書評:『世界を戦争に導くグローバリズム』~著 中野剛志 | 進撃の庶民 ~反新自由主義・反グローバリズム
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『世界を戦争に導くグローバリズム』著 中野剛志

みぬさ氏がすでに素晴らしい書評を書かれていますので、私には書けることがないのですが、大好きな中野氏の著作ですので、書かないわけにはいきません。(なんかデジャブ・・・
http://ameblo.jp/minusa-yorikazu/entry-11928799458.html

(以下、引用部分太字)
世界を戦争に導くグローバリズム (集英社新書)/集英社


イギリスの歴史家エドワード・ハレット・カーの国際関係論の古典「危機の二十年」を中心に、その他の国際政治学者達の著書からの言葉を交えながら、現在のアメリカの凋落を描き、混沌さが増しつつある国際政治、及び日本を取り巻く厳しい現実を描いているのが本書です。

2014年9月に発刊された当時に読んだ時も「さもありなん」と思っていましたが、およそ半年を経た今になって読んでも、本書の内容が今の世界とさらにリンクしつつあるのが実感され、「中野氏、恐るべし」といった感がありました。

「昨今、集団的自衛権を巡る論争が盛んに行われている。集団的自衛権の行使に反対する論者は、アメリカが行う戦争に日本が巻き込まれてると主張する。だが、本書の主張は、そのようなものではない。アメリカの戦争に日本が巻き込まれるようなことは、むしろ起きにくくなったのである。なぜなら、アメリカは、もはや「世界の警察官」として積極的に武力行使を行えるような覇権国家の地位を失いつつあるからだ。それこそが、本書の中核となる主張である。」


これが本書の核となる非常に重要な指摘です。

集団的自衛権によって、「日本がアメリカの戦争に巻き込まれる」という思考に囚われすぎると、今後の日本の針路を大きく見誤る可能性があるということです。

原油などのエネルギー資源や貿易品が世界中から安全に日本に運び込まれるのはなぜでしょう?

アメリカ軍が世界中で睨みを効かせているからです。外国との間でスムーズな貿易が成立するのは、アメリカという覇権国家の存在のおかげということが言えそうです。(軍事と経済は切り離せないという一つの事例ですね。)

中野氏はこう続けます。

「なぜ日本が戦争に巻き込まれることになるのだろうか。それはアメリカが覇権国家ではなくなるからに他ならない。アメリカが「世界の警察官」として東アジアの安全保障を確保できなくなるがゆえに、日本は戦争に巻き込まれるのである。その際、戦争を仕掛けてくると想定されるのは、言うまでもなく中国だ」

この現状認識を持っていないと、日本の安全保障論議に関して、私達は間違う恐れがあるのではないのでしょうか?

チャイナと対峙するための自主防衛能力を高めていくべきなのか否か。
チャイナ陣営に跪くことを選択するのか。
それ以外の選択肢があるのか否か。

ここに、参考になる書籍があります。

ニクソンとキッシンジャー - 現実主義外交とは何か (中公新書)/中央公論新社


ニクソンは、旧ソ連との間で、SALT1(第一次戦略兵器制限協定)を結ぶのですが、それを実現させるためにとった戦略は、旧ソ連よりはるかに上回る軍事力を実現させ、旧ソ連に「敵わない」と思わせてから、その交渉の席に着くという形でした。現実主義ということでしょうか。

ニクソンのその戦略の意味を知らされていない(当然ですが)アメリカの左翼系は、軍事力を上げていることに対し、反対の声を上げたそうですが、SALT1成立後は、ニクソンに拍手喝采だったそうです。

この事例を通して私達が自らに問うべきことは、他国と交渉をするにしても、いざという時に対峙できる軍事力がないと、国益に繋がる交渉結果は得られないのではないか、ということです。

安倍政権が、どのような本心を胸に秘めて、安全保障戦略を進めているのかはわかりませんが、私達国民も、現実と向き合い、日本の安全保障について真剣に考えていく必要があります。


この『世界を戦争に導くグローバリズム』では、国際政治における現実主義と理想主義のせめぎあいを描きつつ、現代のグローバル世界で起こりつつある危機を全編に渡って論じられています。

読者の心の中に、様々な衝撃が浮かび上がってくることでしょう。

全国民にお薦めの書籍です!


(了)



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