剥製 / Plastic Tree | 安眠妨害水族館

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剥製(通常盤)/Plastic Tree

¥3,240
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1. ◯生物
2. フラスコ
3. マイム
4. ハシエンダ
5. 告白
6. インソムニアブルース
7. float
8. 落花
9. スラッシングパンプキン•デスマーチ
10. スロウ
11. 剥製
12. ●静物

Plastic Treeの通算13枚目となるフルアルバム。
豪華仕様の初回限定盤と、ノーマルサイズの通常盤の同時リリースとなりました。

なんというか、"プラってこんなにバンド感あったっけ?"というのが第一印象。
初期からしっかりバンドサウンドで勝負していた彼らに、そんな感想を持つというのは失礼な話かもしれないのだが、想像していた以上にバンド然としているのだ。

音楽性としては、ART-SCHOOL辺りを彷彿とさせるアーティスティックなギターロック。
これは、Dr.佐藤ケンケンさん加入以降、日々深化させてきたサウンドなのだが、いよいよPlastic Treeとして昇華された感がありますな。
レコ発ライブを見ていないからわからないけれど、Vo.有村竜太郎さんがギターを弾きながら歌っている姿が浮かんでくる、ギタボが似合う曲たち。
そのうえで、やはりどこかV系シーンならではのナイーヴさや、病的な雰囲気が漂っているのだから、面白くないわけがないじゃないですか。

本作の特徴は、メンバー全員が作詞・作曲に携わったこと。
これまで、彼らの世界を描いてきたのは主に有村さんだったのですが、本作において彼が歌詞を担当した楽曲は、半分以下となる4曲。
しかも、そのうち3曲はシングルとして発表済みのナンバーなのだから、アルバムで初披露となった楽曲の大半は、他のメンバーが作詞しているということなのですよ。

では、それで音楽性がバラけたかと言えば、まったくそんなことはなく。
むしろ、従来以上に骨太にまとめられたイメージで、どれを誰が作ったか、という作曲者による違いがわかりにくくなったと思うほど。
メンバーひとりひとりの個性を追及した結果、全員が同じベクトルだったということだし、結成20年の円熟味を増したバンドで、それが実現しているというのは物凄いことでしょうね。
もちろん、一辺倒という意味ではなく、Gt.ナカヤマアキラさんが、相変わらずエキセントリックな「スラッシングパンプキン•デスマーチ」を持ってくるところも含めて、役割分担が絶妙。
総合的に"プラっぽさ"という演出となっているのだよなぁ。

楽曲単位のインパクトの面では爆発力に欠けるが、総合力で勝負するアルバム。
有村さんのボーカルの浮遊感が上手くハマって、薄幕の裏で得体のしれないモンスターバンドが演奏しているような空気感があるのも良い。
"生物"を"静物"に。
まさに、彼らの音楽を"剥製"にしたものがこの作品だとしたら、その細部まで見落とさないよう、何度でも聴き返してみたいものです。

<過去のPlastic Treeに関するレビュー>
echo
インク
静脈
アンモナイト
Cut~Early Songs Best Selection~
Parade