2003年4月14日ヒトゲノムの98.8%が解読され、ヒトゲノムプロジェクトの完了が宣言された。
ポストゲノム研究の主流は当然ながらゲノムと(癌を含む)疾病の関連を探ることにある。
(と、期待したい、、、)

癌研究の場においては、ヒトゲノムプロジェクトが終盤にさしかかった2000年頃に前後し、
DNAの一次構造変異説の「不備」が指摘され始め、細胞質内の発現異常に関する可能性、
すなわち「遺伝子外的な要因」がクローズアップされ始めた。このDNAの一次構造以外
の機構を中心的に取り扱うのを「エピジェネティック研究」と分類する様である。

まるで「流行語の羅列」である。が、そもそも70年代以前は発癌の場所に関する話題は
「DNA vs細胞質内」という構図を持ち活発に議論されていた様である。いわゆる
「タンパク質か?DNAか?論争」である。

70年代に入るとエームステストという細菌や微生物を使った変異原生性試験方が確立した。
簡便な試験により多数の発癌物質が試験され、突然変異との良い相関が確認された。さらに、
80年代にワインバーグet. al.,によりヒト膀胱癌の中に癌遺伝子が存在する事が確認された。
しかもその遺伝子はDNAの中のたった1個のG→T置換という「突然変異」が原因である事が
確認された。80年代後半にはP-53に代表される癌抑制遺伝子も発見された。

「画期的で先駆的な発見」と「比較的簡単な試験法の確立」により癌研究の中心は圧倒的に
「突然変異説」に傾いた。こういった「流れ」は医学に限らず自然科学の分野でしばしば
見られる現象である。主流の研究に「乗っかり」偉大な先人の後を追うのは楽だからである。

大した独創性も予算も必要とせず。似たような手法で「話題性の高い」結果が得られる可能性
があり、それでいて「最先端のつもりで居られる」からである。癌遺伝子を探す「宝探し研究」
に比べ、癌遺伝子の「意味」やそれを包含する「生体内の癌」の全体像を探求する努力は明らか
に不足していた様に感じる。

DNAのメチル化やアセチル化などは核外で起こる酵素的な修飾に過ぎない。しかし遺伝子の発現
には影響を及ぼす。癌研究において明らかな重要性があるにも関わらず2000年にMethyLight法
などが確立されるまで殆ど?クローズアップされて来なかった。どうやら今流行中の様である。

研究者が流行の説に乗っかり右往左往するのはある程度やむを得ない。予算を獲得したり、
学会で発表したりするのに便利であるし、そういった研究の中の幾つかは役に立つ事もある。

しかし私には時間的余裕は無い。治療方針や生活習慣を選定する上で「何を」「どう考え」
進めるか?は自己責任で、しかもかなりの部分を「推定」しながら進めねばならない。