美しい子宮② こうして私達は、セックスレスの夫婦になりました
美しい子宮⑯ 女の下剋上!女はいつもどこかで、人生をリセットしたい
たかが、子どもを産んだくらいで偉そうにするな!
茶々様の城に戻った鶴丸様の熱はなかなか下がらず、ずっと寝込んでいます。
犬猫もそうですが幼い時は男の方が弱い、と言います。
まさにその通りですね。
鶴丸様は豊臣の後を継ぐ大切なお子ですから、心配です。
鶴丸様に何かあれば、秀吉は半狂乱になるでしょう。
そんな秀吉は見たくありません。
そのためにも鶴丸様に早く良くなってもらわねば、と固く目を閉じ、祈り続けました。
淀城では、大阪城で鶴丸様が毒でも盛られたのではないか、と茶々様の乳母の大蔵卿局が聞いて回っているそうです。
それを聞き、なんと失礼なことを言うのだ、と腹が立ってたまりませんでした。
この私が城を采配してるのに、そんなことはさせません、決して。
これでも私なりに、鶴丸様を豊臣の跡継ぎとして大切に処遇しておりましたからね。
そんな茶々様の誤解を解くため、手紙を書きました。
鶴丸様が病に伏せったことを知った秀吉は、奈良の興福寺に数多くの供え物を贈り、春日神社で鶴丸平癒の祈祷をさせました。
茶々様もろくに眠らず、食事もとらず、鶴丸様のそばで祈り続けているそうです。
それに対して秀吉は一人、遠く離れた小田原でつらい思いをしています。
それは私にとって、とても切ないことでございました。
私がそばにいたら、秀吉の背中をさすり熱いお茶を飲ませ、手を握ってあげるのに。
それが今はできません。
秀吉のため、鶴丸様のご無事を祈り続けました。
やがて私達の願いが天に届いたのでしょう。
鶴丸様の熱は下がり、回復されました。
小田原から戻った秀吉は、聚楽第に茶々様と鶴丸様を呼びました。
みなの前で鶴丸様を抱きしめ
「おお、おお、よくがんばった。
よく元気になった。
わしも、お前のためにがんばったぞ。
共に戦ったのう」
と、うれしそうに言い聞かせていました。
秀吉のこぼれそうな笑顔を見て、本当によかったことだと、私もジンと胸が熱くなりました。
茶々様もさすがにうれしそうでしたよ。
いつもはすましたお顔をされていますが、この日ばかりは大輪の花が開いたような華やかな笑顔でした。
それは、それは、とてもお綺麗でした。
ですから茶々様にお声をかけいたしました。
「鶴丸様はすっかり快復し、元気になって本当によかったです。
豊臣の跡継ぎですから、気をつけて下さいね」
すると茶々様は顔をこわばらせ、きつい声で言いました。
「鶴丸が豊臣の跡継ぎであろうとなかろうと、私にとっては愛おしい我が子です。
我が子が元気で大切にいることが、母である私の喜びで生きがいです。
ですから、もう秀吉様がどう命じても私は鶴丸のそばを離れません。
母と言うものは、そういうものです」
私は落ち着いて言葉を選び、幼子に伝えるように言い含めました。
「淀殿、秀吉の妻は私です。
ですから秀吉の子は、私の子でもあるのですよ」
すると茶々様は、細い眉毛を山の形に上げ、激しく私に詰め寄りました。
「鶴丸は私の子です。
私と秀吉様の子です。
鶴丸が病の間、私も秀吉様も鶴丸と共に戦いました。
北政所様は、そうではなかったですよね?
でも、それでよいのです。
北政所様のお子では、ございませんから」
私に向かいはっきり物申した茶々様は、言うべきことはすべて伝えた、とでも言いうように、くるりと背中を向け立ち去りました。
赤い着物に金の刺繍が縫いこまれた背中に大きく「母」という字が描かれているように見えました。
どうあっても我が子を守る、という決意が熱いオーラとなり手を伸ばそうとした私を拒否しておりました。
はじめて間近にした茶々様の母の姿と気迫にショックを受けた私はうつむいて唇を噛むしかありませんでした。
そばにやってきた秀吉が
「大丈夫か、寧々?」
と私の顔をのぞきこみました。
そして申し訳なさそうな顔をした彼は、そっと私の手を握りました。
つい彼の手を強く握りしめました。
茶々様の言葉は、思った以上に私にダメージを与えました。
たしかに父母の気持ちで、一緒に戦っていないは事実です。
そう思う反面、だって仕方ないじゃないの、という思いもわき上がったのです。
この時、私は茶々様に対するドロリとした黒い感情を感じました。
いえ、その思いは以前から持っていたけど抑え込んでいたのでしょう。
蓋が開き、自分の暗い感情を認めた時、私の子宮からこんな声が聞こえました。
「たかが、子どもを産んだくらいで偉そうにするな!」
この声にハッ、として顔を上げました。
その通りだ、そうだ、そうだ、と子宮からたくさんのエールが送られました。
百万の味方を得た私は、自分の子宮に手を当て、立ち去った茶々様の背中に面と向かい言えなかった本音を心の中で吐きました。
「子どもを産んだのが、偉いのですか?
