冷凍室の凝固点は繋ぐ体温/nurié
1. 冷凍室の凝固点は繋ぐ体温
2. I'm RAISE CLUB
3. 舐めんな
原点回帰を意識しいたというnuriéの5thシングル。
原点回帰と言いつつ、メイクの濃さは過去最高ではないかと思われる本作のアートワーク。
というのも、彼らの言う原点回帰は、社会に対して尖った視点で切り込んでいくというメンタルの部分と、楽曲の世界観を表現するためのヴィジュアルであるというスタンスの部分。
表題曲の世界を描ききるためのアート的なこだわりが、メイクや衣装に反映しているのだと思えば、確かにそれはnuriéの、いやヴィジュアル系というシーン全体にとっての原点回帰となるのでしょう。
その「冷凍室の凝固点は繋ぐ体温」は、12月にリリースする作品として異質となる夏をテーマにした楽曲。
ただし、夏の暑さとの対比で感じる"冷たさ"こそが本作における重要なポイント。
この感覚を物理的に表現しようと、あえて冬に発表したとのことで、こだわり抜いたからこそのミスマッチなのですよ。
サウンド的にも、環境音を使って夏の空気をもたらしつつ、ギターのアルペジオを効果的に使って、ひんやりとする冷たさを再現。
ミクスチャー的な作風で、ここでも原点回帰を見せつけながら、進化/深化したnuriéの音楽を示していました。
バランスを取る意図もあってか、「I'm RAISE CLUB」はライブ映えに特化したようなアッパーチューン。
序盤は、パッションを詰め込んで走り抜くナンバーになっていて、清涼感を引き連れたまま熱量の高さを感じさせるという点で、これまでとは違う味わいがありますね。
中盤以降は、ヒップホップテイストが強まったり、広がりを見せたりと、ドラマティックな展開に。
こちらもリードトラックとして使えるぐらいのインパクトを放っています。
タイトルから彼ららしいな、と思わせるのは「舐めんな」。
Vo.大角龍太朗さんとGt.廣瀬彩人さんの共作となっていて、大角さんらしい自然体のメッセージと荒々しいほど勢いに、廣瀬さんらしい構成力とアート性が、上手く溶け込んでいる印象です。
反骨精神は、この楽曲で回収。
敵に対して虚勢を張っているようで、実は自分に向けられている叫びだったりするのかな。
前作「瞳に映らない形と性質、それを「 」と呼んで」にて、音楽性の幅を広げることで成長を示した彼ら。
本作では、原点回帰という意識が、表現に対する深掘りに繋がっていて、前作とは異なるベクトルでの成長が見受けられたと言えそうです。
改めて夏に聴いたらどんな印象になるのだろう、という楽しみも残り、長く聴けそうな1枚。
<過去のnuriéに関するレビュー>