流離の翻訳者 果てしなき旅路 -2ページ目

流離の翻訳者 果てしなき旅路

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴16年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

夏の甲子園もベスト8が出揃った。高校野球は私の趣味の一つでもある。自分の地元の高校を除いて基本的に「判官贔屓(ほうがんびいき)」のスタンスで観る。先日の「大社-早実」の試合は久しぶりに感激した。

 

 

「判官贔屓」とは伝統的な日本人の心情で、「判官」は、検非違使の尉(位)の一つで源義経「九郎判官」と呼ばれたことに由来し、本来は源頼朝に対して源義経を薄命な英雄として愛惜し同情することを意味した。現代ではそれが転じて不遇な身の上や弱い立場の者に同情を寄せたり応援したりすることを表すようになった。

 

 

「判官贔屓」を英語ではsupport (or sympathy) for the underdogなどと表現する。なおunderdog競争などで勝てそうもない人(側)を意味する。

 

1) The old man always supported (expressed his sympathy for) the underdog.

= The old man always cheered for the side that was behind.

「その老人は、いつも判官贔屓(劣勢な側を応援)した」

 

 

ところで「判官贔屓」の反対語に勝ち馬に乗るという言葉がある。これは、勝利しそうな方に味方して勝利に便乗することをいい、より具体的には集団の中で影響力を持っている人(の側)に付いて、その恩恵を受けたり自分の存立(地位)を維持しようとすることを言う。

 

 

会社・組織などではよく見かける光景だが、こちらは英語ではjump (climb, get, hop) on the bandwagon, adulation, excessive flattery, flunkeyism, ingratiation, sycophancy, toadyism などなどより多くの表現があるようだ。

 

2) Many executives jumped on the bandwagon of the founding family.

= Many executives tried to get leftovers from the founding family.

「役員の多くが創業者一族の勝ち馬に乗った(お零れに預かろうとした)」

 

3) Like a hostess, the young secretary ingratiated herself with the executives by providing them with topics they could be interested in.

「まるでホステスのように、その若い秘書は、役員たちが興味を持ちそうな話題を提供しながら彼らのご機嫌を取った」

 

終戦記念日を迎えた。「晩夏光」とは「夏の終わりの頃の衰えぬ暑光」をいう。今年も静かに盛夏が過ぎてゆく。

 

 

「俺は、君のためにこそ死ににいく」は2007年公開の映画である。ちょうど今、甲子園で戦っている球児たちが生まれた頃のものだ。DVDを借りて一度みたが、どうしてももう一度みたくなり結局DVDを買ってしまった。哀しくも美しいストーリーが印象深い。

 

以下の動画は、この「俺は、君のためにこそ死ににいく」からの映像である。BGMは梶浦由記さんの「花守の丘」。哀しい情景が増幅される。

 

 

「花守の丘」

 

丘を染めて白い花が

咲き誇る夏には

貴方といたこの日々を

思い出すでしょう

 

それはとても哀しいけど

綺麗な一時で

生きてるよろこびの

全てを知った

 

最後の光を惜しむように

暮れ行く大地が優しい声で

永遠を歌い出すまで

 

何も言わず散って行った

静かな花のように

迷いのない強さが

私にありますか

 

それはとても小さなこと

例えばどんな時も

微笑み絶やさない

勇気を持てたら

 

貴方の記憶を胸の中で

誇れる私でいられるように

優しさしさを語りましょう

枯れない涙の海から

 

丘を染めた白い雪が

溶けて行く大地に

何度もまた花びらは

返り咲くでしょう

 

最後の光を惜しみながら

暮れ行く大地が優しい声で

哀しみを歌う時

よろこびの種をまく

永遠を語りましょう

貴方の愛した未来を

 

お盆休みも後半。今年も「終戦の日」が近づいてきた。戦後79年。私のような太平洋戦争を知らない世代にとっても何がしか思うことがある。

 

この時期、NHKなどでは戦争に関する特別番組が放送される。一年に一度くらい戦争について考えてみてもいいのかな、と思う。

 

我々が今日の平和を享受できるのは、太平洋戦争の尊い犠牲があったからに他ならない。国のため、また愛する家族のために散っていった若者たちがいたことを忘れてはならない。

 

 

キミガタメ「うたわれるもの 散りゆく者への子守唄」

 

きみの瞳に映る わたしは何色ですか

赤深き望むなら渡そう陽の光を

 

