doorAdore/Plastic Tree
![]() |
doorAdore (通常盤[CD])
2,880円
Amazon |
1. 遠国
2. 恋は灰色
3. エクジスタンシアリスム
4. 雨中遊泳
5. サイレントノイズ
6. サーチ アンド デストロイ
7. 残映
8. いろつき
9. 念力
10. scenario
11. ノクターン
12. 静かの海
2年2ヵ月のインターバルを経て発表された、Plastic Treeの14thフルアルバム。
完全生産限定盤2種と、通常盤の計3タイプでのリリースとなりました。
前作で、バンド感のあるギターロックを突き詰めた彼ら。
本作では、そこから更に精神世界に沈み込んだ印象で、楽曲のバラエティには富んでいるのだけれど、そのすべてが病的なほどの虚無感に包まれています。
象徴的なのは、1曲目の「遠国」。
タイトル通りに異国情緒が漂うアルペジオに、今にも消え入りそうな有村さんの歌声。
蜃気楼のように浮かび上がる異世界には、現実なのか夢なのか、はっきりと口にできない脆弱性があるのですよ。
そういえばPlastic Treeと言ったら、こんなにも触れたら壊れそうなイメージだったっけか。
進化する音像と、変わらないナイーブさ。
これまで培ってきたサウンドを携え、唯一無二の中毒性が帰ってきた感覚があって、様々な感情が込み上げる。
こんなアルバムが聴きたかった、というファンも多かったのでは。
メンバー全員が作詞・作曲に有機的に参加しているのは、前作同様。
ただし、世界観の一貫性という点では、上記の通り、より強固なものになっています。
攻め気のある「恋は灰色」にしても、ポップさが際立つ「いろつき」にしても、デジタル色が強い「scenario」ですら、アルバムというフィルターを通せば、しっかりとアンニュイさや喪失感を読み取れる。
4人のセンスが絡み合ってこその「doorAdore」には、バンドは生き物であるということを、改めて実感させられました。
これを魔法と呼ばずに、なんと呼べばいいのだろう、なんて。
また、本作において語りたくなるポイントなのは、ジャケットのアート性。
どんなにガシャガシャとギターロックを掻き鳴らしても、だだっ広い砂漠に飲み込まれ、掻き消されてしまう。
いくつものドアを開けて辿り着くバンドの終着点なんて、そんな空虚なものなのかもしれない。
だけど、その中で一瞬発生する熱のようなものに、僕らはきっとうなされているのだ。
最後の「静かの海」まで聴き終わって、ぼんやりと、そんなことを考えていました。
感覚的に美しいと思ったアートワークではあったのだけれど、音とシンクロして、更に好きになりましたよね。
ミディアムテンポの楽曲が多いせいか、ここ最近の作品の中でも、有村さんのボーカルの細さ、弱さが目立つ。
一方で、それも味わいとして中毒性に一役買っているのも事実。
オペラチックに高らかに歌い上げられても、きっと本作の肝である物憂げな表情は出てこない。
その意味でも本作は、Plastic Treeに求められているものを、すべて詰め込んだ1枚と言えるのかもしれません。
<過去のPlastic Treeに関するレビュー>