青の、缶バッジをなくした。
初めてsumikaのライブを見に行った時に買った、ロゴが書かれた缶バッジ。
2年以上も手元にあったから静かにショックを受けていた。
それさえあれば、あの日の高揚感を鮮明に思い出せたのに。
愛着を持つってそういうことだと思っていて、
音楽もまたしかり。
日常に溶け込むということ。
ちなみに彼らを初めて見たときの感想はこちら。
いまも変わらない。
どこかできいた、「音楽で食わずに音楽と生きる」が、ちょうどいいわたしだけれども
ステージの彼らに負けたくないきもちで
どうしてもやりたかった、アルバム全曲レビュー。
初のフルアルバム、のちからをお借りして
初の全曲レビュー。へへん。
ツアーが終わってからやると決めてたんだ。
そしたらラジオ局の企画で、1曲選んで読書感想文、なんてやってた。奇遇だね。
そんな豊かな2017年下半期。
その企画に合わせて書いたのもあるし、
つい最近書いたのもある。
音楽を通して考える、感じる、ことばにする、
その自分に、用がある。
---sumika 「Familia」全曲レビュー
1.Answer
現段階で、sumikaのイメージを瞬間的に表すならこれ。音数の多さ、爆発力、せーの!と聞こえそうな屈託のなさ、カラフルさ。「メーデー」は信号の方の意味が強そうだけど、「仕事のために、休息のために、好きなことのために」っていう労働者の日としての「メーデー」はまさに私たちが音楽を必要とする原動力の意味を持ってるらしく、妙に納得してしまった。とにかく音と心だけ先に飛んでけっていう起点の歌。
2.春風
「貴方」なんて漢字を使うほど、ちょっと礼儀正しく背伸びをしているような、≪心配なんてかけぬように≫と強くあろうとしているような。少し成長したように見せたくなるのは春のせいだし、最もたくさんの人の顔が浮かぶのも春。たいせつな人は1人じゃなくて、ほうっと思い返す人みんなを想っている歌。ふわっとした光の朝に、街から街へ移る電車の中で聴いたなら、その日はちょっと優しくなれる気がする。
**ちなみに
≪春の気を纏う 貴方の口の 端が上がりますようにと≫は2017年ベストフレーズに食い込む気配しますね。
3.Lovers
初めてこの曲をラジオで聴いた時「ああこの人たちは音楽と結婚する気なんだな」と思った。sumikaの復帰を心待ちにしていた1人として、ただただそれが嬉しかった。屈託なくかき鳴らされる歓びの音。それこそ、いつか最期に目を閉じる時、この曲の最後の三拍子を思い出すことができたなら、どんなに満たされた人生だと思えるだろう。…なんて縁起でもないけど、とにかくこの曲があって、わたしの今は豊かです。
4.KOKYU
≪吸って吐くだけの曲ですよ≫その通り。吸うのは懸命にするのに、吐くことはよく忘れてしまうな、ということに、≪吸って≫よりも≪吐いて≫の数の方がすこしだけ多いところで気が付いた。吐かないと、いろんなところで、苦しくなるのはそのせいか。どこかのインタビューで問題作とか書いてあったけれど、≪5分で世界は変わります≫って、よくライブで言ってるところ、一貫して変わらない。タンタンスタントゥルリラ、の語感がとてもイカしているとおもう。(イカしてる、なんて初めて言った)
5.Someday
sumikaの曲たちはどれを聞いても「渾身」ということばが当てはまると思っていた。捨て曲とか、そういうわけじゃないけど、こうして力の抜けた曲が入ると、ああフルアルバムだなあと思う。残り香、というかプロローグ、みたいなニュアンス。コーヒーで一息するように見えて、こころはざわついてる、女々しさも映画みたいだ。
6.アネモネ
恋ってやつは未だにわからない。けど少しずつ、愛ならわかるようになってきた気がする。部屋に活けた花は、そこにいる人が元気がないとその気を吸ってはやく枯れてしまうんだって聞いたことがある。そんなんもう、愛じゃないか。豪華なやつじゃなくて寄り添う花であることがなんだかsumikaらしいし、彼らの曲に出てくるモチーフがいつもすきだ。アルバムの真ん中にこの曲がいることで一層カラフルに思える曲。
7.ここから見える景色
「結婚式二次会のBGMを選んでほしい」。だいすきな友達にそう頼まれたことがある。顔を思い浮かべながら想いを込めたセットリストを作るのは、ほんとうに楽しかった。そしてずっと前から、いつか自分が結婚式をするときに絶対使おうと決めてるのは【ここから見える景色】なんだ。卵焼き突っ込むところがだいすきだって言ってあるけど、友達に任せたらわたしのセットリストに忘れずに入れてくれるかなあ。
**ちなみに
間奏のピアノの嵐と、最後の式場でかかりそうなギターの音もだいすきなんですけど、何よりラストサビ前の≪未来の中≫のハモるところが悶えポイントです。2人だけになる瞬間。
8.ピカソからの宅急便
