ユメトウツツ / 稲山梢 | 安眠妨害水族館

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ユメトウツツ 稲山梢

 

1. ロゼメリ

2. コバルト

3. 餞

4. 断罪のバナナ

5. ーinterludeー

6. オレンジ

7. ホワイトマム

8. 眩しい日々に

 

結成5年目にして、初のCD作品となる稲山梢の1stアルバム。

 

Vo&Gt.井上 稲、Ba.山本 伸彦、Dr.木立 梢悟による青春スリーピースバンド、稲山梢。

メンバーの名前から1文字ずつ取ったバンド名は、この3人でのサウンドにこだわっているという証でもあるのでしょう。

SEを含む8曲と、フルアルバムとしては少し喰い足りないボリューム感ではあるのですが、この刹那的な感覚が青春の瞬間性とマッチしている部分もあり、彼らの音楽性を示すには最適でした。

 

じわじわと夢の世界に没入していくような「ロゼメリ」からスタートし、瞬間の美学を炸裂させる「コバルト」に繋げる導入から、インパクト抜群です。

更に、デジタルシングル「餞」、「断罪のバナナ」を畳み掛ける盤石の前半戦。

キャリアは十分、百戦錬磨のメンバーを擁する彼らですが、あえて若気の至りとでも言えそうなフレーズや、初期衝動を思い起こさせる勢い重視のアプローチを展開しており、自らの世界観と結びつけていますね。

 

タイトル通り、夢現を彷徨うようなインスト「ーinterludeー」を挟んで、後半戦は歌モノパート。

ここまで明確に固めてくるとは予想できなかったな、と。

バラエティ性を示すというよりは、相反する二面性を意識したアルバム構成。

稲さんの純粋さを感じさせる歌声と、骨太なロックサウンドは、どちらに振れてもじんわりと胸に甘酸っぱい感情を連れてきてくれます。

 

共感性が高く、リアリティに即していながら、過ぎていった日々を振り返るような、そしてそれはある種の理想郷であるような非現実性も包含していて、「ユメトウツツ」というタイトルは、見事に稲山梢の音楽性を象徴しています。

二部構成のうち、どちらか一方が夢で、もう一方が現実で、ということではなく、どの楽曲も、その中間をふわふわと漂うような危うさがあり、それがとても心地良い。

青春時代が振り返るものになってしまった大人にも響くであろう1枚。

 

 

 

<過去の稲山梢に関するレビュー>

「断罪のバナナ」「眩しい日々に」