームド・コンセントを、望ましくは文書で求めなければならない。同意が書面で表明されない場合、その文書によらない同意は、正式な文書に記録され、証人によって証明されるべきである。
25. 個人を特定しうるヒト由来の試料またはデータを使用する医学研究に関しては、医師は収集、分析、保存および/または再利用に対する同意を通常求めなければならない。このような研究には、同意を得ることが不可能であるか非現実的である場合、または研究の有効性に脅威を与える場合があり得る。このような状況下の研究は、研究倫理委員会の審議と承認を得た後にのみ行うことができる。
26. 研究参加へのインフォームド・コンセントを求める場合、医師は、被験者候補が医師に依存した関係にあるか否か、または強制の下に同意するおそれがあるか否かについて、特別に注意すべきである。このような状況下では、インフォームド・コンセントは、そのような関係とは完全に独立した、適切な有資格者によって求められるべきである。
27. 制限能力者が被験者候補となる場合、医師は、法律上の権限を有する代理人からのインフォームド・コンセントを求めなければならない。これらの人々が研究に含まれるのは、その研究が被験者候補に代表される集団の健康増進を試みるためのものであり、判断能力のある人々では代替して行うことができず、かつ最小限のリスクと最小限の負担しか伴わない場合に限られ、被験者候補の利益になる可能性のない研究対象に含まれてはならない。
28. 制限能力者とみなされる被験者候補が、研究参加についての決定に賛意を表することができる場合には、医師は、法律上の権限を有する代理人からの同意のほか、さらに本人の賛意を求めなければならない。被験者候補の不同意は尊重されるべきである。
29. 例えば、意識不明の患者のように、肉体的、精神的に同意を与えることができない被験者を対象とした研究は、インフォームド・コンセントを与えることを妨げる肉体的・精神的状態が、その対象集団の必要な特徴である場合に限って行うことができる。このような状況では、医師は法律上の権限を有する代理人からのインフォームド・コンセントを求めるべきである。そのような代理人が存在せず、かつ研究を延期することができない場合には、インフォームド・コンセントを与えることができない状態にある被験者を対象とする特別な理由を研究計画書の中で述べ、かつ研究倫理委員会で承認されることを条件として、この研究はインフォームド・コンセントなしに開始することができる。研究に引き続き参加することに対する同意を、できるだけ早く被験者または法律上の代理人から取得するべきである。
30. 著者、編集者および発行者はすべて、研究結果の公刊に倫理的責務を負っている。著者は人間を対象とする研究の結果を一般的に公表する義務を有し、報告書の完全性と正確性に説明責任を負う。彼らは、倫理的報告に関する容認されたガイドラインを遵守すべきである。消極的結果および結論に達しない結果も積極的結果と同様に、公刊または他の方法で一般に公表されるべきである。刊行物の中には、資金源、組織との関わりおよび利益相反が明示される必要がある。この宣言の原則に反する研究報告は、公刊のために受理されるべきではない。

C.治療と結びついた医学研究のための追加原則
31. 医師が医学研究を治療と結びつけることができるのは、その研究が予防、診断または治療上の価値があり得るとして正当化できる範囲内にあり、かつ被験者となる患者の健康に有害な影響が及ばないことを確信する十分な理由を医師がもつ場合に限られる。
32. 新しい治療行為の利益、リスク、負担および有効性は、現在最善と証明されている治療行為と比較考慮されなければならない。ただし、以下の場合にはプラセボの使用または無治療が認められる。
* 現在証明された治療行為が存在しない研究の場合、または、
* やむを得ない、科学的に健全な方法論的理由により、プラセボ使用が、その治療行為の有効性あるいは安全性を決定するために必要であり、かつプラセボ治療または無治療となる患者に重篤または回復できない損害のリスクが生じないと考えられる場合。この手法の乱用を避けるために十分な配慮が必要である。

