国内で臨床試験中の薬剤もありますが、それは次回記事にまとめるとして、
EGFRやVEGFR以外で最近開発されつつある新規標的と化合物について羅列してみます。
どれが有望か?など当然私には判りません。笑
私も含めEGFRすらハズレだった患者には新たな標的分子が期待されるところです。
目についたものを右から左に記載しただけなので、それほど有用ではありませんが、
将来製品化された時に開発の流れなどを知っておくのも損はないと思います。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
■IGF-1R抗体:figitumumab(ファイザー)など多数。(以前の記事参照)
他抗癌剤との併用で上乗せ効果がありそう、との噂。
■PARP阻害:DNA修復に関係する酵素を狙う。いわゆるトリプルネガティブ乳がんで
PARP1遺伝子発現が多く、ハーセプチン無効患者などに臨床試験実施中。
他卵巣癌など固形癌でも試験中。
・Olaparib(アストラゼネカ) 乳がん、卵巣癌
・ABT-888(アボット) 固形癌、リンパ腫
・BSI-201(サノフィ・アベンティス) 乳がん
・MK-4827(メルク) 固形癌
■BRAF阻害:悪性黒色腫や大腸癌などでRAF-MEK-ERKという細胞成長促進シグナル経路
に変異が見られることがあり、その経路による増殖を阻害する。
ただし、RASという別の経路に変異がある患者の場合、その経路による
腫瘍成長を促進するという研究がNatureに発表されている。
悪性黒色腫患者にはメリットが大きそうだが、遺伝子検査で確認してから
投与すべきと思われます。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20668238
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20130576
・PLX4032(ロシュ) 悪性黒色腫
・GSK2118436(グラクソ・スミスクライン) 悪性黒色腫(脳転移)
■MEK阻害:癌細胞の成長促進シグナル経路に関わるタンパク質リン酸化酵素のひとつ。
悪性黒色腫、非小細胞肺癌、頭頸部、膵臓癌などでMEK活性化が
見られる。
・RDEA119(バイエル) 固形癌
・AZD6244(アストラゼネカ) 固形癌、胆道癌など
・XL-518(Exelixis、ジェネンテック?) 固形癌
・ARRY-162(Array BioPharma) 肺癌、膵臓癌など固形癌
■c-MET阻害:c-Metは肝細胞増殖因子HGFによる増殖、形成などのシグナル伝達に作用する。
癌細胞の増殖、浸潤、転移に働く。特に低酸素状態での発現が疑われている。
臨床試験体験談としてはtamyさんのブログに詳しいです。
・ARQ197(AuQule、第一三共、協和発酵キリン) 非小細胞肺癌など
・XL880(Exelixis)VEGFR, KITも狙う 固形癌、腎臓癌など
・E7050(エーザイ)VEGFRも狙う 胃がん、肝細胞癌、頭頸部など
■ALK阻害:細胞増殖のシグナル伝達を担うチロシンキナーゼを作る遺伝子のひとつ。
EML4遺伝子の半分とALK遺伝子の半分が間違って(逆位)融合し、
EML4-ALK遺伝子になると癌化が起こる可能性があるらしい。
・AF802(中外製薬) 非小細胞肺癌
■c-MET阻害+ALK阻害:
・PF-0231066(ファイザー)
■Bcl-2阻害:Bcl-2は細胞が自然に死ぬ(アポトーシス性細胞死)のを妨げるタンパク質。
良いんだか悪いんだか判らないこのタンパクの働きを阻害し、
癌細胞を攻撃する、という機序の抗癌剤
・ABT-263(アボット) 悪性リンパ腫など?既に終わった薬??
・GX-15-070(Gemin) 悪性リンパ腫 固形癌 小細胞肺癌など
・AT-101(Ascenta) 小細胞肺癌など
■mTOR C1/C2:mTORは細胞増殖、翻訳、転写、mRNAへの転換などを調節する司令塔の様な酵素?