悲しみが溢れ 瞼閉じました

こぼれた滴は 心に沁みゆく

 

行き渡る波は 弱く交えます

とどけしゆりかご眠りをさそう

 

夢になつかし面影をさがす

手を伸ばし 強く抱きしめたくなるha-

 

きみの瞳に映る わたしは何色ですか

藍深き望むなら渡そう高き空を

 

歓びが溢れ巡りあいました

こぼれおつ笑みは別れを隠す

 

人はいつしか朽ち果てるけれど

唄となり語り継がれてゆくでしょうha-

 

きみの瞳に映るわたしは何色ですか

緑(りょく)深き望むなら渡そうこの大地を

 

もろく儚げなものよ強く美しきものよ あるがままha-

 

きみの瞳に映る わたしは何色ですか

安らぎを覚えたなら そこにわたしはいる

 

きみの瞳に映る わたしは何色ですか

うら深き望むなら渡そうこの想いを

渡そう このすべてを

 

 

盆休みの前半は大学時代の友人が夫婦で訪ねてきて会食したり、また娘家族が帰省してきたりで賑やかに過ごした。

 

昨日近くの焼肉レストランに行ったが、店内は家族連れでごった返していた。猛暑の中、日本中が汗を拭きながら休暇を楽しんでいるように見えた。

 

その帰り、車の中から空に浮かぶ半月をみて「お月さんが付いてきているよ。お月さんもきっと寂しいんだよ。」と孫娘が言った。大人ではなかなか浮かばない発想である。

 

 

帰省は英語でhomecoming帰省ラッシュhomecoming rushというが、この時期、高速道路のサービスエリア等では色々な地域のナンバープレートを見ることができる。雑踏の中で少しづつ寂しい晩夏が近づいている。

 

 

百人一首に「蝉丸(せみまる)」という盲目の琵琶奏者と伝えられる歌人がいる。残した歌は以下のものである。

 

第十番「これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂(あふさか)の関」

 

(拙・現代語訳)

「都を旅立つ人も都に戻ってくる人も、知っている人も見知らぬ人も、みんなここで出逢い擦れ違っては去ってゆく。ここはそんな旅人が行き交うところ、その名を逢坂の関という。」

 

この歌には、「会うものは必ず別れる運命にある」という「会者定離(えしゃじょうり)」の無常観が流れているように思われる。また「逢坂の関」現世そのもののようにも感じられる。

 

 

前回の記事で、学生時代によく通った高野のカラオケスナック「ユレイカ」の話を書いた。この店名の「ユレイカ」、古代ギリシャ語の「ユーレカ」(εὕρηκα、英語はEureka)に由来する。

 

ユーレカとは、ギリシャ語の感嘆詞で、何かを発見・発明したことを喜ぶときに使われる言葉らしい。古代ギリシアの数学者・発明者であるアルキメデスが叫んだとされる言葉である。

 

「ユレイカ」のママさんから、そんな話を聞いたような聞いていないような、記憶が曖昧である。そんな逸話を英作文の問題に出した大学があった。

 

 

(問題)

次の文章を読み、下線部(A)、(B)を英語に訳しなさい。

 

(A)アルキメデスは風呂の中で浮力の原理が頭の中にひらめいた瞬間、「ユーレカ」(「わかった!」)と叫んで風呂から飛び出し、裸のまま街を走ったという。何かを探していれば、必ずそのうちこの「ユーレカ」の瞬間がやってくる。「ユーレカ」は快楽である。おそらく人間が味わうことができる快楽のうちで、最も上質、かつ最も深い快楽の一つだろう。誰でも小さいうちからこの快楽を少しずつ体験して覚えていく。

程度の差こそあれ、「ユーレカ」欲求は、あらゆる人生過程においてあらわれる。「ユーレカ」欲求は、人間の最も本能的、本質的欲求の一つなのであろう。(B)しばしばそれは、他の欲求を圧倒するくらいの力を持つ。メシを食うのを忘れ、デートの約束を忘れるほど本を読みふけった経験を持つ人は少なくないだろう。

(立花隆『知のソフトウエア』より一部変更)

(東北大学・2011年前期)

 

(拙・和文英訳)

 

(A) It is said that the moment when Archimedes hit upon an idea about the principle of buoyancy in the bath, he shouted “Eureka” (“I’ve found it!”), jumped out of the bath, and ran naked through the city. If you are searching for something, you will never fail to encounter the “Eureka” moment in the course of time. “Eureka” is pleasure. It is probably one of the finest and deepest pleasures that human beings can experience. Everyone experiences and learns this pleasure little by little from his or her childhood.

