※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

 

【#551  群衆の中のひとり】

 

(本放送)1972年5月24日

(再放送)2016年3月17日

(脚本)西沢治

(監督)天野利彦

(協力)無し

(協賛)無し

(捜査担当)三船班

田中係長(山田禅二)、鑑察医(仲原新二)、鑑識課員(田川恒夫)、

関根部長刑事(伊沢一郎)、石原刑事(吉田豊明)、白石刑事(白石鈴雄)、

岩井田刑事(滝川潤)、水木刑事(水木襄)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)

大友柳太朗、水木梨恵、頭師孝雄、柿崎真二、平井佳代、塚田正明、小高まさる、

西朱美、一節太郎、天草四郎、貫恒実、森山周一郎、小堀明男、中北千枝子

 

 

(あらすじ・予告篇から) 

※当時のナレーション(=青木義朗)をそのまま聞き写しています

 

破壊と闘争に向かって暴走する青春のエネルギー。

この狂気の一瞬が、1人の女性を暗黒のどん底に突き落とす。

その憎むべき張本人が、自分の息子・雅也と知ったとき、

コツコツと己の人生を積み上げてきた男・友田啓助の平和だった家庭は、

もろくも崩れ去っていくのであった。

言いしれぬ寂しさに襲われる1人の父親。

だが、悲劇の嵐はなおも吹き荒れる。

啓助が、ある殺人事件の容疑者となったとき、

消しても消しきれぬ息子の残した過去の烙印に、

ただ茫然とたたずむのであった・・・。

次回、特捜隊、「群衆の中のひとり」に御期待ください。

 

 

(備考)

・上記(あらすじ・予告篇から)作成のため「友田けいすけ」を、検証本から、「友田啓助」と表記しました。

・岩井田刑事が久々に登場も、短髪・口髭・顎髭と珍しいルックス。

 

 

(視聴録)

 

友田啓助(大友柳太朗)は妻・津世子(中北千枝子)から万年平社員と言われる存在だが、あるとき社員・牧ひでお(柿崎真二)から息子・雅也(頭師孝雄)のことで脅迫を受ける。牧と雅也は学生運動に参加、いわゆる新宿戦争で、雅也の投げた石が岩下由紀(平井佳代)の顔面を直撃、由紀は失明に追い込まれていたのである。

そんな中、公園で牧の撲殺死体が発見される。さんざん殴られた後に腹を蹴られたようで、死亡推定時刻は午後7時30分。三船班は女剣劇役者の姉・朝子(水木梨恵)や勤める店のママ(未詳)から、牧は退職して暴力団・つかさ組に入る意志があった情報を得るが、つかさ組幹部・下元(森山周一郎)を訪ねても、はかばかしい回答は得られなかった。

 

しかし、屋台の主人(未詳)からの証言で友田啓助、雅也の存在が、牧の会社の同僚(未詳)からの証言で岩下善一郎(小堀明男)の存在が浮かび上がり、三船班の捜査の網は徐々に狭まっていくのだった・・・。

 

 

いわゆる新宿戦争(新宿騒乱)は、1968年と1969年の10月21日に起こった国際反戦デーともっともらしい名をつけた騒擾罪事件です。どれくらいの被害が出たかはネット検索では見当たらないですが、当該事件をベースに脚本がつくられたことは間違いはないでしょう。

そして、それまでは似たような題材であっても、第三者的にできるだけ客観性をもたせて作品を作り上げてきた天野利彦監督が、初めて保守的立場を明らかにして取り上げたのが当作と言えると思います。

 

劇中で、とある運動参加者に

>ナンセンス。巻き添え食ってゲバ棒で頭を殴られて死んだ市民もいる。

>革命戦に犠牲はつきものだ。くだらないことで悩む臆病者は、俺が焼きを

>入れてやる。

と言わせることで、左思考の輩の正体を明らかにさせています。いくらきれいごとを並べても(形は問わない)暴力で現状を破壊するのが彼らで、それは牧が啓助を脅迫する姿と被って見えるように演出されています。

 

そして、その集まりから脱出しようと悩む息子・雅也、いつもは頼りなくともいくつになっても子供は子供と再生させようとする父親・啓助を描くことで、45年後の現在では語られることも少なくなった「一家の大黒柱」を表現しています。時代劇で見慣れた大友柳太朗の現代劇を見るのは、自分としては当作が初めてということもありますが、ここまで古き良き時代の父親を演じられるのに驚きました。大友柳太朗が完全に三船主任を食った作品ともいえましょう。当作の放映時点で60歳になろうとするところで、それから13年後の悲劇が残念でなりません。

 

ただ、全体的にどうかというと、牧姉弟と下元の絡みが描写不足なため、友田家の親子愛と牧家の姉弟愛とを比較しきれず、岩下善一郎がある人物に固執しすぎたからダンマリしていたというのも合理的に見えず、佳作にやや届かずといった感じです。また、最初の三船主任の読みは語らせなかった方が良かったような気もします。

ですので、当作は天野利彦監督の演出の変化、大友柳太朗の現代劇演技、これらが別々ながらも異彩を放った作品なのが自分の見立てでありました。

 

(2018年12月18日 全面追加)