さて、今回からは、

特別機動捜査隊 スペシャルセレクションVol.9・帰って来た三船主任

になります。

 

前稿までを踏襲して、市販品なので、

(あらすじ)などストーリーの本質にかかわるところは伏せ、

スタッフやキャスト、また(備考)・(ネタバレしない範囲での一般的感想のみ

にとどめます。

将来、東映chなどで、一般的視聴されるようになったら書き加えていく予定です。

 

※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

配役名表記が有るため、従来の「発声のみの役名については平仮名表記」「オープニング・エンディングの表記と、劇中発声・表記が異なるときは、後者を優先」する原則に戻り、以下本文を表記します。例外は、その都度(備考)で示します。

 

☆・・・#443  桃色の報酬

特別機動捜査隊(第443回)桃色の報酬

 

 

 

(収録DVD)・・・VoL9、disc1、2023年10月11日発売

(本放送)・・・1970年4月30日

(脚本)・・・西沢治

(監督)・・・天野利彦

(協力)・・・警視庁

(協賛)・・・日本水道協会

(助監督)・・・稲垣信明

(劇中ナレーター)・・・島宇志夫

(捜査担当・オープニング表記)・・・三船班

西本捜一係長(鈴木志郎)、鑑察医(仲原新二)、鑑識課員(上田侑嗣)、

鑑識課員(新田五郎)、事務員(森るみ子)、三船主任(青木義朗)、

関根部長刑事(伊沢一郎)、畑野刑事(宗方勝巳)、笠原刑事(伊達正三郎)、

岩井田刑事(滝川潤)、石原刑事(吉田豊明)

 

(出演者・オープニングまたはエンディング表記)

・・・劇中優先のため配役名表記を省略

三田村賢二、山崎純資、福島寿美子、小杉真紀、岡部正純、日高ゆりえ、沢宏美、

篠由紀、若山みち子、池田生二、簡野典子、五月晴子、川部修詩、杉山渥典、

水沢摩耶、本多洋子、島田潤子、石垣守一、野本博、亀井三郎、新林イサオ、

金親保雄、岡本英治、大牧万左也、村上幹夫、遠山智英子、榎本英一、高坂真琴、

池田純子、藤下悟、江藤小夜子、佐藤勝吾、関芳枝、清水ひろみ、

奥野匡、外山高士、村上不二夫、北原義郎、浜村純

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

※映像特典・次回予告篇集には未収録

直前作特別機動捜査隊(第442回)箱根山を包囲せよ は現存が確認されている。

予告篇の現存は、【第2回再放送】で直前作を視聴した方で無いと不明。

→(追加)R6.9.22

コメント欄うっきんさんより、直前作に、当作予告篇が存在していると指摘された。

 

→(追加)R6.9.23

コメント欄うっきんさんより、予告篇内容を提供されたので、註をつけ、以下に抜粋した。うっきんさんに感謝いたします。

 

明日なき世代、強烈なゴーゴーのリズムに陶酔し、
自己を見失っていく若者たち。
真壁冬子殺人事件(註・「真壁」は「葉室」の誤り)の容疑者は
いずれもそれら若者達であった!
セックスラッシュに明け暮れ、マスコミ戦争に狂奔し、
目的のために手段を選ばぬ大人達。
また家庭において断絶した親と子のあいだ。
そんな世代の中に、三船班は、親を忘れ、愛情無きセックスに溺れ、
一匹の獣に成り下がった犯人を追うのであった!
果たして真犯人は? 

そして動機は?
三船班の活躍にご期待ください。

 

 

(備考)・・・

【1970年】(2)特捜隊の収録回・未収録回・欠番回で、当該回の事前調査済み。

・自分自身は、当作の観賞により、現存する三船班関連ストーリーを全作観賞・視聴したことになる。なお、現在のところの三船班欠番回は、

特別機動捜査隊(第576回)悪夢

特別機動捜査隊(第580回)刑事はつらいよ

である。

・劇中で、三船主任(青木義朗)、畑野刑事(宗方勝巳)、岩井田刑事(滝川潤)、石原刑事(吉田豊明)、笠原刑事(伊達正三郎)、関根部長刑事(伊沢一郎)の順で紹介テロップが流れるが、この形は、三船班次作の#448 刑事【スペシャルセレクション】でも採用されていた。しかし、

#433 全員救出せよ【スペシャルセレクション】(劇中紹介テロップ無し)の次作から、当作(劇中紹介テロップ有り)の直前作に至る前までの9作品

②当作の次作から、#448 刑事【スペシャルセレクション】(三船班次作、劇中紹介テロップ有り)の直前作に至る前までの4作品

③上記作(#448)の次作から、#451 雨の中の慕情(劇中紹介テロップ無し)の直前作に至る前までの2作品

の15作品は、現存しているものの当方未見である。よって、どの時点で劇中紹介テロップが始まり終わったかについては、三船班限定の2作のみ行なったのか? 期間限定で捜査班関係無く全作で行なったのか? 不明である。

→(追加)R6.9.22

コメント欄うっきんさんから、「当該の立石・藤島班出演回では、(註・テロップが)ありませんでした」と指摘された。とすると、上記期間でテロップがあったのは、三船班の#443 桃色の報酬【スペシャルセレクション】#448 刑事【スペシャルセレクション】の2作のみということになる。

・ラストの格闘場面の建物は、かつて新宿区新宿2-5-12に存在した、ラシントンパレス(都市徘徊blog 2009.1.22記事、2004年には、建物解体が決まったという)。#413 麻薬【スペシャルセレクション】にて、初登場の三船主任が、愛川病院医師・賀山(演者は宗方勝巳!)への聞きこみに現われた場面でも使われた。

・事件現場での、畑野が三船主任へ発見者を紹介する場面は、台詞間違いなのか、意図的な脚本上のフェイクなのかわかりづらいが、当方の判断で以下本文を作成した。

・その他にも、劇中ナレーションと登場人物発声の違いも目立つが、当方判断で、「はらつき町× はなつき町○」「あわしま× かわしま○」とした。

 

 

(視聴録)・・・開始約分半まで

(ネタバレしない範囲での一般的感想)

主な関連人物をまとめますと以下のとおりです。

(演者は・・・の次に、判明出来る俳優名を表記)

 

〇矢吹のぼる・・・・・・・・・・・・三田村賢二

〇のぼるの父・・・・・・・・・・・・北原義郎

〇のぼるの母・・・・・・・・・・・・福島寿美子

〇のぼるの祖父・・・・・・・・・・・浜村純

〇のぼるの祖母・・・・・・・・・・・日高ゆりえ

〇六甲商事・経理部・部長・魚住・・・外山高士

〇同・経理部・事務・葉室冬子・・・・小杉真紀

〇冬子の父・葉室正司・・・・・・・・池田生二

〇冬子の母・・・・・・・・・・・・・水沢摩耶

○冬子の婚約者・じょう

〇アングラ喫茶A&B・マスター

〇同・男性客・真壁いさお・・・・・・山崎純資

〇同・男性客・綾小路・・・・・・・・杉山渥典

〇同・男性客・背広男性

〇同・女性客・マキ・・・・・・・・・沢宏美

〇同・女性客・直美・・・・・・・・・篠由紀

〇同・客(男女多数)

○真壁いさおの母・・・・・・・・・・若山みち子

〇作家・佃じゅんいちろう・・・・・・川部修詩

〇佃のマンションの男性・赤タオル

〇同・青服

〇同・バスタオル

〇佃のマンションの女性・緑服・・・・高坂真琴?

