PALOMAR KNOT / breakin'holiday | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

PALOMAR KNOT/breakin'holiday

 

1. アドナト

2. BEFORE DAWN

3. 怪物 〈album mix〉

4. 444

5. As you are

6. BULLSHIT 〈album mix〉

7. LILITH 〈album remastering〉

8. 葬列〈album remix〉

9. ICE

10. FANTASIA〈album remastering〉

 

 

ZERO MIND INFINITYを実質的な母体とする形で結成されたbreakin'holiday。

本作は、ライブ会場と通信販売にて購入可能となっている1stフルアルバムです。

 

ex-DELUHIのVo.Juri、Ba.Aggy、12012のGt.酒井洋明、ex-アンドのDr.KAJIという豪華なメンバーが勢揃い。

シンプルな編成ではありますが、さすがキャリアがあるメンバーたちが揃っただけあって、重厚で硬派なサウンドを轟かせています。

音楽性としては、メタルコアをベースにしつつも、幅広くハイブリッドな展開を意識している印象。

クリーントーンでの強さもあるため、激しくヘヴィではありますが、聴きやすさも持ち合わせていますね。

 

1曲目は、落ち着いた雰囲気の「アドナト」でシリアスにスタート。

初のアルバム作品ということもあり、勢いをつけて、と想像していましたが、まんまと逆を突いてきた。

これから巻き起こる暴風雨の前触れとでも言わんばかりに、どっしりと世界観を作り上げていきます。

本筋的な楽曲としては、続く「BEFORE DAWN」、およびMVが制作された「怪物」が担っているのかな。

溜めるだけ溜めて、一気に吐き出すカタルシス。

序盤3曲でそれをやってのける度胸も、経験と自信の表れなのかもしれません。

 

それと同じぐらい、案外肝になっているな、と感じたのは、「444」から「BULLSHIT」までの流れ。

呪術的な空気感を持った「444」に、ディープな世界に潜ったと言える「As you are」、「葬列」のカップリングとしてマニアックな一面を示していた「BULLSHIT」と、言ってしまえば邪道な楽曲を並べてきた。

終盤4曲にシングル3曲を固める構成を踏まえれば、ともすればバランスが悪くなってしまいかねないチャレンジなのですが、極端に大きな波を作ったことで、アルバムとしてのメリハリが生まれているのですよ。

王道曲のブリッジとしてマニアックな曲を入れるだけであれば、同じような楽曲が続くことを避けるためのアクセントと受け入れられ、個が弱まり、音楽性の幅には思い至らずに聴き流してしまう懸念もあったわけで。

思い切った配置ではあったけれど、これにより陰と陽の両面をしっかり意識させることができましたね。

 

そのチャレンジを成功させてしまえば、あとは勝手に盛り上がるという安定感抜群の楽曲たち。

もっとも、そこでも合間に放った「ICE」は、重厚なサウンドの中で繰り広げられるバラードナンバーに仕上げられており、必ずしも一筋縄ではいかないのですが、この楽曲ですら「FANTASIA」への贅沢な前フリと捉えたくなるぐらい、全体的な構成の緻密さが際立っていました。

激しさに強みを持った重厚なメタルバンド、という先入観も含まれた期待に応えながら、そこから零れ落ちそうな数々の武器を、しっかりと拾い上げてアピールする隙のない作品。

これに大衆層にも響く明確なキラーチューンが生まれてくれば、早くも完成形と言えそうです。

 

なお、初回限定盤は特殊パッケージ仕様に加え、breakin'radioが聞けるカード付き。

本編となるCDの内容は不変で、価格は3,000円とお手頃ですので、迷うのであれば初回限定盤を手にして損はないかと。

発売日を延期してまでこだわった1枚。

流通しても良いクオリティだと思うのだけれど、店舗販売の予定はないのでしょうか。

 

 

⇒ この作品を聴いた人はこんな作品もおススメ!

 

Brave Agonistic Letters Under Segregation/JILUKA

 

詳細なレビューは<こちら

カップリングCDを出していますし、親和性が高いのは周知の事実。

メタリックなサウンドに重きを置きつつ、メロディ部分にはV系シーンが培ってきたお約束を還元。

洋楽ライクに仕上げるのではなく、ヴィジュアル系のメタルコアというハイブリッドさを強みとしている共通項が見られます。

メタルやラウドは食傷気味、というリスナーでもグッと引かれるフレーズも至る所に。

双方の初期衝動を聴き比べてみるのも面白いのでは。