番組告知をした手前、感想を記しておく。一言で言うなら「完全に期待外れ」。
むしろ「負のアナウンス効果」が懸念される為、問題点を指摘しておく。

1.戸塚氏へのインタビュー。
先ず、戸塚氏の治療経過から得られた教訓が「抗癌剤は怖い」というもの。これは0点。
どれ程良い「情報」があっても、それを「知識」に構築出来ない典型的な例と言わざるを得ない。
念のため、戸塚氏の治療経過を再掲する。
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-t090701

また本ブログの
・戸塚洋二氏の治療経過について(4.治療の別ルート)に腸閉塞や肺炎について私の見方を
示している。例えば腸閉塞の原因のより多くは抗癌剤よりも手術だと考える。
抗癌剤が怖いという迷信から逃れられず、治療回避という結論から逆算し、言い訳を
並べただけに過ぎず、事実関係の整理すら出来ていない。

戸塚氏の治療における真の問題点は「再発時の診断」と「国内の医療制度とバランスを欠い
た医療費支出」による治療方針の設計にあったと私は考えている。


2.癌遺伝子、低酸素耐性・転移、がん幹細胞について
(番組では「確定事項」の様に語られていましたが、私的には異論も多々あります、、)
「前世紀」の古い話題を聞く為にわざわざ米国まで行く理由が分からない。
がんセンターのレジデント君と昼飯でも食いながら歓談すれば同様の情報は得られる。

勿論、これらの話題は私の治療にとっても重要な示唆に富んでいる。
・癌治療(エピジェネティック)
・分子標的剤に関する良くないニュース

・癌治療(治癒しない理由)
・重粒子線治療(診療相談・(がん幹細胞の話題))

ただ、私にとって「情報」は「治るため」に必要なのであり、
何かを諦める為の言い訳に利用する感覚は理解出来ない。

例えば、強敵とされる「がん幹細胞」も重粒子を100Gy/Eも照射すれば
間違い無く死滅させられると想像する。放医研において「充分でかい原発癌」が
わずか50~60Gy/E程度で制御されている事実を「見て見ぬ振り」をするのは正直ではない。

さらに、新規抗癌剤と分子標的剤、カテーテル治療を組み合わせる事で、癌の「娘」細胞
は制御・縮小できるケースが現れてきている。

2009年現在の私の「市民感覚」から見ると、立花氏の論点と思索は癌治療のスタートライン
に立つ以前の、まるで競技場の外か、観客席での「うわさ話程度」のレベルに見える。

例えば昨今、私が気になるのは、
・例えば2cm径の「耐性腫瘍」に本当は何カ所まで重粒子照射が可能か?10回~20カ所か?
・重粒子まで落とし込む為の抗癌剤の最適な手順・手法は?
・毎年30兆円の医療費を消費しながら、なぜ「重粒子100台(0.5~1兆円)」が実現しないのか?
・毎年300億~600億円もの医療費がUFT(大鵬薬品)に投じられムダになってきたのは誰のせいか?
・ワクチン療法は何ミリ以下なら効くか?10mmか?1mmか?0.1mmか?
などである。

保険適応で分子標的剤と重粒子治療を受けられる様になれば、年間2カ所ずつ再発しても、
5年から10年制御することも不可能では無い。65歳で発病し75歳まで治療を継続
できれば、それは「勝ちにも等しい引き分け」ではないだろうか?

現状でそれが出来ないのは技術的な問題よりも、医療制度や(患者も含めた)モラルの低さ
の問題ではないかと私は考えつつある。立花氏のレポートは「がんに挑む」という立場に
おいて、観点が古く、かつ掘り下げ方も極めて浅い、表層の議論に終わったと感じる。