〇同・青黄服

〇同・赤服

○街をふらつく男性大学生(3人)

○ラジオインタビュア(男性)

○女性評論家・・・・・・・・・・・・簡野典子

〇女性デザイナー・かわしま織江・・・五月晴子

〇川路医院・院長・・・・・・・・・・奥野匡

〇同・看護婦・・・・・・・・・・・・島田潤子

○同・付近を歩く女性

〇女子学生・こまきとも子・・・・・・本多洋子

〇あずま組・組員・掛札いさむ・・・・岡部正純

〇同・組員・仙波けいいちろう・・・・亀井三郎

〇南新宿署・刑事

〇毎朝新聞記者・村上・・・・・・・・村上不二夫

 

 

「通報に接した特捜隊・三船班は、直ちに新宿区はなつき町の事件現場に急行した」

(ナレーションから、一部訂正して抜粋、現場到着は深夜である)

鑑察医は、被害者女性の死因を、鋭い刃物で左胸部を一突き、死亡推定時刻は午後11時ごろと、三船主任に所見報告。鑑識上田から被害者の財布を渡された関根も、財布中に、現金3000円、身分証明書があることを報告した。これに三船主任は、身分証明書から、被害者は六甲商事本社事務員の葉室冬子20歳と確認する。しかし、岩井田・石原からの報告では、その他の遺留品は見つからないとの状況であった。

そして、三船主任は、畑野の案内で死体発見した老夫婦のもとへ行き、状況を確認する。すると、映画の帰りに通りかかり発見したものであるが、その直前に、2人連れの若い男女がおり、「奇妙な格好」をしていたということであった。

 

「若い男女の行方を追って、現場付近の聞きこみにあたった畑野・岩井田両刑事は、翌朝早く・・・」(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

岩井田が、現場から1,2分のアングラ喫茶A&Bにいた男女2人が、死体発見直前にいた男女と特徴が似ている情報を掴むと、畑野はそれに頷きA&Bへ向かう。A&Bは閉店後で、ソファに女性客・直美が寝そべっており、現場にいた男女とはいさお、マキの2人ではないかと話す。昨夜、マキが見知らぬ男性を口説いていたが、そこにいさおが現われ、マキを連れ出したという。これに、畑野は2人の行方を聞くが、気だるそうに知らないと繰り返すばかりで、直美はこの店で寝泊まりしているようすであった。マスターによると、直美を追い出すと店の一晩中ドアを叩いたり泣いたり騒いだりなので、仕方なく店に置いているという体であった。

 

そして、畑野・岩井田が店を出ると、直美も出てきて2人の行き先を教えようとするが、代わりに130円をねだってくる。岩井田は何に使うかを問うと、直美は家に帰る電車賃と答える。これに怪訝な畑野ではあったが、もっと自分を大事にしろと130円を渡すと、直美から、いさお、マキの2人は近くの「ももぞのマンション77号」の佃じゅんいちろうの部屋にいるとの情報を得る。畑野は、佃という名に覚えは無かったが、岩井田によるとエロ小説家ということであった。

 

佃の部屋に行くと、現代風の派手な格好をした女性4人、半身半裸の男性4人がおり、その中にいさお、マリがいた。マリによると、2人で歩いていたところ、いさおが先に発見。いさおによると、警察に通報しようとしたが、マリの余計なことをするなとの忠告で、通報せずに現場から立ち去ったと言い、この話にマリも頷き、後から来た老夫婦に任せておけば良いから立ち去ったと答える。そして、畑野が佃の行方を聞くと、マリは、自分たちに留守番を任せ、昨夜から行方不明だということだった。

これらのやりとりに、岩井田は、佃の留守をいいことに不潔な遊びに浸っていたのかと批判するが、女性たちは聞く耳を持たず、何事も「自由」との論調であり、さっさと部屋から立ち去ってしまう。残った男性たちは、この部屋は直美から聞いたのかと逆質問。直美は、自分たちのグループから外されたと恨んでおり、「病気」になった直美本人に問題があり、うつされたら涙(註・悲惨の意)だと話し出す。これに岩井田は直美の「病気」の有無を問うと、バスタオル男性は「最低さ、セックス病だよ」と言い放つだけであった。

 

そして、聞きこみを終え、畑野と分かれ特捜隊車両で動く岩井田は、薬局から出てきた直美を見かけ、急遽停車をして尋問する。直美は、市販の鎮痛剤を持っており、岩井田は、こんなもので「病気」が治るわけはないとたしなめ、病院に行かせようと特捜隊車両に乗り込ませようとする。これを見かけた、街をふらつく大学生の男性3人は、「好きなことをやって、病気になれば幸せだろう」と揶揄、病院に行くのを拒む直美も含め、件の風潮に岩井田の表情は険しくなる。

 

「一方、被害者・葉室冬子の自宅を、文京区だい町に訪ねた三船主任と関根部長刑事は・・・」(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

冬子の母によると、冬子は大人しく、異性には内気なほうであり、婚約者との結婚も親の決めたお見合いからだということであった。そして、三船主任は、冬子の結婚を影で恨む人物の存在を問うと、冬子の父・葉室は、理由も無い殺人が今の人間することかと嘆き、精神障害者の仕業に違いないと涙声で語るだけであった。

 

そして、直美を、性病科専門の川路医院に連れて行った岩井田は、院長の「彼らのセックスはフリーセックスでは無くアニマルセックスだ」との見解に頷き、昨今の彼らは「自由」の意味を履き違えていると断言。そして、喫煙しながら聞いている直美から煙草を取りあげ、後は直美の母が来るからと、処置を医院側に任せ立ち去ろうとすると、看護婦から昨夜の思わぬ出来事を聞かされるのであった・・・。

 

 

上記本文の直前には、例によって「立石班の知らない場面描写」があるのですが、大部分は直美やマリの話した、A&Bや死体発見現場の詳細描写であります。さらに加わるのが、上記本文の看護婦の「昨夜の思わぬ出来事」証言で、内容はおおよそ以下のようになります。

昨夜、ある青年が性病検査で来院したところ、院長は性病では無く膀胱炎で完治しており、血液検査も(-)で問題無いと診断しました。しかし、青年は自身を性病だと言い張り、血液検査が(-)でも後年再発するに違いないと叫びます。これに院長は、無駄な心配をするより、無茶なセックスを慎むことだと諭します。さらに看護婦も、ノイローゼの方がひどいらしいから、神経科で診てもらったらと話すと、青年は激昂。看護婦ばかりか院長にまで手を挙げ、物を破壊するなど荒れ回り、医院の外に出ます。そのとき、付近を歩く女性に身体があたるのですが、青年は女性に「出てきた俺を笑っただろう!?」(註・映像には「性病科・川路医院」と映ります)と叫び、おもむろにナイフを取り出し見せつけます。

そして、A&Bではマリが見知らぬ男性(背広男性)を口説き、それをいさおに止められ、2人で帰路に向かったところ、死体発見と逃走、その後を通りかかった老夫婦が死体を発見する場面となり、上記本文の三船班初動捜査に繋がっていきます。

 

 

