Plastic Tree / Plastic Tree | 安眠妨害水族館

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Plastic Tree/Plastic Tree

 

1. ライムライト

2. ざわめき

3. no rest for the wicked

4. ゆうえん

5. シカバネーゼ

6. 宵闇

7. Invisible letter

8. 痣花

9. メルヘン

10. 夢落ち

 

「十色定理」以来4年ぶりとなったPlastic Treeのフルアルバム。

 

結成から30年。

16枚目のオリジナルアルバムにして、満を持してのセルフタイトル盤がドロップされました。

熟成期でのセルフタイトル。

色々と邪推してしまうところではありますが、音を聴いて納得したリスナーも多かったのでは。

だって、本作は確かに「Plastic Tree」を象徴するアルバムに仕上がっているのですよ。

 

30年も続けていれば、多かれ少なかれ音楽性は変化するというもの。

病的なほどに内向性を高めていた彼らは、メジャーデビューを経てUKロックを下地とした独自の音楽性を獲得。

徐々にオルタナ色の強いギターロックや、ドンシャリ感のあるパンク、デジタルな質感なサウンドにシューゲーザー的手法も取り込んで、各方向での名盤を多数生み出すことになります。

また、メンバー全員が作詞・作曲に噛み込む割合を作品ごとに増やしていて、今や"Plastic Treeといえば"を端的に示すのは非常に難しくなっているのでしょう。

 

それを踏まえて、前作の「十色定理」はバリエーションの観点で"Plastic Treeといえば"に挑戦した作品。

聞き手によって異なってきたバンド像について、各方面に尖った楽曲を集めたらどれかは刺さるはず、というコンセプトだったわけですが、本作については、それらをすべて包含したうえでの"Plastic Treeといえば"に向き合っている印象なのです。

もちろん、アルバムのバランスとしての緩急はありますが、色々と変化していく中で、それでも変わってこなかった部分、変えなかった部分にスポットを当てることで、誰もの中にぼんやりとあったPlastic Treeらしさを可視化。

タイトルや歌詞についても、これぞ、というフレーズが散りばめられていて、すべてをVo&Gt.有村竜太朗さん、Ba.長谷川正さんのコンビで構築しているならともかく、作詞家やコンポーザーの偏りがないスタイルで、この濃厚な世界観を再現できているのだから恐ろしいですね。

 

どこか病弱な文学青年を思わせる、気怠さと夢想的な雰囲気が混在した「ライムライト」。

刹那的なメロディが、弱さと強さを交錯させる「ざわめき」に、アンニュイなヴォーカリゼーションがムードを作る「ゆうえん」。

「シカバネーゼ」は、アグレッシブな楽曲であるのが、その言語感覚から理解できる。

復活ののろしをあげたシングル「痣花」、本作のリードトラックとしてMVが制作された「メルヘン」は、そうそう、こういうPlastic Treeが聴きたかった、という消え入りそうな浮遊感がたまらない。

そして、10分弱の「夢落ち」は美しい和メロが映画を見終わったような余韻を残し、「Plastic Tree」の看板に偽りなしのクロージング。

穏やかな気持ちと、ちょっと胸が疼く喪失感。

スピード感のある激しい楽曲が求められやすいシーンで、ゆるいナンバーを中心に市民権を得た彼らの本領発揮がここにありました。

 

なお、初回限定盤は、 メンバー座談会映像 「プラっと語リー酒〜“Plastic Tree”編〜」が収録されたDVDが付属。

A5サイズハードカバーブックレットは100頁にも及んでいるので、値は張りますが、コアなファンなら入手しておきたいところでしょうか。

 

 

 

<過去のPlastic Treeに関するレビュー>

十色定理

続 B面画報

doorAdore

剥製

echo
インク
静脈
アンモナイト
Cut~Early Songs Best Selection~
Parade

Puppet Show

Strange fruits -奇妙な果実-