子どもがいなければ、いけないのですか?
子どもへの愛をダダ漏れにするのが、尊いのですか?」
自分の黒い本音は、つい顔をそらしたくなります。
人は誰しもいい人でいたいから、認めたくないのです。
ですが、その本音を持つ自分を認めてしまえばかえって楽になります。
それも自分の一部なのですから。
善なる自分しか認めず、それ以外の自分に蓋をするのは自分で自分の首を絞めるようなもの。
認めたくない嫌な自分がのどに詰まり、自分に息苦しい思いをさせているのは、自分なのです。
はらわたから引きずり出した黒い本音を認め、息が楽になった私は
「もう大丈夫です」
と秀吉に笑いかけ、握り締めていた彼の手をそっと離しました。
その念が届いたのかどうかわかりませんが、茶々様と鶴丸様は淀城に戻られた後、私に会うのを避けるようになりました。
秀吉は天下平定に向け忙しくなったので、あまり淀城に行けず、茶々様に手紙を書きご機嫌を取っていました。
私は茶々様に会わずにいたら、心が波立たず平和でした。
年が改まった天正十九年、鶴丸様がまた熱を出して寝込んだ、と知らせが届きました。
秀吉は、日本国中の神社仏閣に鶴丸様平癒の祈祷をさせました。
そして前回、鶴丸が元気になったことを受け、春日神社に三百万石の寄進をし、祈祷をお願いいたしました。
お金を積んだ甲斐もあり、鶴丸様は回復しました。
ですが夏にまた病になったのです。
秀吉はまた全国の神社仏閣に祈祷をさせ、金に糸目をつけず春日神社に莫大な寄進をし、鶴丸様の平癒祈願をお願いしました。
巷からは
「秀吉は、金で我が子の命を買おうとしている」
という声が聞こえてきました。
その声に向かって言いたかったです。
「ええ、その通りですよ。
そのどこが悪いのですか?
お金はあるし、鶴丸様は秀吉の子ですよ(世間的には)。
だったらお金をかけてもらって、当然ではありませんか!」
秀吉は国中から名医と呼ばれる医者たちも集め、鶴丸様を診せました。
家来たちにも鶴丸の平癒祈願をさせました。
茶々様からは私にまで、鶴丸様平癒の祈りを願う手紙もやってきました。
よほど切羽詰まっているのでしょう。
すぐに、もちろんです、と返事を書いて送りました。
そして書き加えました。
「お金のことなど気にしなくてもいいです。
世間に何を言われても、ほっておきましょう。
鶴丸様は大切な特別なお子ですから」
そう書けた私は、なんて偉いのでしょう。
自画自賛致しました。
さらに茶々様は真夜中に水をかぶり、震えながら鶴丸様の病平癒を祈っている、とも聞きました。秀吉も東福寺でずっと鶴丸様の病平癒を祈っています。
私はこの城で、鶴丸様の病平癒を祈っています。
妻も愛人もみな同じ方向を向いて、心を一つにし願いを叶えようとしている、という現実が不謹慎かもしれませんが、ちょっとワクワクしました。
変な話ですが、嵐の中のピクニックのようにこの状況を楽しんでおりました。
それもこれも、本当の母親ではないからでしょうね。
母親である茶々様に、そんな余裕はありませんからね。
ですが今回私達の願いは天に届きませんでした。
神様は聞いて下さらなかったのです。
病から三日後、鶴丸様は数え年で三つで、この世を去ったのです。
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あなたは自分の中にある、ドロリとした本音
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妬み、嫉み、嫌味・・・
持っていてもいいのです。
持っている自分を責めるのは、止めましょう。
持っている自分を認めればいいだけです。
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