当作を観終わって、【1970年】(2)特捜隊の収録回・未収録回・欠番回での

>検証本によると、フリーセックスの風潮を告発的に描いた作品とある。これに、

>三船主任が「性根を据えて人間の世界を見ろ」と発した言葉(「掲示板特捜隊

>4」)は、フリーセックスの肯定・否定の問題では無く  

>#413 麻薬【スペシャルセレクション】(収録回)から続く、三船主任自身の

>主義主張を訴えたように感じられる。

と、未見ながらも自分勝手な推察が、ある程度あたっていました。

 

これは、当作の約3か月前に本放送された#427 日本人【スペシャルセレクション】を観賞済みであったことにも起因しますが、

>今の若い奴らは親孝行の「お」の字も知らん。あれじゃ、まともな人間に

>ならん。子供はもっと厳しくしつけなきゃ駄目だ。

>古い新しいの問題じゃない。年長者を敬い、親に孝行するというのが最低の

>ルールだ。

という気概のある三船主任が、単に、「フリーセックスの風潮」を告発するだけに終わるはずはないという、自分の主観でもありました。

また、#413 麻薬【スペシャルセレクション】から続く、指揮官先頭のスタイルならば、三船主任の主義主張が強調されているはずと、考えたからでもあります。

 

果たして、「性根を据えて人間の世界を見ろ」という台詞は、ラスト、ラシントンパレスの屋上場面で語られます。

死を求める人物Aに、三船主任は、

>甘ったれるな!

と、平手打ちを2発。Aが屋上手摺に首を出したところに、

>そんなに死にたきゃ、死んじまえ!

と一喝。続いて、このまま生きていても碌なことはしないだろうから、

>ひと思いに、飛び込んで死んじまえ!

と(言葉で)突き放します。

三船主任を見つめるAですが、直ぐに屋上真下に目をやります。

そして、地上から屋上のAを見上げるショット、屋上でAを見つめる屋上の岩井田、石原、関根の場面、下を見つめていたAが汗をかきながら顔を横にすると、三船主任のアップとなり、

>どうした!? 怖いのか!? 臆病者!!

と三船主任の恫喝に近い声が響き渡り、

>満足に、下も見られないんだろう!?

とAに近寄り、首根っこを掴まえ

>よく下を見るんだ!

>性根を据えて、人間の世界を見つめるんだ!

と訴えます(註・この場面は、手摺の向こう側から、三船主任とAのショットになりますが、良いカメラワークです)。

そして、下を一巡して見終わったAは、首根っこを掴まれながらも、振り向いて三船主任を見つめ、自己の境遇も顧みたのか「自分だって・・・自分だって・・・」と言った後、顔を伏せ泣き出すことになります。

これは、三船主任が現在のフリーセックスの風潮批判だけにとどまらず、人としてどうあるべきか、を主張していることにほかなりません。

令和あるいは平成ならば、決して許されない映像かもしれませんし、共感を呼ばないかもしれません。しかし、昭和を知る人間からは、三船主任の心情がどこにあるか、おぼろげながらも伝わると思います。「鉄の男」ではなく、「情の男」としての気概を。。。

 

そして、その考えは、本当のラストともいえる老夫婦の金婚式の場面に集約されます。老人男性の、

>私たちの青春は、遠くへ過ぎ去りました。これからの若者を、どうか

>温かく見守ってやってください。

と語ると、無表情な三船主任が頷き、手を差し出すと、老人男性も手を差し出し、お互い両手で握り合います。

この場面は、自分として、実質的な三船班最終話にふさわしい、約6年後の#788 無情の風に散るを思い出さずにはいられませんでした。「老い」「老後」を痛感した三船主任が、約6年前の当作で若者に対する思いを経験していたなど、【第1回再放送】から視聴していたら・・・。

しかし、【スペシャルセレクションシリーズ】の発売により、心打たれた#788 無情の風に散るを視聴したうえで、自分が見逃していた唯一の三船班ストーリーの当作を観賞することができて、両作の微妙な関連性に気づかされました。この点は【スペシャルセレクションシリーズ】の発売に、大きく感謝するところです。

 

それにしても、天野利彦監督と三船班ストーリーとの相性は、当作が初組合せとはいえ、本当に良いものと感じます。この組合せは、駄作に遭遇することもありますが、当作は、刑事ドラマ・人間ドラマのバランスの良さ、心地良い展開、アクション溢れるカメラワーク、三船班初期だからこそ見い出せる三船主任・岩井田刑事の好連携など観るべきところは多々あります。

当作以降の組み合わせは

#460 砂の墓【スペシャルセレクション】

#494 娼婦の流れ唄

を経て、立石班、藤島班の終焉を迎え、三船班が(高倉班よりも名実とも)トップに立つことになり、

#503 純愛の海【スペシャルセレクション】

にて、三船班との組合せで水を得た魚のように、勢いでラストまで引っ張る作品に仕上げ、特捜隊四天王監督として活躍することになります。

 

あと、注目すべきゲストは、老人女性を演じた日高ゆりえ。いつもは、性格の悪い役柄が多く、それがメイキャップにも表れているのですが、当作では

>お爺さん、私たちにも、まだやる仕事が残ってますね・・・。

の台詞とともに、品の良い役柄が板についています。

この女優さん、特捜隊終焉期の#778 天使の乳房に泣くに出演しており、特捜隊への貢献度は高いのですが、ネット検索してもなかなか見当たりません。さらに、テレビドラマデータベースでは、最終出演と思われるNHKの「おんな太閤記(1981/01/11 ~ 1981/12/20)」にも出演しているのですが、詳細はわかりません。特捜隊の出演男優・女優は、その後がわからないのが多いのが残念でもあります。

(追加)R6.9.23

コメント欄高校教師さんからの情報により、日高ゆりえの経歴が明らかになりました。要約・抜粋になりますが、1911年4月20日生まれで、戦前は新築地劇団に所属、戦後は国際放映の俳優マネジメント部門であるNACに所属とのことです。詳細はコメント欄にありますので参照していただくとして、そのNACには、特捜隊で馴染みのある女優、中でも、木下ゆづ子(#531 わが作戦敗れたり でのキーパーソン夫人役)、稲葉まつ子(#323 初春壽捕物控大江戸卍絵図 での西本捜一係長夫人役)、生田三津子(後の生田くみ子、準主役としての出演が多い)、島田潤子(脇役中の脇役でも、多数の出演歴有り)が印象に残ります。

【第4回再放送】が終わって市販された、

特別機動捜査隊 スペシャルセレクション<デジタルリマスター版> [DVD]

のVoL.1-6の全巻は、2020年12月から2022年11月の間、約2年かけて視聴録アップを終えました。当方としては、あとは、自分の調べられる範囲で「特捜隊のDVD未収録回・収録回・欠番回」を編年的にまとめ、のんびり記述するつもりでした。

 

ところが、2023年の1月になり、コメント欄高校教師さんより

>第7弾5枚組30話収録。立石班のみの構成

で新たにDVD-BOX発売の情報が寄せられ、急遽、突貫工事で「特捜隊のDVD未収録回・収録回・欠番回」をまとめる方針に変更、終了次第、新たなDVD-BOXを観賞・視聴録をつくることとしました。

「特捜隊のDVD未収録回・収録回・欠番回」は幸いにも2023年8月に書完しましたが、今回の新たなDVD-BOX(結局、VoL.7,8の立石班2巻が発売)を観賞することで、さまざまな箇所に訂正・追加・削除等が出ると思いますが、その点はご了承ください。書き方は、従前の方式を踏襲することを原則とします。