33. 研究終了後、その研究に参加した患者は、研究結果を知る権利と、例えば、研究の中で有益であると同定された治療行為へのアクセス、または他の適切な治療あるいは利益へのアクセスなどの、研究結果から得られる利益を共有する権利を有する。
34. 医師は、治療のどの部分が研究に関連しているかを患者に十分に説明しなければならない。患者の研究参加に対する拒否または研究からの撤退の決定は、決して患者・医師関係の妨げとなってはならない。
35. ある患者の治療において、証明された治療行為が存在しないか、またはそれらが有効でなかった場合、患者または法律上の資格を有する代理人からのインフォームド・コンセントがあり、専門家の助言を求めた後であれば、医師は、まだ証明されていない治療行為を実施することができる。ただし、それは医師がその治療行為で生命を救う、健康を回復する、または苦痛を緩和する望みがあると判断した場合に限られる。可能であれば、その治療行為は、安全性と有効性を評価するために計画された研究の対象とされるべきである。すべての例において、新しい情報は記録され、適切な場合には、一般に公開されるべきである。
年頭にあたり、ブログに書くべきことなどツイッター風に思いつくままに並べてみます。


・FDAが乳がんでアバスチンの承認取り消しを推奨「全生存期間を延長しない」。

 使ってる間はキレが良いですがやめるとぐっと悪くなるという噂ですね。
 ただ肺癌なんかでは「ここで効かないとヤバい」という場面があります。
 乳がん患者にはそんな場面は無いんですかね??私は必要だと思いますが、、。

 →そもそも「全生存期間」での評価はいい加減にやめませんかね?
  死ぬまで1~2つの治療しかしない癌患者なんて現代では有り得ないでしょ?
  各治療法の腫瘍縮小率、局所制御率、制御期間などのエンドポイントで判断しては?
  


・「UFTの有効性を主張する報告書」時々でますが、評価されているというのには驚きました。
  http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/cr/201012/517574.html

 →UFTスキャンダルはやはり明確に批判する必要がありそうです。
  多少好意的に言っても「人体実験」レベルの不正を
  「歴史的偉業」とすり替えられては容認できません。


・国内治験環境は投資に値するだけの人材もインフラもない、と言われています。

 →どこからどのように手をつけ、幾らあれば効果的なのか、患者側の役割は何か?

 
・「新薬開発」や「治験」における国の寄与は現状ケタ違いに低いのでは?
  BNCTや重粒子などの先進的放射線装置の開発も「対癌戦略の1つ」として組み込むべき。
 
 →おそらくは「まあまあの分子標的剤1つ」の開発費かその何分の一の費用で、
  近似的に完治できる装置が開発できるのでは?


・免疫療法

 →幾つかの施設でそろそろ結果が出始めると思うのですが、、。


・ドラッグラグとイレッサ訴訟とUFT保護とHIVと開業医問題は共通の土壌・原因によって
 引き起こされていると考えています。

 →まともな医療を実現する為には避けて通れないでしょうから整理する必要があります。


・龍馬伝、最高レベルに面白かったです。全話見ました。
 江姫、主演上野樹里で脚本田淵久美子って、、、、できれば2~3話で打ち切り、
 「龍馬伝」か「坂の上の雲」の再放送をして欲しいぐらいです(笑)


・民主党、私の予想よりは遥かに良いと思っています。最低でも2期8年は続いて欲しいと
 願っています。中医協に嘉山孝正氏が入ったのは良いですが、小沢氏のせいでまだ医師会枠
 が残りました。早く小沢氏を排除し、自民時代の委員が全員交代するまで続けて欲しいです。


・ただ足立信也厚労政務官は未承認薬と適応外薬の区別もついていないらしく、
 明らかに力不足?交代するか勉強するかして欲しいです。


、、、といった感じのブログになると思いますが、今年もよろしく御願い致します。
study2007
国内で臨床試験中の薬剤もありますが、それは次回記事にまとめるとして、
EGFRやVEGFR以外で最近開発されつつある新規標的と化合物について羅列してみます。

