機械人形化少女概説(1)
機械人形化少女概説(2)
機械人形化少女概説(3)
機械人形化少女概説(4)
機械人形化少女概説(5)
機械人形化少女概説(6)
機械人形化少女概説(7)
機械人形化少女概説(8)
機械人形化少女概説(9)

「転写」について(3)
私の作品『サイバー被疑者高口悦子』の中に、自分の生身の身体を留置施設に預け意識と記憶を機械体に転送する『サイバー被疑者・被告人システム』というのが出てくるのですが、このように元に戻ることを前提に一時的に意識を転送する場合は、自己が複数存在するようになることを防ぐために脳内の時間の進行を止めるような何らかの工夫が必要だというようなことを書きました。

改造絵日記(7月28日)「サイバー被疑者高口悦子Ⅴ」でそれを書いたときは知らなかったのですが、高島雄哉先生の『ランダスケープと夏の定理』というSF作品にこれと同じような発想をより科学的に展開した方法が出ていました。量子ゼノン効果というものです。「飛んでいる矢は観測している各瞬間で止まっている 」というゼノンのパラドックスに因むもので、平たく言えば観測を繰り返すことにより、量子状態の時間発展を阻害する=時間を止めるというものらしいです。
本来は電子数個のような単純な系で実験的に行われるものですが、これを応用して人格を外部に転写している間は脳の状態を停止させておき、転送後に戻ってきた意識(記憶)が上手く連続するようにつなげることができます。
勿論作品の中に直で出てくるわけではないのですが、この原理はこの間亡くなられた聖悠紀先生のコミック作品『タイマニック』のようなロボット体への意識の一時的転写を扱った作品にも応用がきくように思われます。

『量子ゼノン効果(Wikipedia)』

【今回描いた絵】
高口悦子(分岐転写体・汎用人型ロボットPL23型309768号)