 

市販品なので、

(あらすじ)などストーリーの本質にかかわるところは伏せ、

スタッフやキャスト、また(備考)・(ネタバレしない範囲での一般的感想のみ

にとどめます。

将来、東映chなどで、一般的視聴されるようになったら書き加えていく予定です。

 

※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

配役名表記が有るため、従来の「発声のみの役名については平仮名表記」「オープニング・エンディングの表記と、劇中発声・表記が異なるときは、後者を優先」する原則に戻り、以下本文を表記します。例外は、その都度(備考)で示します。

 

☆・・・#375  鶏は ふたたび鳴く

特別機動捜査隊(第375回)鶏はふたたび鳴く

 

 

 

(収録DVD)・・・VoL8、disc6、2023年5月10日発売

(本放送)・・・1969年1月1日

(脚本)・・・横山保朗

(監督)・・・松島稔

(協力)・・・警視庁

(協賛)・・・無し

(助監督)・・・坂本太郎

(劇中ナレーター)・・・島宇志夫

(捜査担当・オープニング表記)・・・立石班

西本捜一係長(鈴木志郎)、鑑察医(仲原新二)、鑑識課員(上田侑嗣)、

鑑識課員(新田五郎)、事務員(佐藤敏子)、橘部長刑事(南川直)、

荒牧刑事(岩上瑛)、桃井刑事(轟謙二)、岩井田刑事(滝川潤)、

松山刑事(松原光二)、立石主任(波島進)

 

(出演者・オープニングまたはエンディング表記)

・・・劇中優先のため配役名表記を省略

春風亭柳朝、雷門ケン坊、鶴ひろみ、天草四郎、花岡菊子、杉義一、吉田豊明、

簡野典子、小笠原まりこ、大谷淳、須永康夫、水木梨恵、小金井秀春、三田耕作、

原信夫、福田輝雄、泉三枝子、山口知香江、西条剛毅、渡辺義文、吉田公則、

坂本香織、

明日待子、水久保みなこ、川口節子、古今亭志駒、柳谷武助、

四ッ葉姉妹(ひさこ・ふみこ・みちこ・よしこ)、

小松みどり、宮田羊容、逗子とんぼ、桂米丸、三笑亭夢楽、筑波久子、阿部寿美子、

江戸家猫八、三遊亭円馬、真山恵介、馬場雅夫

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

※予告篇無し

#365 高原に消えた女【スペシャルセレクション】以降のスペシャルセレクションシリーズ】VoL8のストーリーは、立石班のみに限定しているため、直前回(すべて、藤島班ストーリー)は未収録である。つまり、予告篇は直前回の末尾にあるため、予告篇が存在しているのに、観ることが出来ない状態となっている。ただ、直前回において、予告篇がもともと無かった、フィルム劣化のため収録できなかった、なども考えられる。

※上記のようであれば、特捜最前線・DVD-BOX特典のように、全話のうち、残存している予告篇をすべて、DVD収録させた方が良かったともいえる。

 

(備考)・・・

【1969年】(1)特捜隊の収録回・未収録回・欠番回で、当該回の事前調査済み。

・当作の関連作として、約6年後の正月版#687 オフ・リミットですよ がある。両作とも、ゲストに雷門ケン坊が出演している。

・ゲストについて、本放送時、真山恵介は新宿末広亭支配人、馬場雅夫はNETテレビアナウンサーであり、双方とも8代目桂文楽との関係は深い(wikiより)。

・特捜隊常連女優でもある山口千枝がホステスを演じているが、エンディング表記に見当らず、「朱実=山口知香江」のことと思われる。そうだとすると、山口千枝子から山口千枝に改名する一時期の芸名が、山口知香江ということになる。

・終盤で、立石主任が「鶏(ニワトリ)は ふたたび鳴く」について説明するのは、意味がズレている感がある。自分は、むしろ、当作本放送の1969年は十二支で「酉(トリ)」にあたるため、映画「鶏(トリ)はふたたび鳴く」(1954年)にからめて、題名に「鶏(ニワトリ)」の読みをつけたと考える。

 

 

 

(視聴録)・・・開始約分半まで

(ネタバレしない範囲での一般的感想)

主な関連人物をまとめますと以下のとおりです。

(演者は・・・の次に、判明出来る俳優名を表記)

 

 

〇噺家・遊々亭金太楼・・・・・・・・・・三遊亭円馬

〇金太楼の妻・・・・・・・・・・・・・・簡野典子

〇金太楼の弟子(2人) ・・・・・・・・・古今亭志駒?、柳谷武助?

〇金太楼の居候女性(4人) ・・・・・・・四ッ葉姉妹

〇金太楼の元弟子・遊々亭金助・・・・・・春風亭柳朝

〇金助の妻・房子・・・・・・・・・・・・阿部寿美子

〇金助の幼子(男)・健一・・・・・・・・雷門ケン坊

〇金助の幼子(女)・由利子・・・・・・・鶴ひろみ

〇金助の自称弟子・中西・・・・・・・・・吉田豊明

〇金助の近所男性・鉢巻男・・・・・・・・大谷淳?

〇鉢巻男の妻・・・・・・・・・・・・・・小笠原まりこ

〇金助の近所男性・赤ん坊背負い男・・・・須永康夫?

○同・福引所男性・・・・・・・・・・・・逗子とんぼ

○福引所近くのチンドン屋(3人) ・・・・三田耕作、他

〇日の出マンション・管理人・・・・・・・江戸家猫八

〇同・住人・バーマダム・里見邦子・・・・筑波久子

〇邦子のバー・ホステス・・・・・・・・・山口知香江?

○同・客(多数)

〇呉服屋・店主・服部いちろう・・・・・・宮田羊容

〇養鶏場・社長・伊原りょうぞう・・・・・杉義一

〇伊原の妻・・・・・・・・・・・・・・・水木梨恵

〇船会社・社長・根上・・・・・・・・・・春風亭柳朝

〇劇場・支配人

〇同・歌手・小松みどり・・・・・・・・・小松みどり

〇ストリップ劇場・ダンサー(2人) ・・・明日待子、水久保みなこ

〇きんとき湯・店主・・・・・・・・・・・天草四郎

〇同・店主の妻・・・・・・・・・・・・・花岡菊子

○同・店主の娘(3人)

〇同・男性客(4人)

○由利子の友達(女の子)・・・・・・・・坂本香織?

