Spirit / THE MORTAL | 安眠妨害水族館

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Spirit/THE MORTAL

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1. PAIN DROP
2. Spirit
3. SHADOW OF LOVE
4. CITIES IN DUST
5. 夢

BUCK-TICKのVo.櫻井敦司のソロ・プロジェクト、THE MORTALの1stミニアルバム。
フルアルバムに先行してリリースされました。

同じソロ・プロジェクトではありますが、10年前にリリースした「愛の惑星」とは、随分と毛色が異なる。
多方面から楽曲提供を受けて幅を広げるアプローチだった前回と比較して、櫻井さんのルーツを探るかのように、源流に立ち返る手法を採用しているのですよ。

源流と表現するのには理由があって、それは、本作に収録された3曲の洋楽カヴァーである。
ゴスバンドの元祖であるBauhausの「Spirit」、ハードコアパンクの原点となったThe Damnedの「SHADOW OF LOVE」、ニューウェイブ要素が強いSiouxsie & the Bansheesの「CITIES IN DUST」。
間違いなく櫻井さんの音楽性に多大な影響を与えただろうバンドたちであり、このプロジェクトで何をしたいのか、明確な意思表示を行っていると言えるでしょう。

更に、カヴァーといっても解釈が加えられていますね。
部分的に日本語に歌詞を書き直していたり、大幅にアレンジが変わった楽曲もある。
特に「CITIES IN DUST」は、これからTHE MORTALで示そうとしている世界観に近づけるよう、よりゴシックで呪術的な雰囲気に再構築されていました。

そして、それらの源流から現在に繋がっていくのが、オリジナル曲である「PAIN DROP」と「夢」。
どちらも、フルアルバム「I AM MORTAL」にて再度収録されますが、カヴァーシンプルに終わらせず、きちんと次の一手を示したところに、こだわりを感じます。
カヴァー曲と並ぶとメロディアスすぎる気もしますが、BUCK-TICKでの経験値を踏まえて、ルーツとなったナンバーをリスペクトすると、こんなバランスの楽曲が出来上がるのだという、ひとつの実験結果が出たような面白さを感じられるかもしれません。

内なる狂気を秘めた、至高のダークネス。
マニアックな作品であるのは間違いないので、BUCK-TICKの音楽性だけを求めすぎると、抵抗があるのかな。
ただし、その筋のリスナーであればハマるはず。
櫻井敦司のパーソナリティに迫る意味でも、やはりこちらも聴いておきたいところです。

<過去のTHE MORTALに関するレビュー>
I AM MORTAL