I AM MORTAL / THE MORTAL | 安眠妨害水族館

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I AM MORTAL/THE MORTAL

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1. 天使
2. DEAD CAN DANCE
3. Barbaric Man
4. 夢 -Deep Dream
5. Fantômas -展覧会の男
6. MOTHER
7. ギニョル
8. 月
9. PAIN DROP -It rains cats & dogs
10. グロテスク
11. Mortal
12. サヨナラワルツ

BUCK-TICKのボーカリスト、櫻井敦司を中心に結成されたTHE MORTAL。
本作は、彼らにとって初となるフルアルバムです。

初音源としてリリースされたミニアルバムから、わずか1か月。
短いインターバルでフルレンスが届けられるとは、思った以上にハイペースだな、といったところですかね。

作詞は全曲櫻井さんが手掛けており、作曲は、Gt.Jake Cloudchairさん、Gt.村田有希生さん、Ba.三代堅さんが、それぞれ4曲ずつ担当しています。
作曲者が偏っていないことで、従来のソロ作品と同様に新たな可能性を広げる意図があるのかなと想像していたら、むしろ深く深く源流に潜っていくかのようなアプローチ。
ノイジーなバンドサウンドに、キャッチー性を排除したメロディを重ね、まさに櫻井さんのルーツに迫るようなゴシックな世界観を実現しているのである。

サウンド面でもザラザラとした感触が際立っていて、アングラ感を漂わせている。
B-Tでもゴスに寄せる作品、楽曲は存在していましたが、ここまでどっぷり浸かってはいなかったはず。
歌声が地下室に横たわるように響き、V系シーンの中で洗練されていく耽美なゴスとは異なる、狂気と死臭が渦巻く暗黒世界がそこにありました。
とにかく濃厚なデカダンス。

複数の作曲者がいる中で、この一本通った音楽性を貫いているだけでも感心なのですが、芝居がかった語りが入ったり、無表情での歌唱で絶望感を演出したりと、12曲の長丁場、このサウンドを聴かせきるための工夫を随所に織り込んでいるのもさすが。
特に、「ギニョル」から「グロテスク」までのカオティックな流れがお気に入り。
まったくポップさがないにも関わらず、ワクワクさせられてしまうのだよな。

バンド名でもある「Mortal」、ラストの「サヨナラワルツ」は、それぞれがタイプの違うバラードとなっており、本作中でもっともメロディアスなパート。
レトロな雰囲気を出しつつ、エンドロール的な余韻を残して本編を締めくくっています。

B-Tが作品によって色味を変えていくバンドだとすれば、このTHE MORTALは、ここまで聴いた限り、どこから切り取っても漆黒。
この手の音楽特有のテンションの低さとは裏腹、初期衝動をビシビシ感じる1枚に仕上がりました。
カヴァー曲が3曲収録されたミニアルバムと比較しても、オリジナルナンバーだけでコーディネイトされた本作は格別。
これにて、遂にTHE MORTALが始動したぞ、という気分にさせられる。

連続リリースとなっただけに、アルバム1枚限りの期間限定ユニットということでもなさそう。
今後の活動は未知数ではありますが、是非とも次回作を期待したいものです。
もちろん、B-TはB-Tで新曲が聴きたいと願っていますけどね。