○施設から逃げた子供(2人) 

〇日生交通・タクシー運転手

〇上野動物園周辺墓地近くの主婦

○立石主任夫人・・・・・・・・・・・・・川口節子

〇新宿末広亭・噺家(2人) ・・・・・・・桂米丸、三笑亭夢楽

〇同・呼び込み

〇同・落語中継アナウンサー・馬場・・・・真山恵介

〇同・落語中継評論家・・・・・・・・・・馬場雅夫

 

 

桃井・松山が特捜隊車両で日の出町マンション近くを通りかかると、マンション管理人に呼び止められる。どうやらマンションの一室で殺人事件があったようで、急遽、その部屋へ入室する。管理人が言うには、バスルーム前に男性の死体があったということだが、死体は見当らなかった。そこで3人で部屋内を調べてみると、管理人がタンス内に、苦しみながらうなる和服姿男性を発見した。

「桃井・松山両刑事の通報により、特捜隊立石班は、師走30日午後1時20分、渋谷区日の出町、日の出町マンションへ急行した」(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

 

到着した立石主任は、桃井から、被害者は松山付き添いのもと救急病院に運ばれたと報告される。

「被害者は、後頭部を一撃されたものと推定され、洋服ダンスの中から泥の付着した男ものの草履、そして、バスルームからは別の男のものと思われる足跡が発見され、なお灰皿の吸殻から4種類の血液型が検出された」

(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

そして、救急病院から戻った松山から被害者の写真を提出、同伴していた鑑察医からは、致命傷ではないので明朝には話が出来るだろうと報告される。この写真に、橘は手配写真で見たような気がすると呟く。

 

その後、立石主任・桃井で管理人に聞きこみ。この部屋は、バーマダム・里見邦子のもので、邦子はストリッパーをしていた凄腕ということもあり、3人のパトロンを操ってきたという。

そして時系列として、午後2時ごろ、管理人が廊下掃除をしていると、呉服屋店主・服部が部屋を訪ね、邦子が喜んで迎えると、次に、車で養鶏場社長・伊原が乗りつけたのを管理人が目撃、早速、邦子にご注進したという。その後、2人のやりとりに付き合っていられないと、ゴミを捨てに下に降りると、今度は船会社社長・根上まで現われ、邦子の部屋に向かったということだった。

それから気になったので部屋を訪ねると、ドアは開いたままで、中のバスルーム前では服部が仰向けで倒れているのを発見、殺されたと合点した管理人は、110番通報したということだった。

 

通報後、管理人が外に出てみると、根上が邦子とタクシーに乗って逃走。が、その傍で、男女の幼い兄妹が、タクシーに向かって「父ちゃん」と叫んでいるのを発見。管理人は、兄妹に殺人事件発生との事情を話し、現在、兄妹は管理人室に待機中ということであった・・・。

 

 

上記本文前には、例により「立石班の知らない場面」が描かれています。

マンション通報事件当日、あるいはそれ以前の日のこと、噺家・遊々亭金太楼の自宅を、破門となった遊々亭金助の妻・房子が訪れ、金太楼妻に語り出します。どうやら、金助は房子、そして幼い健一、由利子を放り出して家出。これまでにも、房子は金助の豪放磊落さには頭を悩まされてきたのですが、今回ばかりは堪忍袋の緒が切れる状態で、別れることも視野に入れているようです。

しかし。子供の健一、由利子は、心の底では父・金助を慕っているようでした。房子の苦闘を知ってか知らずか、健一は遊々亭健坊の名で、自宅で高座を開き、由利子もそれを手伝う有様でした。そして、高座でおこづかいを稼いだ2人は、福引所に行き、特賞のカラーテレビを当てようとチャレンジ。と、その放送中のテレビを見てみると、年末の大井競馬場の風景で、観客の中には金助の姿がありました。驚いた2人は福引そっちのけで大井競馬場に向かいますが、福引所男性からの特賞カラーテレビが当たったことには気づかず、上記本文の、桃井・松山の特捜隊車両場面に繋がります。

 

 

当作は、特捜隊の正月放送版。1968年の#323 初春壽捕物控 大江戸卍絵図【スペシャルセレクション】の翌年正月放送分であります(正月放送版全作についても、そこで紹介済)。今回は前年の時代劇初夢要素を無くし、落語の笑いと殺人未遂(?)事件とを併行して描いたもので、肩を楽にしての観賞作品ともいえます。。

また、死体消失事件(?)を扱ったものとしては、原型作・リメ作の関係はさほどありませんが、約6年後の#687 オフ・リミットですよの先鞭でもあれば、両作とも雷門ケン坊が出演しているのも共通しています。

 

ただ、内容について、刑事ドラマの点からでは、謎解きというより、最初からある程度事件の真相が明らかであり、それを追跡していくパターンです。また、その合間に、親子の愛情を描いたり、楽屋オチ(たとえば落語の笑い)が挟まったりという点は、約2年後の#479 浅草の唄【スペシャルセレクション】と展開は似ています。

ですので、特捜隊を観慣れている立場からは、「ああなるほど」といった具合で、ごく普通の観賞になることは否めません。これが【第1回再放送】~【第4回再放送】の順で、時代ごとに観賞出来ていたら思いは異なるのでしょうが、残念ながら、よりぬきタイプの【スペシャルセレクションシリーズ】ですので、どうしても比較しての観賞となるので、これが大きなマイナスかなと考えます。

 

その中でもプラスの面はあるもので、三船主任を演じた青木義朗なら、落語に詳しいことから多数の噺家の登場に笑顔になると思います。本放送時、壮年期の方々でしたら(拙稿現在で、80歳くらいか?)、喜んで観賞する歴史的価値があると考えます。

歴史的価値といえば、ゲストの筑波久子、雷門ケン坊の出演にもいえます。

 

筑波久子はグラマー女優として著名で、スクリーンに登場するのが少なくなった1990年代から2000年にかけて、雑誌とかで特集されていました。そのとき、併行して特集されていたのが、今は松竹ヌーヴェルバーグ女優として名高い炎加世子で、特捜隊には#367  鴉  【スペシャルセレクション】出演しています。

雑誌で特集されていた当時、筑波久子は、どちらかというと体格の良い写真で、対して、炎加世子は、シャープなスタイルな写真で「○○○○しているときが最高よ!」という台詞とともに、評価は「炎加世子 > 筑波久子」という印象でした。

ところが、今回、特捜隊で両名を拝見したところ、自分は評価を逆転した印象でした。筑波久子も負けず劣らずのシャープさもあり、顔だちも、ヒラメっぽくなく堀の深い印象で、さらには、ストーリーのキーパーソン的役割も炎加世子を上回っていたと感じます。ですので、世評と異なり、自分自身は「筑波久子 > 炎加世子」の評価となり、欠番回とされている(第83回)はみ出した青春(リスト特捜隊に筑波久子出演情報有り)を観てみたい感があります。

 

あと、雷門ケン坊については、特捜隊へは

#359 花かんざしと竜【スペシャルセレクション】(1968年9月11日)

#375  鶏は ふたたび鳴く【スペシャルセレクション】当作・1969年1月1日)

#687 オフ・リミットですよ(1975年1月8日)

#712 七年目の報酬(1975年7月2日)

#750 家出の季節(1976年3月31日)

の出演作があります。

前3者はコメディ路線、後2者はシリアス路線ですが、雷門ケン坊の本質もあるのか、個人的には前3者のほうが板についている感じです。子役から活躍しており、1956年12月6日生まれというのもあり、当作の13歳の頃は人気もピークだったという記憶があります。しかし、大人への過渡は難しかったのか、#687 オフ・リミットですよの正月作品19歳直前がコメディ演技のギリギリの印象で、後2者のシリアス演技は、カラ回りの印象を受けました。特に、#712 七年目の報酬は秀作でありながら、狂言回しに終わった感が有り、残念な印象です。

リスト特捜隊によると、アニメのおじゃまんが山田くん(当時24歳ごろ)の吹替が最終出演とあり、これ以降は男優業を引退したようであります。自分が幼いとき、おはようこどもショーで、吹替と映像出演していた記憶があるため、懐かしさという意味でも。気になる特捜隊出演者のひとりでもあります。

 

 