PI3K、Akt経路を介して活性化され、癌細胞では高頻度で過剰になっている。
mTOR阻害剤は下流のVEGFRなども抑制し血管新生も抑える。、、とのこと。
トリセル、エベロリムスなどが既に商品化されている。
ノバルティスのHPにエベロリムス(アフィニトール)の作用機序の解説ビデオ
があります。このアニメーション程は効かないとは思いますが、、、。笑
・AZD8055(アストラゼネカ) 固形癌など
■PI3K阻害:EGFRのシグナル伝達経路。主な3ルートの1つであるPI3K/Akt経路を中継する酵素。
これを阻害することでmTORへの信号伝達を抑制する。それに加えPTEN欠乏
と呼ばれるハーセプチンが効きにくいHER2陽性乳がん患者の奏効率を
上げることが期待されハーセプチンとの併用を試験。他にリツキサンと併用
し悪性リンパ腫で試験されたりしている。
・XL147,XL765(サノフィアベンティス) 固形癌 肺癌など。
開発提携したExelixis社のASCO2010での発表はこちら。PI3K系はまだフェイズI段階。
http://www.exelixis.com/asco/2010
・SF1126(Semafore) 慢性リンパ性白血病 固形癌 腎細胞癌 B細胞悪性腫瘍など
■Akt阻害:細胞成長や抗細胞死に関与するPI3K-Akt-mTORの中継酵素。活性化しすぎると
細胞死が抑えられ癌の異常増殖が起こる。
・KRX0401(Keryx) 大腸癌 多発性骨髄腫など
・XL-418(Exelixis) 乳がん 肺癌 脳腫瘍など固形癌
■Aurora kinase阻害:細胞分裂の際に働く「鍵分子」。癌細胞の多くで高発現している。
癌の細胞分裂を抑制したいと思うならやっぱり研究すべき?笑
・MK-0457(VX-680)(メルク/Vertex)
・AZD1152(アストラゼネカ) 急性骨髄性白血病
・MLN8237(武田) 血液癌で第II相試験開始(2009)
■FLT3阻害:急性骨髄性白血病細胞の表面にある受容体チロシンキナーゼの変異遺伝子。
細胞膜直下の領域に変異があると細胞増殖が恒常的に起こる。
・KW-2449 急性骨髄性白血病
・AC220(アステラス) 急性骨髄性白血病
■HSP90阻害:タンパク質の三次元構造(折りたたみ)を調節するタンパク質(シャペロン)の1つ。
特定の癌細胞のシグナル伝達の経路ではなく、補助タンパクである
HSP90を阻害することで様々な経路を同時に抑制できると期待。
ただ、当然正常細胞にもHSP90は存在する為分子標的剤としては
副作用は強めな可能性がある。
・KW-2478(協和キリン) 多発性骨髄腫 将来は固形癌も?
・IPI-504(Infinity) II相試験では非小細胞肺癌に多少効いた?
・BIIB021/CNF2024(Biogen) 固形癌、既にダメっぽい?
■TRAIL-R1抗体:TRAILは癌細胞の細胞死を誘導する。受容体を特異的に活性化しプログラム死を
活性化する。
・mapatumumab(HGS) 非小細胞肺癌にはII相試験で落選。
■Hedgehog阻害:立花隆さんが治療意欲を失ったきっかけでもある(笑)「癌幹細胞」の成長や
分化、増殖に関与するシグナル経路。恐らくは転移や浸潤、薬剤耐性、
放射線耐性、そして再発といった癌のイヤな性質のかなりの部分に
関与する領域?強力な細胞殺傷系抗癌剤と併用すると完治可能か??笑
http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~orthop/kotunannsyuyou.html
http://www.cstj.co.jp/reference/pathway/Hedgehog.php
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/200903/510041.html
・GDC-0449(ジェネンテック) とりあえず大腸癌にはイマイチだったらしい、、?