「あ、魔法がかかる音がする」。そんなイントロ。浮かぶのは、外国の街中で鳴らされる陽気な音楽、そこに人が集まってきて、誰も彼も関係なくその場を楽しんでいくような画。ピカソの作風が自由であるように、sumikaはゴリゴリのバンドにも音楽隊にもなれるし、言葉をひとつの武器としながらも、言葉を越えてもなおsumikaはsumikaだった。これに続くのが”MAGIC”だってのが、またニクいんだよなあ。
**ちなみに
ライブで、この曲が入りSEになる予言は当たりました。ほんとだよ。
9.MAGIC
繰り返しになるが、ピカソからのこの曲、の流れは本当にニクい!とてもとても良い意味で、「開き直ったなあ」な曲。アカペラ界隈にいたわたしにとって、素直にスナップを打ちたくなってしまう音が出てくることが、この感覚を知っていることが、少しだけ、誇り、のような。≪音と音に乗せて≫のリズムが好みで、リズム感のいいお客さんでいたいし、リズム感のいい人生って、いいなと思う。
10.アイデンティティ
私とって「グライダースライダー」が人生のテーマソング(初代)なのだけれど、この曲を二代目に決めた。続きのようにリンクする2曲、変わったのは信じた先に≪笑い合え≫る、≪足並みを揃え≫る人がいること。「誰と」生きていくか、というのもアイデンティティのひとつなのかもと思っていた私に、友人が「この曲すきそうだなと思ってたよ」と言った。顔を思い浮かべてくれる人がいるだけで、前に進めそうなのはどうしてだろう。
**ちなみに
ピンポイントマンとしては、イントロと≪忘れないように歌にして≫の後の【ッポーン】っていうピアノがすきすぎますね。
今回のツアーで、ライブハウスではきけなかったのに、フォーラムでイントロきた瞬間「ふぁっ!?」って言いました。
11.Summer Vacation
大人になってしまったから、「夏休み」なんてあの頃よりもわくわくしない。代わりに、線香花火の儚さや夏の終わりを情緒だと思うようになったのはいつからだっけな。≪大人になってつかず離れず≫以降の、抗うかんじが名残り惜しさと重なる。集中して聴くと見えてくる、コーラスの作り込み具合がたまらない(アカペラにしやすそう…我ながら擦り込みだ)。そいでもって、リズム感よくありたい、パート2。
12.まいった
『I LOVE YOU』を「月が綺麗ですね」と言うのは有名な話だけれども、「まいった」という一言も同じ意味になるみたいだ。かと思えば、すきという気持ちをこんなにも5分半こねくり回せるのも人間らしくて愛おしい。そうやって見守る気持ちになるのは、私にも忘れられない人がいるから。こんな時代だから、液晶で繋がれるのも悪くない。けど願わくば、この曲の彼の左手があの日と同じように繋がれますように。
13.『伝言歌』
いつの間にか大人になってしまった。周りに置いていかれると感じることの多い日々。やりたいことと実生活との狭間で、いつも音楽に支えられている。この曲は直球ラブソングだけど、≪今の私の半分以上があなたで出来ていたと気付いたから≫と歌われるたび、私にとって「あなた」は音楽だなと思う。はっきり目の前に現れてはくれないから、こうして言葉にして残して、音楽に投げかけながらいきていくと、決めている。
14.Door
アルバム最後の曲にして、わたしの中で最も新鮮だった。王道というか、素直というか。どこか遊びゴコロを忘れないsumikaにしては、という意味で。とぼとぼ・しばしば・そこやかしこ・やれやれ、といった語感で表現するあたりは「らしい」けれど、≪振り向いたら負けな気して≫と、ただ一歩先の、どこかへ行こうとする芯の強さを、最後に置いていった。潔さ。
---
このアルバムのツアーが終わって、ケンタカタオカは「現在の自分が一番好きだ」と言い切った。
わたしもそうで、
若い頃がよかったな、過去に戻りたいな、なんて思わなくはないけれど
今までのすべてをひっくるめて「わたし」が出来ていると思うと
わりと時間がいとおしく。
少しだけ、
正直に言うとsumikaというバンドの、
勢いとか注目度とか人気の出っぷりとか、
客層の若さとかそういうのに
ひよってしまうことがある。
だけどもフロントラインの2人が同世代だってのもあって、勝手ながらに切磋琢磨するように生きていたい。
それから(唐突に言えば)わたしの原点はゆずで、
今年20周年を一緒に過ごして
「タイトル思い出せないけどなぜか歌える病」とか
「むかしのことが走馬灯のように思い返されてライブ中に悶える病」とかを経験していて、
一緒に歳をとることを、とてもたのしみにしている。
ツアーファイナルシリーズの
国際フォーラムが終わっての感想。
はー書けたーーーー!
はーーー、CDの帯とか書く仕事こないかな!!!!
2017年のもろもろベストも、
そろそろだ◎