Although there are differences in degree, the “Eureka” desire appears in various stages of life. The “Eureka” desire is probably one of the most instinctive and essential desires of human beings. (B) It often has such a strong power as may overwhelm other desires. Not a few people have experienced being so engrossed in reading a book that they can forgot to eat or forget a promise of a date.

 

最近、記憶に残る夢を立て続けに見ている。眠りが深いのだろうか。その中で大学時代の友人が2度夢枕に立った。何か虫の知らせのように思える。

 

彼とのつき合いは酒と麻雀が中心だった。元々同郷だが、学生時代にはご家族は大阪に住まわれていた。時々御父上から差入れられる高級なウイスキーのお零れに預かったことが思いだされる。大学2年の夏休みには、北九州に遊びに来て私の実家にも泊った。何もかもが懐かしい思い出だ。

 

彼は元々総合商社指向で3年次は本山美彦助教授(当時)「世界経済論」のゼミに進んだ。ゼミや就職に関係した科目だけは真面目に勉強していたようである。

 

彼とはよく酒を飲み麻雀もした。一乗寺の炉端焼き「京八」高野のカラオケスナック「ユレイカ」が思い起こされる。彼の十八番はサザンオールスターズの「いとしのエリー」だった。歌声が今も耳に残っている。

 

 

大学卒業後、彼は三井物産に進みエネルギー(石炭)部門に配属された。入社して7~8年くらいは東京勤務だったので、よく飲みに行った。彼と飲むのは中央線の三鷹が多かった。

 

当時府中に独身寮があり、飲んだあと何度か寮に泊めてもらった。寮の玄関に「自動靴磨き機」があったことを思い出す。

 

彼が英会話講師の女性と結婚したのが1991年。披露宴の会場は「学士会館」だった。披露宴で彼の空手部の同僚が余興で「浮気」・「病気」・「貧乏」と書かれた3枚の木板を拳と蹴りで叩き割ったことを覚えている。

 

 

彼が結婚した後、私が銀行で勤務していた頃博多で飲んだのが最後となった。そのとき酒の席でちょっとした諍いが生じてしまった。私が悪かった。口は災いのもとである。

 

その後、よりを戻す前に彼はオーストラリアに転勤になった。それまで交わしていた年賀状も途切れてしまった。以来疎遠になっていった。

 

 

ネットが普及した後、彼が三井物産金属資源本部石炭部長になったことを知った。ちゃんと出世していた。それが2010年代半ばのことである。

 

昨今、学生時代の友人たちとの旧交を温める機会が増えているが、当時の友人たちに確認するが、誰も彼の消息を知らない。年齢から関連会社等に移られているかもしれないが……。

 

 

何ゆえ2度も夢枕に立ったのか?彼から何らかの便りがあることを期待したい。

 

 

通勤では、車で大抵はFMラジオを聴いている。勤務は10:00からなのでラッシュには巻き込まれない。

 

そんな中、NHKFMの「音楽遊覧飛行」という番組で懐かしい歌を聴いた。はしだのりひことクライマックスの「花嫁」(1971年)というもの。

 

花嫁と夜汽車、故郷の丘に咲いていた野菊の花束の花嫁衣裳……。とても新鮮な取り合わせだ。当時の世相が思い起こされる。

 

この曲が流行ったのが、私が中学1年、まだ恋も何もわからない頃だ。あれからはや53年、半世紀以上が過ぎてしまった。「昭和は遠くなりにけり」である。

 

以下、歌詞とともに歌を掲載する。

 

 

「花嫁」 はしだのりひことクライマックス(ボーカル:藤沢エミ)

 

花嫁は夜汽車にのって

とついでゆくの

あの人の写真を胸に

海辺の街へ

命かけて 燃えた

恋が結ばれる

帰れない 何があっても

心に誓うの

 

小さなカバンにつめた

花嫁衣裳は

ふるさとの丘に咲いていた

野菊の花束

命かけて 燃えた

恋が結ばれる

何もかも 捨てた花嫁

夜汽車にのって

夜汽車にのって

夜汽車にのって…

 

 

梅雨が明けて猛烈に暑い日が続いている。今日は38℃を超えたようだ。7月からこんな暑さであれば先が思いやられる。

 

 