・IPI-926(Infinity Pharmaceuticals) 固形癌 臨床試験の結果が待たれます。
・BMS833923/XL139(BMS)
Notch情報伝達系:http://gantoku3.umin.jp/topics/masuda.html
・MK0752(メルク) 固形癌 I相試験など
・R4733 固形癌 I相試験など
EGFRやVEGFR以外で最近開発されつつある新規標的と化合物について羅列してみます。
どれが有望か?など当然私には判りません。笑
私も含めEGFRすらハズレだった患者には新たな標的分子が期待されるところです。
目についたものを右から左に記載しただけなので、それほど有用ではありませんが、
将来製品化された時に開発の流れなどを知っておくのも損はないと思います。
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■IGF-1R抗体:figitumumab(ファイザー)など多数。(以前の記事参照)
他抗癌剤との併用で上乗せ効果がありそう、との噂。
■PARP阻害:DNA修復に関係する酵素を狙う。いわゆるトリプルネガティブ乳がんで
PARP1遺伝子発現が多く、ハーセプチン無効患者などに臨床試験実施中。
他卵巣癌など固形癌でも試験中。
・Olaparib(アストラゼネカ) 乳がん、卵巣癌
・ABT-888(アボット) 固形癌、リンパ腫
・BSI-201(サノフィ・アベンティス) 乳がん
・MK-4827(メルク) 固形癌
■BRAF阻害:悪性黒色腫や大腸癌などでRAF-MEK-ERKという細胞成長促進シグナル経路
に変異が見られることがあり、その経路による増殖を阻害する。
ただし、RASという別の経路に変異がある患者の場合、その経路による
腫瘍成長を促進するという研究がNatureに発表されている。
悪性黒色腫患者にはメリットが大きそうだが、遺伝子検査で確認してから
投与すべきと思われます。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20668238
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20130576
・PLX4032(ロシュ) 悪性黒色腫
・GSK2118436(グラクソ・スミスクライン) 悪性黒色腫(脳転移)
■MEK阻害:癌細胞の成長促進シグナル経路に関わるタンパク質リン酸化酵素のひとつ。
悪性黒色腫、非小細胞肺癌、頭頸部、膵臓癌などでMEK活性化が
見られる。
・RDEA119(バイエル) 固形癌
・AZD6244(アストラゼネカ) 固形癌、胆道癌など
・XL-518(Exelixis、ジェネンテック?) 固形癌
・ARRY-162(Array BioPharma) 肺癌、膵臓癌など固形癌
■c-MET阻害:c-Metは肝細胞増殖因子HGFによる増殖、形成などのシグナル伝達に作用する。
癌細胞の増殖、浸潤、転移に働く。特に低酸素状態での発現が疑われている。
臨床試験体験談としてはtamyさんのブログに詳しいです。
・ARQ197(AuQule、第一三共、協和発酵キリン) 非小細胞肺癌など
・XL880(Exelixis)VEGFR, KITも狙う 固形癌、腎臓癌など
・E7050(エーザイ)VEGFRも狙う 胃がん、肝細胞癌、頭頸部など
■ALK阻害:細胞増殖のシグナル伝達を担うチロシンキナーゼを作る遺伝子のひとつ。
EML4遺伝子の半分とALK遺伝子の半分が間違って(逆位)融合し、
EML4-ALK遺伝子になると癌化が起こる可能性があるらしい。
・AF802(中外製薬) 非小細胞肺癌
■c-MET阻害+ALK阻害:
・PF-0231066(ファイザー)
■Bcl-2阻害:Bcl-2は細胞が自然に死ぬ(アポトーシス性細胞死)のを妨げるタンパク質。
良いんだか悪いんだか判らないこのタンパクの働きを阻害し、
癌細胞を攻撃する、という機序の抗癌剤
・ABT-263(アボット) 悪性リンパ腫など?既に終わった薬??
・GX-15-070(Gemin) 悪性リンパ腫 固形癌 小細胞肺癌など
・AT-101(Ascenta) 小細胞肺癌など
■mTOR C1/C2:mTORは細胞増殖、翻訳、転写、mRNAへの転換などを調節する司令塔の様な酵素?