どれが有望か?など当然私には判りません。笑
私も含めEGFRすらハズレだった患者には新たな標的分子が期待されるところです。

目についたものを右から左に記載しただけなので、それほど有用ではありませんが、
将来製品化された時に開発の流れなどを知っておくのも損はないと思います。

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■IGF-1R抗体:figitumumab(ファイザー)など多数。(以前の記事参照)
        他抗癌剤との併用で上乗せ効果がありそう、との噂。

■PARP阻害:DNA修復に関係する酵素を狙う。いわゆるトリプルネガティブ乳がんで
        PARP1遺伝子発現が多く、ハーセプチン無効患者などに臨床試験実施中。
        他卵巣癌など固形癌でも試験中。

       ・Olaparib(アストラゼネカ) 乳がん、卵巣癌
       ・ABT-888(アボット) 固形癌、リンパ腫
       ・BSI-201(サノフィ・アベンティス) 乳がん
       ・MK-4827(メルク) 固形癌

■BRAF阻害:悪性黒色腫や大腸癌などでRAF-MEK-ERKという細胞成長促進シグナル経路
        に変異が見られることがあり、その経路による増殖を阻害する。
        ただし、RASという別の経路に変異がある患者の場合、その経路による
        腫瘍成長を促進するという研究がNatureに発表されている。
        悪性黒色腫患者にはメリットが大きそうだが、遺伝子検査で確認してから
        投与すべきと思われます。

        http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20668238
        http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20130576
       ・PLX4032(ロシュ) 悪性黒色腫
       ・GSK2118436(グラクソ・スミスクライン) 悪性黒色腫(脳転移)

■MEK阻害:癌細胞の成長促進シグナル経路に関わるタンパク質リン酸化酵素のひとつ。
         悪性黒色腫、非小細胞肺癌、頭頸部、膵臓癌などでMEK活性化が
         見られる。
       ・RDEA119(バイエル) 固形癌
       ・AZD6244(アストラゼネカ) 固形癌、胆道癌など
       ・XL-518(Exelixis、ジェネンテック?) 固形癌
       ・ARRY-162(Array BioPharma) 肺癌、膵臓癌など固形癌

■c-MET阻害:c-Metは肝細胞増殖因子HGFによる増殖、形成などのシグナル伝達に作用する。
         癌細胞の増殖、浸潤、転移に働く。特に低酸素状態での発現が疑われている。
         臨床試験体験談としてはtamyさんのブログに詳しいです。
       ・ARQ197(AuQule、第一三共、協和発酵キリン) 非小細胞肺癌など
       ・XL880(Exelixis)VEGFR, KITも狙う 固形癌、腎臓癌など 
       ・E7050(エーザイ)VEGFRも狙う 胃がん、肝細胞癌、頭頸部など

■ALK阻害:細胞増殖のシグナル伝達を担うチロシンキナーゼを作る遺伝子のひとつ。
          EML4遺伝子の半分とALK遺伝子の半分が間違って(逆位)融合し、
          EML4-ALK遺伝子になると癌化が起こる可能性があるらしい。
        ・AF802(中外製薬) 非小細胞肺癌

■c-MET阻害+ALK阻害:
        ・PF-0231066(ファイザー)


■Bcl-2阻害:Bcl-2は細胞が自然に死ぬ(アポトーシス性細胞死)のを妨げるタンパク質。
          良いんだか悪いんだか判らないこのタンパクの働きを阻害し、
          癌細胞を攻撃する、という機序の抗癌剤

        ・ABT-263(アボット) 悪性リンパ腫など?既に終わった薬??
        ・GX-15-070(Gemin) 悪性リンパ腫 固形癌 小細胞肺癌など
        ・AT-101(Ascenta) 小細胞肺癌など

■mTOR C1/C2:mTORは細胞増殖、翻訳、転写、mRNAへの転換などを調節する司令塔の様な酵素?
          PI3K、Akt経路を介して活性化され、癌細胞では高頻度で過剰になっている。
          mTOR阻害剤は下流のVEGFRなども抑制し血管新生も抑える。、、とのこと。
          トリセル、エベロリムスなどが既に商品化されている。
          ノバルティスのHPにエベロリムス(アフィニトール)の作用機序の解説ビデオ
          があります。
このアニメーション程は効かないとは思いますが、、、。笑
          ・AZD8055(アストラゼネカ) 固形癌など

