美しい子宮② こうして私達は、セックスレスの夫婦になりました
美しい子宮⑯ 女の下剋上!女はいつもどこかで、人生をリセットしたい
美しい子宮⑳ たかが、子どもを産んだくらいで偉そうにするな!
あなたはまだ、あきらめていない
天正十九年、秀吉にとっては鶴丸様以外にも大切な人達を失った、辛い一年でした。
この年の一月、唯一秀吉に進言でき、最も信頼していた弟である秀長が死去しました。
彼の死は、秀吉だけでなく私にとっても大きなショックでした。
二月は相談相手でもあった茶人千利休を切腹させました。
千利休とは面識があった私は、何度も秀吉に彼の切腹を止めるよう言いましたが、彼は頑として耳を傾けませんでした。
石のように固く意固地を通る彼に、これまで感じなかった胸騒ぎを覚えました。
もやもやした黒い違和感。
明かに今までの秀吉とは違うのです。
これまでの彼はささいなことも私に相談し、真摯に耳を傾けてくれました。
が、今回の利休の件は彼の独断でした。
そこに危うさを感じました。
最近の秀吉は、鶴丸君や秀長様を失った悲しみが身体中の水分を吸い取り、一回り小さくしぼんでいます。
目は落ちくぼみ、背は丸まり、まるで十年分の時間が早巻きされたようです。
一挙に白髪も増えました。
秀吉は鶴丸様を始め、自分を取り巻いていた人々がこの世を去ることで、あの世の近さを感じたようです。
日本国のてっぺんにいても、死神から逃れられないことを悟ったのでございます。
跡継ぎを失った秀吉の空虚な思いと死への恐怖。
命のカウントダウンに目をそむけ、恐れや悲しみを戦で埋めるため、彼は海を越えた朝鮮に手を伸ばしました。
戦に気持ちを向けることで、鶴丸様の死を乗り越えようしているのでしょうか。
その姿は、痛々しくこれまでにない彼の老いを強く感じました。
満身創痍の秀吉の目は、狂気を孕んでいるように白く濁っています。
煙のように立ち込めた胸騒ぎは、黒い不安の雲になりわたしの胸を覆いました。
ですが、朝鮮出兵で秀吉が元気になるならそれでいい、と自分の不安を飲み込んだのです。
その年の秋、秀吉から甥の秀次を豊臣の家督相続の養子として迎えようと思う、と相談を受けました。
一も二もなく賛成しました。
秀次の母は、秀吉の姉です。
秀吉と濃い血のつながりもあります。
これが本来の豊臣の正しい相続なのだ、とさえ思ったのです。
秀吉は一度は自分の願いを叶え、豊臣の子を抱けたのです。
けれど本当は秀吉の遺伝子など持っていない子でした。
いなくなって当然です。
いい夢を見た、と秀吉もあきらめたのでしょう。
そしてもう一人、あきらめてもらう方がおります。
その方に告げる為、私は淀城へと向かいました。
鶴丸様を失い、秀吉も茶々様のところへのお渡りも減っている、と聞いております。
久しぶりにお会いした茶々様も、やつれておられました。
ですが、悲しみに気落ちされていてもやはり茶々様はお美しいのです。
お母様のお市様と同じように。
美味しくない蜜柑を食べてしまい残念だった気持ちに、意地悪さを上からたらした私は、茶々様に告げました。
「茶々様、もう秀吉の子どもを作らなくても大丈夫ですよ。
その必要は、なくなりました」
「えっ?!」
「秀吉は、関白の座を甥の秀次殿に継がせることを決めました。
ですから、もういいのですよ。
あなたはただただ、秀吉のそばにいてやって下さいね」
どす黒い本音を沈め、精いっぱいの労わりと慈愛を上辺に込めて茶々様にお伝えいたしました。
茶々様の顔はみるみる内にこわばり、表情を失いました。
両手を握り締め、屈辱に耐えているような茶々様。
なんとお美しいのでしょう。
そのまま人形のように床の間に飾られておいてください、と心の中で願い、頭を下げ早々に淀城を出ました。
鶴丸様を失った茶々様は、豊臣の跡継ぎの生母、という揺るぎない地位を失いました。
秀吉には他の側室もおります。
中には茶々様よりも若く健康な女性もいます。
その内の誰かが、茶々様と同じような方法で秀吉の子を孕んだら、茶々様はもう用なし。
ずっと床の間でほこりをかぶった飾り物でいて下さいませ。
なんとお気の毒様。
いつの間にか私はくっくっ、と笑っておりました。
そしてご機嫌で大阪城に帰ってきたのでございます。
やがて秀吉は秀次に関白職を譲り、太閤と呼ばれるようになりました。
ただし、秀次に全権を与えたわけではありません。
たとえ身内であろうとも、自分がそのまま実権を握り二元政を行ったのです。
もしかしたら秀吉の胸の内に、まだ茶々様や他の側室に子どもができるのかも、というあきらめきれない思いがあったかやもしれません。
ですが、このまま甥の秀次に豊臣を譲ってほしい、と思いました。
それが豊臣が後の世まで続く穏やかな世代交代だと信じておりました。
ある時、茶々様が秀吉のところにやってきました。
表向きは、秀次の関白就任のお祝いの挨拶、ということでした。
秀吉は茶々様に告げました。
「秀次をわしの養子にした。
秀次に豊臣の後を継がせる」
茶々様は秀次の前に正座して、頭を下げ
「秀次殿、まことにおめでとうございます」
とあいさつされました。
茶々様が頭を上げた時、まっすぐ秀次の顔を見ると、艶やかに笑顔を向けられました。
そしてしばらく秀次の顔を見つめ、頬を赤らめたのです。
この女狐め!
心の中で叫びました。
女には女のあからさまな常とう手段が手に取るようにわかります。
わからないのは、鼻を伸ばした男と嫉妬にかられた男だけ。
秀次は叔父である秀吉の若く美しい愛人に微笑みかけられ驚いておりました。
が、まんざらでもない様子でした。
その間、茶々様は一切秀吉の方に顔を向けず無視し続けました。
そして長居をせず、とっとと退出されました。
去り際にも、秀次の顔をチラリとみて、密やかな意味深の笑みを送りました。
秀次は茶々様に見とれていて、母親である義姉にこづかれていました。
女には警戒心のサイレンが鳴る音が聞こえます。
特に母親ならば。
ふてくされた背中を見せつけ去って行った茶々様。
天晴れです。
さすがです。
すべては計算ずくですね。
あなたはまだ、あきらめていないのですね。
これから、どんな手を打つおつもりですか?
ようやく秀吉は落ち着き、心の平安を取り戻したのです。
どうぞ秀吉だけでなく、豊臣を揺らさずにいて下さい。
私は豊臣の母として、豊臣の安泰を望みます。
自分の保身だけを考えているあなたとは違います。
私は視線に思いを込め、茶々様の背中にくぎをつき刺しました。
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あなたは一度得たけれど失ったものを、あきらめますか?
それを手に入れるのは、もう怖いですか?
あなたの意識が過去に囚われていたら、怖いですよね。
でも、それはあきらめられるものですか?
あきらめていいのですか?
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