PI3K、Akt経路を介して活性化され、癌細胞では高頻度で過剰になっている。
mTOR阻害剤は下流のVEGFRなども抑制し血管新生も抑える。、、とのこと。
トリセル、エベロリムスなどが既に商品化されている。
ノバルティスのHPにエベロリムス(アフィニトール)の作用機序の解説ビデオ
があります。このアニメーション程は効かないとは思いますが、、、。笑
・AZD8055(アストラゼネカ) 固形癌など
■PI3K阻害:EGFRのシグナル伝達経路。主な3ルートの1つであるPI3K/Akt経路を中継する酵素。
これを阻害することでmTORへの信号伝達を抑制する。それに加えPTEN欠乏
と呼ばれるハーセプチンが効きにくいHER2陽性乳がん患者の奏効率を
上げることが期待されハーセプチンとの併用を試験。他にリツキサンと併用
し悪性リンパ腫で試験されたりしている。
・XL147,XL765(サノフィアベンティス) 固形癌 肺癌など。
開発提携したExelixis社のASCO2010での発表はこちら。PI3K系はまだフェイズI段階。
http://www.exelixis.com/asco/2010
・SF1126(Semafore) 慢性リンパ性白血病 固形癌 腎細胞癌 B細胞悪性腫瘍など
■Akt阻害:細胞成長や抗細胞死に関与するPI3K-Akt-mTORの中継酵素。活性化しすぎると
細胞死が抑えられ癌の異常増殖が起こる。
・KRX0401(Keryx) 大腸癌 多発性骨髄腫など
・XL-418(Exelixis) 乳がん 肺癌 脳腫瘍など固形癌
■Aurora kinase阻害:細胞分裂の際に働く「鍵分子」。癌細胞の多くで高発現している。
癌の細胞分裂を抑制したいと思うならやっぱり研究すべき?笑
・MK-0457(VX-680)(メルク/Vertex)
・AZD1152(アストラゼネカ) 急性骨髄性白血病
・MLN8237(武田) 血液癌で第II相試験開始(2009)
■FLT3阻害:急性骨髄性白血病細胞の表面にある受容体チロシンキナーゼの変異遺伝子。
細胞膜直下の領域に変異があると細胞増殖が恒常的に起こる。
・KW-2449 急性骨髄性白血病
・AC220(アステラス) 急性骨髄性白血病
■HSP90阻害:タンパク質の三次元構造(折りたたみ)を調節するタンパク質(シャペロン)の1つ。
特定の癌細胞のシグナル伝達の経路ではなく、補助タンパクである
HSP90を阻害することで様々な経路を同時に抑制できると期待。
ただ、当然正常細胞にもHSP90は存在する為分子標的剤としては
副作用は強めな可能性がある。
・KW-2478(協和キリン) 多発性骨髄腫 将来は固形癌も?
・IPI-504(Infinity) II相試験では非小細胞肺癌に多少効いた?
・BIIB021/CNF2024(Biogen) 固形癌、既にダメっぽい?
■TRAIL-R1抗体:TRAILは癌細胞の細胞死を誘導する。受容体を特異的に活性化しプログラム死を
活性化する。
・mapatumumab(HGS) 非小細胞肺癌にはII相試験で落選。
■Hedgehog阻害:立花隆さんが治療意欲を失ったきっかけでもある(笑)「癌幹細胞」の成長や
分化、増殖に関与するシグナル経路。恐らくは転移や浸潤、薬剤耐性、
放射線耐性、そして再発といった癌のイヤな性質のかなりの部分に
関与する領域?強力な細胞殺傷系抗癌剤と併用すると完治可能か??笑
http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~orthop/kotunannsyuyou.html
http://www.cstj.co.jp/reference/pathway/Hedgehog.php
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/200903/510041.html
・GDC-0449(ジェネンテック) とりあえず大腸癌にはイマイチだったらしい、、?
・IPI-926(Infinity Pharmaceuticals) 固形癌 臨床試験の結果が待たれます。
・BMS833923/XL139(BMS)
Notch情報伝達系:http://gantoku3.umin.jp/topics/masuda.html
・MK0752(メルク) 固形癌 I相試験など
・R4733 固形癌 I相試験など