26P「先のことはわからないからなんとも言えないが……。何になるかより、何をやるかのほうが大事だと思っている」
何になるかより、何をやるか。わかるようなわからないような言葉だけど、成瀬さんが言うとかっこよく感じる。
「成瀬は天下を取りに行く」の続編。しかしぼくはまだデビュー作を見ていない。
著者と同じく滋賀県大津市在住で京都大学に在学している成瀬あかりが主人公だ。
しゃべることばと書き言葉には彼女らしい特徴がある。遠くからでも近くからでもどこからでも彼女だと気づくのだ。
「成瀬慶彦の憂鬱」、京大入試に付き添った成瀬の父親は、野宿する予定の見知らぬ受験生城山を拾ってしまう成瀬を見守りつつ、合格後は実家を離れてしまうだろう寂しさを感じている。
「やめたいクレーマー」、周りに媚びなし、妥協なし、打算もなしで人に対する愛情がいっぱいあった。
「コンビーフはうまい」、びわ湖大津観光大使のたすきをつけて、東奔西走しながら我が道を突き進む存在感は抜群だった。こんな行動力には応援したくなる。
成瀬に戸惑いながらも惹かれていく周囲の人間の様子が魅力的に描かれていた。
先の作品がとてもとっても人気があったのは読んでみてわかった。成瀬あかりに導かれるようにして、物語が踊るように展開していくのでけっこう面白い。次の続編も読んでみたいし、その先にデビュー作を読みたくなる。
「探さないでください」、紅白歌合戦出演を果たすのは、成瀬あかりの前からの夢だったのかな!
<目次>
ときめきっ子タイム
成瀬慶彦の憂鬱
やめたいクレーマー
コンビーフはうまい
探さないでください
1983年静岡県富士市生まれ。京都大学文学部卒。2021年「ありがとう西武大津店」で第20回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞。2023年同作を含む『成瀬は天下を取りにいく』でデビュー、10万部を突破し話題になる。本書はその続編にあたる。