さて、当作で、VoL8での立石班作品は掉尾を飾り、後は、VoL9での三船班作品に移行します。立石班については、いろいろ思うものがあり、検証本や【第1回再放送】【第2回再放送】を実見した方々のコメントから、観てみたい作品はまだまだあります。何度も触れていますが、DVD発売も良いのですが、現存する全作品群を東映ch放送、あるいは現存する予告篇全作のDVD収録など、いろいろ考えます。全作品のDVD収録など、現実的ではないのですから。。。

立石班については、後にまた触れることがあると思いますが、とりあえず、次作からは三船班になります<(_ _)>

【第4回再放送】が終わって市販された、

特別機動捜査隊 スペシャルセレクション<デジタルリマスター版> [DVD]

のVoL.1-6の全巻は、2020年12月から2022年11月の間、約2年かけて視聴録アップを終えました。当方としては、あとは、自分の調べられる範囲で「特捜隊のDVD未収録回・収録回・欠番回」を編年的にまとめ、のんびり記述するつもりでした。

 

ところが、2023年の1月になり、コメント欄高校教師さんより

>第7弾5枚組30話収録。立石班のみの構成

で新たにDVD-BOX発売の情報が寄せられ、急遽、突貫工事で「特捜隊のDVD未収録回・収録回・欠番回」をまとめる方針に変更、終了次第、新たなDVD-BOXを観賞・視聴録をつくることとしました。

「特捜隊のDVD未収録回・収録回・欠番回」は幸いにも2023年8月に書完しましたが、今回の新たなDVD-BOX(結局、VoL.7,8の立石班2巻が発売)を観賞することで、さまざまな箇所に訂正・追加・削除等が出ると思いますが、その点はご了承ください。書き方は、従前の方式を踏襲することを原則とします。

 

市販品なので、

(あらすじ)などストーリーの本質にかかわるところは伏せ、

スタッフやキャスト、また(備考)・(ネタバレしない範囲での一般的感想のみ

にとどめます。

将来、東映chなどで、一般的視聴されるようになったら書き加えていく予定です。

 

※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

配役名表記が有るため、従来の「発声のみの役名については平仮名表記」「オープニング・エンディングの表記と、劇中発声・表記が異なるときは、後者を優先」する原則に戻り、以下本文を表記します。例外は、その都度(備考)で示します。

 

☆・・・#373  曲った坂道

特別機動捜査隊(第373回)曲った坂道

 

 

 

(収録DVD)・・・VoL8、disc6、2023年5月10日発売

(本放送)・・・1968年12月18日

(脚本)・・・横山保朗

(監督)・・・天野利彦

(協力)・・・警視庁

(協賛)・・・無し

(助監督)・・・徳井一行

(劇中ナレーター)・・・島宇志夫

(捜査担当・オープニング表記)・・・立石班

西本捜一係長(鈴木志郎)、鑑察医(仲原新二)、鑑識課員(上田侑嗣)、

鑑識課員(新田五郎)、事務員(佐藤敏子)、橘部長刑事(南川直)、

荒牧刑事(岩上瑛)、桃井刑事(轟謙二)、岩井田刑事(滝川潤)、

松山刑事(松原光二)、立石主任(波島進)

 

(出演者・オープニングまたはエンディング表記)

・・・劇中優先のため配役名表記を省略

関みどり、松原まもる、二瓶秀雄、篠原美恵、園千雅子、青山宏、水沢摩耶、

宮田光、長尾敏之助、守田比呂也、高松政雄、松波志保、天野照子、萩原正勝、

原庄治、野村光江、豊田清、丘ゆり子、徳久比呂志、原田赫、太田紀美子、

山下則夫、出原亜砂子、吉田博行、平松邦明、岩崎ゆかり、吉成健一、

野上千鶴子、北原文枝

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

※予告篇無し

#365 高原に消えた女【スペシャルセレクション】以降のスペシャルセレクションシリーズ】VoL8のストーリーは、立石班のみに限定しているため、直前回(すべて、藤島班ストーリー)は未収録である。つまり、予告篇は直前回の末尾にあるため、予告篇が存在しているのに、観ることが出来ない状態となっている。ただ、直前回において、予告篇がもともと無かった、フィルム劣化のため収録できなかった、なども考えられる。

※上記のようであれば、特捜最前線・DVD-BOX特典のように、全話のうち、残存している予告篇をすべて、DVD収録させた方が良かったともいえる。

 

 

(備考)・・・

【1968年】(4)特捜隊の収録回・未収録回・欠番回で、当該回の事前調査済み。

・当作は、約6年後に#637 愛の迷路でリメイクされた、原型作である。なお、当作(原型作)は天野利彦監督、リメ作は今村農夫也監督である。

・当作の舞台は、大田区南千束で、洗足池公園・中原街道も映り、実際に該当地でロケをしたと推察される。なお、劇中では大田区南千束の所轄を東池上署(架空名称)としているが、実際には東調布署(現在の田園調布署)である。

・劇中では京子、信代の苗字は「いしおか」の発声のみだが、便宜上、検証本引用により「石岡」とする。

・劇中では、桑田の妻が高木広和のことを「私たちのいとこ」と発声するが、「いとこ」とは「父または母の兄弟姉妹の子 おじ・おばの子」(goo辞書より)となり、登場人物の年齢から合わないようにみえる。そこで便宜上、敏男・玲子からみて、高木広和を「おじ」、その息子の雅彦を「いとこ」と解したほうが無難ではある。

・信代を演じた野上千鶴子は、元新東宝女優。長らく1928年2月17日生まれ、新東宝では、大蔵貢が登場するまで女優のトップクラスにいたこと以外には、詳細は不明であった。しかし、松林正曉Instagramによると2023年5月26日が三十三回忌とあり、これでいくと1990年5月26日に62歳の若さで逝去されたと思われる。

・トランシーバーとは、「無線電波の送信機能と受信機能を兼ね備えた無線機または回路ブロック」(wikiより)のこと。かつては子供用に市販されていたが、現在では携帯電話の普及により、あまり見かけなくなった。

・顔写真のみで登場の桑田刑事は、ノンクレジットではあるが、特捜隊その他の東映作品にチョイ役で出演する「斉藤春元」という男優である。

(追加)R6.9.11

・コメント欄にて高校教師さんから、シナリオキャスト欄記載を提供していただいたので、下記の「平仮名」登場人物のうち、劇中発声の該当人物のみを書き換えた。

 

 

(視聴録)・・・開始約分半まで

(ネタバレしない範囲での一般的感想)

主な関連人物をまとめますと以下のとおりです。

(演者は・・・の次に、判明出来る俳優名を表記)

 

〇藤本一郎(故人)

〇藤本の妻・久子・・・・・・・・・・・・・・天野照子

〇藤本の弟(久子の義弟)二郎・・・・・・・・青山宏

〇藤本家の近隣夫人・東・・・・・・・・・・・松波志保

〇藤本家のお手伝い・石岡京子・・・・・・・・関みどり

〇京子の母・信代・・・・・・・・・・・・・・野上千鶴子

〇信代の幼子(2人)

○京子の友達・赤ジャンバー男性

○京子の友達・オレンジシャツ男性

○京子の友達・青シャツ男性・野村弘志・・・・徳久比呂志

○京子の友達・短髪女性・浅野優子・・・・・・丘ゆり子

○京子の友達・ピンク服女性

〇桑田刑事(故人)・・・・・・・・・・・・(斉藤春元=ノンクレジット)

〇桑田の妻(以下、桑田妻と略)・・・・・・・北原文枝

〇桑田の長女・玲子・・・・・・・・・・・・・篠原美恵

〇桑田の長男・敏男・・・・・・・・・・・・・松原まもる

〇敏男・玲子のおじ・高木広和・・・・・・・・二瓶秀雄

〇高木の妻・由里子・・・・・・・・・・・・・園千雅子

〇高木の幼子・雅彦・・・・・・・・・・・・・吉成健一

○公園近隣の主婦・・・・・・・・・・・・・・野村光江

○画家・君塚慎一郎・・・・・・・・・・・・・宮田光

○大興商事(不動産会社)・社長・・・・・・・長尾敏之助

〇城東大学和泉寮・炊事員・和子・・・・・・・水沢摩耶

〇バス会社・運転手・・・・・・・・・・・・・原田赫

〇同・事務員・・・・・・・・・・・・・・・・豊田清?

