父が亡くなって今日で18年になる。その日も暑い日で気温は36℃くらいまで上がった。父が亡くなったのは早朝で、慌ただしさと喪失感の中、病院の中庭で煙草を吸いながら弟と何か話した記憶がぼんやりと残っている。干支が一回り半、時の経つのは速いものだ。
福岡の筥崎宮で「放生会(ほうじょうや)」が始まった。博多三大祭りの一つで、博多に秋の訪れを告げる祭りと言われている。この祭りの趣旨は「万物の生命をいつくしみ、殺生を戒め、秋の実りに感謝する」ことである。夏の間に殺生された虫たちの魂を供養するものなのかもしれない。
祭りでは「ちゃんぽん」と呼ばれるガラスでできたおもちゃの笛が売られており、吹くと「チャンポン」という音がする。涼しげなデザインがお洒落だが、この祭りに行ったことは無い。父は俳句が趣味で何度か祭りに行って句を詠んだようだ。
二階の父の書斎を探してみれば、何処かに「放生会」を詠んだ句が出てくるかもしれない。
筥崎宮には今まで何度か行ったことがある。年明けに行われる「玉せせり(玉取祭)」も有名な祭りの一つだ。男たちが褌(締め込み)一丁になり集団で競って玉取りを行い、その年の吉凶を占う正月行事である。とかく博多の祭りは、男たちが褌一丁でウロウロするものが多い。
筥崎宮の楼門に掲げられる「敵国降伏」とは、鎌倉期に亀山上皇が納められた御宸筆(天皇の自筆)を、楼門建立の際、小早川隆景が模写拡大して掲げたものらしい。その真意は、武力で相手を降伏させる覇道ではなく、徳の力をもって導き、相手が自ずから靡き降伏するという王道である我が国のあり方を説いているという。
筥崎宮の近くに老舗屋台の「花山」がある。九大に通っていた高校時代の友人が学生時代にバイトしていた縁で、何度か連れて行ってもらった。調べると創業は昭和28年で私より年上でかなり有名な屋台のようだ。焼き鳥とラーメンを食べたが、もう随分昔で味は覚えていない。次回、彼と会う時は「花山」もありか、と思う。
それにしても、父は「放生会」でどんな句を詠んだのだろう。「書斎を探してみるか!」という気持ちになった。18年の時を経て、父の想いに触れることができるかもしれない。