法務事務所で働くようになってから、略式命令(Summary Order)起訴状(Indictment)判決文(Judgment)宣誓供述書(Affidavit)などの英訳を日々こなしている。

 

私の法務分野は企業間の業務契約書が中心であったため、裁判関連の法務文書で毎日新しい語彙との出会いが続いている。

 

そんな中、動詞 convince およびその名詞形 conviction の新しい意味を知った。動詞 convince「~を確信させる」の意味でしか使ったことがなかった。この名詞形が conviction で、意味は「確信・信念」である。

 

だが conviction にはもう一つ恐ろしい意味があった。それは「有罪判決・有罪」というものだ。裁判文書にはやたらこの語が出てくる。

 

「有罪判決・有罪」の意味の conviction の動詞形は convince ではなく convict である。動詞 convict の意味は「(裁判官・法廷が)(人に)有罪を判決する」となる。

 

以下に、例文を挙げておく。

 

1) I was convinced that he was guilty.

彼が有罪だと確信した

 

2) His testimony shook my conviction that he was innocent.

彼の証言で彼が無罪だという私の確信が揺らいだ。

 

3) He was convicted of having committed robbery.

彼は強盗罪の判決を受けた

 

4) He had a conviction for drunken driving.

彼は飲酒運転の罪を問われた

 

「有罪判決・有罪」の意味の conviction の反対語acquittal 「無罪評決・無罪判決」である。

 

この convince - conviction - convict の関係は、construct - construction - construe の関係に類似している。

 

ドライブで観光地や「道の駅」に行ったときに何気なく買った猫などの「置き物」が書斎にはたくさん置いてある。猫、フクロウなどの鳥、狸、鬼…、などが祭壇のように無造作に並べられている。

 

それらの置き物の一つ一つを見るにつけ、楽しかった思い出が蘇ってくる。だが、最近どこで買ったのか思い出せないものも増えてきた。自分も歳をとったものだ。

 

 

英会話のテキストには時々未知の構文が出てくる。先日見たのは「分裂文(Cleft Sentence)」というもの。初めてお目にかかった。

 

Wikipediaではこんな説明がされていた。「分裂文(Cleft Sentence)とは、単文の中のある成分(主語、目的語、その他)を強調するために抜き出し、コピュラ(繋辞)文を主節とする複文に変換した形の文をいう。」

 

以下、例文を挙げてみる。

 

1) The thing I like to do most in summer is eat loads of ice cream.

= It is to eat loads of ice cream that I like to do most in summer.

私が夏に一番したいことは、色々な種類のアイスクリームを食べることです。

 

2) What I like to do most on days like this is go for a swim.

= It is to go for a swim that I like to do on days like this.

私がこういう日に一番したいことは泳ぎに行くことです。

 

3) The thing I look forward to most is when figs start coming into season.

= It is when figs start coming into season that I look forward to most.

私が最も楽しみにしているのは、イチジクの季節が始まる時です。

 

4) What I love doing most is going hiking in the cool mountain air.

= It is going hiking in the cool mountain air that I love doing most.

私が最も好きなことは、涼しい山の空気の中でハイキングに行くことです。

 

どれもIt is …… that …… の強調構文で書き替えられるようだが、1) 2)is eat, is go には、文法的な違和感を感じる。

 

35℃を超える暑さが何日か続いたかと思ったら、梅雨が戻ってきた。毎日結構激しく降っており交通機関にも影響が出ているらしい。今年は明らかに「陽性の梅雨」のようである。

 

「陽性の梅雨」とは、雨の降り方と梅雨の晴れ間がはっきりしており、湿度が全般的に低い梅雨をいう。

 

 

英会話のテキストにtemperamentalという単語が出てきた。たぶん「気分屋の(=moody)」という意味だが、機械に対する表現である。さてどう訳すか?

 

A: What can I do for you?

B: Well, it’s the pool heater. I can’t seem to get it started.

A: Oh, yes. It can be a bit temperamental. Try giving a kick. That usually works for me.

 

状態が「不安定な(=unstable)」のような感じか?英英辞典を確認した。

 

Temperamental:

1) If you say that someone is temperamental, you are criticizing them for not being calm or quiet by nature, but having moods that change often and suddenly.

人が生まれつき、穏やかでなく静かでなく、気分がしばしば突然に変化することを批判して言う。

 

2) If you describe something such as a machine or car as temperamental, you mean that it often does not work properly.

機械や車などの物が、しばしば正常に動かない様子をいう。