〇事件現場・所轄署警官・・・・・・・・・・・山下則夫

〇所轄署刑事(年輩・メガネ)・・・・・・・・高松政雄

〇所轄署刑事(派出所での取調担当)・・・・・守田比呂也

 

 

「午後3時10分、通報を受けた特捜隊・立石班は、大田区南千束に所在する事件現場、藤本家へ急行した」(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

立石主任は、所轄署警官から、被害者は藤本家の未亡人・久子60歳、鑑察医から、死後約1時間(後に、死亡推定時刻は午後2時ごろと判明)、応接間暖炉のマントルピース角に後頭部がぶつかった脳底骨折死、右腕の血痕は久子のものか犯人のものかは今のところは不明、との報告を受ける。これに橘は、応接間の乱れた跡から、久子は犯人と争い、突き飛ばされて殺害されたと考える。

桃井は、来客があったのか応接間テーブルの3組のコーヒーカップを指摘、鑑識上田は、そのコーヒーカップ、灰皿のタバコから複数の指紋が検出されそうだと報告。さらに他の部屋を調べていた荒牧は、さほど荒されていないことから強盗の仕業ではなさそうだと報告した。

 

その後、庭先では、町会瓦版を持って来たら、久子の死体を発見したという近隣夫人・東に、立石・荒牧・岩井田が聞きこみ。藤本家には、4,5日前からお手伝いの京子が通ってきていたが、本日は日曜日なので出かけているのかもしれないという。そして、久子の身内には、義弟(藤本の弟)がいるとのことから、荒牧・岩井田は住所録を調べに席を外す。

残った立石主任に橘が合流して、東に、午後に藤本家へ訪ねてきた人物はいたかを問うと、久子は自宅を売却したい意向があったので、自分の友達で、3年前暴力団の拳銃密売事件で殉職した桑田刑事の未亡人(桑田妻)とその家族を紹介したという。

 

とそこに、門扉を調べていた松山から声がかかり、立石主任・橘が向かうと、門の陰に男物の靴跡、女物の草履跡の発見報告で、すでに鑑識が足跡を石膏でとっていた。これを立石主任は、外から逃げ込んだ足跡だと断定。

そして、立石主任は荒牧・岩井田から、久子の義弟・二郎と連絡が取れ、藤本家へ向かっているとの報告から、荒牧・岩井田には二郎への尋問を、橘・桃井には周辺の聞き込みを、自らは松山は桑田家へ聞きこみに向かうことにする。

 

桑田家に到着早々、松山がうっかり青ペンキを塗ったばかりの門扉に触ってしまうアクシデントに遭遇。「塗りたて」の札を貼るのが遅れた長男・敏男は、お詫びをするとともに、桑田妻、長女・玲子は来客を送っていき、買い物もあるので帰りは遅いと伝える。そこで、松山と敏男とで2人を迎えにいくことにする。

桑田妻・玲子は、洗足池公園口バス停で、来客の男性1人、幼子1人を見送っていたところだが、駆けつけた敏男がバス停標識に触れると、そこもまたペンキ塗りたてで、思わず松山におあいこですねと笑いあう。そして、自己紹介をした松山は、久子が殺害された旨を伝えると、3人は驚き、立石主任の待つ桑田家門前へ向かう。

 

桑田妻は、玲子のおじであり勤務先出版社の課長・高木と、その幼子・雅彦を、玲子が案内をして、高木が購入を希望する藤本家を訪れたばかりだという(註・東夫人からの紹介の紹介という形)。

玲子は、藤本家を辞したのが午後1時半ごろであり、そのとき、亡き父・桑田刑事を殉職に追いやった石岡てつじの、妻・信代、その娘・京子に会ったという。感情的に立ち去る玲子、それを追いかけた高木であったが、いまだに偏見な目で見るのかと京子は罵声を浴びせ、信代はそれを止めていたともいう。そのうち、中から久子が現われると、どうやら京子は屋敷から腕時計を盗み、それを信代がお詫びもあり一緒に訪れたようすであったが、京子は「返せば文句はないだろう!」と久子に腕時計を投げ返し、罵声を浴びせ立ち去ったという。しかし、久子は怒ることはせず、京子の給金と残置物を渡すため、信代を屋敷内に案内したと、経緯をすべて話すのだった。

 

玲子は、疑いたくは無いが、信代は確かに中に入って行ったという、懐疑的な考えは捨て切れないようすであった。

しかし敏男は、いくらなんでも信じたくはない(石岡の身内が犯人とは思いたくない)と言明。桑田妻も同様で、石岡が桑田を殺害、そのうえ、妻の信代まで殺人犯というのは、いくらなんでもひどすぎると腹の底から絞り出す声で語るのだった。

そして、桑田家を辞する立石主任・松山であったが、ひとり敏男だけが追いかけて来る。敏男は何か話したいようすであったが、先に家に入った玲子から、敏男あての電話がかかってきているとの声に、敏男は「がんばってください」というだけにとどめ、家の中に帰っていくのであった・・・。

 

 

上記本文直前に、例により「立石班の知らない場面描写」があるのですが、それは上記本文下線部の「敏男は何か話したいようすであった」ことに関連します。

敏男が自宅門扉にペンキを塗っていると、高木、トランシーバーを持った雅彦が訪れ、家から出てきた桑田妻、玲子も出迎えます。桑田妻は、友人から藤本久子が自宅売却を考えているという話を聞き、高木に相談。借家住まいの高木は乗り気になり、本日、藤本家を訪問することになっていました。ただ、高木の妻・由里子は、高校の同窓会が新宿であるということで欠席。そこで、高木・玲子で藤本家を訪問、その間、敏男は雅彦と公園で遊ぶことになりました。

藤本家に向かう途中、玲子は敏男の近況を高木に伝えます、大学受験に失敗したあと、桑田妻、玲子の反対を押し切り、殉職した父・桑田を継ぎ警察官になろうとしていることが明らかになります。そして、藤本家を訪れ久子と話し合い、家を気に入った高木は、妻・由里子とも話して明日にでも決めると返事をします。

 

公園では、敏男は雅彦とトランシーバーごっこをしており、お互い離れながら、送信・受信の繰り返しでしたが、少し距離をとろうと、雅彦は滑り台に上り、敏男は公園出口に移ります。敏男は、藤本家から帰路の玲子、高木に会い、今、トランシーバーごっこをしていると伝えます。と、そこに、トランシーバーから雅彦の「あっ、ママだ」という声が聞こえます(映像では、由里子、ベレー帽男性が映り、2人を追いかける雅彦も映りますが、敏男、玲子、高木にはわかる術はありません)。

