癌の標準治療を、あたかも「平均的な治療」あるいは「時代遅れの治療」と
意図的に喧伝する医師が居るが、その殆どはインチキな営業トークである。

私の知る限り、殆どの癌腫において標準的とされているレジメンは、
「最も多数が、最も利益を得、最も安全に行える」最も約束された手法の様に見える。
戸塚先生のルートも「標準治療」に則っており、それを軽々に否定できるモノではない。

戸塚氏の治療過程における、恐らく唯一にして最大の失敗は、術後から再発までの期間、
検査結果を自分で精査しなかった事だと考える。(誰か下っ端にさせても良かったとすら思う)

造影CTで見えてしまう程度の「肺への多発転移」を見落とさなければ、治療ルートは
自ずと違ったモノになったと考える。実際は、この時点で「標準治療」は終了している。
で、あるならば2004年以降の治療ルートは当然替わるべきであった。

・肺転移時に考えるべきは抗癌剤となり(当時佐藤均氏の怒鳴り込みで有名になった)
 オキサリプラチンやアバスチン&アービタックス等の混合診療も視野に入ったであろう。
 これらの薬剤は戸塚先生の症例にも功を奏し、治療後半では大きく貢献している。

・奏効の程度にも拠るが、肺については手術回避、もしくは重粒子線等で長期に
 制御できた可能性が比較的高く、呼吸機能を温存できた可能性も高い。
 呼吸機能の低下は戸塚氏の治療過程で常に足を引っ張る結果になっている。

・5-FU(単剤だった?)は戸塚先生(に限らないが)に相性が悪く。その依存度を
 下げる事で、後日度々悩まされる脱水症状を軽減する事ができた可能性がある。

初回治療で直腸を切除したのは仕方が無い。それに伴う「お約束」の腸閉塞も
やむを無い(体験者に聞くと笑い事では無いそうですが、、、)。が、
よく調べもせずに肺の切除を行い、尚かつ5-FUのゴリ押しを続けたのは残念である。

これほど進行が遅く、かつ新規の抗癌剤が期待できるのであれば、
抗癌剤と粒子線で制御しつつ、ワクチン療法等へ移行できた可能性が充分にある。

戸塚氏は発病から10年近く癌を制御し続ける事ができた。統計的には成功であり、
それぞれの局面では各々「正しい」事をしたと言っても良い。

しかしながら2004年以降、もしも「データの精査」を行っていれば、当時から「既知」
で「信頼性の確かめられた」手法を組み合わせるだけで、あと何年も、より良い状態で
予後を延長できた可能性が大いにある。