非小細胞肺癌は薬物療法単独での治癒は見込めないとされている。添付図は
主な癌腫の薬物療法に対する感受性・治療効果の見込みをまとめたモノである。
「非小細胞肺癌ステージIVb」の確定診断を受けた私は延命すら厳しい事になる。
癌腫と薬物療法

この表は、多くの患者の命とそれに携わってきた医療者の努力により得られた
知見の総和である。人的・金銭的コストは計り知れず、その意味は極めて重い。

では私の著効という結果はどう理解するのが妥当なのだろうか?
「奇跡の体験」を語る講演会などを開き、一財産でも築くべきだろうか?

針生検で低分化扁平上皮癌であることが判った。私は悪性度・活性度が高い事に
不安を感じた。主治医に相談すると「仰る通りです。ですが、その理解は私は
ちょっと時代遅れだと思います。」との回答だった。

例えば悪性度の高い小細胞肺癌は数年前には「不治の病」であったが、2001年
頃には著効率が90%前後に達し最近では根治可能な癌になりつつある。

私の非小細胞癌は悪性度が高い。シスプラチンくらいしか「効く」薬が無かった
2000年頃以前であればC群とD群の間くらいの評価では無かっただろうか?
しかし今はシスプラチンの腎毒性を緩和したカルボプラチンも「堂々と」使う
事ができる。細胞分裂の周期が短い事が逆に幸いしB群とC群の間くらいの状況
になっている可能性もある。

画像上確かに腫瘍は消失したが特に不思議な事が起こった訳ではなく、活性の
低いゆっくりした癌に対しての「奏効」と同等の状態にあると考えるのが自然
かも知れない。

で、あるならば「寛解」を目指す私には今後も周到な戦略と準備が必要である。

2005年マスターズ16番タイガーウッズのアプローチは「奇跡的」だった。
カップイン直前にナイキのマークが世界中継されるなど出来過ぎである。

しかしそれは奇跡の水(1万8000円/月)を飲めば起こるという類のモノとは
本質的に異なる。あくまでも経験と努力の積み重ねにより成し遂げられた人の技
である。タイガーの偉業に比べれば私の闘病など簡単な事の様に思える。