■PI3K阻害:EGFRのシグナル伝達経路。主な3ルートの1つであるPI3K/Akt経路を中継する酵素。
           これを阻害することでmTORへの信号伝達を抑制する。それに加えPTEN欠乏
           と呼ばれるハーセプチンが効きにくいHER2陽性乳がん患者の奏効率を
           上げることが期待されハーセプチンとの併用を試験。他にリツキサンと併用
           し悪性リンパ腫で試験されたりしている。

          ・XL147,XL765(サノフィアベンティス) 固形癌 肺癌など。
          開発提携したExelixis社のASCO2010での発表はこちら。PI3K系はまだフェイズI段階。
          http://www.exelixis.com/asco/2010

          ・SF1126(Semafore) 慢性リンパ性白血病 固形癌 腎細胞癌 B細胞悪性腫瘍など

■Akt阻害:細胞成長や抗細胞死に関与するPI3K-Akt-mTORの中継酵素。活性化しすぎると
           細胞死が抑えられ癌の異常増殖が起こる。

          ・KRX0401(Keryx) 大腸癌 多発性骨髄腫など
          ・XL-418(Exelixis) 乳がん 肺癌 脳腫瘍など固形癌

■Aurora kinase阻害:細胞分裂の際に働く「鍵分子」。癌細胞の多くで高発現している。
           癌の細胞分裂を抑制したいと思うならやっぱり研究すべき?笑

          ・MK-0457(VX-680)(メルク/Vertex) 
          ・AZD1152(アストラゼネカ) 急性骨髄性白血病
          ・MLN8237(武田) 血液癌で第II相試験開始(2009)

■FLT3阻害:急性骨髄性白血病細胞の表面にある受容体チロシンキナーゼの変異遺伝子。
           細胞膜直下の領域に変異があると細胞増殖が恒常的に起こる。
          ・KW-2449 急性骨髄性白血病
          ・AC220(アステラス) 急性骨髄性白血病

■HSP90阻害:タンパク質の三次元構造(折りたたみ)を調節するタンパク質(シャペロン)の1つ。
           特定の癌細胞のシグナル伝達の経路ではなく、補助タンパクである
           HSP90を阻害することで様々な経路を同時に抑制できると期待。
           ただ、当然正常細胞にもHSP90は存在する為分子標的剤としては
           副作用は強めな可能性がある。
          ・KW-2478(協和キリン) 多発性骨髄腫 将来は固形癌も?
          ・IPI-504(Infinity) II相試験では非小細胞肺癌に多少効いた?
          ・BIIB021/CNF2024(Biogen) 固形癌、既にダメっぽい?

■TRAIL-R1抗体:TRAILは癌細胞の細胞死を誘導する。受容体を特異的に活性化しプログラム死を
           活性化する。
          ・mapatumumab(HGS) 非小細胞肺癌にはII相試験で落選。

■Hedgehog阻害:立花隆さんが治療意欲を失ったきっかけでもある(笑)「癌幹細胞」の成長や
            分化、増殖に関与するシグナル経路。恐らくは転移や浸潤、薬剤耐性、
            放射線耐性、そして再発といった癌のイヤな性質のかなりの部分に
            関与する領域?強力な細胞殺傷系抗癌剤と併用すると完治可能か??笑
            http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~orthop/kotunannsyuyou.html
            http://www.cstj.co.jp/reference/pathway/Hedgehog.php
            http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/200903/510041.html
          ・GDC-0449(ジェネンテック) とりあえず大腸癌にはイマイチだったらしい、、?
          ・IPI-926(Infinity Pharmaceuticals) 固形癌 臨床試験の結果が待たれます。
          ・BMS833923/XL139(BMS)
    

 Notch情報伝達系:http://gantoku3.umin.jp/topics/masuda.html
          ・MK0752(メルク) 固形癌 I相試験など
          ・R4733 固形癌 I相試験など