これに高木は、同窓会の由里子が、ここにいるはずもないのにと首を傾げ、トランシーバーをとりますが、雅彦からは応答がありません。そこで、敏男はトランシーバーを2人に預け、公園出口で待機してもらい、自ら探しに出かけます。すると、道路で泣いている雅彦を発見、本当に由里子だったかはわかりませんが、追いかけているうちに道に迷ったということでした。そして、離れたところにある雅彦のトランシーバーを回収しようと向かうと、そこは藤本家の門前。さらに、門扉の内側に隠れている、由里子、ベレー帽男性を見つけ、由里子とも目が合います。

思案した敏男は、トランシーバーで高木に連絡、雅彦は別の人を由里子と間違え追いかけ、迷子になったことを伝えると、雅彦を背負って立ち去ることになります。

 

以上が、「立石班の知らない場面描写」なわけですが、事件発生後、藤本家を訪ねた立石主任・松山に敏男が言いそびれたあと、家の中に入った敏男にかかってきた電話は、由里子からのものでした(由里子はハンカチで声を変えていたため、最初電話に出た玲子は由里子と気づいていません)。由里子は、先ほどの門前の出来事を高木には話さないようにと懇願、敏男は、憤慨したようすで「何も言いません!」と電話を切ります。しかし、部屋に戻った敏男は、殉職した桑田の顔写真を見ながら浮かない顔になります。

そして、これから立石班の捜査、苦衷の敏男、これらがどのようにストーリー展開に絡んでいくのか、久子殺害の犯人追及もあわせ興味深く進行します。

 

 

一言でいえば、これは面白い。約6年後にリメイクされた#637 愛の迷路(以下、リメ作と略)を超えた内容であります。

天野利彦監督のデビュー作品からみていくと。

(1)   #321 八人の女【スペシャルセレクション】

(2)   #328 消えた女狐【スペシャルセレクション】

(3)   #331 走る青春【スペシャルセレクション】 

(4)   #336 春の亀裂【スペシャルセレクション】

(5)   #342 女と宝石【スペシャルセレクション】

(6)   #348 嵐の中の恋【スペシャルセレクション】

(7)   #357 情炎譜【スペシャルセレクション】

(8)   #360  真昼の花火【スペシャルセレクション】 

(9)   #365  高原に消えた女【スペシャルセレクション】 

(10) #371  下町の虹【スペシャルセレクション】

なのですが、上出来作は(2)(4)(6)(9)であり、残りは不出来作の印象。

好不調の波がある作品群ですが、当作である

(11) #373  曲った坂道【スペシャルセレクション】

では、出来の良さが目立つ印象でした。

 

これは、リメ作予告篇にある

>平和な家庭がありながら、愛人との情事を楽しむ人妻

>その彼女に、ほのかな慕情をいだく少年

>そんな2人の姿に、激しい憎悪の言葉を浴びせかける少女

の描写が、リメ作では昇華しているとは感じられず、

>ストーリーの核となるべき敏男の苦悩が、真実の追及というところより、

>思春期の少年の思いに重点を置いてしまったのは、特捜隊という刑事ドラマ

>の性格からどうかなとは思います

という評価になったことに起因します。

つまり、リメ作は、刑事ドラマというより人間ドラマに重点を置いたことは理解できるにしても、刑事ドラマの良い点を削り、中途半端な「思春期」という人間ドラマにしていたことが、マイナスになったといえます。

 

それゆえに、リメ作視聴の時点では、原型作の存在に気づかず

>当作(註・ここではリメ作の意)は横山保朗が旧作をリメイクして、敏男の

>思春期関連部分を付け加えたのかも?

と考えたのですが、この推察は当たっており、今回、当作(原型作)を観賞することになったわけです。

 

当作での敏男の苦悩は、「思春期の少年の思い」では無く、殉職した父(警察官)の遺志を継ごうとした少年の、理性(道理)と感情(私怨)との狭間で悩む姿であります。これはリメ作ではバッサリ削られており、正義感などどこへやらなのですが、当作では、敏男(松原まもる)、京子(関みどり)、由里子(園千雅子)のバランスがとれており、「正義とは?」を考えさせる設定になっています。

それに、ラストでの別れの場面も、リメ作のべったりした雰囲気より、当作の竹を割った雰囲気の方が、以後も2人がどのように関わり合うのか考えさせる効果を出しており、興趣を沸かせます。さらに、個人的な気持ちでいえば、リメ作の敏男(望月実)が抱く思いが、2人(井岡文世、新草恵子)の魅力に合致しているかというと疑問であり、3人の人物的魅力も当作の方が勝ります。

また、リメ作では登場しない敏男の姉・玲子(篠原美恵)の存在も、原型作での敏男の気持ちと相反する雰囲気を醸し出すことで、「敏男の正義感」を強調する役割を果たしています。

 

そして、これは怪我の功名といえるのですが、玲子が由里子のことで敏男をたしなめる際、「○○足らず」という台詞があります。聞きとりにくい台詞のため、由里子の「一番大切な秘密の真実」が、観賞する側には「2通り」考えられるのがミソ。もちろん、真実は明らかにすべきですが、立石主任の秘密厳守発言もあり、あくまで登場人物間のなかで収めるべきものとして、終結させるのもアリでしょう。

 

これらからみて、自分は「当作 > リメ作」と評価できます。そして、当作は、横山保朗脚本として上出来、天野利彦監督としても制限されることなく、自らの思い(正義感)を映像化出来た作品だと確信します。

自分は、#503 純愛の海【スペシャルセレクション】にて

>天野利彦監督はできるだけ中道の立場での演出に徹し、ラストへと勢いよく

>流れる作品に仕上げて

いると評し、#551 群衆の中のひとりにて

>初めて保守的立場を明らかにして取り上げた

との見解を持っていました。

しかし、当作の正義感の主張の点から、#503 純愛の海【スペシャルセレクション】を遡る、約3年前の当作の時点で、すでに保守的主義(少なくとも、その萌芽)を持っていたと判断できます。

これらもあり、当作は前述の(2)(4)(6)(9)(11)の中でも、屈指の出来であると感じられました。

 

当作で、敏男を演じた「松原まもる」は

#373  曲った坂道【スペシャルセレクション】(本放送・1968年12月18日)

#451 雨の中の慕情(本放送・1970年6月24日、松原マモル名義)

#462 幸せになりたい(本放送・1970年9月9日)

#468 大砂丘(本放送・1970年10月21日)

#653 待ちぼうけの女(本放送・1974年5月8日、松原マモル名義)

#655 ある特捜記者(本放送・1974年5月22日、松原マモル名義)

に出演歴があり、主役級で印象に残ったのは当作の①であります。

ネット検索すると、わずかに、1950年東京生まれ、劇団「こぐま座」で子役として活躍、大学進学後に引退、とX(マヤの暦・人生の自由研究)で見受けられるのみです。

となると、大学進学(通常18歳)するまで俳優業を続けていたことになりますが、

A  ④出演後、大学進学ため引退。卒業後、何らかの理由で⑤⑥に出演後、再引退。

B  1971-1973年はある理由での空白期間。大学進学のため、⑤⑥に出演後、引退。

のどちらかになると考えられます。いずれにせよ、エンディングでトップ表記された⑥で、俳優業の有終の美を飾ったことになります。