令和元年も本日で終わり。
10位~6位までを発表した前編に続いて、いよいよ後編。
イチゼロ年代、最後の更新となります。
例のごとく迷いに迷って、2019年を象徴する名盤、最後の5枚を選ばせていただきました。
第5位
PUER ET PUELLA/BAROQUE
PUER ET PUELLA 2,980円 Amazon |
詳細なレビューは<こちら>
これまでに取り組んできた音楽を総括しつつ、 L'Arc~en~Cielを彷彿とさせる白系サウンドに帰結。
90年代への回帰ではなく、近未来的な表現を継続してきた過程で、ここに辿り着いたという事実が興味深かったですね。
空間的な広がりを感じさせるスケールの大きさに、緻密に計算され尽くした音の重なり。
絶妙とも言えるアレンジセンスは、アーティスティックな高尚さと、キャッチーな耳ざわりの両立しており、彼らの目には世界はこう映っているのか、と感嘆が漏れてしまいます。
散りばめられた遊び心を拾っていくのも、楽しみのひとつでしょう。
第4位
dadaism#5/DADAROMA
dadaism#5 TypeB 2,750円 Amazon |
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どれを上位に選出するか悩ましかった今回のランキング。
迷ったときに決め手となるのは、キラーチューンの存在だったりします。
この「dadaism#5」に収録された「ケイドロ」という楽曲は、個人的な今期のベストトラック候補。
哀愁たっぷりに疾走し、胸をざわつかせた名曲で、ドラマ性にも痺れました。
フルアルバムを制作予定も、より濃厚なDADAROMAを、との意向からミニアルバムに凝縮。
作品全体としても、彼らの良いところが全部詰まった"dadaism"シリーズの最高傑作でしょう。
第3位
モノローグ/nurié
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令和が生んだスーパールーキー、nuriéの1stシングルは、とにかく衝撃的でした。
必ずしもV系でなくとも良さそうなお洒落なサウンドに、メッセージ性の強い歌詞。
感情をストレートに吐露する熱量の高いヴォーカリゼーションについても、既存のセオリーを覆しかねないもの。
しかしながら、その真っ向から風穴を開けようともがく姿勢が、現代シーンの閉塞感に息苦しさを覚えていたリスナー層に刺さりましたよね。
久しぶりに、口コミからロックヒーローが生まれていく。
そんな瞬間に立ち会っているような感覚が、この「モノローグ」が公開されたときに漂っていたのではないかと。
新時代の中心にいるのが、彼らだったら面白くなりそうという期待値も込めて。
第2位
black hole/DEZERT
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前作「TODAY」にて、過去の自分たちと決別した感もあったDEZERTですが、新作「black hole」では、更に進化を遂げていました。
吸収したものをアウトプットするにあたって、DEZERTらしさですら邪魔なフィルターであると感じているのでは、と思えるぐらいに急ピッチでの成長。
ときに、雑多すぎるきらいはあるのですが、そのリアルタイム性こそが彼らなのでしょう。
もっとも、意図的に振り切った「TODAY」に比べて、不協和音を重ねてダークさを演出したり、グロテスクさすら感じる強烈なワーディングを持ってきたりと、ブレイク期に評価されていた極端な演出もクロスオーバー。
不気味な世界観が好きだった層にもアピールできる内容になっており、より完全性が高まった作品と言えるでしょう。
第1位
事件/ホタル
「事件」 4,201円 Amazon |
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正直なところ、直前までDEZERTを1位に持ってくるつもりだったのですよ。
でも、最後の最後で、この「事件」がまくってきたな、と。
主観的なランキングという意味では、自分に一番刺さった作品を無視するわけにはいかないよな、と。
昭和歌謡をベースに、社会の病理を歌うという当初のコンセプトは崩さずに、大人になったからこそ深みを増した歌詞は、ストレートさを増してより鮮烈になった印象。
復活バンドである彼らに求められる"あの頃のホタル"らしさと、活動中のバンドである彼らが欲する"今のホタル"への評価。
16年ぶりのアルバムにおいて、それを見事に両立させて、更には期待値を超えてくるなんて。
ようやくホタルの"とりあえずこれを聴け!"な作品が見つかったな、と自信を持って薦められる名盤です。
今年のランキングは、とにかく難しかった。
期間中に、GLAY、清春、LUNA SEA、Angeloといった大御所バンドたちがこぞって質の高いアルバムをリリースしていたこともあって、基準をどこに持ってくるかで悩んでしまい、本当に難産でした。
結果として、今のシーンでプッシュしたいバンド、という観点を強く出し、伸び盛りのバンドや、改めて聴き直してほしいバンドを中心とした選出となったでしょうか。
作品クオリティとしては、例えば10位のユメリープよりも上記のバンドの作品が劣っていたなんてことはないわけで、その意味では公平性には欠いているのかもしれませんけれど、ご理解いただけますと幸いです。
ランク外にはなってしまいましたが、勢いを感じさせるバンドとしては、NAZAREのシングル「INNOCENCE」も良い出来でした。
ザアザアのミニアルバム「みんながうた」や、breakin'holidayの「PALOMAR KNOT」も、巡り合わせによってはトップ10に入っていてもおかしくないほど聴いていますね。
ロマン急行の「人間白書」、 ザ・シンナーズの「アナタニモチェルシーアゲタイ」などもよく聴いたのですが、期待値も高かっただけに、それを超えるインパクトが欲しかったな、と。
頭打ち感が出始めていたV系シーンですが、イチゼロ年代終盤に、新しい波が生まれそうな予兆を感じ取れたのは好材料。
間違いなくやってくる新時代、中心にいるのはどのバンドか、という見方をしてみても面白いかもしれません。
やはり、お約束に従っているだけのバンドでは面白くない。
時代に流されず自分たちの音楽を貫いているバンド、既存の概念を蹴破ってやろうとチャレンジを繰り返しているバンドこそ、そこにいてほしいものだなと、個人的には期待してしまいます。
採り上げた作品で、まだ聴いていないなと思うのものがあれば、是非とも耳にしていただけましたら幸い。
それでは、よいお年を。